陰を照らした時に出来る陰   作:俺の眼鏡

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あー、一応滑り止めには受かりました(笑)

てな訳で、upします。


20箱目 マリーシア

全く、正しいのは私のはずなのに。

何であんなふざけた格好の生徒会長のめだかさんに私が翻弄されなければならないのでしょうか。

おかげで、呼子さんに少し怒られちゃったし・・・

わかってますよ、彼女が本当に「他人」の為に動いている優しい人だということくらい。

でも、だったらなおさら・・・・・・

 

風紀委員の鬼瀬針金は、最近仕事の調子が良くないと呼子副会長に注意され、今現在業務中の冥利の仕事ぶりを見学してこいと言われた。

あとなぜかついでにタオルも持っていけ、ということで

タオルを持って冥利のいる音楽室に向かっている最中だ。

 

鬼瀬はブツブツと呟きながら、歩みを進める。そしてつぎの角を左にー

 

「やっほー鬼瀬☆タオル抱えてどこいくの?」

「おぉ、鬼瀬同級生ではないか。奇遇だな、どこへ行く?」

サイアクだ、サイアクの二人に出くわしてしまった!

不知火半袖さんと黒神めだかさん、この二人のせいで最近の私の業務の波が乱れているというのに!

 

胸元のザックリ開いた、どこかの鼓笛隊のコスプレをした生徒会長の黒神めだかと

廊下でお菓子を頬張っている不知火がいた。

 

「はぁ、私は音楽室に向かう予定ですが何か?」

「ほぅ、これまた奇遇だな。実は私たちも音楽室へ向かう途中なのだ」

もういやです、こんな奇遇。あんまり関わりたくないのに。

 

 

「いやぁ、善吉くん本当に助かるよ」

「いえいえ些細無先輩、これぐらいの力仕事なら朝飯前ですよ」

影照は今、風紀委員会の資料室の整理を行っていた。

箱庭学園という、奇人揃いのこの学園の平和を維持するために風紀委員は学園から条件付き武装が認められている。

しかし、同時にそれを上手く正しく扱うために、結構な資料が届いたりするので、風紀委員会には専用の資料室が設けられていた。

 

「しっかし、先輩。何でこんな雑用をしてるんですか?」

「いやぁ、空洞がいたら彼にも手伝わせたけど、今あいつは書類のまとめ処理してくれてるからな」

「?、いやいや、何で元委員長の先輩がこんな雑用してるんすか?って話ですよ」

悪意のない質問なだけに、けっこう心にくるな。

なんかこう、あれだな、そう、泣きたい。

影照は少し苦しそうに胸を押さえた。善吉はそれを不思議そうに見つめる。

「大人にもいろいろあるのさ」

「一つしか年変わんないじゃないですか」

 

そして黙々と作業を続ける二人。

 

そういえば冥利に頼まれてたなぁ。

『生徒会の制裁』とかなんとか。

おそらく冥利は生徒会と戦争する気なのだろう。

その手始めとして『役員の抹殺』。あの完璧生徒会長さんの心からへし折ろうというあいつの作戦は、なんともまぁ、いやらしいな。

だが、嫌いじゃない(・・・・・・)

 

『影兄がやらないんだったら、俺が先にあいつらを潰してやんよ』

数日前、冥利が影照に言った言葉だ。

黒神めだか、日之影空洞を見つけることの出来た人。

でも冥利に倒されたら、それまでだったということだ。

 

確かに黒神めだかは、空洞に匹敵するほどの強さを持っている。

はっきり言って、冥利じゃ身体的にまだ未熟だ。でも、精神面だけで言うなら冥利の方が数段上。

この勝負で黒神めだかを計る。

 

その為にまずー

「善吉くん」

「はい?何すか先輩?こっちはもう少しかかりそうですよ」

「それはもうちょっと後で良いかな。それよりさー」

 

「ー俺と勝負しようよ」

 

 

ここは音楽室。

机やイスはボロボロに砕けちれ、黒板のあちこちに大きな亀裂が入っている。

もちろん壁にも亀裂が入っていて、窓ガラスはすべてが割れており、床のあちこちにガラスが散乱している。

毎日ここで練習をしていたオーケストラ部の部員は、全員床に伏せており、身体中傷だらけの血塗れ。

微かなうめき声しか上げることができないようだ。

 

そんな地獄絵図に、雲仙冥利は立っていた。

 

「おっ、鬼瀬ちゃんじゃん☆タオル持ってきてくれてサンキュー」

冥利は鬼瀬の手からタオルをとると、手や顔についた返り血を拭い始める。

この部屋に入ってきた鬼瀬、めだか、不知火はこの部屋の惨状に驚きを隠せない。

 

「んで、黒神めだか、何でテメーがここにいるわけ?」

冥利は返り血を拭い終えると、タオルを自らの後方に放り捨てる。

「・・・どうやらお互いの仕事がバッティングしてしまったようだが、貴様との初めての対話がこんな形になってしまい、残念だ。雲仙二年生」

めだかはあたりを見渡す。

「この光景からして、どう見てもやり過ぎだな。ここまでする必要がどこにあった?」

「ケケケ、安心しなよ。保健室には予め連絡済みだ」

「・・・・・・そういう問題ではない」

「ケケケ!テメーの事だ。どーせ話せばわかるとか、事情があるとかで平和的解決を目論んでいたんだろ?」

 

