「おい、起きろ冥加!!もう8時だ、遅刻するぞ!!」
カーテンの開く音が聞こえる。それと同時に
その明りが私の心地よい睡眠の邪魔をする。掛け布団を顔の上まであげた。
「起きなさぁい!!」
うぅぅ・・・、なんだろう。私の掛け布団が少し引っ張られてる感じがする。
「ぅぅうんっ!!」
「のわっ!!」
掛け布団を元の位置まで戻すために、私は思い切り布団を引っ張った。
「・・・・・・んにゅ」
何だろう、私の上に何かが乗っかってる。
「イテテ・・・」
「ぁ・・・1906(影兄)」
なんだか今日はいい日になりそうな気がした。
☆
「574215886523817181216(影兄、朝から大胆・・・)」
「お前が急に引っ張ったからだ、もうちょっとスッと起きられないものかな」
影兄は私の向かいの椅子に座って少しためいきを吐く。
そして、当の私は影兄が作ってくれた朝食を食べている。
影兄はほんとに料理がうまい。今、私の目の前にあるのは、パンと目玉焼き、コーンスープにサラダといったごく簡単なものだが、寝起きの体には実にありがたい量の食事だ。
何より、私や冥利の体のことを一番に考えて食事を作ってくれているのだろうと、そういう気遣いが感じられる。
「どうした冥加?朝からニコニコして、いい夢でも見たのか?」
「8459621376432131810(ううん、何でもないよ)」
パンの上にバターを塗り、塩コショウの振りかかった目玉焼きをその上に乗せて食べる。
うん、おいしい。半熟に焼かれている黄身がパンの上に染みていく。
「んで、今日も学校行かないんだな」
「075431028970134675(うん、だって今日影兄は補習でしょ?)」
「まぁ、そうだな。帰るのが少し遅くなるかも」
そういって影兄は席を立って、足元にあったバックを手に取った。
「留守番よろしくな、冥加」
「548803647211569(行ってらっしゃい)」
影兄は私にちょっと微笑みかけて部屋を出た。
あぁ・・・本当に影兄はかっこいい。いつからだろう、私が影兄を意識し始めたのは・・・
小さい頃、まったく友達ができずに、一人でテレビばかりを見ていたあの頃からだろうか。
この不可解な能力のせいで、周りに迷惑ばかりかけていたあの頃からだろうか。
母さんや父さんがいなくなったあの頃、変なブサイクと戦っていたときに助けてもらったあの頃・・・
いつからだろうか。
たぶん、いつからでもなく。最初からだろう。
私はきっと、生まれたころから影兄が好きなんだ。
生まれたころからずっと、私の一番そばにいてくれた影兄のことが・・・・・・
☆
ふう、さて。
朝食も食べ終わり、私の一日が始まる。まず私が行うことは、そう。
ーガチャ
ドアノブをひねって前に押し、影兄の部屋に入る。
影兄は結構適当な性格をしているのに、部屋はきちんと片付いている。
逆に冥利の部屋は、あいつの性格に似合わず、結構荒れている。よくわからない工具や、「火薬」の入った袋が落ちていたりする。
私の部屋はたまに影兄が掃除してくれているので、なかなか片付いている。
さてまず、私の掃除をする場所は・・・・・・
・ベッドの下 ・机の引き出し ・っていうか、死角を隅々まで
といったところだろう。
なんでこんなことをしているのか、そんなの決まってる。
「
長年の私の調査によると、影兄の好みの女性はスレンダーなモデルタイプだ。ちなみに冥利は巨乳。
そんな影兄の好みを、私は「胸と身長が控えめな女の子」にする為日々奮闘中なのである。
さいきん影兄の周りには、「古賀いたみ」とか「黒神めだか」とか「名瀬夭歌」とか、とにかく悪い虫がたくさんいるために、今のうちに調教しなくてはならない。
つまり、影兄の部屋中のムフフ本を取り換えよう・・・掃除をしようというわけだ。
しかし、相手はあの影兄だ。
「84595540(・・・無いなぁ)」
人の裏をかきながら生きてきたあの影兄だ。
ベッドの下や机の引き出しが出てくるのは、軽めのムフフ本ばかり・・・
それを「○学生、淫らな【自主規制】生活」というタイトルの本に差し替える。
ちがう、私が探しているのはこんな軽いものではない。
絶対どこかに潜んでいるはずなんだ。影兄の「おとり作戦」に引っかかるほど私は甘くない!
ここで諦めたら、いつも通りになってしまい、ますます影兄の趣味が悪い方向(自分主観)に変わっていってしまう。
・・・でも、本当にもう探すあてがない。
床下も天井裏も机の引き出しもベッドの下も上も中も、隅々まで捜したというのに・・・・・・
まさか、影兄は一般的な男子高校生より性的な欲求が極端に低いのだろうか。それともーー
ーー男性が・・・好き!?
