陰を照らした時に出来る陰   作:俺の眼鏡

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19箱目 正義、聖者

あれから、黒神めだかが生徒会長に就任してから一月が回ろうとしていた。

彼女の会長ぶりは目を見張るものがあり、誰しもが彼女が会長になってくれたことに感謝していた。

ヤンキーを改心させて剣道部を設立させたり使われていないプールでイベントを開催し、子犬探しや美術部の絵のモデルといった小さな案件までこなす。

彼女とすれ違う人々はみんな羨望の眼差しを向け、口を揃えて感謝を述べた。

 

ーー俺は、こういったことを空洞に体験させてあげたいんだ。

「ありがとう」、その一言だけを受け取る権利を空洞は十分に持っている。

その言葉を今ここで知っておかないとあいつは、これからもずっと日の当たらない人生を歩む事になるだろう。

 

現在の黒神めだか率いる生徒会

会長 黒神めだか

会計 喜界島もがな

書記 阿久根高貴

庶務 人吉善吉

 

対して影照がサポートする新生徒会(仮)

会長 日之影空洞

副会長 百町破魔矢

 

さて、これからどうしたものか。

 

 

 

「ー以上が鬼瀬委員の報告です。生徒会が絡んでいるとは言え、二回連続の失態ですので彼女には謹慎を処そうかと考えておりますが」

風紀副委員長の呼子が、今日の活動報告を行う。

そしてその報告を受けるのは、風紀委員長のー

「いーよ別にキンシンとか、鬼瀬ちゃんがカワイソーじゃん」

ー雲仙冥利だ。

弱冠10才にして箱庭学園の二年十三組に所属。

彼も百町破魔矢と同じく異常中の異常であり、フラスコ計画の一員である。

「それより黒神めだかのコトもっと聞きてーな。呼子!テメーはどう思うのよ?」

冥利は机の上に足を乗せ、携帯ゲーム機の画面に視線を落としながら会話を続ける。

「・・・さながら聖者のごとしですね。これまでの業績からして常識外れに高い支持率も頷けるというものです」

「ケケケ!けどなあ呼子、風紀委員会からすりゃ、その聖者ってのが一番やっかいなんだ」

冥利は持っていたゲーム機を空中に放り投げて、それを指で貫く。

 

「正義と聖者は、相容れねえ」

 

 

 

「ほほう、貴様が善吉と不知火が押す些細無二年生か。まぁ、とりあえず座るが良い」

「は、はぁ・・・・・・」

「お嬢様、結構彼なら適任ですよ♪経歴も申し分ないし、何より風紀委員会とのつながりもできます」

「そーだぜめだかちゃん、最近鬼瀬絡みで風紀委員会との仲は良くない。だからさ、些細無先輩に副生徒会長になってもらおうぜ」

えっと、どうしてこうなったんだっけ?

確か・・・・・・

 

休み時間に廊下をいつものようにふらふらと歩いていたら

もはや聞きなれた鬼瀬ちゃんの怒鳴り声が聞こえてきたので、面倒くさいと思いつつそっちに向かうと

顔面いっぱいにお菓子の屑をまぶした不知火ちゃんと、鬼瀬ちゃんが居たな。

ロリータ好きにはたまらない二人が居て・・・あぁ、そんな話じゃないんだ。

口論(というか鬼瀬ちゃんが一方的に騒いでただけだが)の発端は、不知火ちゃんがお菓子を食べながら廊下を歩いていたか否かということだが

 

ーまぁ、見るからに不知火ちゃんは黒だろう。

このままじゃ埒が開かないので、俺が仲裁に入って鬼瀬ちゃんをなだめたんだったな。

 

そしたら、悪い笑顔を浮かべた不知火ちゃんが

「些細無先輩、助けてくれたお礼と言っちゃあ何ですが、放課後先輩のところに行きますんで、待っててくださいね☆」

とかなんとか。この台詞をスレンダーな女性から聞きたかったと思ったのは内緒だ。

 

んで放課後あれよあれよとこのザマでといったわけで。

ていうか副会長なんか聞いてないぞ。しかも俺は了承した覚えもないぞ。

 

 

めだかが腕を組み、考え込む。

「ふむぅ・・・、しかしこの副会長の席には私の対抗勢力となりうる人物についてもらいたいと考えてるのだ」

めだかは視線をそのまま不知火に向ける。

「たとえば、不知火。私は貴様のような人間に座ってほしいと思っておるのだがな」

「あひゃひゃ☆やめてくださいよ。知ってるでしょ?あたし組織とか集団とかムリなんです」

不知火は手に持っているキャンディーをバリバリと噛み砕く。

「お嬢様、あたしはあなたがキライだし、あなたはあたしがキライなんですよ」

「それでよい。否、そうでなくてはならない。今のメンバーは私に対して少々好意的過ぎる。私は暴君でこそあれ、独裁者になるつもりはない!」

 

なんだか話が勝手に進んでる感じがするなぁ。

(ねぇ善吉くん)

(あ、はい。何ですか?)

二人の邪魔をしないように、影照は声を潜めて話しかける。

(要するに、俺は副生徒会長には適さない、ということかな?)

