ヒーローと魔法少女、或いは心理学カンストゴリラ   作:就鳥 ことり

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評価ありがとうございます!
コメントも頂くのは初めて何と返そうかと悩みに悩んで早1週間。コメントがこんなに嬉しいものだとは……、これからはもっと積極的にコメントを残そうと思いました。
これを投稿したらいい加減すぐにお返事します!!

お気に入り69件ありがとうございます。


act.8:再会の春

「んだとクソ花!! んで、てめぇがここに!! ヒーロー科にいんだよ!! あん?? ヒーローにはならねぇんじゃなかったか? ア"? 答えろクソ花!!」

 

「物申したい気持ちはわかるけど、とりあえず人を鼻糞みたいに言うのはやめてほしい」

 

入学初日から胸ぐら掴まれることになるとは思わない。

いやぁ、世界は狭いね? 勝己くん。

 

 

**

 

 

結果から言えば先程見ての通り私は合格だった。

 

翌日の稽古に備えてハープの練習をしていたところ、聞こえてきたのは何やら興奮気味にドアをガリガリ引っ掻く音。なんだなんだとドアを開ければイズクがぼふっと顔に突っ込んできた。何をそんなに興奮しているのかと思えば、咥えて振り回しているのは雄英からの合否通知だった。

 

ソワソワと落ち着きなく飛び回るイズクを宥めると、椅子に腰掛け封を切る。中から出てきたのは円形の厚さ数センチ程のディスクと、紙。手紙の方から目を通そうとすると、視界の端でイズクが機械をつつき始めた。こらこら。勝手に弄らないの。あ、こらっ

 

カチッ

 

『私が、投影された!!』

 

成程、映写機。壁に映し出されたのは誰もが知っているNo.1ヒーロー。かの有名な平和の象徴オールマイトその人だった。

そんな多忙を極めてそうな方が何故。やっぱり手紙から読むべきだったかと、オールマイトの話を聞き流しながら手紙に目を向ける。あれっ、入学案内? これは受かった? いや、合否通知かっ飛ばしてそれって可笑しくない? 合否通知って入っているものでは?

 

疑問符を浮かべながらも、とりあえず映像を見ることにして視線を映像へと移す。大好きなオールマイトに興奮で私をびしばしと叩くイズクをあしらいつつ、彼の話に耳を傾ける。

 

『私が投影されて驚いただろう。実は来年度の春から教師として雄英に務めることになったんだ』

 

成程、把握した。雄英教師としての初仕事がこの合否通知なんだそうだ。はぁ……。No.1ヒーローを雇えるとは雄英凄い。流石暫定日本一のヒーロー養成機関。

 

『さて、本題だが陽向少女。筆記は文句なし!! ヒーロー科一般入試の中ではトップだ。そして実技も58ポイントとこれまた申し分ない!!』

 

「みゅきゅゃやーーーーっ!!!!」

 

「ぐふっ」

 

大好きなオールマイトからの賞賛にイズクは思わず奇声を上げ、私の10倍は喜んでいる。そうだね、良かったね。君のおかげだよ。でもねイズクさん、痛いです。首が、締まる……っ。

 

「もきゅぅ……」

 

うん、気付いてくれてありがとう。しゅんと萎れて反省を示すイズクを撫でた。大丈夫だからそんなに落ち込まないで。

 

『さらに、私達が見ていたのはそれだけじゃない。戦闘能力を見るのが(ヴィラン)ポイントだとすると。ヒーローに必要なもう1つの基礎能力。その名もレスキューポイント!!』

 

成程。ヒーローは奉仕活動なところがある。元々は無償での活動で職業ではなかったと日本史の授業で習った。戦闘能力がヒーローの全てではない、現に災害時の救助活動を主にしているヒーローも多く居る。そういう事だ。

 

『陽向少女、凄いよ!! これも断トツだ。周囲をよく見れている。入試というこれからの未来がかかっている場で、自分の利を置いて他に気を回すことができる。君は自然にやってたのかもしれないが、中々できる事じゃない』

 

まぁ。中身は大人だからね。体感だけれど自分より若い子達が必死に逃げているのに、何も感じないわけがないんだよなぁ。それに、これで受からなければヒーロー職を軽視していたと思い直して、心理学1本に絞るつもりだったし。なんというか、それ程気負わず気楽に挑んでいたからだよね。うん、べた褒めがむず痒い。イズクは大変ご満悦のようだけど。

 

『それにあの土壇場での救出劇、見事だったね!! 強いて言うなら確実に止めるなら頭部より、まずは足元を崩した方が的確だったな!!』

 

