陰を照らした時に出来る陰   作:俺の眼鏡

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6箱目 人探し

「やっば、どうしよ」

 

少年は一人、とある一枚の紙を握りため息をついていた。

その紙は俗に言う「成績表」と言うもので、中学三年になった些細無影照は人生の第一の難関に差し掛かっていた。

「こんなんじゃ、どこにも行けねーよ」

全教科平均以下の数字が羅列した紙を見つめる。

ところどころ赤点もある。

はっきり言って、県立の学校には行けそうにない。

「・・・あんま、気乗りしないけどスポーツ推薦受けるかなぁ」

影照は「箱庭学園」のパンフレットに目を通した。

 

 

 

「ただいまー」

家のドアを開ける、部活やら進学の話やらで帰るのがすっかり遅くなってしまった。

「・・・・」

「なんだよ、冥加。居るなら返事してくれよ」

「・・・・」

すっかり引き隠りが定着してきた妹に声をかける。

おそらくお腹が空いているのだろう、少しご機嫌斜めだ。

 

「ほら、今日はお前の好きなハンバーグだ」

「(ピクッ)!!・・・・」

「分かった、それじゃオマケにチーズものせてやろう」

「04361147158141009!!(それと、絶対にソースはデミグラスで)・・・・ハッ」

我が妹よ、食べ物に釣られるなんて可愛いところもあるじゃないか。

「ただいま、冥加」

「~~~ッ・・・」

 

穏やかな空気がこの家庭を包む。

影照は手を洗い、料理を作る前に、リビングの隅にある仏壇に手をあわせる。

「ただいま、父さん(・・・)母さん(・・・)

現在、雲仙家は三人の未成年が暮らしている。

保護者なんて人間はいない。

雲仙家の人間は代々短命らしく、親戚なんてのもあまりいなかった。

まぁ、逆に誰か来たところですぐに出ていってしまうだろうがな。

異常な人間が二人もいる家庭なんてたまったもんじゃないし。

 

ふと、周りを見渡す。

「また今日も冥利は遅いのか?」

最近、帰りが遅くなった弟を探す。

「413320141210(それに何だか最近嬉しそうだよね)」

「あいつの考える事なんて、どうせろくでもない事なんだろうがな」

影照は喋りながらも手を休めず、着々と料理を作る。

長い間家事をこなしてきたお陰で、中学三年にして手慣れたものであった。

 

しばらくして料理が出来上がる。

「ごめん、冥加。やっぱちょっとあいつ探してくるから先に食べてて」

外は暗く冷え込んでいるので、さっとジャージを羽織る。

「・・・0257(うん)」

そういって頷く妹は少し寂しそうな顔をする。

 

「どうした冥加、ハンバーグがまだ食べたいならお兄ちゃんのやつ食べても良いぞ」

「ハァ・・・58993236417(行ってらっしゃい)」

 

呆れたようにパタパタと手をふる妹を、不思議に思いながら影照は家を出た。

 

 

 

もう外は夜だった。

暗くて寒くて、街灯がない場所には行くことは出来なかった。

普通ならこんななか小学生が一人で帰っているっていうのなら、もう警察を呼び出すところだが

なにしろ、全てが普通じゃないあいつのことだ。

 

冥利自身が警察にお世話になってても何もおかしくはない。

『モンスターチャイルド』なんて異名もつけられてるみたいだし。

 

(しかし、考えてみたらあいつの行きそうな場所なんて検討がつかん)

影照は立ち止まり腕を組む。

そして、携帯を開いてGPS機能に切り替える。

 

冥利がどこにいるのか一目でわかるようになっている機能だ。

ちなみに、この機能は相手の持っている携帯の場所で位置がわかる・・・

なんて、安易なものではなく

そもそも、冥利ならいくらでも改造して位置の偽装なんて朝飯前だし、冥加なんて携帯を持っていない。

 

だから、基本的な話だが

あいつらが常に持ち歩くものに発信機を埋め込んだ。

異常な家族と暮らすためには、一般家庭には必要の無いものも自然と必需品として家庭に存在することになる。

 

ちなみに冥利には

最近なにかとお気に入りで、外出する際には必ず持ち歩いている『スーパーボール』のケースに発信機を、冥加には、外出する際につけている拘束具の『鉄球』に発信機を埋め込んである。

 

二人には内緒で、業者さんに無理して頼んで埋め込んでもらった。

結構値段が張ったがまぁ、気にしないことにする。

 

(・・・さて)

早速、冥利の居る方向へと歩き出す。それほど遠くはないようだ。

 

(しかし、この場所は・・・)

冥利が居ると思われるそこは

(箱庭学園だよな?)

