デート・ア・ライブ―精霊喰いは精霊に恋する―   作:ホスパッチ

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五河シスター
第二三話『殺意』


 「せっかくいいところでしたのに、邪魔しないでいただけます?」

 突如として上空に現れた琴里に狂三は半ば忌々しげに視線を向ける。無論戦闘態勢は崩しておらず、〈刻々帝(ザフキエル)〉は顕現しているままだ。

 「残念ながらそういうわけにもいかないのよ。私の可愛い可愛い部下(かぞく)まで食べられて私は黙ってられないわ。覚悟しなさい、愛のお仕置きタイム開始よ」

 巨大な戦斧を肩に担ぎつつ、琴里は言う。夕騎の状態は狂三の右腕を見て大体予想ができる。

 だが、動揺せずに琴里は狂三へと戦意を向ける。

 狂三は琴里の発言が予想外だったのか、すぐさま哄笑しながら声を漏らす。

 「きひひひひひ、お仕置き……ですのォ? この、わたくしをですの?」

 「ええ、今すぐ降伏して分身体に天使を消して、夕騎を元に戻すならおしりペンペンくらいで許してあげるわ」

 「ひひひ、なァにを仰っているのやら。夕騎さんはわたくしの気持ちに同意してくれましたわ。相思相愛の二人を裂こうだなんて馬に蹴られて死にますわよ?」

 「そういうのは相思相愛じゃないわ。ただの度がすぎたヤンデレよ。その右腕、女の腕にしては筋肉質すぎるし気持ち悪いわ」

 琴里のハッキリとした言い分にいままで緩んでいた狂三の口元がピクっと引き攣る。

 「随分と自信がおありのようですけれど〈精霊喰い〉の力を得たわたくしには――」

 「もう降伏しないのはわかったから早く来なさいクレイジーサイコ黒豚」

 「上等ですわ。一瞬で終わらせて差し上げましょう!」

 狂三の分身体たちが一斉に跳躍するのと琴里が戦斧を構えるのは同時だった。

 「――〈灼爛殲鬼(カマエル)〉!」

 戦斧による薙ぎ払いの一撃は赤い軌跡を生み、灼熱の炎が狂三の分身体を燃やし尽くしていく。

 その一撃によって狂三の分身体に拘束されていた士道たちは次々に解放される。十香や折紙、零弥は解放されるとそのまま地面に倒れてしまい気絶してしまう。真那も地面に倒れたままで動く気配はない。

 空から琴里が降り立ち、士道を守るようにために〈灼爛殲鬼(カマエル)〉構えた。

 士道が話しかける暇もなく、狂三は次の手に出る。

 「ひひひひひひひひひッ! まだまだですわァ!」

 狂三は〈刻々帝(ザフキエル)〉から【一の弾(アレフ)】を短銃に装填し、自らのこめかみに向かって放つ。

 瞬間、あまりのスピードに姿を眩ませた狂三は琴里の頭上から現れて歩兵銃を鈍器のように乱舞させて猛襲を仕掛ける。

 琴里は目にも止まらぬ猛襲を戦斧で俊敏に受け流しつつ、時折迫る〈精霊喰い〉の爪擊は軽い身のこなしで躱していく。本来〈精霊喰い〉の力は夕騎にしか扱えないが夕騎を『食べた』狂三は確かに〈精霊喰い〉の力を扱えている。