確かに。あれで頭部が心臓部になっていなかったら、そのまま突っ込んできただろう。足を崩してすたこら逃げるか、足が無くなった反動で動けなくなった隙に変身してワンパンした方が確実……。成程、その通りだ。あの時の腹へり具合からして10分の変身くらいはできた。

 

『レスキューポイント、63ポイント。合計121ポイント。おめでとう、陽向少女。合格だ!! しかも今年の首席入学者さ!!』

 

「みゅやっ!!??」

 

「首席……!!?」

 

まさか、そこまでだとは。中身が大人なのはやはり相当なハンデだったのだろうか。少し申し訳ない気もするが、気にしたって仕方ない。師匠や先生からのご指導の賜だと思った方がいい。おかげ様で私は自他ともに認めるステータスゴリラだからね!! ゴリラって物凄く優しくて仲間思いな動物なんだよ。さらに、中には手話を理解し習得したゴリラもいる程に知能も高い。そういう事だ。

 

話が逸れた。

それに、これで両親や師匠、元研究室の皆さんにいい報告ができる。とりあえず、気になって仕方ないだろう両親にディスクを見せた後、お世話になった皆さんに合格の報告をして回った。

小学5年生になった健信くんに雄英合格を伝えると私以上に喜んでくれて、「カッコイイ!!」「すごい!! はな姉すごい!!」と嬉しそうに褒めてくれた。思惑通りである。健信くんにまで報告したのは、ヒーロー志望の可愛い再従兄弟(はとこ)にいい格好したいだけだった。全国中継の体育祭を必ず見ると言われてしまったからには、さらに気合いを入れなくては。

 

変わらず月一でお見舞いに通ってる私は、冷さんにも報告した。冷さんにはカウンセラーになりたい話もしているので「また夢に近づいたね、おめでとう花恵ちゃん。無理はしない程度に頑張って」と笑顔で応援してくれた。

痩せていた頬も戻って、血色も良くなった。ここ数年でさらによく笑うようにもなってくれた。一見、もう安定してすぐにでも退院できるように見えるが、冷さんは非定型うつ病と診断されている。定形のうつ病の常時塞ぎ込んでいるのはことなり、感情の起伏が激しいのが特徴とされる。冷さんは『起』の方はそこまででもなくほぼ健康時と同じように穏やかにすごせているのだが『伏』が激しい。彼女は症状の中でも特に不安抑うつ発作とフラッシュバックに苦しんでいる。今こうして和やかに笑ってくれているが、明日にはまた塞ぎ込んだりすることがあるのだ。

 

まぁ、彼女が退院できない理由はそれだけではないと、旦那さんの立場を知った今ではふつふつと感じている。なんせ旦那さんはあのNo.2ヒーローだったのだ。そう、事務所がご近所さんのあのエンデヴァーさんだ。そうなると色々あるのだろう。

彼が何を考えているのかは知らないが。しかしまぁ、毎月花が届くし(しかも近所なだけあってうちに買いに来るのだ。むしろそれがあったから分かったのだけれど)、たまに面会しようとしているという話は耳にしているから彼なりに歩み寄ろうとはしているのだろう。上手く収まると良いのだけれど。

 

他にもあのヨシヨシして泣かせたリーマン兄ちゃんこと、孝幸さんが久しぶりに尋ねて来たかと思えば彼女へのプロポーズに悩んでいて、カフェの常連さん達も一緒になって真剣に計画を立てた後、成功に導いたり。なんてこともあったけれど今回は置いておく。

 

そして、迎えた入学初日。両親に見送られ2ヶ月ぶりくらいに雄英の門を潜る。数多の有名ヒーローを排出してきたという学校を前にして、興奮が抑えきれないイズクが先に飛び出してしまった。あらら。イズクってば感激のあまり我を失ってるね。見たこともないスピードで校舎へと飛んでゆき、その姿はもう見えない。仕方ない、後で回収するとしよう。幸いお互いの位置は何となくわかるし。

 

「あっ、その綺麗な髪は花吹雪の人!!」

 

声につられて振り向けばあの時の麗らか朗らか少女が手を振って駆けてくる。その姿に何だか柔らかな気持ちになって、手を振り返すとすぐに駆け寄り手を握られた。

 

「お互い、合格おめでとうだね!! 改めて助けてくれてありがとう!! あなたの個性かっこ良かったよ! こう、ぶわっって」

 

