「世界は平凡か?未来は退屈か?現実は適当か?安心しろ、それでも生きることは劇的だ!」
「そんなわけで本日よりこの私が貴様達の生徒会長だ、悩みごとがあれば迷わず目安箱に投書するがよい。24時間365日、私は誰からの相談でも受け付ける!!」
☆
「生徒会長 黒神めだか、一年十三組所属でAB型。支持率驚異の98%。全国模試では常に上位でスポーツのあらゆる競技で記録を独占。そして馬鹿みたいな大金持ち。さて、テルくんどうやって彼女に対抗しうる勢力を集めましょうか?」
「ん?、んー」
二年十三組の教室に、
いつもなら三年十三組でもう一人の肩書きを失った人間を含めた三人で昼食をとるのだが、今回は作戦会議ということで二年の方に来ている。
空洞を誘わないのは、彼が今回の作戦の本筋にまだ、あまり乗り気では無いからだ。
「“生徒会を乗っ取る”とはまぁ大胆かつ明瞭な作戦の本筋ですが、相手が相手ですからねぇ」
「んー」
「・・・テルくん、先ほどから私の話を聞いてますか?」
「んー?」
影照はどこを見つめるわけでもなく空中を眺め、口は箸をくわえている。先ほどから全く食が進んでいないようだ。
「テルくん!聞いてますか!?」
破魔矢が影照の頬をペシペシと手で叩く。
「はっ、はい?」
「どうやら聞いてなさそうですね。あれですか、あの妹さんが居ないからですか?」
「ん?冥加は関係ないよ」
破魔矢は不思議そうに首を傾げる。
「彼女がテルくんの側に居ないとは珍しいこともありますね」
やっと影照は箸を動かして、卵焼きを一つ頬張る。
「いやぁ実は昨日な、しかじかかくかく詳しくは17話をみてくれ、という事がありまして」
「ほぉ、それはまた大胆な」
破魔矢はニヤニヤしながら影照の話に耳を傾ける。
「それで、その冥加さんがテルくんのズボンに手をかけた後どうなったんですか?」
「『早く手をはなさないと二度とご飯を作ってあげないからな!』って言ったら解放してくれた。んで、今は拗ねて引きこもり中」
破魔矢は頭のなかで、泣く泣く拘束を外す冥加の姿を見たような気がした。
「はぁ、惜しかったですね」
「・・・・・何が惜しかったんだ?それにしても、いくら俺が一晩帰らずに着替えもしてないからって、その場で着替えさせようとするのはー」
「それは本気で言ってるのですか?テルくん」
「え?あ、うん」
なんだろう少し怖いよハマ。その振り上げた拳は何かな?
破魔矢は振り上げた拳を影照に落とす。鈍い音が教室に広がった。
「何なんだよー」
頭を抱えて涙目になる影照。
「テルくんはもう少し相手の気持ちを理解しないといけません」
食事の終わった破魔矢はどこから取り出したであろうナプキンで口を拭った。
☆
放課後。青春を匂わせる爽やかな時間。
この時間には、部活動をする者、友人と遊びながら帰宅する者、もしかするとどこかで素敵なボーイミーツガールが始まっていたりするのかもしれない。
そんな中影照は、風紀委員会室での雑務に追われていた。
「それでよぉーー」
「「キャーー☆」」
新しく風紀委員長になった我が弟の冥利。
今日も相変わらず女の子に囲まれ、呼子副委員長の豊満な胸の上に頭を乗せていた。
あいつが委員長になってから俺の雑務が増え・・・・・・
あれ?そういえば俺が委員長のときとあまり変わらない多さだな。
つまり、俺が以前から委員長として認識されていなかったということか、なるほど。
・・・・・なにそれ、俺死のうかな。
少し目頭が熱くなってきたので、上を向いてクールダウン。
「あー、影兄」
冥利は頭だけ影照の方に向く。
「それが終わったら
「ごめーん、どうやら終わりそうにないやー」
服装検査なんて面倒なこと出来るかっつーの。
「よろしくなー」
「あれ?会話が成立してないぞ。俺はちゃんと断ったはずだが?」
「あと五分で部活動終了の時間だから早くしてくれ」
今作業している書類の文字が滲んで見えづらくなったのは、断じて涙のせいなんかじゃない。
たぶん疲れが出たのだろう。涙で滲んだ訳じゃない。
☆
「はーい服装検査しまーす」
夕暮れ時、校門の前で服装検査を行う元風紀委員長と冥利の取り巻きの一人の一年生、鬼瀬ちゃん。
彼女は風紀委員の中で最も真面目な子だ、風紀を乱す者がいれば手錠をメリケンの様にして違反者を殴ったりする。
そんな彼女についた異名が「手錠メリケンの鬼瀬」
JKに対してこの異名は少し失礼ではないだろうか?
