飛沫の過負荷は「古傷を開く」という能力。
そこに、更なる負荷が加わり「開いた古傷を悪化させる」という能力が加わった。
例え僅かな擦り傷であろうと、致命傷になりかねない。まさに最悪な退化を遂げてみせたのだ。
しかし、覚醒した名瀬の過負荷「凍る火柱」は、炎と氷を操る能力である。
炎にも氷にも、もちろん古傷なんてのは存在しない。
更に全身の傷をピキピキと凍らせたことで、古傷は開いてもすぐに塞がれる。
まさに、相性は最悪である。
それでも、飛沫は笑う。
この程度の逆境など、欠伸が出るほどに体験してきた。
そしてその度に負け、叩きつけられ、虐げられ、奪われ、何度も何度も地面を舐めてきた。
それでも、生きている。
生き難きを、生きてきた。
「……最悪の相性だよ。まさに天敵だ」
既に室温は最高温度である。
呼吸をするだけで、喉が肺が火傷していくのが分かる。まともに目も開けられない。
対して名瀬は汗の1つも流していなかった。
「何を考えてやがる」
「アタシもマイナス。アンタもマイナス……こんなとき、どっちがよぉ、負けるんだろうなぁ?」
名瀬は両手から業火を放った。
服もろとも飛沫を燃やし尽くす算段である。
その光景は、まるでアメリカのスーパーヒーローのようであり、不気味に笑う飛沫は、悪役の末路そっくりな姿であった。
ただ、次の瞬間、誰もが飛沫の行動に眉を潜め、目を反らした。
あの球磨川でさえ、予測もつかない行動だった。
あろうことか、何百度にまで熱されている地面に這いつくばって、背中にのみ業火を背負ったのだ。
飛沫の叫び声と、焼き肉店で聞くような、肉の焦げる音がこだまする。
焼かれた服は背中のみ。
前面は熱に溶けてはいるものの、辛うじて服の体裁を、保っていた。
黒く焦げた頬や腕、腹。その焦げ付いたひび割れから覗く鮮やかな赤色が、何よりも痛ましい。
「片や無様にボロボロの体で這いつくばり、片やスーパーヒーローのような立ち姿。マイナス対マイナスの結果は、試合に勝って勝負に負けた、ってなところか」
そう言って、飛沫は立ち上がり、笑う。
名瀬はというと、まるで美しき彫刻のように、ピクリとも動かなかった。
「アタシの開いた古傷は、悪化し、更に広がる。深く、負荷くな。そんなもの全部を凍らしてたら、テメェでテメェを全身凍結させちまうってことさ」
動かない名瀬。飛沫は剃刀を片手に、その衣服を全て剥ぎ取った。
「志布志様と名瀬様による今回の書記戦は、志布志様の、そして新生徒会側の勝利となります」
志布志は笑顔のまま、意識を失った。
☆
現在の勝敗。現生徒会、一勝一敗一分。
大変お待たせした上に、短い話になってしまい申し訳ございません。
お久しぶりです。
今後の更新予定や活動内容等は、私の「活動報告」にて、お話しいたします。
数年もお待たせしてしまい、それでもここまで読んでいただき、ありがとう御座います。
皆様のおかげで、私は何年も物書きを続けていられます。
これからもよろしくお願いいたします。
それでは、また。