やあやあ、僕だよ。
みんな大好き安心院さんだ。親しみをこめて
実にひと月ぶりの再会だね。ん?いや、こっちの話だ。
些細無影照くん、君が球磨川くんの言ってた
ふふふ、君には驚かされてばかりだよ。球磨川くん同様、僕の興味を実にくすぐるね。
そう言えば昔、球磨川くんがこの箱庭学園に来る前の話だ。
水槽学園での話だね、君も一度は聞いたことがあるだろう?あの名門の水槽学園のことだよ。
そこにも一人、球磨川くんのお目にかかった娘が居てね。
彼女は『
まぁ、この程度のスキルじゃ1京2858兆0519億6763万3865個っぽっちのスキルを持つ僕を倒すことはできないんだけどね?
なのにどうして球磨川くんがそんな彼女を見染めたのか?
それは、彼女の『人格』に惹かれるものがあったんだろう。
僕もね、そんな彼女のことが知りたくて、ちょっと柄にもなくちょっかいをかけちゃったんだ。
ん?あはは、そんな顔をするなよ。
別に危ないことはしてないよ、毎晩毎晩球磨川くんの枕もとに立っていただけだよ。
・・・・・・まぁ、君に話しても分からないよね?ごめんごめん。
話を戻そう。
僕はそんな彼女にちょっかいを出していた時に気づいたんだ。
確かに彼女のスキルは恐れるに足らないんだ、だけど彼女といざ戦うってなる時が来たら・・・少しだけ厄介かなって思ったんだ。
何というか、戦い方というか、心意気というか、とにかく『人格』が僕との戦いにおいて厄介極まりないだろうと感じたのさ。
まぁ、結局何が言いたいのかというと・・・・・・
君もそういった人間なのかな?なんてね。
あの球磨川くんのお目にかかったんだ、しっかりと自分の全てをさらけ出しなよ。
僕も自分の首を絞めることになるだろうけど、君の全てをさらけ出させるために、少しながらお手伝いさせてもらうよ?
それじゃあ・・・・・・行ってらっしゃい。
☆
会計戦はグラウンドで行うらしいな。
競技名は『毒蛇の巣窟』とかなんとか。俺、虫とか爬虫類とか両生類とかすごく苦手なんですけど。
「些細無二年生、つかぬことをお伺いしますが・・・人間は生まれながらに善か悪か、どちらだと思いますか?」
「どうしたんだ急に?・・・・・・そういえば昔、冥利にも同じことを聞かれた気がするな」
俺はその時、なんて答えただろうか。
「・・・・・・人間は生まれながらにして
「それは・・・そうですが・・・・・・」
なんだか会長さんは腑に落ちないようだ。
そんな話をしてると、会場だと思われるグラウンドが見えてきた。
「それでは皆々様、右手をご覧ください」
融通は右手を水平に差し出す。
「縦十メートル×横十メートル×深さ十メートル この深き闇こそが生徒会戦挙会計戦の舞台となりましてございます」
そう言った融通の右手の方向には、地面が大きく立方体に抉りぬかれていた。
「えーと融通くん、僕はこの大穴の底で球磨川さんと戦うのかな?」
「いえいえお兄さん、どうしてもとおっしゃるのならそれも考慮致しますが、わたくしめと致しましてはあまりお勧めできません」
気になっただろう古賀さんが、その大穴の底を覗いてみた。
「なっ・・・へっっ、蛇ぃいっ!?」
「はい、蛇ーー正確にはトカゲ目クサリヘビ科のハブにございます。もちろんあの猛毒を持つ種類で、噛まれれば命の保証はありません」
ヤバイヤバイ、何がヤバイって?そんなもん・・・・・・マジヤバイに決まってんじゃないか!?
一匹でも気持ち悪いのに、なんだよあの量。いま沖縄にハブ残って無いんじゃないかってくらいいるじゃんか。
「心配はしないでください、この穴の底で戦ってもらおうとは言ってはいないのですから。おやおや、どうやらちょうどよいタイミングのようですよ」
そう言った融通君の目線の先、選挙委員会の役員と思われる数人が、あの穴にちょうどハマるかどうかという金網を運んできた。
そして案の定、その金網が穴にセットされる。
「決選舞台『毒蛇の巣窟』、これにて完成にございます」
・・・・・・よく見ると、金網は立方体に抉りぬかれた大穴の角に立っているポールにはめ込んだだけで、固定なんかがされてないようだ。
おそらくこの金網の上でバトルするのだろうが、これでは動けば動いた分だけ蛇のうごめく底の方へ下降してしまう。
「融通くん、これどうすんの?」
「はい。ルールを説明させていただきますと、些細無様が腕に巻いている会計職の腕章を球磨川様が奪えば球磨川様の勝利。それを守り抜き、球磨川様に『まいった』の一言を言わせれば些細無様の勝利となります。当然、戦ってる間に金網は沈んでいきますので注意してください」
「『両方とも』『蛇に噛まれちゃったら?』」
「その時は両者失格の引き分けとなりますので、悪しからずお願いいたします」
制限時間無しのこの勝負、はっきりいって勝てる気がしないな。
いや、相手があの球磨川である以上、俺が負けることはあり得ないんだが・・・・・・
「『ふーん』『困ったなー』『俺って小さい頃』『蛇に噛まれて死にそうになったトラウマがあった気がするからなー』『恐いなー』」
そう言って躊躇なく球磨川は金網に一歩踏み出す。
・・・・・・あの恐いもの知らずが。あの球磨川を降参させるなんて出来るのだろうか?
