陰を照らした時に出来る陰   作:俺の眼鏡

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7箱目 深くて暗くて黒い

・・・あれ?

ここは、どこなの?

あぁ寒い、寒いよ影兄。やっぱり影兄の言うとおり、いつもの服を着とけば良かったのかな?

 

体が動かない、なんだろう。

壁に張り付けられてる感じがする。

 

「ふ、ふへっ・・・お目覚めですか、マイコレクション♪」

 

鋼色の壁、鋼色の床、光の差し込まない大きな空間、薄暗い電気。

冥加が目を開くとそんな空間が広がっていた。

目の前にいるのは自分とあまり背丈の変わらない、気味の悪い笑い方をする不格好(ブサイク)

どうしたのか分からないが、四肢についている鉄球が壁に張り付いており、動くことができない。

 

「こ、ここは僕のコレクションハウス(作業用)だよ、ふへっ。ここで君を僕好みにカスタマイズして、家に飾ろうとお、思うっ、へへっ」

 

気持ち悪い、身の毛がよだち、表情が強ばる。

体の奥から気持ち悪いものが沸き立つ。

冥加は、この状況を打開するべく声をだす。

 

「8221366905211(あなたは誰、影兄はどこ!?)」

「んふふ、珍しい言語ですね、そそられますねっ、そうですかそうですか」

男は冥加の体をなめる様に見回し、「ふへっ」と気味の悪い笑い声を出す。

 

「自己紹介が遅れたね、ぼ、僕の名前は奄美(あまみ)鋼折(こうせつ)。今日から君のご主人様になる男だょ、ふふ、ふへっふふっ♪」

 

なんだろう、気持ち悪いってのもあるけど

目の前でさも勝ち誇った顔をしている男にどうしよもなく怒りが沸く。

なぜ私が追いつめられて、さも敗者の様に振る舞わなくてはならないのだろうか。

どう考えたって私が強い、あいつのあの変な笑いを一瞬で許しを乞う泣き声に変えることだってた易い。

 

「0052364177996(気持ち悪い、その態度も笑い声も顔も)」

「ふへ?」

「42301141458217449(あなたがどんな手品を持ってるのか知らないけど)」

 

冥加は両腕両足に力を入れる。

ーーミシミシッ!!

壁が、鉄球と腕を繋ぐ鎖が音をたてながらきしむ。

 

「へっ!?嘘だろっ!?」

ーバゴッッベキベキッ!!

壁が大きな音をあげながら、完全に鉄球と壁は離れる。

 

「0114121382(私の方が圧倒的に強い)」

「な、なるほど、君も(・・)異常性(アブノーマル)の持ち主なんだね。ふへっ面白い、僕は気の強い奴を服従させる時が、とても幸福感に満たされるんだ」

 

 

影照は携帯を片手に走る。

冥加の位置を指し示すポイントはあまり離れたところではなく、一キロ程度さきの場所にあった。

 

走っていけば3分もかからない。

影照は心配だった、もちろん妹が変な男にさらわれたのだ、変な事をされていないかといった心配もあるが

なによりあいつが本気で暴れ回った場合、考えるだけでも恐ろしいが、大変な被害が広い地域に及ぶことは間違いない。

 

ージジッ、ブッ、ジッ

 

しかし変だ、目的地に近づくにつれ携帯の調子がおかしくなる。

さっきから点いたり消えたりを繰り返している。

これでは見辛いし、そう思った影照は携帯を閉じポッケにしまう。

目的地まではあと数百メートル、道順はだいたい分かっていた。

「ハァ、ハァ・・・ここか・・・」

喉が乾き、その内側の皮同士が引っつきあう感じがする。

 

目的地と思えるそこは、よくヤンキーのドラマなどで喧嘩が行われているような、壁や床が鉄といった、どこぞの機会工場みたいな場所だった。

「こういうところって、なんていうんだっけ・・・コンテナ?、まぁ・・・ハァ、いいや」

 

ーバゴォッッ!!!

中から大きな音が響く、嫌な予感がした影照は急いでその建物の入り口のドアをこじ開けて中に入る。

「冥加っ!!!」

扉を開けた影照の目の前に広がっていたのは、ベコベコにあちこちがへこんでる床や壁・・・

そして、壁がへこむ程の衝撃で叩きつけられていた妹だった。

壁に叩きつけられた冥加の体は反発して床に落ちることなく、そのまま壁にくっついていた。

 

しかし奇妙なことに、先ほどまで冥加と戦っていただろう男は、まるで魔法でも使ったかのように、冥加に触れることなく、手を冥加にかざしているだけだった。

 

「おい、テメェ!!俺の妹に何してんだ!!」

「ハァ、ハァ・・・ふへっ、僕の異常(スキル)の前では君の異常性なんてたいしたこと無いですよ」

 

完全に影照を無視しながら冥加に話続ける男。

「こっちを、向けよブサイクッ!!」

影照はいつも持ち歩いていた、硬球の野球ボールをその男に投げつける。

ーーググッ

「っ!!」

 

投げつけた玉はその男の手前で、まるで避けるように急カーブした。

「なんですか。今から調教の時間なんです、あなたは僕のメイドちゃんに何の用ですか?」

明らかに不満そうにこちらに振り向く男。

「そいつは俺の妹だ、大人しく返して貰おうか」

「妹ですかふへっ、そういうシチュもありですね。決めた、この娘は今日から僕の妹です」

「いい加減にしろよ・・・」

今にも暴発して狂ってしまいそうな感情を必死に押さえる。

いたってクールに、そのことだけを考える。

 

