「蝶ヶ崎さん。球磨川さんとテルくん、些細無くんの会計戦はどうなったと思いますか?」
破魔矢は江迎と志布志がこの駐車場から出ていくのを静かな瞳で眺めながら、蝶ヶ崎に問う。
その声や態度からは一切の殺意は感じられず、蝶ヶ崎は不可解な表情をする。
「さぁ・・・うちの大将がいつも通り負けてるんじゃないでしょうか?だからこうして我々が裏工作をしているわけですし」
「・・・私は、また違った結果が待ち構えてると思いますけどね」
江迎と志布志が見えなくなって、破魔矢は蝶ヶ崎のほうに向き直す。
やはりその瞳は静かで、口角が少し上がっている。
「その質問の意図がわかりませんが」
「いえいえ、ただの世間話です。私の親友のテルくんが、次はどんな楽しいことを教えてくれるのかなと思いまして」
破魔矢は弓矢をつがえる。
「それでは始めましょうか。ちょうど私も、最近分かった『
破魔矢の放った弓矢が勢いよく蝶ヶ崎に向かっていく。
しかし蝶ヶ崎はその弓矢を避けようとせず、その場をうごかない。
「『
弓矢は蝶ヶ崎に突き刺さろうとした瞬間、急に向きが変わり破魔矢に向かって飛んでいった。
破魔矢は指を鳴らし弓矢を霧散させる。
「蝶ヶ崎さんの
破魔矢は新たに弓矢をつがえる。
「驚きました、まさかたったこれだけの時間で私の能力を暴いてしまうとは」
蝶ヶ崎は破魔矢と一定の距離を保ちながら立ち回る。
緊張した空気に二人の足音が響く。
「ふむ、では攻め方を変えましょう」
急に破魔矢は矢先を真上に向け弓矢を放つ。
「私の
放たれた弓矢はコンクリートの天井に突き刺さり、轟音を響かせながら爆ぜ、大小様々なコンクリの塊が二人に降り注ぐ。
立ち込める砂煙で視界が悪くなる。
そんななか破魔矢は至極冷静に一つ一つを落ち着いてかわしていき、対する蝶ヶ崎は大きな塊に潰されて身動きを封じられないように、それだけを注意しながら避けているようだ。小さな塊はもろにあたっているはずだが、まるでダメージを受けているようには見えない。
ひとしきり塊は落ち切り、パラパラとした砂粒が落ちるだけになる。
「破魔矢さん、いったいあなたは何をなさったんですか?」
塊をかわし続けながらも、破魔矢から目を離さず一定の距離を保ち続けた蝶ヶ崎。
彼の意図が分からず、そんな質問を投げかけた。
「私は弓矢に、『憤り』の感情を体現させました。私が先ほど生まれて初めて覚えた、体の内側から爆発するかのような『憤り』の感情を」
破魔矢は服の裾を払う。
「これが私の
そして破魔矢は砂煙を切り裂くように、弓矢を三本一気に放つ。
「クッ・・・」
先ほどのように爆発されたらダメージはなくとも、一気に距離を詰められて動作を封じられるあの攻撃を喰らってしまうかもしれない。
蝶ヶ崎はその三本の弓矢をかわそうと後方に飛ぶ。
しかし、先ほどの爆発によって降ってきたコンクリートの塊が邪魔で上手く動くことができない。
「しまっ・・・!!」
うまくかわしきれず、一本の弓矢が真っ直ぐに蝶ヶ崎に向かっていった。
足元は塊にとられてしまっているので、どうあがいてもかわせそうにない。
「『
蝶ヶ崎は自らの持つ
すると一瞬にして向かってきた弓矢が、まったく別の場所の塊に突き刺さった。
「爆発しない・・・ということは、また違った種類の攻撃か?」
蝶ヶ崎はあたりを見渡す。砂煙が目に入りそうだったので、その目を細めた。
そして、違和感に気づく。
「・・・見失った」
自らの大きな過ちに思わず歯噛みする。
「こっちか!?」
空気の切り裂く音が右方向から聞こえる。
慌てて振り向き、その弓矢を『
しかし弓矢の向かってきた方向には誰もいなかった。
「ウグッ!?」
背中に鋭い痛みを感じる。
よく見てみると背中から鮮血がにじみ出ていた。
「今度はスキル無しの普通の攻撃だったか・・・・・・しかしこの程度」
一瞬の間に蝶ヶ崎の背中から弓矢は消え、傷口すらふさがっている。
