いつの間にか年も明けて、あけましておめでとうございます(笑)
内容の方も皆さん、もうお忘れなんじゃないかなと思ったり。顔から苦笑いが消えないぜ(
さて、それでは本編です。
お忘れの方はお手数ですが見直していただけるとありがたいなと( ;∀;)
これは何だ。記憶が爆発する様に脳を犯し、忘れたいと思っていたものが我先に目の前へ明確なビジョンとなって現れている。
素晴らしいものは地獄からしか生まれない。
幸せになる為にどこまでも不幸を追い求めてきた名瀬夭歌の持つ心の古傷は、並大抵の痛みじゃないだろう。
体内の水分が枯渇しているはずなのに、冷汗が止まらない。喉は乾ききっているはずなのに、ヒューヒューと空気を擦りながら嗚咽交じりに大きく呼吸を繰り返す。室温はサウナよりも高いはずなのに、体の芯が凍えてガチガチと震えが止まらない。
見てられないほど無様に「やめてくれ」と金切り声で叫びながら、抜けている腰でバタバタと志布志飛沫からみっともなく距離をとった。
「っ・・・・・・」
影照はギリリと奥歯を噛んで、思わず顔を伏せる。
車椅子の肘掛けを握り力をいくら込めてみても、自分の両足はピクリとも動いてくれない。動いたところで助けに行けるわけでもないのにと、頭では分かっているが、それでも両手に強く力を込めずにはいられなかった。
名瀬ももちろんそうだが、あれほどまでに負荷くなってしまった志布志も。
「大丈夫、大丈夫・・・・・・」
今すぐにでも消えてしまいそうなその声は、誰よりもショーウインドーに近づいて状況を見守る古賀いたみのものだった。
よく見れば口の端から赤色が一筋。深い噛み痕が残っていて、そこから滲んでいるみたいだ。
「・・・・・・古賀さん」
「私が知ってる名瀬ちゃんは、こんなことには負けないよ・・・・・・だから、大丈夫」
その言葉は何の根拠も持たないただの希望的な観測だと、この場にいる誰もがそう思った。しかし影照だけは見逃さなかった、彼女の目を。諦めていない、希望的じゃない確信的な意思を持つ瞳を。
大丈夫。
影照も同じように、口の中で小さくそう呟いた。
☆
「ほら、センパイ・・・・・・さっきみたいにアタシを罵ってくれよ」
「こ、来ないでっ、やめてくれぇっ!!」
ついには志布志に尻を向けて、四つん這いで逃げ出す名瀬。それを上から見下ろしながら、志布志は口元だけで微笑みその尻を大きく蹴飛ばした。
顔から地面に落ちて、一度回転した後に地面に横たわる。いくら黒鬼を着込んでいるとはいえ、その地面は熱されたフライパンと同じかそれ以上、露出してる顔の肌なんかは火傷していてもなんら不思議ではない。
体の古傷だけでなく、心の古傷まで開いてしまう志布志の「
心が折れても不思議ではないトラウマをもつ名瀬には、あまりにその過負荷は相性が悪かった。
現に名瀬は体をギュッと丸めて、怯えるように震えたまま動こうとしない。
「センパイさん・・・・・・アタシもさぁ、もう動きたくねーんだ。身ぐるみ全部寄越せよ、そしたら見逃してやるぜ?」
「ひ、ひぃっ」
「はー、ダメだ。会話にもなりゃしねぇ」
ガタガタと震え、益々小さく床で丸くなった名瀬。
「まぁ、直接こうやってアタシの過負荷を喰らえば、その身ぐるみ全部ほどけてバラバラになんだろ・・・・・・その場合の、テメーの体の状態は、どうなるかは知らないけどな」
よろめきながらも、志布志は名瀬が足元に来るまで近づいてその手をかざす。
「──────ふぅ・・・・・・危うく思考が『自殺』に辿り着くとこだったぜ」
まるで馬が足蹴りを喰らわすかのように、丸まっていた体がバネの様に伸びて、名瀬は近づいて来た志布志の鳩尾に右足を思い切りぶつけた。
何の防御態勢も取ってなかった志布志はあっけなくそのまま大きく後方へと倒れ込む。
「ぐぁ、あっつぅっ!?・・・・・・テメェ、何しやがった!?」
「くっそ・・・・・・まだ頭がガンガンしやがる。全くえげつない能力だな・・・・・・単純な話だ、鎮静剤だよ。バカみたいに俺の体に投与したんだ。あと一歩遅かったら、俺は迷いなく自殺を選んでただろうな・・・・・・」
意識を保つのもやっとなんだろう。頭を押さえて嗚咽を漏らしながら、名瀬夭歌は不敵に微笑む。
今なお次から次へと浮かんでくるトラウマの過去。
本音を言えば今すぐにでも白旗を全力で振って、身ぐるみを全部投げ出して逃げ出したい。