身振り手振りで、再現して見せる彼女。無邪気か。とても微笑ましい。彼女の名前は麗日お茶子。名は体を表すとはまさにこのこと。麗らか朗らか少女は本当に『うららかさん』だった。とても可愛いらしい友人ができたと喜び、さらにクラスも同じと来て一緒に教室へ向かうことになった。途中でイズクを回収しようとイズクの元へ寄ることも麗日さんに伝えてイズクの気配のする方へと歩き出す。

 

「えっと、陽向さん。この先ってヒーロー科だよ、イズクちゃんはいいの?」

 

「あぁ、そうだね。どこか迷い込んでるかと思ったけれど、イズクは寄り道せず教室に向かえたみたいだ」

 

どうやらイズクは散策せずに真っ直ぐ向かって行ったたらしい。……うん? 何だか向こうが騒がしい。ふむ。あの子が何かしていないといいんだけれど。先に行くと断って廊下を駆けて教室のドアを開けた。

 

「きゅぷぅ〜っ」

 

「くっそ、離れろてめっ! なんでいんだよ!! クソ犬!! ご主人様はどうしたんだてめぇ!? まさか普通科にいんのか?」

 

目つきの悪い金髪少年に、じゃれつくイズク。彼の手から巻き起こされる爆発にビビりつつも一向に離れる素振りを見せない。

 

「やめないか! 君っ、小動物相手になんてことをするんだ!! 危ないだろう!!」

 

そしてそれを咎める眼鏡少年。とそれを遠巻きに眺めるクラスメイト達。うーん。世界は狭い。

 

「イズク。おいで」

 

「みゅや!! もきゅーぴ、ぴぷっ!!」

 

「うんうん、何ひとつ伝わらないけれど、大好きな彼に会えてご満悦なのはわかった。でも誰かに迷惑を掛けてはいけないよ」

 

「きゅぷぅ……」

 

私の声にご機嫌に飛び帰ってきたイズクを抱きとめ、それから小言を吐いて小突く。するとしゅんと萎んで私の右肩に乗り、首裏に隠れてしまった。頭隠して尻隠さず。大変愛らしいので気付かないフリをしてやる。

 

「皆さんも申し訳ありませんでした。何方か怪我や被害を受けた方はいらっしゃいますか?」

 

「きゅぷぅ」

 

私がガバッと頭を下げるれば、そんなことしてないもん。とばかりに首裏で小さく鳴いたイズク。そう拗ねないで。礼儀というか社交辞令というものがあってだね。

暫くの静けさの後、「大丈夫」「気にすんな」と声が聞こえてきた。が、まだ上げない。1番神経質そうなあの眼鏡少年からの許しを待った方がいい。程なくして「わかっているならいいが、気を付けてくれ」と言ってくれたので、もう一度謝罪を述べて顔を上げた……

アッ。目と目が合う〜。鬼の形相とはこの顔を言うのだろうね。恋なんて始まるわけがなかった。

 

「おい、てめぇ。んで、ここに居んだよ。普通科か?」

 

「いや、ヒーロー科だよ。ヒーローの免許が欲しくてね」

 

ここまで言葉を交わしたところで冒頭に戻る。

いやぁ、参ったなぁ。小学生時代の知人と高校生になって再会する、かぁ。ラブコメの常套手段だね!! しかし、相手方は出会い頭にヒロインの胸ぐら掴んでくるような奴である。ヒロインがいったい何をしたんだ。殴り合いを制した、それが答え。こんな殺意高いラブコメどこにも需要がないからやめよ?

また幼少の頃と同じように投げ飛ばしてやってもいいのだけれど、そうする理由も無ければ、やってもいいことは無い。

 

「嘘は吐いてないよ。本気でヒーローを目指している人達の前で言うのは少しはばかられるけど、今も変わらず目指すはカウンセラーだ。ヒーロー科に来たのは先の未来でヒーロー免許が役立つと思ったからだよ。勿論、本気で取得を目指すつもりだ」

 

「わざわざ難関のトップ校選んでか? 俺の道に立とうってんならぶっ潰す」

 

女子の胸ぐら掴むのはヤバい。そう止めにかかりそうなクラスメイト達を手で軽く制す。大丈夫、大丈夫。

 

「勝己くんが雄英を受けることは知らなかったし、ここを選んだのは1番カリキュラムがしっかりしていたことと大学並に揃っている書物の豊富さに惹かれたからだ。誓って君の邪魔をする意図はないよ」

 

「……」

 

「かと言って、手を抜くつもりもない。だから邪魔だと思うなら、潰しにかかって来い。踏み台にしてくれて構わないよ」

 

「っは、舐めてんじゃねぇぞ。クソ女」

 

