ではよろしく
グランドではISスーツに身を包んだウチのクラスが整列しており、そして生徒達に対面する様にジャージを着た姉貴達、教師メンツが並んでいる。
その中で姉貴が
「これからISの基本的な飛行の実演して貰う。―――――織斑兄弟、オルコット」
「分かりましたわ。」
「――――おう。」
そして呼ばれた俺は挙手して
「俺、早く飛べないんですけど・・・。」
「そんな事は分かっている。とりあえず展開しておけ。」
「――――了解ですっと。」
そう言ってとりあえず指輪に意識を集中させて展開したオーヴェインの姿は相変わらず飛ぶのに適していない恐竜と戦車を思わせる重厚な機体だ。近くにオルコット嬢のブルーティアーズも展開されているが、一夏はもたついているのを見て姉貴は
「流石代表候補生とでも言っておこうか、オルコット。織斑兄、日が浅いにしてはなかなかの速さだ。そのまま精進しろ。織斑弟。いつまで掛かっている熟練したIS操縦者なら一秒もかからないぞ。」
そう言われて一夏は集中してやっとこさ展開する。二人のを見ていると二人にはアンロックパーツが付いているのに俺のO・キャノンのパーツは背中に完全に取り付けている。二人みたいにブースターやバーニアなどのアンロックの推進ユニットが付いていれば早く飛べるんじゃないかと思うんだが、無理すればはやく飛べるし別に良いか。そして全員展開が終了したのを確認すると
「三人とも展開できたな。オルコット。織斑弟。――――飛べ。」
そう言って二人は返事をするとオルコット嬢は垂直に綺麗に空に飛び出すが、一夏は飛び上がったのは良いがふらついて身を後転させるがなんとか上昇してオルコット嬢と共に空に飛んだ。俺を含めた皆はその飛行を見ているとなんか良い雰囲気だ。コレはいけないと思って俺は箒ちゃんに近づいて
「おいおい、箒ちゃん。良いのかよ?お嬢さんと一夏がいちゃいちゃして――――ひっ!?」
そう言うと箒ちゃんがチョップの構えをして俺を威嚇してくる。今この中で一番堅いISを装備しているのに何時もの痛みが蘇って怯んでしまった俺、その光景を見て束の姉貴は
「箒ちゃん。ホント苦労するね。」
「ええ、先生。まったくです。」
なんだよ。人が気をきかせているってのにこの仕打ち、何時もはあまり息も合わない姉妹なのに此処に来て俺が何悪者みたいに言われてんですけど、何?俺が悪いの?途中で姉貴に何やっていると怒られた。・・・・・・・はっ!!?そうか、箒ちゃんはオルコット嬢が一夏にどうアプローチしようと既に勝負は終わっていると言う事か、それに旦那がモテると言う事は光栄だなと思っていると言う事か、そうだな自分の旦那がモテるって自分が良い男と一緒になったと自慢して箒ちゃんは一夏がちゃんと戻ってくると信じている。愛だなぁ。俺が知らない間にそこまで進んでいたとは・・・・・。
と秋十が腕を組んでうんうんと何か納得しているのを二人が
「先生、予備機を持ってませんか?あのツラに凄く叩きこみたいのですが?」
「いやぁ、箒ちゃん気持ちは分かるけどそれ無理だよ。前に一回だけ相談して貰ったけど、やっぱりいっくんは鈍感だけどあっくんは多分いっくんがモテていたから自分がモテるわけがないって否定しているが原因だと思うんだ。」
「今そう言われると確信が持てます。」
「箒ちゃん、お姉ぇちゃん先生だけど、敬語は別に良いよ?」
「無理です。貴女は先生。私、生徒ですから。」
「箒ちゃん!!」
「うわぁ!?ひっつくなぁ!!」
なんか騒いでいるので視線を二人に向けるとあまりにも釣れない妹にハグを強要する姉先生に千冬の姉貴が”何をやっている馬鹿者!!”姉貴がチョップを束の姉貴の脳天に風船が破裂する様な音を響かせて、炸裂させた。声にならない悲鳴を出した後にあまりの痛みに箒ちゃんを解放して彼女が離れるとゆっくりと叩かれた頭を抱えて座り込んでしまった。・・・・・今思い出した。箒チョップの原点は姉貴の殺人チョップだった。叩かれた彼女が抗議しているが、仕事中だろと一蹴されて終わった。
そして姉貴が十センチ開けて降りて来いと遊覧飛行みたいに飛んでいる二人に言うとまずオルコット嬢が成功させ、それを見た一夏が意気込んでかなりのスピードで突っ込んできているが、これって・・・・。と思っていると姉貴が
「・・・・総員、退避。巻き込まれたい者は止めんがさっさと動け、来るぞ」
そう言って皆が着弾地点より数百メートル離れ始めた俺も脚のキャタピラを作動、徐行させてその場を離れる。次の瞬間、隕石が落ちてきたのよりスケールが小さいがグラウンドに膨大な土煙を上げて大穴をあけた。
土煙が晴れると大穴の中心で顔から突っ込んだ一夏がおり、見た目からしても怪我は無いみたいだ。流石IS、あんな勢いで突っ込んだにもかかわらず無傷とは安全性も万全だな。そこへISを解除して駆け寄るオルコット嬢、おい箒ちゃん駆け寄るくらいしろよ。安心したのは分かるが、あまり鼻に掛けないようなそぶりをしていると向こうにとられるぞっと思ったらまたチョップを構えて威嚇された。こ、こいつ俺の思考を呼んでいるのか!?