 「チッ……厄介ね」

 「き、ひひひひひひひひひひひッ! もう素晴らしいの一言ですわ! 〈精霊喰い〉の力を試すには同じ精霊が必要でしたもの! 高鳴りますわ、高鳴りますわッ!」

 「借り物の力を誇示するんじゃないわよ。少しは落ち着きを持ちなさい」

 琴里は〈灼爛殲鬼(カマエル)〉を地面に叩きつけ、爆風にも似た衝撃で狂三と距離を作る。

 「それではもう少し淑やかな手を使いましょう。【七の弾(ザイン)】」

 狂三が放った【七の弾(ザイン)】を琴里は〈灼爛殲鬼(カマエル)〉で打ち払う。だが、琴里が打ち払ったのは狂三が持つ〈刻々帝(ザフキエル)〉の中でも極めて凶悪な弾。

 琴里の動きが打ち払った体勢で止まる。

 「士道さんにこれから証明しましょう。〈精霊喰い〉の力が本当に精霊を殺す(、、、、、)瞬間というものを――」

 その言葉を聞いて士道は戦慄する。

 夕騎は〈精霊喰い〉という力を持っていながら一度も精霊を殺さずに精霊を救うことを決めていた。

 それなのに夕騎(しんゆう)の力が最愛の琴里(いもうと)の命を奪おうとしているだなんて。

 「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」

 残っていた狂三の分身体たちは止まっている琴里の周りを囲って短銃を構えると〈精霊喰い〉の牙を加工して作られた銃弾が猛威を振るう。

 普通の銃弾でさえ目も当てられないほどの惨状になっているというのに狂三はトドメと言わんばかりに超至近距離で琴里の眉間を穿つ。仰向けに倒れた琴里に士道は駆け寄り、必死に声を掛ける。

 「琴里、琴里ッ!」

 「ああ、せっかく強敵と相対することができたというのにもう終わってしまいますとは。残念ですわ、残念ですわ! 〈精霊喰い〉の力は手加減が難しい代物ですわね」

 役者のように大仰しく狂三は回りながら言う。

 だが、琴里の身には銃弾とは別の異変が起こっていた。士道はこれを体感したことがある。傷口から出た焔が舐め回すように広がって傷を塞いでいた治癒能力。まさにそれだった。

 「……残念だったわね、まだ終わってないわよ?」

 「ど、どうして…………?」

 だが相手の精霊が治癒能力を持っていようとも〈精霊喰い〉が傷つければそんなものは関係がない。確実にトドメはさせていたはずなのに。

 あんなにも余裕そうだった狂三の表情は困惑に変わる。

 「どうしてって言われても知らないわ。〈精霊喰い〉の力が不発(、、)でもしたんじゃないかしら? 精霊を殺そうとしたあなたに夕騎が愛想尽かせた……とも考えられるわね」

 「何ですって……?」

 琴里の挑発じみた発言に狂三は至近距離のままもう一度〈精霊喰い〉の力を込めた銃弾を放とうとするが琴里は戦斧を構え、

 「切り裂け灼爛殲鬼(カマエル)!」

 刃を何倍にも膨れ上がらせた焔の刃は本体(オリジナル)の狂三もろとも分身体たちを薙いで焼き払っていく。本体(オリジナル)の狂三は跳躍して躱していたものの夕騎の右腕が切断され、触れる前に灰燼となって消える。

 「夕騎さんの腕が! く――【四の弾(ダレット)】!」

 狂三は琴里から距離を取る〈刻々帝(ザフキエル)〉の『Ⅳ』の数字から伸びた影を短銃に装填し、自らを撃ち抜く。まるで時間が遡ったように狂三が負っていた傷が消えて真那に切り離された右腕も元通りになる。

 原因は不明だが〈精霊喰い〉の力は発動しなくなった。普通の銃弾もあの治癒能力がある限り効果は期待できない。

 狂三が劣勢なのは明らか。

 「〈刻々帝(ザァァァァァァァフキェェェェェェェル)〉ッ!」

 追い詰められた狂三の左目がいままでになかったほど早く回転し、危険を感じ取ったのか琴里は追撃を掛けようとするものの突然の頭痛に苛まれ、動かなくなる。悪運が尽きたと思い、勝利を確信した狂三だったが――

 「〈灼熱殲鬼(カマエル)〉――【(メギド)】」

 刃が収納され棍だけとなった〈灼熱殲鬼(カマエル)〉は琴里の腕に装着され、戦艦が持つ大砲のように狂三に照準が向けられる。琴里の声は彼女から聞いたことがないぐらいに平坦なものでまるで別人だ。

