魔獣創造を手に入れたが開き直ることにした   作:ダ・ヴィンチちゃん

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別次元の強さ

 それで?と混乱する聖書の神に問いかけるエミヤ。聖書の神は顔を上げる。

 

「一つ、聞きたい……君の目的は何だ」

「目的?とりあえず、同盟相手襲ったお前を殺しに来たけど」

「そうじゃない………それだけの力を持って、君は何をしたい!?この世界に何をなす!?」

 

 主神クラスが存在する世界を、グレードレッド以上の戦闘力を持つ者達を食らったというエミヤ。それが本当なら、彼はそれこそ宇宙一つ滅ぼせることだろう。ならばその力を持って、果てして何をする気なのか………。

 

「…………特に何も?」

 

 しばらく考えた後、エミヤはそう答えた。

 

「この世界に何をするってさ、俺この世界にゃ漫画とゲームと菓子がありゃいいのよね。だからこの世界に何かする目的はない。俺自身の目的はあるけど」

「………それは?」

「回帰……俺は俺が生まれた世界へ帰りたい。けど、次元が違う。落とされた俺がそこにあがるには魂の格が足りないんだよ。降りるのは簡単、上るのは難しいって事だね。ここより下の世界なら行き来できるんだけど」

 

 回帰……故郷に帰りたいという、思ったよりも普通な目的に、言葉に詰まる。そう、普通なのだ。家族がいて、友がいて、己が生まれ育った場所に戻りたいと思うのは。彼の言葉が確かなら、食らえるものを食らい己の魂の質を上げなければならないらしい。いや、それで世界が危機になるのは放っておけないが……それでも、彼は敵対しない限りは手を出さない。だが、善神もいた世界を滅ぼしたのは事実。娯楽のために命を奪うのも……しかし、逆に言えら彼の娯楽を邪魔しなければ殺されることは───

 

「だって最終回迎えてない漫画結構あるし……ワンピにハンハン、コナンにビースターズ……」

「……………は?まん……漫、画……?お前は、それだけのために、世界を一つ滅ぼしたのか?」

「そうだけど?」

「……………」

 

 やはり、駄目だ。生かすのは駄目だ。此奴は、危険すぎる。力もそうだが、何より在り方が。

 今でこそこの世界の娯楽も楽しんでいるから存在することを許されているが、それすら消えればこの世界にあまねく命を食らい己の糧とするだろう。

 

「………目覚めろ、トライヘキサ」

 

 操ることはできない。しかし、寝起きの獣は間違いなくこの場において自分の驚異となる存在を狙うだろう。故に、封印を説く。

 ゆっくりと目を醒ましたトライヘキサはエミヤとメルヴァゾアを見据え体を起こす。

 

「メルヴァゾア~、お前オーフィスやグレードレッドより………つまりはあれより強いんだろ?遊んでこい。俺は聖書の神様で遊ぶから♪」

 

 ケラケラと笑うエミヤ。己に敵意を向ける相手を前に遊ぶなどと言う。見下している、訳ではない。仮にメルヴァゾアの世界に存在した全ての魂を食らったのならそれだけの力があるはず。

 メルヴァゾアは片手をあげる。袖口から大量の歯車やコード、金属片が飛び出てきてガチャガチャと音を立て巨大な砲身を生み出す。

 

『オオオオォォォォォォッ!!』

「ファイア」

 

 トライヘキサが放った火炎とメルヴァゾアの放つ光線がぶつかり合い、メルヴァゾアの光線がジリジリと炎を押す。

 一瞬で押し返すほどかけ離れた戦闘力ではないらしい。エミヤがふーんと見てるとメルヴァゾアの顔が青くなり、光線の威力が増しトライヘキサを吹き飛ばす。

 壁にあいた穴から出て行くメルヴァゾアを見送り、聖書の神に向き直る。

 

「で?お前はどうする?今なら土下座すれば許してやるぞ」

「なめるな!」

 