「馬鹿者。グランドに穴を開けてどうする。」
姉貴のお怒りだ。なんかオルコットが一夏さんとか言ってるし、アレはガチだぞ。ガチで惚れているな。でも一夏は気づいている様子ないし、今まで高飛車ぶっていて名前さえも呼ばなかった所為かその事に驚いているんだもんな。俺はとりあえず箒ちゃんの味方だが、他の奴の邪魔をするつもりはないから特に何も言わないが、近けぇなおい、ISスーツは薄着だからその艶めかしい肢体で一夏を落とす気か?ふはははははは!!無駄だ!!一夏にはそんなの効かんぞ!!姉貴のだらしない格好等で女体には耐性があるからな!!スタイルが良いからって誘惑されることなど無いのだ!!っと思った瞬間、姉貴と箒ちゃんの両方から俺に対して突き刺さる様な殺気が・・・。
命の危険があったが何事もなかったかのように整列し直して展開し直した二人を含めた俺達は左から適当に一夏、オルコット、秋十の順に並んでから姉貴が
「では、三人とも武装を展開しろ。」
俺は背部のユニットを作動、展開して頭の上にあるロッド状の柄を掴んでO・ハンマーと砲台のパーツと分離させて降ろしてた次の瞬間
左から突き出た棒状の何かが俺の横っ面におもいっきり突きだされ、突然の事におたおたしながらも後ろ下がる事でなんとか避けた。
良く見るとオルコット嬢が使っている光学兵器のライフル”スターライトmkⅢ”の白い銃身が俺の頭があった所に目に入る。危ないだろと俺が言う前に姉貴が
「遅いぞ織斑。0.5秒で出せるようになれ。オルコットは申し分ないが、そのポーズは止めろ。真横に銃身を展開して誰を撃つ気だ?」
「で、ですがコレは私のイメージを纏める為に必要な―――。」
「お前はそれを被害者を出すまで同じ事を言うつもりか?――――突き出した銃身の先を見てみろ。」
姉貴に言われて銃身の先に一歩後ろに下がった俺に気づき
「え?――――あっ!?すみません!お義兄様!」
「誰がお義兄様だ!!気が早ぇよ!!つか、お嬢さん。それ本気であぶねぇから止めろ。」
「わ、わかりましたわ。――――すみません。少々私も気が早まってしまいましたわね。秋十さん。それと私の事はお嬢さんでは無くセシリアとお呼びになってください。」
何、この娘。不祥事をきっかけにぐいぐいと家族にアピールまでし始めてるんですが?図太いにも程があるだろアンタ。それにその言い方だと俺に気が早い事で謝っている様にしてか聞こえないのですが、クラスの皆は”おおっ!”って感心しているのか自分をあそこまで押しだすキャラに戦慄を覚え始めているのか知らないが、マジで危なかったぞ今のはと思っていると姉貴が
「何を馬鹿なコントをしているんだ。――――オルコットこれ以上言わなくても分かるな?」
「は、はい。今後は気おつけます。」
そして俺に姉貴が視線を向けて
「織斑兄、私が言っていたことを聞いていなかったのか?」
「はい?」
「私は武装を展開しろと言ったんだ。背中にある武装を出せとは言っていない。」
「ああ、その事ですか。前のは貸して貰った武装で本来は俺の武装はコレしかないですけど?」
「何?本当か篠ノ之先生。」
「うん。今のオーヴェインには最低の装備しか積んでいないから拡張領域《バススロット》は今中身はすっからかんだよ。」
「・・・・・・ふむ。そうか」
それを聞き納得する姉貴、バススロット《拡張領域》とは後付け武装を量子変換して収納し、自由に出し入れする事が出来るISの本来持つ機能の一つだ。だが、前回俺がオーヴェインで使っていたガルムとヴェントの武装は俺が使いやすかったから俺が貸出申請を出して試合に使える様にして貰ってたのだ。でもあの時は予め中にそれ以外の何が入っているかとも思ったのだが、申請を出した武装しか入っていなかったのは正直驚いた。普通に一夏みたいにバススロット《拡張領域》が武装一個で一杯になっているのなら分かるがそうでもないのに背中に付いているのだけってマジでヤバかったよ。というか、束の姉貴に聞くと申請を出さなくても此方からやるつもりだったらしい、あのまま出ていたら徒手空拳で戦わないといけなくなっていたからな。とか思っていたら姉貴が授業の終了を告げていた。去っていく姉貴が一夏に穴を埋めておけよ言っていたが、苦笑していた俺に一夏が藁にも縋る様な表情で