 〈灼熱殲鬼(カマエル)〉の体表が展開されてできた砲口に焔が集中していく。

 「灰燼と化せ、〈灼熱殲鬼(カマエル)〉」

 〈灼熱殲鬼(カマエル)〉から放たれた炎熱の本流は防御に出た狂三の分身体たちをいとも容易く燃やし尽くしていき、屋上の床やフェンスが熱で溶かされていた。幸い倒れている十香たちは射程圏内にはおらず、余波で身体が少し移動した程度だった。

 狂三はというと直撃は避けていたようだが左腕は消し飛ばされ、〈刻々帝(ザフキエル)〉も『Ⅰ』『Ⅱ』『Ⅲ』があった場所は綺麗に抉り取られていた。その場に膝をつき、明らかに戦闘を続けることはできない。

 「まだ終わっていないわ」

 琴里は戦闘をやめようとしない。

 士道が懸命に語りかけるが琴里は何一つ士道の言葉に耳を傾けずに砲口を狂三へと向ける。

 言葉ではもうどうにもならないと思った士道は狂三を庇うようにして彼女の前に立つ。

 再び万象を焼き尽くす紅蓮の咆哮が放たれる。

 刹那、誰も聞こえないほどの声で気絶していたはずの零弥が呪詛のように喉を振り絞って言った。

 「殺し、て、やる……」

 狂三の影とは別物の影が彼女の身体を覆う寸前、唐突に――

 

 「――あんま俺の親友と嫁をイジメんなよ」

 

 すべてを焼き尽くすはずだった紅蓮の咆哮は士道の少し前で急激に起動を変え、ほぼ直角に軌道を変えた。

 軌道が変わった一撃は学校の時計台を貫き、彼方へと消えていく。

 「……夕――騎さん…………?」

 士道は余波で尻餅をついていると狂三の視界に入ってきたのは一人の少年だった。

 黒い髪は少し長く伸びていて、体格も一般男子に比べれば華奢に見える。

 身体の右側にはマントのように赤と黒を基調としたドレススカートが下げられており、服装も狂三の霊装と近い部分が多く見られる。

 「あーはいはい、何かとあっていまはこんな体格だけど『浮気は極刑』で見事食べられておりました月明夕騎くんでーす」

 振り向いた夕騎はにかっと太陽のような笑顔を見せる。

 これには士道も狂三も驚き、

 「おまえ、狂三に食べられたんじゃなかったのか……?」

 「おう。確かに食われてたな」

 「だったら何で生きてるんだ!? さっきだっておまえの右腕が……」

 「士道っちは俺のことを侮ってんのかっつーの。〈精霊喰い〉は簡単には食べられませんの。バリアって知らね? バリアー」

 夕騎は左手で横ピースをしながら余裕そうに言う。

 「狂三の影の中に引きずり込まれた時は焦ったけどねー、死体になった狂三から貰った霊力を身体にずっと纏っていたわけよ。右腕は小ネタ繰り出すために纏うの忘れてて取れたけど」

 「生きてるならさっさと帰ってくれば良かったじゃねえか」

 「メンゴメンゴ。どーしても狂三の影の中でやりたいことがあったし、浮気を反省するために食べられてることにしたし、できるだけ狂三に助力してたら遅くなったのよねえ」

 夕騎が狂三の影の中で一体何をしていたのか士道も狂三もわからないので不審そうな顔をしているが夕騎はどうしても言えなかった。

 ――言えない、影の中から見える狂三のパンティーに夢中になっていただなんて……。

 身体に霊力を纏って影の中の消化を防いでいたのだが、出ようにも脱出方法がわからずにチャンスが来るまでひたすら狂三の動きを見ながら下着も見ていた。これを言えば間違いなく再び極刑にされてしまうので夕騎はお口をチャックして黙っておく。

 「ま、もう狂三も戦闘不能だしコレくらいで許してやってく――」

 そう言って琴里の方に視線を向けた瞬間。頭蓋を砕くような轟音とともに〈灼熱殲鬼(カマエル)〉の一撃が夕騎の頭部を捉える。あまりの威力に夕騎の両足は屋上の床に軽く埋まるほどで狂三と士道は絶句してしまう。

