魔獣創造を手に入れたが開き直ることにした   作:ダ・ヴィンチちゃん

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コカビエル

 その昔、一人の神は未来を恐れた。

 外から来る神々に匹敵、凌駕する強大な力を持つ外敵が来るのを全知故に知ってしまったから。しかし彼の全能は、外の世界に対しては余りに小さかった。

 故に、恨まれるのを承知で、混沌を生むのを承知で様々な神話から良質な魂を集め、或いは未来それに魂が宿るように武器を造った。目をくらませるための、どうでも良い量産品も加えて。

 そして最後に目を付けたのは二匹のドラゴン。

 ドラゴンは時として己の予想を超えることがある。聖女の舎弟になった時は思わずマジか、と呟くほどに予想外の結果を残す。

 故に、神をも越える二匹のドラゴンを戦争中だった二勢力を巻き込み殺し、封印した。

 これで準備は整った。ああ、安心だ。きっと多くの不幸を生むだろうが、外敵が来る頃までにはきっと手を取り合える。子供達をそう信じている。

 最後に心残りがあるとすれば、あの神滅具。あれは使い手によっては、外敵以上の脅威となる。しかし使い手によっては最も心強い存在にもなるのだ。どうか、心優しき者にあれを…………

 しかし、だ。先も告げたようにこの神は外の世界から見れば全能ではなく、ましてやそれが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ともなれば叶うはずもない。

 

 

 

 

「神が、いない?」

 

 ここは駒王町。日本の一つの町。

 ここには現在、大戦後お互いに不干渉を貫いていたはずの堕天使、悪魔、そして天使の部下である教会の信徒がそろっていた。

 そして、堕天使のコカビエルから放たれた言葉に信徒であるゼノヴィアと元信徒であるアーシアが目を見開かせて震えていた。

 

「嘘だ………嘘だ……」

「主は、いないのですか?ならば、私達に与えられる愛は」

「既に死んでいる者がいったいどうやって人を愛するというのだ?」

 

 くくく、と笑うコカビエルにアーシアはフッと意識を手放す。イッセーが慌ててアーシアを支え上空のコカビエルを睨みつけるがコカビエルは気にもとめない。彼程度、敵にすらならないのだから。

 ゼノヴィアも絶望に押しつぶされそうになったその時だった。

 

「あの、もし………コカビエル様はいらっしゃいませんか?」

「「「!?」」」

「ん?」

 

 唐突に、この場にいた誰の者でもない声が響く。全員が其方に振り返り、それを見た。

 それは純白の修道女の格好をした美しい女性の姿をしており、背には六対12枚の純白の翼を持ち頭には幾何学的な光輪が浮かんでいる。一言で表すなら、天使という言葉がしっくりくる。

 

「何者だ、貴様は?」

「あ、その黒い翼はもしや貴方様がコカビエル様ですか?始めまして、私の名はヴェーラ。神の命により、貴方様を殺しに来たものです」

 

 神? 神と言ったか、この天使は!?

 

 ゼノヴィアはバッと顔を上げるが、コカビエルはふん、と鼻を鳴らす。

 

「一見天使に見えるが天使ではないな? どこの神話の者だ」

「どこの、と言われても……強いて言うなら魔獣神話とでも名付けましょうか。私は、神滅具(ロンギヌス)が一つ『魔獣創造』(アナイアレイション・メーカー)から生み出された魔獣ですので」

「────」

 

 今度こそゼノヴィアが固まる。あれは神の造った天使ではないらしい。神が死んでいないと否定する材料が一つ失われた。

 

「ふん。人間如きの模造品が俺を殺す、か………まあ、極めれば神さえ殺せるというのだから強ち大きくでたわけではないのか?」

 

 ヴェーラを前にコカビエルは不適に笑う。強者と戦うことこそ彼の喜び。ヴェーラが神を殺せるほどの力の持ち主なのかは知らないが、まあ良い。こうして派遣される程度には実力者なのだろう。

 

「はい。これでも『信仰の将』という位を携わった身。十分な強さを持つと自負しております」

「面白い。では、やろうか」

「………戦うのですね。解りました………せめて、苦しまぬように手加減いたします」

「大言もそこまでにしろ小娘が!」

 

 と、コカビエルが光の槍を放つ。地面に佇み何も出来ないでいる悪魔達なら魂すら残さず消し去る槍。だが──

 

「光よ──散りなさい」

 

 ヴェーラが片手を翳すと光の槍は霧散し光輪に吸い込まれていく。

 

「───何?」

「私に聖なる力は効きませんよ。もちろん、それ以外の攻撃にも耐えるつもりではありますが……聖なる力………いいえ、()()()()()()()()()()()()()()

 

 そう造られているから。と、微笑むヴェーラ。

 彼女の役目はまさにそれなのだ。己を産んだ、己の神以外の存在を拒絶する魔獣。

 

「なんて、望まれながらも相手の力が強すぎると呑みきれないんですけどね。そうあれと望まれ、そうあれなかった未熟な身でお恥ずかしい」

 

