魔獣創造を手に入れたが開き直ることにした 作:ダ・ヴィンチちゃん
堕天使の中には神が居ない事実を知り、ならば神のごとき強者であったアザゼルに仕える、という考え方をした者達もいる。そういった者達は当然復活した神に跪き、堕天使を裏切った。
その者達は寿命を引き替えに強大な力を手にして最上級達に牙をむいた。そして、堕天使領で残ったのは神に再び忠誠を誓った堕天使のみ。
強化堕天使は悪魔達を殺していく。悲鳴が響き、慟哭が聞こえ、絶望が生まれる。
その行動は余りにおぞましく、正義とは呼べない。その行為は同盟の破綻だ。準備が終わり次第他の神話がやってきて、滅ぼされることだろう。
だがその殺戮の首謀者である聖書の神は慌てない。真っ先に来るであろう勢力の長を捕らえその力を得れば目的が果たされるからだ。そして、案の定真っ先に現れた。
その勢力は利益など気にしない。その勢力は長が一声言えば残りは黙って従う。だから、どこよりも早く行動する。
現れたるは一年も経たぬうちに多くの神話が敵に回したくないと判断した魔獣勢力。一体一体が超越者を優に越え神に迫る実力者。その群が堕天使共に迫る。
そして、そんな
「天使の所行とは思えませんね」
「………全ては、神の御心のままに」
残り全ての天使を取り込み絶大な力を得たミカエルの元に現れたのは『忠誠』の将、フィエルダー。その配下である『忠誠』の兵フェデルタ。
「……この光景を見てなお、必要な犠牲だなどと宣う気ですか?紫藤さん」
「………何処かで、あったかな?」
憔悴しきった顔で、しかし聖剣を構える男は敵意を宿しフィエルダーに問いかける。
「?ああ、そういえば………」
その反応に首を傾げたフィエルダーは思い出したかのように兜を消すと、紫藤は目を見開き持っていた剣が震えた。
「八重垣、くん……?そんな、どうして君が!?君は、あの時───!」
「ええ、殺されましたよ。私も、彼女も」
そういってフェデルタを見るフィエルダー。つられて彼女を見ると、彼女も兜をはずす。その顔は報告書で見た顔だった。
八重垣正臣。クレーリア・ベリアル。教会の戦士と貴族悪魔という関係でありながら恋に落ち、その両方から粛正され死亡したはずの二人。
しかし数多の亡者を取り込み魂の在り方に触れたエミヤは偶然見つけた二つの魂をすくい上げ肉体と力を与え、復活させた。
それこそが忠誠の将フィエルダーと、その兵フェデルタ。
もう一度恋人とともにいられることを許された彼は、絶対の忠誠をエミヤに誓った。
「ですから、我が神の敵たる貴方達を殺すのに、何の躊躇いもありません」
そう言って魔獣剣を振るうフィエルダー。紫藤は聖剣で受け止めるが、吹き飛ばされる。しかし純白の翼を広げ空中に止まる。
「天使化、ですか。僕たちを殺した貴方が、これも神の慈悲とやらですか?」
「悪いが、私も負けるわけには行かない!イリナの為にも!」
彼の娘、紫藤イリナは現在ミカエルに取り込まれた。聖書の神が決戦に備えて、全ての天使をミカエルのエネルギーに変えたのだ。彼にミカエルからイリナを取り出す方法など解らず、しかし神は約束してくれた。魔獣を打ち破ったその時にミカエルの中から解放してやると。
父として、故に負けるわけには行かないと叫ぶ紫藤にフィエルダーは笑う。
「神のために命を差し出せたんです。娘さんも喜んでいるのでは?私にはあの時、我等の全ては神のためにこそあるなどと言っていたでしょう」
「─────!!」
聖剣が砕かれる。目を見開く紫藤の心臓を、剣が貫く。とどめを刺したまさにその瞬間こそ好機!とばかりにミカエルがフィエルダーに向かって光の矢を放った。が───
「ふふ、御馳走様です」
ヴェーラがその光を飲み込む。飲み込んだ光はヴェーラの力となり、ミカエルに牙をむいた。
「がああああ!畜生、畜生ぉぉぉっ!!」
リゼヴィムは夢幻の力を放つ。物質という理から外れた道理の通じぬはずのその力は、しかしその女に触れると溶けるように消えた。
容姿は、美少女だが印象に残らない、そんな儚げなような何処にでも居る……そんな少女が夢幻の力を得たはずのリゼヴィムを圧倒する。
「何なんだよ、何なんだよお前は!?」
「……………『ムゲン』の王」
「ムゲンだと!?ふざけんな、夢幻も無限も顕在なんだ、新しく産めるわけが───」
「
人は誰しも自分が優れた存在になることを
彼女はそんな捨てられた夢の集合体。何者にもなれないと知った誰かの絶望。
その能力は想いの籠もったモノの消滅。彼女を倒すと意気込んだ身の程知らずな夢や、一矢報いると出来もしない夢を込められた攻撃を消滅させる。防御も同じ。そこに意志が干渉すれば彼女は全てを消し去る。
例え機械を持ってきても、その機械に制作者の最強の兵器なんて夢が込められた時点で彼女にとって触れれば消える単なる泡沫の泡。
そしてリゼヴィム、異世界にて唯一の魔王になると夢見た男。
ふぅ、と夢現の王アトカースが手のひらに揺らめく光をともし、それを吹く。炎のように揺らめいたそれはリゼヴィムを飲み込むと叫び声をあげるまもなくリゼヴィムという夢見る男をこの世から消し去った。
残された鎧が砕け、赤い龍が姿を現す。その龍はアトカースを一瞥した後次元の狭間に潜っていった。
「…………バイバイ」
アトカースが手を振るうと一鳴きして、完全に次元の狭間へと姿を消した。
『夢現の王』アトカース
人、悪魔、天使、神問わず現実を知り夢をあきらめた存在の捨てられた夢の行き着く場所。
何者にもなれはしないと知った人の意志の総意体。人の感情より生まれた全ての存在を消し去る。グレードレッドの天敵。何の意志もなく完全なる作業で殺せる者がいるとしたら傷くらいは付けられる。本人自体もクソ強いからね。