「あ、秋十兄ぃ・・・・・。」
「・・・・・。」
俺はその表情を見ながら少し考えていると後ろから箒ちゃんが
「戻らないのか?」
おいおいそれはねぇだろと思うのだが、弄る気力も無く俺は
「・・・・・はぁ、先に行っててくれ、コイツの手伝いしてから戻る。」
「秋十兄ぃ・・・・。」
「自業自得だ。と言っておくがそれでも手伝うのなら止めん。それに少し動きたい気分だからな。ISが無いが私も手伝おう。」
「箒ちゃんにしては珍しいな・・・・。」
「箒・・・・。」
「う、うるさいぞ!!私の気が変わらないうちにさっさとISを展開して作業を始めろ!!私も戻ってスコップでも取ってくる!!」
そう言って怒りながらスコップを取りに戻ってしまった。それを見ていた俺は
「ホント素直じゃねぇよな。」
「いや、絶対誤解してるって」
鈍感の外野がうるさいが知ったことではない、俺と一夏は再びISを展開して俺は堅くなっている所をO・ハンマーで叩いて砕き、一夏は山田先生が言っていた土木作業用の桑の様な奴で盛り上がった部分を引っかき回している作業中に俺が
「まったく、クラス代表なんだからもうちょっと頑張れよな。一夏君。」
「いや、秋十兄ぃが辞退したから俺がなることになったんだろうが。」
前に進言してセシリアちゃんとやった次の日に一夏とやってみたくて試合をやってみたが、やはり近づいての一撃必殺を主体にした戦法なので距離を取って撃ちまくってたら普通に勝った。最後に一発当て動き纏まった所に胸部中心、両腕、腹部に十字の形に四発ほど撃ち込んで勝負がついた。そして二人の動きを考えて姉貴に報告してセシリアちゃんにしたんのだが、彼女が辞退したから残った一夏になったのだ。
そんな俺は不満そうに桑を振り下ろしている一夏に
「こう言うもんは勝ったもんに決める権利が有るんだよ。―――――姉貴に言って俺がセシリアちゃんに譲ったんだがね。俺ってクラスの仕事とか面倒事は嫌だしな。俺的には委員長なら彼女の方が向いてると思ったんだよ。」
「そのセシリアが俺にクラス代表の座を譲ったんだよ。まったくなんで俺なんかを・・・。」
いやそれはお前の恰好良いとこが見たいとか、男を立てるとかの意味合いもあるんだけどな。そう自分で分かるまで言うとつもりはないけどマジで鈍感だよなぁコイツ、これで気づかないとかどうかしていると思うけどそのおかげでまだ箒ちゃんに勝ち目が無くならない理由でもあるんだよな。昨日は朝にそれを聞かされてビックリしていた一夏の顔は最高だったと言っておこう。その後で箒ちゃんに”まったくめんどくさがりおって”と駄目だしされた。思った答えと違うがコレも照れ隠しだと思えば納得がいく、そんな事を考えて言るとスコップを持った箒ちゃんが来て三人でやると心なしか早く終わった。姉貴に言ったらISを二機も使っているのだがら早く終わって当然だと言いそうだがな。そして今日は晩に食堂でクラス代表就任パーティーをすると言うので更衣室のシャワーを使って汗を流してから暗くなった時間帯に言われた通りに食堂に行くと皆集まっているおり、祝ってくれているのに戸惑っている一夏、分かっているがどうにも腑に落ちない彼にはしょうがないとしか言いようがない。皆、一夏、一夏とちやほやしているのに特に気にしていないかのように夕食を取っている箒ちゃん。実習の時と良いホントに一夏を信じているんだな。良きかな良きかなと思っていたら、彼女は溜息をついていた。そんな感じでパーティーを過ごしているとフラッシュが焚かれ、光った方向を見ると視線を向けるとメガネをかけて結い上げた上級生がゴツいカメラを持って俺達に
「はいは~い。新聞部で~す。私、新聞部副部長、黛 薫子です。クラス代表に就任した織斑一夏君にクラス代表になった感想を効かせてくれるかな?」
