魔獣創造を手に入れたが開き直ることにした 作:ダ・ヴィンチちゃん
「ギャスパー!良くも───!」
「おいおい俺はそもそも参加する義理がねーのに少しは謀反者退治に協力してやってたんだぜ?その俺を殺そうとしたんだ、殺されても文句は言えねーだろ」
睨んでくるリアス・グレモリー達にエミヤはそう返す。事実としてエミヤは悪魔と堕天使の裏切り者と吸血鬼に天使もここに来るまでに殺している。色々無礼を働いている悪魔達に味方してやらなくても良いだけの貸しがあるのに、だ。
「まあ、やろうってんなら良いけど………むしろ嬉しいね。お前は果たして、彼我の実力差を意志の力で乗り越えられるかな?」
RPGでは序盤の町では敵が弱く奥に進むほど強くなっている。おかげで主人公は順調に強くなれるわけだが、脅威と認定された時点で何故ラスボスは潰さないのか?エミヤはそんな疑問をオーフィスとリリスにされたことを思い出し、その時の答えを思い出す。
きっと退屈なのだろう、挑みにくる者がいないというのは。かといって魔王という立場がある以上種族のために生きなければならないから敵を倒すように命じる。が、エミヤの勢力は統治されるまでもなく規律が生まれている。故にエミヤは気にせず挑戦者の前に立つ。喜んで前に立つ。
「こいよ。惚れた男を殺されて、大切な仲間も殺されて、きれてるだろ?その思いをぶつけて見ろ」
その言葉と同時に滅びの力と雷光が飛んでくる。それを片手で弾くエミヤ。産毛が少し消えた。
「この力は、あの人の前で見せて乗り越えようと思っていましたの」
「力は力だろ?それ使うと死ぬわけでもあるまいに」
「イッセーは私のためにライザーを倒してくれた。ずっとあの子に助けられていた」
「たぶんお前より才能あったんだな」
「「許さない」」
エミヤがニィ、と笑みを浮かべる。怒りにより少しは強くなっているようだ。戦闘としては楽しめないが感情の観賞としては十分に───
「お嬢様、お逃げください!」
「………ん?」
と、横から声がかかる。見れば銀髪のメイド、グレイフィアが傷だらけの状態で飛んできて、光の槍に貫かれた。
「お、天使だ……多いな。お、ガブリエルじゃん」
「………貴方は、魔獣神様……?我々の援護、ではありませんよね絶対」
「解ってんじゃん」
「ですが悪魔を助けるとも思えない。目的は何です?」
ガブリエルはゆっくりと距離を測る。彼とともにいるのは、見たこともない魔獣だ。だからこそ余計怖い。と、警戒するガブリエルに向かって飛んでくる滅びの力。それを光で払う。
「良くも───!」
「………ええ。恨まれて当然です、否定はしません。ですが、これも主の命令なのです……」
と、リアスに向き直るガブリエル。エミヤが自分達を放置していると判断したのだろう。最終的には彼をどうにかできる手段があると聖書の神は言っていた。ならばここで敵対するのは馬鹿らしい。
「ん?ああ、好きにしろ。黒歌には悪いが、拒否られたしなぁ。仲間じゃないなら助けない」
ガブリエルの視線にエミヤが返すとホッと一息つく。そして改めてリアス達を見て、やはり気になりエミヤ達を見るともう姿は何処にもなかった。
「………やはり、恐ろしい方ですねぇ。残りの寿命が少ないとは言え、進んで相手したくはありませんよぉ」
残りの寿命は少ない、そう。彼女は、彼女達天使はもう先が長くない。聖書の神はエミヤを倒した後その力を使いまた創ればいいと、現存の天使達全ての寿命を引き替えに力を与えた。そうでなければ、魔王クラスのグレイフィアを一方的に殺せるはずがない。
「後残り一週間…………私も堕天すれば良かったですかねぇ………」
そもそも何故アザゼル達は堕天できたのだろうか?神を愛し、神の為に存在するように創られたのに。何故?