「はーい風紀委員会でーす、服装検査しまぁす」
目の前に現れたのは、ピアスにだらしなく着込んだ制服、明らかに違反の頭髪をした大柄な男子生徒だ。
たしか名前は・・・
「テメェ、分かってんだろうな、俺を違反者にしたらー」
「はーい、問題ありません。通ってもいいですよ」
「ーただじゃ、って、へ?あ、じゃ、じゃあ通らせてもらうぜ、へへへ」
あー大変な仕事だなぁ。
大きく影照は伸びをする、そしてその無防備な背中に衝撃が走る。
「グハァッ!!」
「何してるんですか!?完全にさっきの人はアウトだったでしょう!?」
噂の手錠メリケンの鬼瀬ちゃんだ。せっかく可愛らしい出で立ちをしてるのに、その生真面目な性格のせいで「彼女にしたくないランキング」の上位に入ってるんだよと今度ちゃんと教えて上げよう。
「鬼瀬ちゃん」
影照は痛む腰をさすりながら鬼瀬の肩に手を置く。
「な、なんですか」
「いいかい、人は見かけで判断してはいけなーーグハッ!!」
今度は腹部に手錠メリケンが打ち込まれる。
「今の仕事は、見かけを判断する仕事です。ちゃんとしてください」
鬼瀬はプンスカと怒りながら自らの持ち場に戻った。
前後から激しい痛みに襲われて、影照が校門前でうつ伏せてると
「な、なにしてるんすか些細無先輩」
影照は声のする方へ振り向くと、見覚えある後輩だ。
「や、やぁ善吉くん。奇遇だね」
知り合いの後輩が一人と、友人だろうか、善吉の隣に小柄な女子生徒が人の顔ほどもあろうかというペロペロキャンディーをくわえていた。
そして、その娘が影照の目の前にまで近づいてくる。
「些細無影照さん、
一通り影照の説明が終わり、その娘は自慢気に平らな胸を反らす。
なんだか馬鹿にされた気分だったので、校則違反としてキャンディーは没収しとこう。
「返してよー!」
没収したキャンディーを鬼瀬ちゃんに渡したので、その娘は急いでそっちに走っていった。
「なんか俺の友人の不知火がすいません」
苦笑いで軽く頭を下げる善吉。
よくみてみるとその姿は怪我だらけであることに気づく。
「どうしたんだ?その傷は?」
「あ、あぁこれですか。ちょっと幼なじみのやつに振り回されてまして」
振り回されていると言う割りには、善吉の顔はどこか嬉しそうだった。
あれか、青春ってやつか。リア充も立派な校則違反だとみんなに教えてあげよう。
「それはそうと、些細無先輩はどうして風紀委員長辞めちゃったんすか?」
今や、ちゃんと俺を先輩として接してくれる後輩は彼くらいのものだよ。
「いやいや、只の力量不足だよ。俺には少し荷が重かったんだ」
それとなく質問に答える。
本当のところ、空洞ではない生徒会長をサポートするのが、少し気が進まないだけなのだが。
「でも先輩が委員長の間は、特に目立った事件も起きずに平和だったって聞きますけど。常に生徒会長のサポートに徹するという珍しい体制をとってたとか」
「言われてみれば、風紀委員ってのは生徒会と対を為す組織だからなぁ。俺みたいなやつは珍しかったのかな」
ていうか、こんな地味な体制とってたから、みんなに風紀委員長として認識されてなかったんじゃないだろうか。
「ところで善吉くん、今回生徒会長になったやつのことを知らないかい?実は俺、今日選挙に行ってないんだ。いくらか話は聞いてるけどなんかこうイメージしづらいんだよ」
「黒神めだか・・・のことですか?」
きょとんとした顔で影照の問いに答える善吉。
もしかして彼もよく知らないのかもしれないな。
「知ってるも何も、めだかちゃんは俺の幼なじみですよ」