「なるほど、自動的ではなく認識して発動するタイプのスキルですか。攻撃を認識すると体に触れる直前でほかの物体に攻撃を押し付け、攻撃を受けたと認識するとそのダメージを他に押し付ける。だからこそ私の不意を突いた攻撃は一度その身に受け止めてしまったのですね」
どこから現れたのか、いきなり蝶ヶ崎の背後に立っている破魔矢。
蝶ヶ崎はその身を強張らせ、背筋に汗をかき不快感を覚える。
「・・・いつの間に、と聞くのは野暮ですね」
蝶ヶ崎は視線だけを破魔矢に向ける。
「まぁ、だから何だという話です。私の
蝶ヶ崎は振り向く。そこにはもう破魔矢はおらず、砂煙が落ち着いて開けた視界が見えるだけであった。
「はぁ・・・私は私のポリシーに従って今まで戦ってきましたが、そんなことを言ってられるほど私も悠長な人間でもありません」
蝶ヶ崎の声色が次第に暗くなっていき、目が血走り始めている。
体は小刻みに震え、体中から怒りのオーラが噴き出し始めている。
「ってかさっきから何なんだよ!真正面からぶつかってこずに、影から狡い真似ばっかりしやがってよぉ!!俺をおちょくってんのか?ああ!?」
そんな蝶ヶ崎の様子をコンクリの影から破魔矢は見ていた。
「・・・・・・あれは、一体?」
一目見ただけでも分かる。蝶ヶ崎蛾々丸が激しく怒っているのだ。
乱雑に物にあたっている彼の様子を見ていると、先ほどの蝶ヶ崎とはまるで別人のようだ。
「しかしまずいな、あそこまで感情を爆発されると・・・」
破魔矢の『
しかしその相手の感情が、もう何者にも付け入る隙間がなかった場合。
だから、「恋」をしている相手には「
「この場合は、もっと彼の感情を上塗りして自爆させるのを狙うか、まったく逆の感情をぶつけ相手を落ち着かせたところで『
破魔矢は新たに弓矢をつがえる。
「まぁ、このままグダグダしていると空洞くんが来ちゃうかもしれません。ふふふ、来ちゃうでしょうね、彼のことですし」
この状況下で破魔矢は微笑む。
破魔矢は蝶ヶ崎に向き直り、弓を引き絞る。
その口元からは笑顔は消えて、心を落ち着かせるためか一息吐き出す。
「早めに決着をつけましょう・・・彼の、感情のバロメーターを振り切らせる」
矢先を蝶ヶ崎の膝に定める。そして、ギリギリまで絃を引いて・・・・・・
「勝負を急いだね、破魔矢くん」
「っ・・・!?」
焦って破魔矢は手を放してしまう。
急に、蝶ヶ崎がこっちを振り向いたのだ。彼の視線が間違いなく、破魔矢の矢先をとらえた。
乱れた矢先は蝶ヶ崎の額めがけて飛んでいく。
「フフフ、集中力が乱れてなお急所に弓矢が向かってくるあたり、やっぱテメェは
(クッ・・・返される!?)
慌てて破魔矢は蝶ヶ崎の対角線上から外れようと駆け出す。
しかし、そんな心配をよそに蝶ヶ崎はそのまま動かず手を広げる。その表情は狡猾な笑みを浮かべており、額に向かってくる弓矢を何とも思っていないようだ。
そして、蝶ヶ崎の顔面が・・・爆発した。
「なっ!?」
驚くことはない。蝶ヶ崎には『
しかし解せない、まさかあの「怒り」の感情を乗せた弓矢がただ爆発するだけとは彼も思っていないだろう。
あの攻撃をまともに受ければ大ダメージは免れないが、その攻撃を喰らった相手の「怒り」の感情が振り切れるような副作用もある。
(このまま振り切れて、自爆してくれればいいんですが・・・そうはいきませんよね)
新たに弓矢をつがえ、煙の中心地に矢先を定める。
「『
刹那、破魔矢の顔面が急に爆発に巻き込まれる。
つがえていた弓矢は自らの足元に突き刺さり、破魔矢は膝から崩れ落ちる。
「これが俺の理性を捨てた世界か。ハハッ!オマエの居場所なんざオレの直感でビンビン感じるぜっ!!」
力なく倒れていく破魔矢を見下ろしながら、蝶ヶ崎の笑い声がコンクリートに囲まれた空間に響いた。
やっと小説を書く環境も整い、これからパパッと書いていきたい・・・と思っていましたが
一次創作のほうも同時進行で書いていきたいと思っているので、以前のようなスピードで書いていくのは少し難しそうです(´・ω・`)スイマセン
しかし、きちんと完結できるまで頑張っていきたいとは思っていますので
これからもどうぞよろしくお願いします!