ふと、冥加の方に目を向けた。

妹はぐったりして、息を整えている。その顔は苦しそうな表情をしていた。

(絶対に助ける)

影照は懐に入っているボールを強く握る。

 

「ところで君はどんな異常性を持っているのかな?」

男は二三歩影照に近寄り、質問を行う。

「俺はそいつの義理の兄だからな、そういうのは持ってないよ」

「ふへへへへっ!!まさかのただのノーマル君でしたか!?相手になりませんね、大人しく僕とあの娘が兄弟の契りを交わすのを見ておくが良いです!!」

 

「うっせぇよ変態、顔面が騒がしい形してるんだから、せめてその口だけは静かにしとけよ」

だんだん影照の目の色が変わっていく。

暗くて、真っ黒で吸い込まれそうに深い色に変わる。

 

「さっきから言わせておけば・・・良いです。この怒りは君に最大の屈辱を味あわす事で晴らす事にしましょう」

「あー、めんどくせぇ。屈辱とか何だとか、つまらねぇよお前。俺はサクッとテメーを潰して帰る事にするよ」

 

ービシュッ

 

影照は右手に握っていたボールをまた投げつける。

(まずはあいつの手品のタネが何なのかを調べる)

 

「同じ事を何度も繰り返して、所詮ノーマルですね」

男はボールに向かい手を前に出す。

ーググッ

軌道が徐々に変化していく。

 

「おいおい、誰がまた同じように硬球を投げたって言ったよ?」

ースパァンッ!!!

「うっ・・・ぐっ!!」

 

影照の放った玉は軌道が変わる前に、男の1~2m手前で破裂した。

ボールの中には砂利をあらかじめ入れており、破裂時にその砂利が炸裂する仕組みになっている。

もちろんダメージは微々たるものだが、一瞬相手の気をそいだり、目眩まし程度にはなる。

 

(うん、これは収穫だな)

影照は今までの戦いから、相手の能力にある二つの仮定を立てた。

まず一つに、何かと自分自身を反発させるような能力。

冥加が壁に叩きつけられているところや、硬球の軌道が変化したところから見るとそのような力が働いていると考えられる。

 

そしてもうひとつは、相手の能力は自動的に発動するのではなく、意図的に発動するものであること

もし自動的なら先ほどの砂利も全て反発させることができたはずである。

しかしそれをしなかった、できなかったとするとそのような仮説が立てられる。

 

「小賢しいっ!!ただのノーマルごときがぁ!!」

「ただのノーマルなんて言うなよ、俺の名前は些細無影照、とある中学校の野球部のエースだ、なかなかのスペックだと思うだろ?」

男は荒ぶっている心を沈めるため、一息つく。

「・・・僕の名前は奄美鋼折、ところで君は箱庭学園の生徒の一人“都城”って人を知ってますか?」

奄美は体についた砂を払って落とす。

「その彼は僕の一つ下の後輩なんだけど、初めて彼を見たときに驚愕したのを覚えてるよ、彼は生まれながらに“王”の素質を持っていると、そう感じざるを得ない風格を感じましたね」

 

なんだろう、急に喋り始めた奄美に影照は奇妙な感覚を抱く。

しかし、あいてが他の事に捕らわれている以上、攻撃しない手はない。

影照は次の隠し玉(・・・)を握る。

 

「その彼のある一つの異常(スキル)に僕は心を奪われました」

影照は硬球を握りしめて、素早く大きく振りかぶる。

 

平伏(ひれふ)せ」

 

ーーズンッ!!!

急に両腕が重たくなり、床に両手をついてしまう。

必死に持ち上げようとも全く手が床から離れない。

 

「ふへへっ、やはり彼のように完璧な屈服の姿勢をとらせる事は少し難しいですが、これはこれで面白いですね」

なにが起こったのかわからない。

影照は必死にその手を持ち上げようとするも、逆に腕や肩が外れそうになる。

「ふへっ、良い表情です、まるでネズミとりシートに捕まってしまったネズミのような、先ほどまでの自信に溢れた顔がみるみる青くなっていくのがたまらなく面白いですねぇ」

 

影照は焦った、早く手を持ち上げないとということもあるが、何より焦りを覚えたのは

(反発させる能力だけでは無いのかっ!?)という事だった。

 

うすら笑いを浮かべた奄美がこちらに近づいてきて、影照の目の前で止まる。

影照は嫌でも両手と膝をついた形で奄美を地面から見上げる形になる。

「ふへへっ、所詮ノーマルごときがこの僕に楯突こうなんぞ、無謀だったんですよ」

奄美は影照の髪を掴み思い切り引っ張り上げる。

影照の顔は痛みと、そのひっぱりにより歪んでいる。

 

「ふへへへへへっ♪」

奄美は喜び溢れる笑い声を響かせながら影照の頭を何度も地面にたたきつける。

「このっ、ゴミがっ!!、僕に逆らうんじゃねぇよっ、クソ生意気なんだよぉ!!」

何度も何度もたたきつける。

やがて影照の額は赤色が滲み始め、その赤色はたたきつけられている鉄の地面も染めていく。

 

額と鉄の地面がぶつかりあう音が、奄美の狂乱をはらんだ笑い声が、冷たくなっている鉄の壁や床に響く。




空洞「前回のあとがきで俺の出番があるとか言ってなかったっけ?」

眼鏡「すいません、次回までには、次回までには必ず^^;」

空洞「言ったからな、絶対約束を守れよ!!」

眼鏡「がんばりますっ(;´Д`)φカキカキ」
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