「それでも、負けられねぇんだ・・・・・・ここで負けたら、カッコ悪いじゃんか。大切な奴らの目の前で、逃げ出すのは、あまりにもカッコ悪いじゃんかよぉ」
大きく息を吸って、ゆっくりと吐く。
「でもセンパイ・・・・・・傷だらけで、薬漬けで、そんで意識朦朧な状態で、まだ、戦えるのか?アタシは正直ヤバイけど、あんた程じゃあない。まだこの過負荷は止まらないぜ?」
「物分かりの悪い後輩に一つ講義をしてやるよ・・・・・・人は、どんな時に『負け』を認めると思う?」
「あ?」
「簡単さ、もっと頭を柔らかくしろ。答えは『勝てないと思った時』だ、それ以上もそれ以下も無い・・・・・・だから俺が、自分から負けを認めることなんてありえない。無駄な説得お疲れさんってことさ」
「はっ、ほざけよ」
「俺はお前に微塵も負けるだなんて思わない、これっぽっちもさ・・・・・・それだけの努力は、積んできたつもりだ」
「お喋りが過ぎるぜ、センパイよぉ!!」
右の手の平を焦がしながら、左の手に再び剃刀を握って志布志は身を前に乗り出しながら立ち上がる。間髪入れずに足に力を込めながら、今すぐにでも倒れてしまいそうな名瀬の元へと駆けだした。
何もかもが不利な状況のはずなのに、名瀬がその顔に浮かべるのは不敵な笑顔。
志布志は、あの笑顔を知っていた。
逆境になればなるほどへらへらと、根拠のない笑顔を顔に浮かべる。それは他でもない、自分達「マイナス」の特徴でもあった。
所詮はエセ野郎。志布志は奥歯を噛みしめながら、露出しているその顔へ真っ先に剃刀を振り下ろす。
「─────残念だが、ここでお終いだ。チェックメイトさ」
「テメっ、グッ、ガァアアアア!?腕がっ、何だっ、動かねぇし、グゥアッ!?」
志布志が振り下ろした腕に、名瀬はただ優しく手を添えただけ。本当にそれだけだったが、その一瞬でまるで腕が
いや、違う。本当に腕が、一瞬にして凍結していた。
志布志は掠れた大声を出しながら、すぐさま腕を地面に押し付ける。ジュージューと音を出しながら腕は次第に感覚を取り戻していく。
何が起きたのかはわからない、だが、腕が冷たくなっているのは確かだ。
「逆境になればなるほど、そうか、ようやくテメーらの気持ちが分かった気がするぜ・・・・・・だからこそ、俺のこの能力はきっと『マイナス』なんだろう。そうだな、名付けるとするなら・・・・・・『
☆
「『追いつめられたら、奇跡的に都合よく、新たなるパワーに目覚めるとか』『そーゆーのは週刊少年ジャンプの中だけにしてほしいよね』」
大きく溜め息を吐いて、心底がっかりしてる様子の球磨川。人生大一番の大学受験を落としてしまったような、そんな雰囲気がありありと感じられた。
しかしそんな様子とは裏腹に、古賀はその瞳に希望を灯す。
「違うよ、努力が実を結ぶことをね、『
流れはすでに完全にこっちだ。
飛沫さんには悪いけど、これはもう決まったも同然だ。影照はウィンドウ越しにそう確信する。
パチパチパチ。
そんな雰囲気に反旗を翻す乾いた拍手が三回ほど。音の鳴る方を見ると、やはりそこには笑顔を浮かべる球磨川が居た。
「『流石はプラスの人達だ、こんなことされたら僕らが敵うはずがないよ』『でもね』『あえてもう一度ここで言わせてもらおうかな』『もしもこの試合で飛沫ちゃんが名瀬ちゃんに負けたら、僕はその時点で箱庭学園から手を引く』『ってね』」
「ふん、確認をしなくとも大丈夫だ。無論忘れてはおらんぞ、その言葉。球磨川、今から帰り支度を初めてはどうだ」
「『あはははっ』『めだかちゃん、人の話はよく聞かないと、お姉ちゃんが言ってただろ?』『負けを認める瞬間ってのは勝てないと思った瞬間の事を言うのさ』『だから僕は降参はしない──────』」
「『──────だって、飛沫ちゃんが負けるなんてことは無いんだから』」
次回はいつになるか、またもやよく分かりません。
書こうとは思っているんですけど、如何せん忙しくて^^;
もしお時間がございましたら、眼鏡のマイページにブログのURLが貼ってあります。
そこへ飛んで、またそこから「なろう」のページに飛んでいただけると、自分が書いたオリジナルの小説が完結の状態で二作品ほど書いてありますので、次回が投稿されるまでの間、暇潰しがてらによろしかったらご一読下さるとうれしく思います。
それではまた次回。(*´ω`)