小学生が高校に?なぜ?疑問が絶えず浮かび上がる。

とりあえず、ここでぼーっとしてもしかたないので、学園に一歩踏み入れる。

 

ードンッ

「イテッ」「おっと」

何かにぶつかってしまった。

おそらく人にぶつかってしまったのだろう。

 

「す、すいませんっ」

携帯をみながら夜道を歩いていたのだ、前方不注意で非があるのは明らかに自分だ、そう思った影照は向かいの人に向かって頭を下げる。

 

「はははっ良いさ別に、お互い様だ」

自分の予想より遙か高くからその声は響く。

その事に驚いて顔をあげる。

そこには身長が2mを軽く越しているであろう巨体の人物がいた。

影照も身長は1.8mと、ほかの人と比べれば高い部類に入る。

しかし目の前の彼はそんな影照の遙か上をいっていた。

 

影照は驚いた、もちろんその巨体にも驚いたが

なによりこれほど大きな人間がいるのに、実際にぶつかるまでその存在に気づかなかった(・・・・・・・)のだ。

 

「みたところ君はここの学園の人間じゃないみたいだが?」

巨体の彼は訝しげに影照を見る。

そういう彼は、箱庭学園の制服を着ている。

 

そう言われた影照は、本来の目的を思い出す。

「あっ、そうだ!!すいません、目つきの悪い銀髪の小学生見ませんでしたか?」

「人探しか。・・・うーん、そういや最近学園長室にそんな子供が出入りしてると聞いたことがあるぞ」

学園長室?ますますあいつが何をしてるのか分からなくなる。

「ありがとうございます」

影照は一礼してその場を後にしようとする。

 

「あっ、ちょっと待ってくれ」

彼は、制服のポッケから一枚の写真を取り出す。

「俺も人探しをしてるんだ、こいつを見かけなかったか?」

その写真には、全体的に小柄で丸く、お世辞にもカッコいいとは言えない不格好(ブサイク)な男が写っていた。

 

「・・・見たことないですね」

「そうか、こいつを見かけたら俺に・・・いや、くれぐれも注意してくれ。絶対に関わり合わない方が良い」

もう一度写真を見る。絵に書いたような不格好な男が写っている。

「わかりました」

「ありがとよ、じゃあ人探し頑張れよ」

そう言って彼は影照とすれ違いの形に歩き出す。

(そう言えば、名前とか聞いてなかったな)

「ーあのっ!!」

影照が振り向いた先には、もう誰も居なかった。

 

「おぃ、影兄。何してんだこんなところで」

今度は足元の方から声が聞こえた。自分のよく知る生意気なあいつの声だ。

「あ、冥利だ」

「その顔はなんか失礼なことを考えてるな」

さすがモンスターチャイルド、鋭い

「んで、こんなところで何をしてたんだって聞いてんだよ」

「お前の帰りが遅いから探しに」

「違う、さっき校門前で何してたか聞いてんだよ」

最近の子供は言葉遣いが荒い、お兄ちゃんだって傷つくんだぞ。

「見てなかったのか、さっき俺はここで・・・」

 

ふと沈黙が流れる。

「あれ、俺は何してたんだろう?」

「はぁ・・・しっかりしてくれよ」

さっき俺はここで確かに誰か(・・)何か(・・)を話してた、はずだよな?