(あぁ・・・そうみたいですね。何だかうちのめだかちゃんがすいません)

(いや、別に良いよ。俺もなるつもり無かったし)

 

影照は添えられた来客用のお菓子を摘んで席を立つ。

「おっと、些細無二年生よ、どこに行くんだ?話はまだ終わってないぞ?」

終わってないのかよ

「会長さん、そんなに考えなくても大丈夫ですよ。だって俺副会長とかやるつもりありませんから」

「そうか、それなら良いのだ。邪魔をしたな!」

めだかは明るく、腹から声を出すように笑い、“一件落着”と書かれた扇子を広げた。

 

「えー、些細無先輩入ってくれないんですかぁ?」

不知火ちゃんが来客用のお菓子を頬張る。

「ふぁたしは、ふぇんふぁいあへきにんふぁとおおんふぁんはへおあー(私は、先輩こそ適任だと思うんだけどなー)」

「なんだよ不知火ちゃん」

「ーーゴッキュン、べっつにー☆」

考えれば考えるほどよくわからない存在だな、不知火ちゃん。

「では失礼しましたーっと」

そして、影照は軽く会釈をして生徒会室を後にする。

 

『善吉よ、今日の予定はどうだ?』

『あー、めだかちゃんはこのオーケストラ部の案件をー』

 

 

そういや、今日は冥利が直々に違反者の取り締まりを行うって話だったな。

雑用のしわ寄せが一気に俺の方に来るんだろうな。全く嫌になるぜ。

ーーそうだ、空洞にも手伝わせよう。

 

 

 

ったく、影兄は何であんなすっとろい真似をしてんだか。

生徒会を乗っ取りたいなら、四の五の言わずにぶっ潰せばいいじゃねぇか。

日之影空洞、百町破魔矢、そして影兄。こんだけの面子が揃えば、あの化け物生徒会長なんて一瞬だろうが。

 

雲仙冥利はブツブツと少し不機嫌そうに呟きながら、早足で廊下を進む。

向かう先はオーケストラ部が普段練習時に使用している音楽室だ。

ここ最近、音楽室というか校舎の老朽化が進んだためか、オーケストラ部の練習時の音が周囲に響き、苦情の声が上がっている。

何回か注意をしたのだが、そこの部長は話をのらりくらりとかわすだけで全く改善の余地が見られない。

よって風紀委員長直々に忠告しに行くことになった。

 

音楽室までの距離はまだ大分あるにも関わらず、オーケストラ部の演奏が聞こえる。

「あっちゃー、こりゃ処刑確定だな」

冥利は歩きながら携帯で保健室に連絡を取る。

 

「ーっつぅことで、あと十分くらいしたら音楽室に保健委員の人たちを寄越してよ。んじゃ、よろしく」

 

通話終了のボタンを押す。それと同時に冥利は音楽室前に到着した。

もうここまで来ると、演奏の音が脳を直接揺らす程の音量で響いている。

「さほど上手な訳でもないくせに、出張ってんじゃねぇよ」

冥利は意図的に大きな音が鳴るようにと、乱雑に音楽室の扉を開ける。

乱雑に開かれた扉がたてた大きな音は、オーケストラ部の演奏を中断させるには十分だった。

「はーい、ちゅうもーく」

冥利は手を数回叩き部員達の目を自分に集める。

「今日はみなさんに殺し合いをしてもらいまーす」

部員達は何が起きたのかと、状況を飲み込めずにザワザワとし始める。

「・・・って違う違う違う!ダッメだなー、俺って本当ににダメだ!大人数を前にするとついつい殺し合いをさせたくなっちまうぜ」

「じゃ、改めまして、僕ちゃん風紀委員長の雲仙冥利でーす。あなたたちの発する騒音(・・)に対する苦情(チクリ)の声が多数上がっているので適切な処理を取らせていただきまーっす」

 

俄然ざわつく部員達、それもそうだろう本来冥利のように十三組(アブノーマル)に所属する人たちは登校義務が課せられてないので、冥利のような人間はとても珍しいのだ。

同じく十三組なのに毎日登校している生徒会長黒神めだかはまた別の意味で珍しい。

(ヤベぇっすよ部長!風紀委員に目をつけられるとか終わってますよ俺ら!)

(そうは言っても所詮子供だろ?今まで通りテキトーに言いくるめてお引き取り願おうぜ!)

オーケストラ部の部長が笑顔で冥利に歩み寄る。

「ちょっといいかな、雲仙くん」

冥利は何食わぬ顔で振り向く。

「オーケストラというのはそもそも大音量で演奏するものなんだよ。だからある程度のことは仕方の無いことなんだ。これからは気をつけるから、今日のとこは勘弁してくれないかな?あ、そういえばアメ玉があったな、それもお土産にーー」

 

ーーボギンッ!

 

いつもならば、この部長はまた話をうやむやに解決できたかもしれない。

普通のやつが注意をしたならば、いつものように普通のやつは肩すかしを食らっていたかもしれない。

しかし、今日は普通じゃなかった。異常の中の異常な日であった。冥利に出会ってしまったから。

 

「ボギンって・・・ええェッ!?」

冥利の肩においた部長の腕が、ありえない方向にねじ曲がっていた。

折れ曲がっている箇所からは赤色が滲み始め、その腕は人間本来の肌色から、赤黒く変色し始める。

「あああああアァあアァァアア!!!」

徐々に、激しく襲ってくる痛みに部長は叫び声を上げながらその場にうずくまる。

 

もう部員の誰も喋っていなかった、話すことができなかった。

目の前で起きている光景をただ見ることだけしかできなかった。

冥利はその場にうずくまる部長を上から見下す。

「人の体に気安く触ってんじゃねぇよボケ。」

そして冥利はそのうずくまり小さくなった体を蹴飛ばす。

部長は成す術もなく、ゴロゴロと床を転がる。

「風紀委員会に賄賂や言い訳が通用すると思ってんじゃねーぞアホが!俺が来た時点でテメーラは死刑確定なんだよ!」

「俺が殺戮してやるから迅速に死亡しろ!」




これで一応書き溜め分は出し終わりました。
次の更新はまた来月とかになるかもです(笑)

次もよろしくお願いします
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