 聖書の神が聖槍を振るうと、エミヤの周りに幾何学的な模様が現れるエミヤの身体に絡みつく。エミヤの頭上には己の尻尾加える蛇のような文様が現れる。

 

「ん?なんだこれ………」

 

 直ぐに取り払おうとしたエミヤだったが、魔力も神力も流れない。物理的には干渉できず、異能の力も発動しない。いや、少し違う。魔力も神力も確かに体外に出ている筈だ。なのに、何処かに消えている。

 

「『無』だ……」

「む?」

「サマエルは本来、『夢幻』を『夢』と『幻』に分け消滅させ、『無限』から『無』を消し去り限りあるモノにする為の装置。君は、無限とは何だと思う?」

「限り無い、だろ?」

「それは無限という概念だ。オーフィスという無限を何だと思うか、ということだよ」

「知らん。教えて」

「………」

 

 その反応に何とも言えない顔をする聖書の神。この男には緊張感というモノがないのだろうか?

 

「………オーフィスは無から生じた、本来なら有り得ざる絶対の矛盾だ。無という限りあるものが行き着く先から、終焉から生まれた因果の逆転。故に永遠。始まりと終わりを繰り返す様は、己の尾を飲む蛇に例えられるわけだ」

「ふーん。で、これはどういう状況なの?そこを話せよ」

「……………限りある存在にかえ、切り出したオーフィスの一部。それに再び無という概念を与え直した。それこそ君を取り巻くものだ……どれだけ力を込めようと、どれだけ足掻こうと無に飲まれ消え去る」

 

 つまり先ほどから振り払おうとオーラを放っても、それは無に飲まれているのか。飲まれるというか、出した分はなかった事になるのだろう。

 

「おお!おもしろいな、で、これからどうする?俺を消すか?」

「いいや。封印する」

「…………ふーいん?」

 

 コテンと首を傾げるエミヤに、聖書の神はそうだと応える。

 

「絶対の絶望は消えたわけでもない。それに、脅威があれだけとも限らない。だから、君を神器に封印しそれに備え───」

「………お前さ、死ねよ」

 

 エミヤの言葉と同時に、エミヤの周りに渦巻いていた無という概念は消し飛ばされる。後に残ったのは空気や時間、空間という概念が存在する普通の世界。

 

「…………は?」

 

 本日何度目の混乱だろうか。

 だけど、今此奴何をした?いや()()()()()()筈だ。少なくとも、自分の感覚では。

 神力も魔力も感じない。何も、何一つ………なのに、なのに何故世界は今まさに悲鳴を上げている!?

 

「簡単に例えるとな。俺は折り紙だ。だけど開かれこの次元に糊付けされた……でも俺は実は研究者気質。与えられた力を使って暴れるより先に、まずは俺に施された封印の解き方を見つけた」

「封、印?」

「そうさ。俺は封印されてんだ。世界を壊さないように……考えて見ろ、人間を紙に押し付けてど根性人間になると思うか?紙が破けて終わりだ。だから俺はこの世界に()()()()()()()………それを解いただけ。一時的にな」

 

 つまりはこれこそがエミヤの本来の力。なのに、何も感じないとはどう言うことだ?

 

「三次元が二次元の奴らに干渉するなんて簡単だ。小説なら『○○は死にました』って書くだけで、絵なら炎や心臓を貫く剣を描き足すだけでいい。だけどその逆は不可能だ。二次元のものは三次元のものに何か行うなんて出来やしない。そもそもそれがあるなんて()()()()()()

「………まさか、そんな………」

「いったろ?次元が違うんだよ。何万何億と存在しようが世界を圧迫することのないお前等と、一人ただ存在するだけ世界を壊しかねない俺………一体どうして勝負になろうか。お前がただただ愚直に挑み俺を楽しませたなら、同じ次元で相手してやったのに」

 

 まあ今更か、と手を前に突きだし親指と人差し指の先端を近づける。まるで何かを摘まむように。エミヤの視線には丁度、聖書の神が隙間に収まっている。その隙間を、潰す。そんな何気ない動作で、聖書の神は消滅した。

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