陰を照らした時に出来る陰   作:俺の眼鏡

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25箱目 賭け

「うーん」

「どうしましたテル君?」

今日も変わらない一日、つまり日常。

いつものようにいつものメンバーでいつもの時間に昼食をとる。

今日は比較的暖かいほうで、上着を着ている生徒は少なかった。空洞は上着を羽織っておらず、その薄着がたくましい体のシルエットがあらわにしている。

 

「あれか?補習がたまり過ぎてヤバイってやつか?俺ら13組にはわからん苦労だな」

「そうですね、私たち13組には登校義務が課せられていないから補習なんてものはありませんものね」

「そもそも、お前は授業もあんまり出てないからな。あとあと大変だぞ」

「大丈夫だよ、そんときは冥利に養ってもらうから。それに、俺は家事全般が得意だからな」

「・・・・・・テル君、その返事はアウトです」

とまぁ、いつもと変わらない会話を繰り返す。

異常者が二人も居て、普通の日常ってのも頷けない。

「あと、俺が頭を捻らせてるのは補習のことではなくて・・・」

「それもそれでどうかと・・・・・・」

なんだこの異常(アブノーマル)二人は、俺をアホみたいに見やがって。

「あと三人なんだよ、三人」

空洞と破魔矢は二人して首を傾げる。

「対抗勢力の話だよ、覚えてないのか?」

やっと二人は「あぁ!」という表情をした。

よし決めたぞ、後でこいつらグーで殴っちゃおう。

 

「あ、それならばテル君」

一旦食事を止めて、箸を片手に構えたまま破魔矢は話し出す。

「それならちょうど良いお方がいらっしゃいますよ」

「なに?ホントか!?」

「・・・・・・はぁ、あなたのような人を世間では『朴念仁』と呼ぶのです」

知らない言葉だな、後で調べておこう。

「古賀いたみさんならどうでしょう?彼女なら手伝ってくれるはずです。そして、古賀さんがくるなら当然、名瀬の統括さんも入ってくれるでしょうね」

何故か自信有りげに話す破魔矢。

しかし影照は、彼の提案に素直に頷けなかった。

 

「んー・・・ハマ。古賀さんは入ってくれないよ」

「・・・・・・おや、どうしてでしょう?」

笑顔で首をかしげる破魔矢。

常に無表情の人間より、常に笑顔を崩さない人間のほうが怖い感じがする。

だいたい俺が見たことのあるマンガ本なんかでも、黒幕の人間は常に笑顔だし・・・おっと、話が逸れた。

 

「いや、そもそもは俺が悪いんだけど・・・たぶん俺、古賀さんには嫌われてると思うんだ」

「はい?」

ますます首をかしげる破魔矢。

ちなみに空洞は我関せずで飯をかっ喰らっている。

「テル君、どこまであなたは・・・・・・わかりました」

相変わらずの笑顔。

「じゃあ賭けをしましょう。古賀いたみさんが入ってくれるかどうか」

「・・・ん?」

「こういうのはやっぱり何かを賭けると面白くなったりしますからね」

あぁ、忘れてた。そういえばこいつは、百町破魔矢(・・・・・)だったな。

「そうですね、じゃあ私が勝ったら・・・テル君との友情の証として、あなたの右手の人差指を貰いましょう。最近見た映画で、人差指同士を合わせるというのは友達の証と言っていましたので」

ニコニコしながら話す。どこまで本気で言ってるのだろうか、たぶん全部本気だろうが。

「いやぁさすがハマ、考え方が異常(おかしい)ね。でも、面白そうだ。最近の日常に飽き飽きしてたところだしな」

 

「では、テル君が賭けに勝った場合はどうします?」

「そうだなぁ・・・・・・じゃあ、十三組の十三人(サーティーンパーティー)の中で機械に一番詳しい人を紹介してよ」

「おや、それくらいでいいんですか?わかりました、ではこれで賭けは成立ですね」

 

 

 

はぁ・・・・・・、テル君は自分のことを全然わかっていません。

間違いなく古賀いたみさんはテル君に好意を寄せているはずです。

テル君は顔もそこまで悪くないですし、あれでもう少し勉強が出来ればもっとモテるのに・・・・・・いや、あの二枚目三枚目根性が抜けないと無理ですかね。

 

「さて、そういえば今日は十三組の十三人(サーティーンパーティー)は理事長に招集されていましたね。ま、おとなしくその招集に乗るのは表の六人(フロントシックス)だけでしょうが」

 

十三組の十三人(サーティーンパーティー)は古賀さんや統括さんを含む表の六人(フロントシックス)と、私の属する裏の六人(プラスシックス)という二つのグループにわかれてます。

あぁ、ちなみに雲仙君はオンリーワンですからこの二つのどちらにも属してませんね。

まぁ古賀さんを今探している私からすれば、今回の招集は都合のいいものです。さっそく理事長室に行ってみましょう。

 

(・・・あれは)