時間も無いし、入口である扉の真ん前だし、そろそろ手を離してほしい。うーん、彼相手には話し合いじゃぁやっぱりダメか。仕方ない。奥の手といこう。

 

「……まさか」

 

そのまま、空いてる両手でぎゅっと抱きしめる。すると奴はギョッとして一瞬息を呑んだ。すぐさま私は腕を緩めて、すぐに解けるような緩い抱擁に移行する。

 

「確かに私が君を投げ飛ばしてばかりいたけれど、君はきっと私なんかすぐに踏み付けて高みへ行けてしまうよ。私は君が凄い人だとよく知っているからね」

 

ぽんと背を柔く叩けば、ビクっと体を震わせて私を突き飛ばし飛び退いた。予想通りの少年らしい反応に、素早く足を引いてバランスをとる。

すぐさま奴は何をするのだと、今にも人を殺しそうな顔をして吠えた。子供が見たら10人中10人が泣いてしまうだろう。ヒーローがしていい表情(かお)じゃない。彼がヒーローになったら、強面ヒーローとして有名になりそうだよね。確か『(ヴィラン)に見えるヒーローランキング』なるものが存在すると記憶している。やったね勝己くん!! 期待の新星だね!!

決して馬鹿にしてはいない。ないったらない。

 

「君が中々熱烈で離してくれないからね、私も応えてみたんだけれど気に入らなかったかな?」

 

「気に入らんわ!! 殺すぞ」

 

うーん。物騒。からかいすぎたかな。

彼は絶対殺す(直訳)という殺人予告を捨て台詞に席へと戻って行った。お騒がせして重ね重ね申し訳ない。そうクラスメイト達に頭を下げたら、ふいっと数名に顔を逸らされてしまった。ふむ。やらかした。

 

お話終わった? ねぇ、終わった? とばかりにこちらを覗き込んで首元に擦り寄るイズク。終わったよ。と告げれば喜び勇んで再び爆豪氏の元へと突っ込んで行った。そして爆破された。学ばない獣である。

 

「おいコラクソ女!!」

 

うん、ごめんね。

イズクを早急に回収して席に向かうと後ろからコソッと麗日さんが心配そうに

 

「陽向さん、あの爆破の子と知り合いなん? 大丈夫?」

 

「幼馴染とは違うけれど昔馴染みの知人だね。ちょっと殴り合いをした仲でまぁ、見ての通りさ。乱暴かつ横暴だけど、捨て猫に傘を差し出すどころか、舌打ちしつつも連れ帰って里親を探すような子だから大丈夫」

 

さっきは置いていってごめんね。と付け足せば「それはいいんやけど……」と口ごもらせた後。

 

「突っ込みどころが多すぎてどっから手をつけたらいいのかわからんよ」

 

後ろから「何勝手に妄言吐いてんだクソ花!!」と吠える声が聞こえるが無視を決め込んだ。はいはい照れ隠し、照れ隠し。クラスメイトから彼へ向けられる視線が柔らかくなった。良かったね!! 勝己くん。

 

彼は健信くんのご近所さんの元悪ガキ大将といったところなんだけれど、この話はまたにしよう。しかしまぁ、こんな所で彼に再会するとは思わなかった。本当に世界は狭いね。全く予想できないことではなかったけれど、3年以上会ってなかったから彼のことはちょっと失念していたというか。中学生活はプリキュアごっこに熱中し、さらには怒濤の進路選択に追われて彼を思い出す余地もなかったというかね。

彼はあれほど熱烈に覚えていてくれていたというのに申し訳ない。知らぬが仏。忘れてたとは口が裂けても言わない。

 

 

「はーい静かに」

 

にょき。声のする方を伺えば黄色い芋虫が教室の戸の側に倒れている。クラスメイト達のギョッとした視線をものともせず、這い出て来たのは全体的にモジャッとした中年1歩手前な男性。

……とても、見たことがあるというか、どう見ても我が恩師というか。

 

「1年A組の担任を受け持つことになった相澤消太だ、よろしくね」

 

イレイザーヘッドその人だった。

まさかの再会に私は思わず目を見開き固まる。え。先生が担任って言った? 言ったよね、どうしよう嬉しい。予想外の再会ラッシュに少し脳内が混乱しているが、嬉しいものは嬉しい。 そしてイズクもまた、大好きなイレイザーヘッドとの再会に大興奮の様子。すぐにでも飛びつこうとするイズクを間一髪で抑え込んで阻止した。ステイ、ステイ。気持ちはわかるけど今はダメだ。いいね?

 

しかしまぁ。思う以上に世界は狭い。

ね、イズク。




自己満足の好き勝手に書いてます!!(及び腰)
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