「まぁ・・・・なんというか頑張ります。」
「ちょっとなんかこうもっと言う事なんですか?まぁ良いです捏造しておきますので・・・。」
「――――おい!」
「では次にセシリアちゃんもお願いね。」
「わ、私ですか?私はこう言うのは好きではないのですが仕方が無いですわね。――――まず私がクラス代表を辞退したのは・・・。」
「長くなりそうだから適当に織斑弟君にほ―――――。」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?!?!?!?!!?」
なんか先輩が言いそうになるのを意識が羞恥で一杯なセシリアちゃんが止めに入るのを何をやっているのだろうと眉をひそめて見ている一夏。そして暫くして落ち着いてから彼女は
「ごめんごめん。」
「・・・・まったく。」
「まぁ次は本当なら弟君に勝ったセシリアちゃんを倒したお兄さん。織斑 秋十君に聞いてみようか。」
「早く飛べない俺より、飛べる二人方が今後を考えてもまだましだと思ったからだ。」
「あぁ、そう言えばお兄さんのISは余り早く飛べないんでしたよね。だから辞退したと?」
「負けるつもりでやろうとしてるわけじゃねぇが、ちょっとは希望が持てる方が良いだろう?」
「ふぅむ。少し消極的取られやすいコメント。捏造は確定ですね。」
この人、新聞に真実を書かないつもりだろうか?そんな事を思っていると先輩さんが専用機持ちで写真を取ると言うので一夏が真ん中でセシリアちゃんが右、俺が左と言った感じで並んでいると後で一夏とのツーショットが欲しいとセシリアちゃんが進言しているが、箒は食後にお茶を飲んで一服している。おい!それで良いのか箒ちゃん。とか思っていると先輩さんがカメラのシャッターボタンに手を掛けて
「は~い、取るよ。」
フラッシュが焚かれ、視界が元に戻った時にはクラスの一部が入り込んでいた。そして何故か箒ちゃんが俺の左隣に立っていた。なんで俺の横なんだ?行くなら一夏の隣ではと思ったが、多分言うと照れてチョップされるので言わない俺。それから翌日、授業が終わって放課後に申請を出してアリーナで練習する言うと何故か箒ちゃんがついてくるので一夏は良いのかと言うと箒チョップが炸裂した。
とりあえず俺はオーヴェイン、箒ちゃんは借りてきた打鉄だ。俺がほぼ感覚と言うか、効果音しかない瞬時加速《イグニッション・ブースト》のレクチャーを受けている真っ最中だが、はっきり言って何を言っているのか分からん。ビューンだか、ギューンだか言われても俺にはそれが何をしている所なのか皆目見当がつかん。しょうがないので教科書で読んだことを思い出しながらやっているが、それを満足そうな目で見られても俺はどう返せばいいのだ?そんな事をしていると突然、俺達に声を掛ける者が
「君が織斑 秋十君かい?」
「「――――?」」
そのハスキーボイスの凛々しい声に俺達が視線を向けると白に黒の混ざったタイガーストライプの色で短いウルフカットで決め、獲物を狙う獣の様な目釣り眼、綺麗な鼻立ち、薄い唇、そんな整った顔で好戦的な笑みを浮かべている。武骨なISを覗いて彼女の全体的に見ると必要以上の肉が付いていないが出ている所は出ていて引っ込む所は引っ込んでおり、野性的な感じでどっちかって言うと姉貴よりのタイプだ。そして髪と同じ色のジャケットの様なISスーツを身に纏って立っていた。彼女は続けて
「私はジェリカ・フォルザー。此処の三年だ。」
「その三年が俺に何の用ですかね?」
「――――まぁ良いか。君が新入生で強いという評判を聞いて、勝負がしたいのだが良いかい?」
先輩の事で俺が考えていると箒ちゃんが
「―――やるのか?」
「三年と勝負か・・・・。まぁ良い経験になりそうだしな。先輩。よろしくたのんます。」
俺がそう言うと彼女は少し腑に落ちない表情でいるのが気になるが、そんな事を気にし始める前に彼女は
「そうか、ではお互いピットに一度戻ろう。管制室は・・・隣の君は使った事はあるか?」
「少しぐらいなら・・・・。」
「では、準備が出来次第出て来てくれ。」