存在意義を変えられるほどの恋をしたという事だろうか?自分もそんな恋をしてみたかった……。
「まあ、それができないから今もなお天使などをしているわけですが……」
と、リアス・グレモリー達を見る。逃げる気はないらしい、助かる。
「ゼノヴィア・クァルタ……貴方はどうします?主が復活したのです。今一度此方につく気は?」
「私は悪魔という種族を知ったよ。人間と、何も変わらない。それを悪とし裁く今の神を、私は認めない」
「……………そうですか」
ガブリエルは光の槍を構える。近くにいるだけで皮膚が焼けるように熱い。だが、リアス達は戦う気だ。
いや何してるですか、逃げるべきでしょう。
小猫はそう叫びたかった。コカビエルの時だって、何時だって、自分たちが活躍した場などないだろうに、何故そんなにこの怒りが新たな力をくれるみたいな顔してるんだ。
木場のせいか?彼奴が土壇場で覚醒したから自分達も出きると思い上がったか?ふざけるな殺すぞ。第一それでもコカビエルにはとどかかなかったろう。
怒りだなんだで覚醒できる可能性もなければ、たった一回の覚醒で勝てるほどの都合のいい強さの相手でもない。
でも、みんな戦う気だ。ならば自分も───
──お前は本心では自分を守ってくれる奴が居ればそれで良いって思ってる──
「────ッ!」
あの時の声が脳内で再生される。動きが一瞬硬直し、次の瞬間光の槍の雨が降り注いだ。
「っう───」
生きている。何故?
解らない。手加減するとも思えないが、生きている。皆より後ろに下がっていたからだろうか?戦車だから?
違う、解ってる。懐にしまっていた短剣が熱を持つ。
「生きてましたか………」
この短剣から放たれるオーラが威力を殺していた。だから、皆ぎりぎり生きている。そう、ギリギリ。次くれば皆死ぬ。
──心臓にさせばはい終わり。簡単だろ?それだけで俺達の仲間だ──
ゴクリと唾を飲む。これを使えば、力が手に入る。あの魔獣達のように理不尽な力が……だが、他の皆は助からない。
自分を救ってくれたリアスが────救ってくれた?
なら、今はどうだ?救ってくれるのか、彼女が?あんなに弱いのにどうやって──
──お前は守ってくれるなら誰でも良いんだ。守るっていって目の前で体を張られりゃ、お前は簡単にそいつに惚れる。黒歌だって、庇ってくれたならお前は簡単に許すよ。お前はそう言う奴だ──
違う……!
違う違う違う違う違う違う違う!
私はそんなんじゃない、部長を、朱乃さんを、祐斗先輩を、アーシア先輩を、ゼノヴィア先輩を大切に思っている。見捨てるなんてしない!
と、小猫が内心で叫ぶ中再び光の槍が迫る。
「……………え?」
ガブリエルは右肩から感じる熱と喪失感に目を見開く。
振り返ればガブリエルの腕を咥える塔城小猫の姿が。地面を見れば光の豪雨によって形を変えた地面。悪魔達があの中で生き残れるはずがない、消滅するはず。
「───この、気配……魔獣?」
肩を押さえながらガブリエルは呟く。小猫は頭から猫耳を生やし尻尾を揺らすと手足を包む白い毛をペロペロ舐める。
「───にゃん♪」
「─────!」
可愛らしい笑顔で、かわいらしい動作で爪をふるう。ザグリとガブリエル達の体が無数の斬撃に切り裂かれる。
「かふ───ァ──」
魔獣。魔獣?これはそんな可愛らしい存在じゃないだろう。
エミヤの力の本質がイザナミが混じっているというのならば、体の一部から神が産まれる日本神話の祖神の力が混じっているというのならば、その力で産み落とされた者、その血により変質した者は───
「────神?」
「にゃは」
呟く間の僅かな時間に小猫の顔が完全に洗われる。その口が開き、唾液にまみれた舌と歯が可愛らしい唇から覗く。
「ほら、やっぱり使った……」
「にゃ?」
口元を血に染め食事をとる子猫は現れた存在に首を傾げる。そして、飛びつく。本能的に彼が己を救ってくれた存在だと認識してすりすり額こすりつける。
「にゃ~ん」
「ああ、こりゃまた、壊れてるなぁ……」
「殺しますか?」
「何でだ………まあ他人に依存しなきゃ安心できない奴だしな、罪悪感に押しつぶされるのは目に見えてたけど幼児退行どころか野生にまで戻るとは……メイド枠なのにこれじゃペットだ。ま、教育はセルヴィスに任せるか」
「にゃあ……ゴロゴロ」
顎を撫でられ文字通りの猫なで声を出す小猫。と、そこへ──
「こんにちは。エミヤ──ああ、今はその姿なのですね。ざんね───」
「………私が殺したかった……って、あれ?主が話を聞かずに殺すのって珍しいですね」
突然現れた銀髪の青年は文字通り消し飛ばされた。他人との会話や心の動きが大好きなエミヤにしては珍しく、言葉の途中でぶち殺していた。
「いや、何か知らんがキモくて……まあ良いや。オーフィスとリリスにこの猫届けてやるか」