「・・・・・・ねぇ、些細無くん。今から棄権するのも、アリだと私は思うんだけど」
「・・・古賀さん」
不安そうな古賀さんが、俺の片腕を掴んでいる。
「あのね、もう些細無くんの邪魔にはならないって決めてたけど・・・私は、私は些細無くんに棄権してほしい。些細無くんが会計戦をやるっていうのなら、私は全力で邪魔をしたい。なんだか・・・嫌な予感がするの」
古賀さんの掴んだ手の力が、だんだんと強くなっていく。
俺は古賀さんの掴んだ手の上に、もう片方の手をそっと乗せて、彼女のつらそうな顔をじっと見つめる。
「俺は古賀さんのことを邪魔だなんて思ったことは一度もないよ・・・そうだな、じゃあ俺が危険になったら邪魔しに来てくれるかな」
笑って古賀さんに返事をかえす。
「・・・・・・わかった」
なぜか目を合わせようとしない古賀さん。
・・・顔が赤いようだが、どうしたのだろうか?
というか、背後から迫る殺気に古賀さんの容体を確認する余裕がないんだが。
なんだろう、包帯少女と鉄球少女の殺気みたいなのを、こう、ヒシヒシと感じるな。
「頑張れよー、影兄ー」
そしてあんなに気の入ってない応援は初めてだ。
いつもとあまり変わらない雰囲気に、緊張が少しほぐれたところで・・・・・・
「じゃあ、行ってくるか」
金網に一歩を踏み出した。
「『遅いよ些細無くん』『まーいーや』『早速おっぱじめようよ!』」
不意を突くように球磨川が両手の螺子を突き刺そうと、影照の背後へ飛び込んでくる。
勢いよく球磨川が飛び上がったので金網が少しだけ沈む。
「っと!」
影照の右足が球磨川の顔面にはいる。
「『ぅぐっ!!』」
「俺は今、球磨川さん・・・あんたに集中している」
球磨川の体は吹き飛び、かなりの勢いで金網に叩きつけられた。
影照の黒眼の中心が、急に白く染まり始めた。
地面が大きく沈む。
「出たぜ、影兄の『真骨頂』だ」
「なんだそれ?やっぱりまだ十歳だからアニメかなんかに影響されたのか?」
「んだと名瀬、コラァ・・・・・・」
「ヤんのか?あ?」
なんだか場外がうるさいな。
「『
倒れている球磨川から目を離さない。
まるでボロ雑巾のように横たわっている球磨川。
しかし不思議だ、球磨川が相手だからなのだろう、罪悪感は全く感じない。
「『い』『ったーい』『うわー右腕が動かない!』『呼吸も何だか苦しいぞお』『鎖骨が折れて肺に突き刺さったかなー』『一生後遺症が残るなーこれは!』」
球磨川は、ブリッジをするように『ぐにゃぁ』っと立ち上がる。
相変わらず気持ちの悪い動きだ。確かに、見ているだけで心を折られそうだよ。
「『あーでも痛くなくなってきた?』『治る兆しかなー』『それとも壊死する兆候かなー』『ま』『どうでもいっか!』」
球磨川は落としている螺子を拾い上げ、もう一度突き刺そうと飛びかかってくる。
その姿勢は低く、確かにこちらの攻撃にはすぐ反応できそうだ。
だったらーー
ーグシャァッ!!
避けるでもなく、影照は向かってくる球磨川との距離を一気に詰める。
不意を喰らったのか、球磨川の喉元が影照の膝で抉られる。
そしてまた同じように、ボロ雑巾が金網に叩きつけられた。
さらに足元が沈む。
「おい、雲仙冥利」
「なんだよ」
「お前の兄貴は、あれほどの
名瀬はどんどん沈んでいく二人の姿を見下ろしながら、そう問いかける。
「・・・・・・影兄の『
どこか