「了解だ。」
そして俺達がピットの方に戻ってから掛けられた貸し出し用の武装から自分が使えそうなヤツを探していると箒ちゃんが
「―――大丈夫なのか?」
「大丈夫って?ただの勝負だろ?」
「本当に言ってるのか?あの先輩、秋十が普通に申し出を受けたのに妙な表情をしていた。これには何かがあるかもしれないぞ?」
「―――多分な。だがこれは勝負が終わった後に種明かししてくれそうだし、胸を借りるつもりでやらせて貰うさ・・・。」
「そういうなら止めないが・・・。」
「ほいじゃ行こうか。管制室で見ていてくれ箒ちゃん。」
「ああ、わかった。」
俺は立てかけてあった中のヴェントよりも大口径で武骨な銃身の長いマガジン式スナイパーライフルと同規格の榴弾の入ったマガジンを持ち出し、武器を同期させると空中モニターに表示され
《ハンターライフル:72mm狙撃砲:<―――使用可能―――>》
試験と試合は両手でマシンガンとアサルトライフルを持って撃ちまくっていたがどっちかって言うと両手持ちのスナイパーライフルの方が使いやすいのだよな。貸し出しすると砲弾の使用弾数を書かないといけないから面倒なんだよな。特にマシンガンなんて撃った日にはマガジンで数えないといけないからめんどくさい所では無い。まぁいっちょ行きますか・・・先輩の真意も気になるし、言うなら肩すかしって感じだったんだよな。あの先輩の反応は・・・・。
「終われば分かるか・・・・。」
そう思いながら俺はカタパルトからアリーナに飛び出し、PICをカットして自由落下に任せて土煙上げて膝や足から衝撃吸収材を噴出させながら着地して向こうのカタパルトから出てきた彼女を包むISは前から見るとトラ耳の様にも見えるが、後ろに流す様な流線形のヘッドギアを着け、各関節は球体状の関節であり、丸太の様な剛腕と脚部でつま先や手の甲には抉る様な虎の様な小さい爪が付いており、背部には大きく球体状の四機に短い翼状の推進ユニットを備えており、色は髪と同じの白と黒のタイガーストライプで一言で言えばデカくてゴツいホワイトタイガーを思わせる機体だった。
「私はアメリカ有数のIS開発企業。そのテストパイロットでね。元々は量産機に当たるファング・クエイクの試作機を改良した機体だ。―――――見た目からして安直と思うのだが、名はタイガー・ファングという。」
そう彼女に合わせる様に空中モニターに機体データが表示され、仕様は近接格闘で六連式リボルバー・ブーストと呼ばれる球体状の推進ユニットと剛腕の単分子結晶ナックル、が特徴らしいが、データを見ると堅い装甲に突進力が半端無く、一撃の重いタンクファイターだ。デカいからあまり回避が上手いようにも見えないし、此方の方がパワーと防御力があるとは言え、あの腕からの一撃は受けない方が得策な気がする。それにあの分厚い装甲に覆われた大きな手の指先には爪の様な物まであるしな。そんなこと考えながらハンターライフルを量子化してバススロット《拡張領域》に入れて背部を作動、展開してO・ハンマーを手に持っていると彼女は
「では、始めようか?」
「箒ちゃん頼むわ。」
『わかった。通信回線を両方に繋げるぞ。――――――― 聞こえますか?先輩。』
「ああ、聞こえるよ。」
先輩の声を聞いて通信の有無を確認した後に呼吸を整え、深呼吸する様な音が通信から聞こえてから暫くして彼女は戦いの始まりの一声を出す。
『では、――――――――始め!』
爆音と共に秋十の眼前に食い殺さんとばかりに迫ってくる巨大な虎の落とす影に呑まれていた。次の瞬間、その強靭な爪が振り下ろされて轟音と土煙が二人を覆った。そして土煙の中から先に出来てたのは秋十だった。そして着地する頃には土煙が少し晴れてフォルザー先輩が強靭な爪を振り下ろしたままその場に居た。そして彼女は自分から距離を取ってに着地した秋十に
「――――ほう。口だけでは無かったということか、私としては嬉しい結果だな。」
「―――――?・・・・ったく、いきなりイグニッション・ブースト《瞬時加速》で沈めに来るとか。容赦ねぇな。」