どんどん頭の中に霧がでてくるような感覚に陥る。

もう、何があったのか思い出せない。

 

「ほら影兄、帰ろうぜ。姉ちゃんが不機嫌になっちまう」

「あ、あぁそうだな」

 

帰り道の途中で冥利になぜ学園に行ってたのか聞いてみたが、「何のことやら」と言って笑う冥利に上手くはぐらかされて結局真相は分からずじまいだった。

 

 

 

今日は金曜日、本来なら学校に行って、聞いても分からない授業をウトウトしながら聞いている時間帯だ。

 

しかし今、影照は

いつもの黒いメイド服ではなく、ピンクで少し露出の多いコスプレをした妹と一緒に、ムサ苦しい大人達がごった返すショッピングモールの一角に来ていた。

「おい・・・冥加、めったに外出しないお前が、外出するから付いてきてなんて言うから付いてきたが、こんな・・・聞いてないぞっー」

「5211396547785(この前私を放置した影兄が悪い)」

 

ついこの間、冥利の帰りが遅いと、冥加を家に残して迎えに行った影照。

冥利をみつけたところまでは良かったが、悪戯好きな弟はあえて間違った道に行ったり、路地裏の犬の群を怒らせたりしてずいぶん帰るのが遅くなったのだ。

 

「いや、だからあれは冥利が・・・」

「875564575255875(駄目、今日は一日付き合ってもらう)」

 

しかし、何故この妹はこんなに楽しそうなのだろうか、そう思った影照はふと周りを見渡す。

すると一層むさ苦しい大人達が集まる場所を見つける。

(・・・あれは)

そこには妹と同じ格好をしたキャラクターの張りぼてがある。

(なるほど・・・そういうことか、道理で平日でも人が多いわけだ)

しかし、こういう場所にいくのならもっと他の格好をしてくれないだろうか。

一応冥加も年頃の女の子なのだから、見知らぬ大人達から変な目で見られるのは兄としても不愉快なものもある。

 

「冥加もあれを買いに行ってくるのか?」

影照は先ほどの一角を指さす。そこには「初回限定版ボックス」と書いてある張り紙もある、しかし何の箱なのだろうか

「022874(うん、だからちょっと待ってて)」

「あっ、ちょっ・・・おいっ、あんまり力んで鉄球を振り回すなよー!!」

 

補足だが、冥加は筋力などの身体能力が異常なほど発達している。

普通に、気分の高揚などではしゃいでしまったりするとあらぬ損失を生みだしてしまうので、拘束具として両腕両足に一つずつの鉄球を、外出時にはめるようにしている。

四つ合わせて、数百キロもある鉄球をああも簡単に引きずっちゃう妹を見ると、なんだか改めて「異常」というものを感じてしまう。

 

「ったく・・・」

ここに来るまでで結構疲れてしまった影照は、近くにある手ごろなベンチに腰掛ける。

案の定、コスプレ+鉄球という派手派手な恰好をする妹は注目を集めていた。

あの、むさ苦しい大人達がドン引きするなんて大したものだと少し笑ってしまう。

 

(・・・あれは?)

大人達の中に一人、この場に似合わない格好をした人間を見つける。

その人間は小柄にして、全体的に丸く、顔も決してカッコイイとは言えない不格好な男で、箱庭学園の制服(・・・・・・・)を着て、群衆の中に居た。

 

ーードクンッ

大きく影照の鼓動が跳ね上がる

なんだろう、あの人間を俺はなぜか知っている。注意しなければならない、近づいてはいけないと記憶の片隅が叫ぶ。

思い出せない、あいつを見かけたら、誰かにそのことを伝えなきゃいけなかったはずだ。

 

その時だった。

その不格好な男は、不敵な笑みを浮かべて冥加に近づく。

影照は急いで立ち上がり、冥加のもとへと駆ける。

男は冥加の背後から忍び寄ると、鉄球の一つに手を置く。

 

ーバシュンッ!!

 

 

妹と男は一瞬にして消えた。

 

 




この回からバトルに入る予定だったんですが
なんだか、次に持ち越されちゃいましたね(^^;)

次回はちゃんとバトルします
ミスターさんも絡みます、たぶん←

さぁ、明日はテストだ
しっかり勉強しろ、俺と影照(笑)
こんなんじゃ志望校危ないぞ(^^;)←
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