「甘えんだよ!話してわかるか!事情なんか知るか!ルールを破った奴が罰を受けるのは当たり前だろーが!それをボカしちまえば事情さえありゃ許してもらえるっつって同じこと繰り返すに決まってんだろーがよ!!」

冥利がめだかの目前まで近づく。

「やり過ぎなきゃ正義じゃねえ!それが俺のポリシーだ!!」

 

「やっ、やめてください委員長!今、生徒会と敵対する理由なんてないじゃないですか!これ以上の事は一人の風紀委員として見逃せません!」

鬼瀬は叫んだ。

かつて鬼瀬は、冥利のポリシーに賛同して風紀委員会に入った。しかし、この惨状は鬼瀬にとってやり過ぎ過ぎた(・・・・・・・)

そんな鬼瀬を見て冥利は笑う。

「俺は好きだぜ、鬼瀬ちゃんのそーゆートコ☆」

 

「ところで黒神、人間は生まれながらにして善か悪、どっちだと思う?」

「無論、生まれながらにして悪い人間などいない。だから貴様もきっとー」

「あー、もういいよ。テメーのその上から目線性善説なんか別に聞きたくねーし。まぁこれではっきりした、俺のスタイルはお前とまったく逆の見下し性悪説」

 

そういって冥利は後方にある、背もたれが折れ曲がったイスに腰掛ける。

「テメーが花を育てる側なら、俺は芽を摘む側なんだよ。つまり俺とテメーは鏡のように真逆なんだ」

「私と貴様は似たようでいて、真逆ということか。なるほど、言い得て妙だな。しかしそれも話し合いで解決できる事であろう。変わらず貴様と敵対する理由はない」

 

冥利は身体を少し前に倒し、両膝に肘をつく。

そこからめだかの顔を見上げるでもなく、ただ下を向きため息を吐いた。

「ケケケ、とことん上からだな黒神!・・・じゃあ、こういうのはどうだ?」

「?」

「確かテメーの幼なじみで、庶務のヤツ。名前は善吉とか言ったっけなぁ?」

「・・・それがどうした?」

「今ごろウチの役員、元委員長の影照の兄貴が丁寧におもてなしをしてるんじゃないかなあ?ケケケケッ!」

「っ!?」

 

冥利の言葉を聞いためだかは、即座に教室から出ようと動いた。

しかし、そうやすやすと見逃す冥利でもない。

「逃がすかよぉ!」

冥利の手から何かが高速で投げ出される。

その何かは、勢いよくめだかの後頭部と腰を打ち抜いた。

しかしー

 

「チッ、アイツは忍者かよ」

その場には、先ほどまでめだかが着ていた服だけが落ちていた。

「あ、あの、委員長」

鬼瀬が冥利に恐る恐る近づき、尋ねる。

「影照さんでいいんですか?人吉善吉は体育系のほとんどの部活を荒らし回っていて、腕っぷしなら彼は相当優秀なはずですよ?」

 

「あひゃひゃひゃ☆」

その言葉を聞いた不知火が突然笑い始める。

「な、何がおかしいんですか!?」

「いやいや、鬼瀬。普通(ノーマル)なのに何故、些細無先輩が一年間風紀委員長を務めあげ、過去最高に校則違反者を出さなかったのか、風紀委員なのに知らないのかな?」

過去最高(・・・・)!?・・・それは、雲仙委員長がー」

「違うな鬼瀬ちゃん」

冥利は、脱ぎ捨てられためだかの服で靴を拭いていた。

 

「ところで、鍋島猫美を知ってるか?あの柔道部元主将で反則王の異名を持つ」

「え?あ、はい」

「彼女はルール(・・・)の裏をかくのが誰よりも上手かった。影兄もそれとほぼ同じなんだが、影兄は()の裏をかくのが誰よりも上手かったんだ」

「・・・・・・どういうことですか?」

鬼瀬は何が何だかよく分からないといった表情をしていた。

 

「つまりね鬼瀬、バレなきゃ反則(ファウル)じゃないんだよ。違反者数なんて実際のところ先輩は偽装して少なく教員に報告してたんだよ☆」

「え!?」

「でも、先輩の凄いところはここからで。先輩は約半年間でその偽装工作で減らした違反者数と同じ人数に、人知れず、徐々に今度は偽装無しで現実のものに変えたんだ」

靴を拭き終えた冥利が立ち上がる。

「職員の裏をかき、生徒の裏をかき、役員の裏をかき、徐々に嘘と本当をごちゃ混ぜにする。そうやって影兄は生きてきた、まるでこの数字やデータで支配されてる現代に喧嘩を売るように」

 

鬼瀬は握っていた手錠が、自分の手汗で濡れて不快感を感じていた。

そんなの、そんな話を聞いてしまうと、自分は何が「正義」なのかが分からなくなりそうだった。

「で、でも結局は影照さんが強いかどうかなんてー」

「大丈夫だ、影兄は強くはないけど、腕立てふせなんか十回がギリギリなヤツだけど、どんなときでも相手の一枚上をいく」

鬼瀬は手を拭った。

 

 

 

影照は深々とイスに座り、その場に膝をついている善吉を見おろす。

密室になっている資料室は煌々とライトが光っているのだが、まだ部屋の隅は薄暗くなんだか不思議な空気が流れていた。

 

「ふふん、俺の勝ちだね。善吉くん」

「・・・クッ」

 

影照はそのまま足を組んだ。

 

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