 と、照れたように笑うヴェーラ。ですが、と続ける。

 

「この程度の力なら大丈夫ですね。良かった、これなら主命を果たせる」

「────ッ!なめるな!」

 

 その言葉にコカビエルが激高し大量の光の槍を生み出す。が、それよりも速く───

 

「光よ、貫きなさい」

「────!」

 

 コカビエルの物より遙かに濃密な光が線となり放たれコカビエルの側頭部が消し飛ぶ。

 

「あ、申し訳ありません!頭を狙ったのですが───」

「ぐう──!?」

 

 気を使われている。敵であるのに………いや、敵とすら思われていない。

 

「ふざけるな!」

「ええ、本当に。申し訳ありません。今度はちゃんと殺しますので………光よ降り注ぎなさい」

 

 宣言通り光の雨が降り注ぐ。一つ一つが先程の光の線よりも強力な光の豪雨。コカビエルは抗う術もなく消し飛んだ。

 

 

 

「………さて」

 

 と、ヴェーラがイッセー達に向き直る。コカビエルをあっさり殺したヴェーラ。それが自分達に意識を向けた。そして、警戒していたのに何時の間にか目の前に現れる。

 

「あの、顔色が悪いですが大丈夫でしょうか?」

 

 心の底から心配しているような声色に、表情。

 

「ええと、こういう時は確か………大丈夫ですか、おっぱい揉みます?」

「揉みます!」

 

 その言葉に脊髄反射するイッセーだが直ぐに主であるリアス達が窘める。

 

「イッセー!こんな時まで!」

「駄目ですわよイッセー君。少しは警戒しませんと」

「あらあらうふふ。どうやら慕われているようで……私の一言は余計でしたね。失礼いたしました」

 

 スッとスカートを摘まみお辞儀するヴェーラからは敵意を感じない。少しだけ警戒心を解く。

 

「貴方は何者かしら?」

「主命によりコカビエル様を討ちに来た我が神の僕にございます」

「その主とやらは、何を目的に───」

 

 と、リアスが問いかけようとした時、学園を包んでいた結界が破壊され、一条の光がヴェーラに向かって迫り、ヴェーラの腕が吹き飛ばされる。

 

「…………貴方は?」

「白龍皇……」

 

 白い鎧に身を包んだ男にヴェーラが問いかけるとそんな言葉が帰ってきた。

 

「コカビエルを捕らえるように言われていたんだが、どうやら死んでしまったらしい。せっかく戦えると思ったのにな……まあ、その代わりさ」

「あらまあ……シュラハトと同じタイプでしょうか?申し訳ありません、私はもう帰ります。光よ、輝きなさい」

「─────!?」

 

 目を焼く強烈な閃光。それが晴れるとヴェーラの姿はどこにもなかった。

 

 

 

 

「ただいま戻りました、我が神よ」

 

 次元の狭間を遊泳する気配遮断と迷彩能力を持った巨大な鯨。その中に広がる鯨よりも巨大な空間に存在する日本家屋の縁側で西瓜を食う褐色銀髪の少年。名をエミヤ・リリィ。本名は別にあった気もするが忘れて適当に付けた。

 

「ん、どうなった?」

「はい。コカビエル様は無事倒しました………」

「ん、良くやった」

 

 エミヤの言葉に感極まったように震えるヴェーラ。

 

「これで俺の菓子も安泰だな」

 

 そう、それがエミヤがヴェーラにコカビエルの対処を命じた理由。行きつけの菓子屋があるから街を壊されると困る。だから町を破壊しようとしているコカビエルを始末するように命じたのだ。

 

「ヴェーラもほら、褒美だ。その菓子屋の菓子」

「そんな! エミヤ様のお菓子をいただくなんて……」

「そうか」

 

 ぱくんとそのまま菓子を食うエミヤ。

 

「しかし堕天使幹部が聖剣盗んで悪魔の領地かぁ……世も荒れるな」

「いかがなさいます?」

「俺もそろそろ表に出ようかねぇ……何時までも隠れていられるほどこの世界は甘くないだろうしなぁ」




ヴェーラ
『信仰の将』
見た目は幾何学的な光輪を持った修道女姿の天使。
能力は聖なる力や神の力を吸収し己の力に変えるというもの。本人自身も単体で強力な光を扱える。
創造主であるエミヤを神として信仰しており、その命令を絶対としているが出来るだけ苦しめないように命令を果たそうとするなど慈愛を持っている。

エミヤ・リリィ
『魔獣の創造主』
気がついたらヤバそうな能力を持って転生していた転生者。基本的には娯楽好きで快楽主義者。
限界を超えた力を与えるため心が必要と考え強い情動を『将』達に与える。
転生得点は倫理観の消去と世界に存在する物語の鍵になりそうなもの三つ。
『王の駒』『幽世の聖杯』『リリス』
リリスの肉を取り込んでいる『超越者』。
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