「なぁに、コレで墜ちるのならそれまでの事だと言う事さ。」
「―――際ですか。」
そして俺はO・ハンマーを構える。最初のはマジでヤバかった。開始と同時にイグニッション・ブースト《瞬時加速》で間合いに入ってあのヤバい爪を振り下ろして来た。あの爪、指先に付いているデータにあった”超振動クロー”アレは物体を斬る物じゃなくて破砕する物だ。あんなもん食らったら装甲を抉られて無駄に多いシールドエネルギーなんてすぐにすっからかんにされる。内心焦っている俺の気持ちも気にしたそぶりも無く彼女は
「では、続きと行こうか。――――私を失望させないでくれよ?」
「まったく勝手な言いぐさですね。―――――!?」
彼女はもう一度飛び、タイガー・ファングの左の剛腕を走らせ下からその破壊の爪で何もかにも抉り取ろうと迫るが、俺はキャタピラを作動させて回避運動を取りながら抉ろうとする腕めがけて右横からO・ハンマーで叩き、堅い金属音を響かせてその軌道を逸らす。威力に仰け反るどころか、再度同じ様な強靭な爪を持った足で地面を踏ん張って前へ踏み込み推進ユニットを吹かせ、弾かれた腕と反対の腕を上から振り下ろそうとするがそれも同じく腕をO・ハンマーで叩いて軌道を逸らす。そこから体を入れ替える様に横から爪が襲うがそれも弾かれてフォルザー先輩は口が裂けた様な良い獲物を見つけた虎の様な笑みを見せ
「面白い!!私の爪が来る前に腕を叩いて落とすか!!」
「なんだかその爪、明らかに食らったらヤバいんで当たるつもりはないですよっと。」
「涼しい顔で言ってくれるね。それでこそやり甲斐がある!!」
「まったく内心おっかなびっくりですよ。」
「またまたぁ!!」
軽い会話をしているが、彼女の猛攻を俺に届く前に叩き落とすのは正直骨が折れる作業だ。少しでも集中が途切れれば確実に食われる。現在進行形で周りにあの爪の余波が地面に字の如く爪痕を残していっており、互いに入れ替わる様に動きまわる二匹、BGMは重い金属音と甲高い振動音が響き合う。一匹はあまりの歓喜に瞳孔を開いて襲ってくる虎、もう一匹はめんどくさそうにあしらう作業に没頭している内心ビビっている恐竜。彼等は重さを感じさせない様な速い動きで互いに高い次元で拮抗し合っていた。だが先に動く者がおり、それは虎の方であった。O・ハンマーで弾いた後にイグニッション・ブースト《瞬時加速》で突っ込んできた所を横に飛んでかわし、通り過ぎて行った後に見失わない為に彼女に身体を向けようとした瞬間に開始時と同じイグニッション・ブースト《瞬時加速》の爆音に肩越しに視線を向けて気づいた時には間合いに入られていた。
「――――!?」
俺は直に前のめりに飛ぶ事で辛うじて回避することでき、ハンドスプリングの要領で俺は片腕を突いてパワーアシスト付きの腕をばねの様に曲げて突き出すことで飛んで両足で着地するが、同じ様な爆音が響かせ、身を仰け反らせるが、胸部装甲に軽い爪痕を残す。そして通過した此方から大分距離を開けた位置で腕を突き出したように止まっている彼女がゆっくりと此方に体を動かして視界に入れながら
「ほう。コレも避けるか、君は一年にしてこの技量とはなかなかだな。」
「そうですか。今のは一番ヤバかった。”何をやったんですか?”って聞いても教えてはくれませんよね?」
「ふむ。終わったら教えても良いがね!!」
「――――っ!?」
同じ様に突っ込んで来る彼女に俺は直にキャタピラを作動させて突撃してくる彼女を避けて次に突っ込んで来る前に此方も低出力のイグニッション・ブースト《瞬時加速》でその場から離れる事で死角からの攻撃をどうにか避ける。今のは何だ?速さが今までの段違いだった。多分、音からしてイグニッション・ブースト《瞬時加速》の類なのは分かるが、アレは一度取り込んだらもう一度取り込んで充填するまでに大分時間が掛かるのにそれを殆どタイムラグ無しで使って来やがる。でもアレも機体の仕様なんだろうな。まったくこっちは早く動くのが苦手だってのに・・・・!