☆
「いっきしっ!!」
「どうしましたテル君?」
「お前にしちゃ珍しいな、風邪か?バカのくせに」
「んだと空洞、オラ!!」
「おぉ!?事実じゃねぇか!!」
「はぁ・・・もう勝手にしてください・・・・・・」
☆
確かに、影兄がいつも一緒にいる人は
日之影空洞、百町破魔矢と男性ばかりだ。あまり女性と会話しているところを見かけるわけじゃない。
なんてことだ、盲点だった。影兄が男性スキーならば見つかるわけがないじゃないか・・・・・・
・・・い、嫌だ。そんなの認めない!!
こうなったら影兄の部屋に一つや二つ、穴をあける勢いで、何が何でもムフフ本を見つけてみせる!!
一旦ドアの付近まで行き、部屋の全体像を把握しておくことにした。
ドアは部屋の右隅あたりに位置し、ドアを開くと自分の左側に空間が広がる形になっている。
そして、ドアのある壁とは向かい側の壁に窓があり、その下に影兄のシングルベッドがある。先ほど、影兄の枕にうずくまってパタパタしてしまったのでシーツがシワシワだ。後でちゃんと直しておこう。
あとは、今の私の左側に勉強机。その上にマンガ本や辞書などが並んでいる。
私が言うのもなんだが、机の上にマンガ本がのっていたりしたら、勉強に身が入らないのでは?
辞書なんてケースに入った状態で置いてある。辞書をよく使う人ならば、あらかじめ辞書を出しておいて使いやすいようにするだろう。
つまり、影兄は辞書なんて全然使ってないということになる。
・・・ふぅ、どうしたものか。
腕を組んで考えてみても、全然ひらめきがこない。急にピーンとくるのはアニメやマンガの中の名探偵だけのようだ。
木を隠すのなら森の中、本を隠すのは本棚の中。と偉い人は言っていたらしい。
もう一度机の上の本棚を見てみる。しかし、どこもおかしな点はない。
辞書のケースの中も確認したが・・・どうやら違ったようだ。そもそも、ムフフ本のサイズを考えると隠せるサイズは恐竜辞典とかのケースじゃないと無理な気がする。
・・・影兄は本当に、男性がーー
ーち、違う!思い切り頭を振り邪念を払う。
・・・・・・待てよ。
そもそも、あの影兄がムフフ本なんていうわかりやすい物的証拠を自分の部屋に残すのか?
もっと隠ぺいに優れたモノ。
・・・・・・たとえば、パソコン。
しかし、影兄はパソコンを持っていない。必要な時は、冥利に貸してもらうのが基本だ。
あとはー
ー影兄だけしか立ち入らない場所。
それは、
確かに、ここはいつのまにか影兄しか入らないような場所になっていた。
私が変に入ったりしたら食器なんかを壊してしまいそうだし、冥利なんてそもそもおやつを取りに来ること以外でキッチンには入らない。
・・・考えたな。ここに隠されたりしたら、私は下手に動くことはできない。
だがしかし、昔偉い人は言いました「恋する乙女は、不可能を可能にする」と。
影兄を正しき道に戻してあげるために、私は・・・がんばる。
☆
「冥加」
「・・・・・・・・・・436(はい)」
「言い訳を聞こうか」
床一面に散らばるお皿の破片。
そう、結局私は影兄のムフフ本探しには失敗したのだ。
今日は遅くなるって言ってた影兄は、いつもと変わらないくらいの時刻に帰ってきた。たぶんまたあの『
そして、今の状態・・・というわけだ。
いつもより顔が怖い影兄と、その目の前に正座をさせられる私。
うぅぅ・・・・・・嫌われちゃったかなぁ・・・・・・
「・・・・・・ヒッ・・・グスッ」
「・・・ハァ・・・ほら、冥加」
・・・なんだろう?影兄が私の手を引っ張り、立たせる。
そして、私の体をあらかた見渡し、服の裾なんかを払ってくれる。
「ん・・・、どこも怪我をしてないな?」
「・・・・・・ん」
「そうか、なら良い」
影兄は困ったように微笑んだ、私の頭をポンポンと叩く。
「ほら、ホウキと掃除機を持ってこい。片付けをするぞ」
「・・・・・・080780250275641(影兄一人で?)」
「・・・ふざけんな、お前もするんだよ」
こんな、私は影兄が大好きだ。
「あーあー、姉ちゃん。こんなに皿割っちゃって」
「お帰り、冥利」
「んだよ、また影兄は補習サボってきたのか?その調子だったら、卒業できねえぞ」
「なんか今日、空洞にも同じこと言われた気がする」
「あ、そういや影兄やっとスマホに変えたのか?」
「おぅ、お前のオススメしてたやつにしたよ。最近の技術力ってのはスゲェな」
「ケケケ、だろ?」
えっと、ホウキはどこにあったっけ?