 「……んだよ、話は最後まで聞けってんだ」

 何事もなかったかのように夕騎は頭を上げて頭部を殴打している戦斧を掴んで退かせる。

 「本当ならことりんは死んでたんだぞ? あの時の銃弾に俺が〈精霊喰い〉の力込めてなかったから治癒できたもののアレ喰らってたら治癒能力なんて関係なかったし」

 「そこを退きなさい。まだ戦争は終わっていないわ。邪魔をすると言うのなら――あなたから殺すわよ?」

 「なーにーことりん、いつの間にお前そんなつまんない(、、、、、)女になっちまったわけよ」

 いつもの琴里ではない彼女を見て夕騎は髪に付いた〈灼熱殲鬼(カマエル)〉の焔を手で払いながら心底つまらなさそうに言う。

 「なあ〈ラタトスク〉ってのは精霊を救うんじゃなかったのか?」

 琴里は答えない。

 「人殺しをしたことがある精霊は例外なのか?」

 答えない。

 「あー……」

 夕騎は呆れ気味に一息つくと、

 「殺す」

 細く、華奢になった左腕を軽く腕を振るって琴里を弾き飛ばした(、、、、、、)

 

 

 「一体、何が起こっているのですの……?」

 狂三の目の前では奇怪な光景が映し出されていた。

 あんなに手も足も出なかった炎の精霊を夕騎は左腕だけで一方的に完封しているのだ。

 彼が腕を振るうだけで相手の身体は弾き飛ばされ、空中では壁に弾かれるボールのようにあちらこちらに跳ねている。

 「狂三、いままで悪かったな。属性(モード)〈ナイトメア〉がお前の寿命も使ってるなんて知らなかったんだよ、影の中にいる狂三に聞いてはじめて知った。これからは使わねえよ」

 戦闘の最中に夕騎が狂三に話しかける。いつにもなく真面目な様子だから狂三も目を丸くしてしまう。

 一度は夕騎を食べたというのに夕騎はそのことについては何も怒らずにいまでは狂三のために琴里と戦ってくれている。それが狂三には不思議に思えた。

 「い、いえ、別に構いませんわ。……それにいまは夕騎さんに助けられているわけですし」

 「そっか。狂三領域(クルミリー)には散々助けてもらったし、ありがとな」

 「わたくしのせいで右腕を失ったというのに怒らないのですか……?」

 狂三はまるで親に怒られる寸前の子供のようにおずおずと問いかける。憎まれていてもおかしくないのに狂三は疑問を投げかけるのを我慢できなかったのだ。

 「にゃはははは! いつもなら絶対に気にしなさそうなのに俺に嫌われるのが怖いか?」

 「そ、そんなことありませんわ!」

 「もー狂三のツンデレさん! 大体、右腕ならほらよ」

 右腕部分を隠していたマントから夕騎自信の右腕が飛び出す。ゴンッという何やら鈍い音がなったような気がするが夕騎は話を続ける。

 「俺ってば霊力を吸収し続けると怪我が治るみたいでさ、狂三の分身体たちに本体を守ってくれと頼まれた時に取引として片っ端からキスしていって霊力を貰ったわけ。おかげで霊力の過剰摂取したみたいで体格は女に近づくわ服装も変わるわで焦ったわ。零弥の霊力を封印した時にもこんな感じになったんだよな」

 「……〈精霊喰い〉はまだ謎があるみたいですわ。ところで、いまどうやってあの精霊を打撃しているのでしょうか?」

 狂三と話しながらも夕騎は腕を振るうだけで琴里に打撃を与えている。

 「ん、コレは【三鳴(みなり)衝撃(しょうげき)】。俺が放った拳でできた衝撃に霊力を乗せて、その衝撃を空気中で連続で弾かせながら相手を打撃すんのよ。俺の【天地鳴動】にも遠距離技が欲しくてさ。コレであとは【四動】を考えるだけで俺の【天地鳴動】は完成となるのさ」