俺はオーヴェインの機能をである”広域情報収集能力”を使う。その名の通り全域の気象から地形、相手の行動パターン解析、温度センサー、振動センサー、長距離レーダーなど色々な機能を盛り込んでおり、広域かつ正確な情報収集が可能、情報処理能力も通常IS以上だ。さらに味方とのデータリンクが可能、味方の支援向きの能力である。何でも良いからコイツにも仕事をして貰わないと糸口が見つけられない。俺はどうにか避けているがどんどん機体に引っかいた様に抉れていく装甲、掠っただけでも確実にバラバラにされる。オーヴェインにデータを空中モニターに出させながら俺は距離を取る為にイグニッション・ブースト《瞬時加速》で彼女の作りだす爪撃の包囲網から飛び出そうと少ない推進機を爆発的に吹かせる。だが、
「―――逃がすとでも思っているのかい?」
俺は声のする方に向くと並走するように飛んでいる先輩がいた。そして此方に身体を向けて構えると重い金属音と共に四機の推進ユニットがゆっくりと回転して収束音が聞こえた所でPICをカットして両脚付いて急ブレーキをかけた次の瞬間、爆音共に俺の前を猛スピードで通過していく、だがようやくあの動きの種が分かったぞ。最初はあの”六連式リボルバー・ブースト”っていうのは、あの球体状の推進ユニットは推進機を六連式回転弾倉の様に個別に充填してイグニッション・ブースト《瞬時加速》を充填時間無しで加速できるが、その分シールドエネルギーがガスガス削っての加速だからな。そしてあの攻撃力も納得がいく、アレを直撃させれば確実に沈められる。なんとまぁ元が取れる様に良く出来てるなぁ・・・・。それにアレは直に止まる事が出来ないようで少し勢いが軽くなった後に反転してイグニッション・ブースト《瞬時加速》して近づいてひっかきに来て、さらに場も引っ掻き廻すから一石二鳥でもあるな。多分残量自体も通常機体よりかなり多く持っているだろうが、シールドエネルギーが尽きる前にこっちを仕留めればどうにかなるだろう的な感じで攻めているんだろうなアレは・・・。どうする?シールドエネルギーが尽きるまで耐え抜くか?俺でも通常速度なら対応できるがぁ・・・駄目だな。掠っている状態でもかなりのダメージがあるのに尽きる前にこっちがやられてしまう可能性がある。なら、こっちから出るしかないだろうな。
そして俺は勢いを殺しきれずに反転したまま後ろに下がっている先輩はすでに次のイグニッション・ブースト《瞬時加速》の体勢に入っているのが見え、俺は背部を作動、展開してO・ハンマーを変形させて収納して俺は量子化していたハンターライフルと榴弾入りのマガジンをハンターライフルの銃身のサイドに取り付けている物を構えながら狙いを着けキャタピラを作動させて後方へ下がるのを見て
「――――もう分かってしまったか、だがコレで終わりにする!!」
爆音を響かせ、イグニッション・ブースト《瞬時加速》で此方に向かってくるが、俺はライフルの引き金を引くとISライフル用の配合火薬を炸裂させて徹甲弾を撃ち出し、腹に響く様な重低音の発砲音が響かせる。こっちに向かってくるに対して前から砲弾級の弾がそれ以上の速度で飛んできているからそのまま行くと通常より余計にダメージがでかくなるな。だが、彼女はアンロックの左の球体状の推進ユニットが金属音を鳴らし、回転してユニット自体を横に向けて再度、イグニッション・ブースト《瞬時加速》を使って横に吹かせて弾丸を避け、さらに加速する為に推進ユニット向けてイグニッション・ブースト《瞬時加速》で突撃しようとしてくるが、爆発と同時に
「――――――意気込んでいるとこ悪いが、今だね!」
突然、彼女の目の前が爆発の黒煙が彼女の視界を覆う。いきなりの直撃に完全に仰け反って背骨が伸びきってしまっており、食らっている彼女自身一瞬何を食らったのか分からず困惑していたが、急激に減っているシールドエネルギーが目に入って動こうと両腕を動かそうとしたが両方の二の腕にも爆発が起こり、腹部、胸部の順に合計四回も爆発が起こってから、試合終了のブザーが鳴った。そしてブザーが鳴ったことを確認した俺は構えていた銃口から硝煙が立ち上っている榴弾のマガジンを指したライフルを下ろし、黒煙が風に流されて姿を現す先輩は緊張を解く様に深呼吸してから少し笑みを作り
「ふぅ。――――そう言えば射撃は君の得意分野だったな。あまりにも楽しくて忘れていたよ。」
「もう少し判断が遅かったら負けていたのは俺だったですがね。」
「だが、勝ったのは君だ。――――今回は楽しめたありがとう。」
俺は外して足元に落ちていた最初に付けていたマガジンを取りながら
「楽しかったついでに聞いて良いですか?」
「何かね?」