破魔矢の向かいから黒神めだかが歩いてくる。

たしか、この廊下の先に通じているのは理事長室だけだったはず、彼女も何か理事長さんに用事でもあったのでしょうか。

 

「こんにちは、生徒会長さん」

まぁ、別にここで争う必要もありません。一度お話をしてみたかったのもありますし、適当に探ってみましょう。

「ふむ、ここではあまり見かけん顔だな。制服も改造しすぎて箱庭学園の生徒かどうかも分かりづらい。すまない、名前を教えてもらえないだろうか」

「申し遅れました、私、二年十三組の百町破魔矢。現在は十三組の十三人(サーティーンパーティー)に所属しています。仲よくしてね」

 

ピクリとめだかの眉が上がる。

なるほど、彼女はフラスコ計画(・・・・・・)の件で何か呼ばれていたようですね。

「そうか、貴様が百町二年生か。些細無二年生と親しくしていると噂の人だな。よろしく、私は黒神めだかだ」

そう言ってめだかは手を差し出した。そして、私はその手を握る。

いわゆる握手と呼ばれる行為ですね。

「つかぬ事を聞くが、十三組の十三人(サーティーンパーティー)と呼ばれる面々は先ほど理事長室に六人ほどいたぞ。百町二年生は良かったのか?」

「彼に従う義理などありませんからね。それでは失礼します」

「ふむ、些細無二年生にもよろしく伝えてくれ」

そう言って二人はすれ違うように別れる。

 

ふふふ、黒神めだか。さすがの人物のようです。

何度か彼女に「初恋(ラヴ)」を突き刺そうかとしましたが、全て牽制されてしまいました。

まぁ、突き刺したところで彼女に効果があるかどうかもわかりませんし、女性と傷つけあうなどもってのほかですからね。

 

 

「理事長室、到着です」

私の今回の目的は古賀さんとお話をすることですからね。表の六人(フロントシックス)の方々と、そんなに事を荒立たせずにすむでしょう。

扉を二回ほど叩き、きちんと挨拶をして部屋に入る。

「こんにちは理事長さん、そして表の六人(フロントシックス)のみなさん」

しかし、見たところ部屋にいたのは理事長さんだけ。

・・・・・・まぁ、それでも気配がバレバレですよ。表の六人(フロントシックス)さん達はかくれんぼがマイブームなのでしょうか。

「いやはや、これは驚いた。百町君、どうして君がここに?」

箱庭学園理事長、なんでも不知火家の人間だとか。

というか自分で招集しておいて、「どうしてここに?」は失礼ではないでしょうか。

「今日は少しお話をしたい人が・・・っと、もう皆さん出てきていいですよ。私はかくれんぼをしに来たわけじゃありませんから。やるとしても鬼はきちんとじゃんけんで決めましょう」

 

そう言った瞬間、理事長の背後に六人の生徒が現れて、並ぶ。

その六人の顔が、みんなどこかやるせない表情になっている。

「フフフ、これをかくれんぼと言われてしまっては、流石に異常(バケモノ)の君達でもショックを受けてしまいますか」

楽しそうに笑う理事長。

 

「そういえば、誰かに用事があると言っていましたね、百町君」

「はい、なので私は別に表の六人(フロントシックス)の皆さんと喧嘩をしに来たわけでわありませんので安心してください」

 

ーーシュッ!!

 

「おいおい、自分で言ってるそばから戦闘態勢か?あ?その弓矢にかけようとしてる手をこれ以上動かすとお前の顔を振りぬくぞ」

目前に拳が据えられる。その速度は一瞬で、瞬きをする間もなく鼻先に拳を置かれた。

あまりの早さ(・・)に、その風圧が破魔矢の髪を揺らす。

「ふふふ、棘毛布(ハードラッピング)高千穂(たかちほ)仕種(しぐさ)さんですね。その反射神経(・・・・)、お見事です。でも、まだまだのようですね。・・・あなたはその拳を振りぬけますか?」

「・・・あ?・・・かっ、はっ・・・・・・!?」

 

なぜか、攻撃をしてきた高千穂の足元に弓矢が突き刺さっていた。

「・・・な・・・なん・・・で・・・・・・?」

「反射神経っていうのは、あなたが認識しないと発動しないものですよね?だったら、あなたの裏をかく(・・・・)だけで済む話です」

こんなところでテル君が役に立つとは、こんどお礼を言わないといけませんね。

 

ふと周りを見渡すと、全員が臨戦態勢に入っていた。

刀を抜いている人、手から電気を発している人、拳を構えている人、仮面や包帯で顔を覆っていて表情が見えない人たち。

「落ち着いてください。私はただ古賀いたみさんに話があっただけですから」

指をパチンと鳴らす。

すると高千穂に刺さっていた弓矢は霧散し、そのまま彼はその場に倒れこみ、必死に酸素を求めて肩を大きく揺らす。

 

「え・・・わたし?」

「はい、古賀いたみさん。あなたに話があってきました」

 

そう言って、ニコッと微笑んだ。

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