 「……霊力でそんなこともできますのね」

 「つーか士道っちは? こんなことりんを痛めつけてるんだから『やめてくれぇ!』みたいなこと言うと思ったんだけどなあ」

 夕騎が士道の姿を探すと士道は何故か倒れて気絶しており、顎には打撃痕らしき青い痣が残っている。おそらく先ほど夕騎がサプライズ感覚で再生した右腕を勢い良く振り上げた際に士道の顎を的確に捉えてしまって気絶させてしまったのだろう。

 夕騎も狂三も気絶している士道を一度見ると、互いに目を合わせてとりあえず見なかったことにする。

 「〈灼熱殲鬼(カマエル)〉――【(メギド)】ッ!」

 【三鳴衝撃】を受けながらも琴里は〈灼熱殲鬼(カマエル)〉の形状を変化させ、その照準を夕騎に向ける。夕騎は特に慌てることもなく跳躍すると砲身となっている〈灼熱殲鬼(カマエル)〉の上に立つ。

 「コレってチャージまで一定時間掛かるっしょ。しかも、ことりんの治癒能力って斬撃とか銃撃には強いみたいだけど……身体に響く打撃に弱いよな。体力も回復しなさそうだし」

 そう言って夕騎は思い切り琴里に踵落としを炸裂させて屋上の床に叩きつける。屋上の床は踵落としの衝撃でひびが入り、琴里の手からも〈灼熱殲鬼(カマエル)〉が離れる。

 「なあ琴里(、、)

 気絶したかと思えば琴里の手がピクリと動き、コンクリートの破片を握り締める。そのまま立ち上がるかどうかはわからなかったが夕騎は容赦なくもう一発踵落としを決めて今度こそ完璧に黙らせる。神無月たちには悪かったがあのままでは狂三が死ぬという最悪のケースになってしまっていた。

 「俺は……殺意さえあれば精霊なんていつでも殺せる(、、、)んだ。だから――もう二度とこんなつまんないことをさせないでくれ」

 動かなくなった琴里に夕騎は物寂しそうに言うと狂三の前まで移動してしゃがみ込み、炭化した左腕の傷口を見る。

 「こりゃあ手酷くやられたな狂三。今回は士道のことも諦めておとなしく退散しとけ」

 夕騎は狂三の左腕に軽く噛み付き、分身体から得た霊力をすべて狂三へと戻す。

 「夕騎さんは……?」

 「俺はなぁーまあ狂三に食べられるのも良かったんけどどうにも零弥が悲しむんでな。俺に何もなくなった(、、、、、、、)ら狂三に食べられてもいいぜ? たまには食べるとかじゃなくて普通に遊びに来い」

 「む……」

 零弥の名を聞いて狂三は一瞬むすっと拗ねたような表情になるが立ち上がると不意に夕騎と唇を重ねる。

 あまりにも突然だったキスに夕騎は狂三の霊力を封印する暇もなく、顔を真っ赤にしてキョトンと目を見開いて驚いている。

 「わたくしの分身体とだけキスするというのも(ずる)いですし、今回の浮気はこれで許してあげますわ」

 「おぅふ、普通に焦ったわ」

 「うふふ、それではまた会いましょう夕騎さん」

 狂三は優雅に手を振ると影に潜んで撤退する。残されたのは夕騎以外誰もが気絶した状態で、ここはおとなしく〈フラクシナス〉からの回収を待つしかないと思った夕騎はふと琴里に目を向ける。

 「しかし、この角……何で非対称なんだろうな」

 琴里の霊装にある欠けた角を夕騎は注意深く見てみる。これが霊装の特徴なら納得なのだがどうにも違う気がしてならなかった。

 「ことりんが使っていたのは炎……ッ!?」

 炎の精霊、それを思った瞬間に夕騎に突如として頭痛が起こる。

 そして次に頭に浮かんできたのは記憶が曖昧になっている五年前の〈精霊喰い〉となった頃の出来事だった。

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