突然目が見えなくなった僕の物語。

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アイズベール

僕は目が見えない。

先天性なものではなく、つい三日前に突然見えなくなった。

見えていたものがいきなり見えなくなるというのは恐怖でしかなかった。

いきなりの音には見えている時以上にびっくりするし、突然の温度の変化にもびっくりする。

食事もまともに取れない。

普通に日常的に過ごしているだけでも常に恐怖がついてくる。

そんな状態で学校に行けるはずもなく

部屋で過ごしていた。

突然、ドアと叩く音がする。

 

「入っていい?」

 

いきなり音がしたものだから僕はびっくりして若干挙動不審になりながらも反応する。

 

「うん、いいよ」

 

僕が返事をするとドアを開け母が入ってくる。

 

「なんかあったの?」

 

一応隠してはいたがこれ以上心配をかけるわけにはいかないと思い事実を言う。

 

「僕、目が見えないんだ」

 

僕がそういうと母は泣き崩れてしまった。

当の本人の自分はと言うとびっくりするものはびっくりするし未だに慣れていないが

このいきなり目が見えなくなった現象を

受け止めてはいた。

 

「そうだ、病院に行ってみれば何か分かるかも」

 

ついさっきまで泣いていた母は泣きやみ、そう言った。

 

「そうだね」

 

───────────────────

 

病院に行ったが何もわからなかった。

ただ、ひとつ分かったのは僕の目は何も問題がないということ。

ありとあらゆる検査をしたが問題という問題は何も見つけられなかった。

母は諦めてはないようで

「大丈夫だからね、絶対治るから色々調べてみるね」

と言ってくれた。

母親が諦めていないのに自分はなぜが

諦めているというか自分にとって『普通』に

なっていた。

部屋で寝ていると、ドアを叩く音がして

反射的に起きてしまった。

寝起きということもあり意識が朧げなまま

返事をする。

 

「入っていいよ」

 

入るね。という言葉を共に母が入ってくる。

入ってくるなり

 

「理由がわかったかもしれない」

 

などと言うのだ。

朧げだった意識は覚醒し

 

「ほんと?」

 

嘘をついていないということは分かっているはずなのについ確認をしてしまった。

 

「うん、精神的なものかも」

 

母にそう言われても思い当たる節がないのである。

 

「なんかあったっけ?」

 

自分では思いつかないので母に聞くと

 

「目が見えなくなったのは三日前でしょ?

四日前の高坂君の葬式が関係してるんじゃない?」

 

高坂とは、中学の時から仲が良かった友達である。

 

「いや、でも、高坂って..........」

 

「高坂君はもう居ないよ」

 

母に再三言われやっと思い出した。

 

「そっか、居ないんだ」

 

相変わらず見えない視界が少し晴れた気がした。

 

「それじゃ、行かなきゃ」

 

「うん、行こうか」

 

僕は母に介護をしてもらいながら車に乗り

高坂家に向かった。

 

───────────────────

 

高坂家に着くと家に入れてもらい

高坂の遺影の前まで案内をしてもらい

手を合わせる。

 

『やっと来たのか』

 

居るはずのない高坂の声が聴こえた気がした。

 

『遅れてごめん』

 

声には出ていないが心の中でそう言った。

 

『大丈夫だ、お前なら来るって思ってた』

 

そう言われるのは嬉しいが母に言われるまで

受け止めていなかった自分を少し恥じる。

 

『ありがとう』

 

反射的に出たその言葉は

何に対しての感謝の言葉かは言った自分にも分からなかった。

 

『おうよ』

 

いつものようにそう答えた高坂に感謝をしながら閉じていた目を開ける。

すると、突然見えなくなっていた

視界は晴れて目の前に見えるのは

笑顔でピースのする高坂の写真だった。


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