「先輩は何処で俺の事を知ったんですか?なんか先輩の想像と俺が合致しなくて眉を顰めていたようにも見えたのですが。」
「ああ、そのことか。――――君の事を知ったのは掲示板に張っていた新聞部の新聞だ。」
俺はその事を聞いてあの捏造新聞の事だと思ってさらに彼女に聞く
「ま、まさか、なんかマズイ事でも書いていたんですか?」
そんな焦った表情で聞く俺に意地悪そうな笑みさせながら先輩は
「私の口から聞くより自分の目で見た方が良いぞ。なかなか面白いこと書いていたからな。―――――では、私の目的は済んだからな失礼させて貰おう。」
「あ、ちょ!?」
俺が止める声も聞かずにそのまま行ってしまった。それから仕方が無いので残り時間は箒ちゃんと練習の続きをやってから簡単にアリーナの整備してオーヴェインの傷跡の付いた装甲板くらいは換えてそのまま寮に帰る際になかなか良かったぞと箒ちゃんからの褒め言葉を貰った俺はお礼と言ってから一夏共よろしくやれよと言った瞬間、箒チョップが炸裂した。
次の日、先輩の言う通りに掲示板に向かおうとしたら別の先輩から勝負を申し込まれ、まぁ明日でも良いかと思って了承。そんでどうにか勝った。そして次の日、掲示板の新聞を見ようとしたらまたもや別の先輩に勝負を挑まれた。明日で良いかと思ってまた了承。勝った。そしてそしてまた次の日、教室を出た所で勝負を挑まれた。流石に可笑しいと思って断るがあまりにもしつこいのでしぶしぶ了承。勝った。そしてそしてそして・・・・・。とずるずると二週間後、俺は新聞部の先輩のいるであろう教室に走っていって入口の前でじゃべっている先輩に新聞部副部長の黛先輩を呼んでくれと言うと何か少し引き気味に了承する。それもそのはず俺の目は完全に血走っているからだ。そして呼ばれた先輩がこっち来て
「あ、織斑のお兄さんの方じゃないですか。どうしたんですか?」
「どうしたんですかじゃねぇ!!あの記事はどう言うつもりだ!!」
「どう言うつもりって?」
「俺のコメント欄だよ!!なんだよアレ!!俺はどんな相手でも負けるつもりわねぇ。今日から学園最強この俺だ的な事を書きやがって!!その所為であの取材の次の日から引っ切り無しに”一年風情が調子に盛るなよ”って感じの先輩が勝負を挑んで来るようになっただろうが!!どうしてくれんだよ!!多い時には二人、休みなんて六人とやってもう二桁行ったよ!!」
「でも全部勝ったんだよね。ネタが尽きないからこっちとしては大助かりだよ。」
「こっちは大迷惑だがな!!――――っ!!?」
話していると周りの女子がいつの間にか居なくなっていて明らかに俺を獲物を狙う様な目で見ている奴らが
「「「「「「「「「「「「織斑 秋十!!勝負!!」」」」」」」」」」」
俺は迫ってくる女子共の波を掻い潜りながら先輩に
「うっわ!!!?くっそ!!また来るからな文屋の先輩!!」
「それじゃあ、またね~。」
俺が逃げて行く後ろ姿に手を振って見送ってからそのまま取材に行った。そして学園の何処かの一室。
書斎用の大きな机を前に座って大量の書類を見て行き、一つの記事に目が行くそこには”黒いサザンクロス 織斑 秋十またも勝利!!”と書かれて前にあるソファと大きな装飾の付いた長方形のテーブルで書類を処理しているおっとりとした感じであるが、てきぱきと仕事をこなしていくメガネをかけた女の子に声を掛ける。
「――――ねぇ。」
「なんでしょうか?」
「この記事見て見て、面白いこと書いているわよ。」
「―――――はぁ?」
そして眼鏡をかけた女子は立って見える位置まで移動してから記事を見て
「ああ、それは最近話題の一年生、織斑 秋十君ですね。なんでも聞いた話だと捏造コメントの所為で毎日放課後とか休日に勝負を挑まれているそうな。」
「ふぅん。って捏造なのアレ?」
「はい、妹が聞いたのは”負けるつもりでやろうしては無いが、ちょっとは希望が持てる方が良い”と仰っていたそうです。」
「そうなんだ。―――この黒いサザンクロスって何なの?」
「それは標的に四発の弾丸を撃ち込み、観客席から見て南十字星の様に見えた所から”黒いサザンクロス”と来ているらしいのですが、な何故黒いかは知りません。――――――彼自身が名乗っているわけじゃない様ですから、多分勝手に新聞部が彼の通り名として書いたのではないでしょうか?」
「ふぅん。面白そうな子ね。」
「あまりちょっかいをお出しにならない様にしてくださいよ。お嬢様はこの方のお陰で仕事の時間が増えたのですからこの期に書類を片付けてください。」
「ぶ~。良いじゃないのよ。」
「普段からでもあまりなされないのですから。ちゃんとしてください。」
「は~い。」
そして眼鏡の彼女が戻っていく中、その記事を持っていた彼女は終始、新しいおもちゃを見つけた様な目をしていた。
ではまた次回