ハンターさん、集めるのが好き   作:ryure

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新しい着せ替えを手に入れるために挑む話。


ハンターさん、闘技大会に参加する

「同士討ちせえや!」

 

 例のハンターの中の人の方言が出ているが、それどころではないのだ。その傍らには愛するオトモがいないのである。完全なるぼっちである。つまり、ここは闘技場なのだ。闘技大会真っ最中である。彼はどうしてもコインが欲しくてやってきたのである。

 

 それもこれも重ね着ギルドクロスを手に入れるため。そのために撃龍王のコインを五枚集めなければならない。もちろん被弾が多いこのライトプレイヤーなハンターは一枚たりとも持ち合わせがなかった。

 

「そんな攻撃見切ったわぁ! 見切りや!」

 

 見切りではなく、やっているのは単なるランスの盾を用いたガードである。前方不注意、注意散漫なこのハンターに見切りなど百年早いのである。

 

 なにはともあれ、ハンターは闘技大会がそこまで好きではなかったが挑まなければ始まらない。

 

 このハンターはカッコイイのが好きなので、背中にひらひら揺れるマントがあり、足元までヒラヒラしていて、お気に入りの上品な桃色のブリゲイドの帽子と似合う装備を見逃す気は微塵もなかったからだ。カッコイイのにヒラヒラなのは大好物なのである。ブリゲイドしかり。

 

 なお、今日の装いの桃色は赤っぽい髪と同系色なのだが、もう新しい色を考え出すのがおっくうになっているハンターなのである。そのうち着ないようにしていたオレンジも着るに違いない。決意も覚悟も適当なのだが、そのうち何色でも大抵似合う自分に酔い始めることだろう。頭が幸せなのである。

 

 ハンターは現在シュッととがった槍を構え、ディアブロスとディアブロス亜種が自分に襲い来るのをなんとかガードでしのぎつつ、ひたすら自滅するのを待っていた。スキを見て攻撃もするが、基本的には同士討ち万歳スタイルである。壁を背にしてすべてを受け止めるのである。

 

 この方法ならこのハンターでもなんとかAランクの速度でクリアできるのだ。被弾が多いとはいえ当たってもダメージにならなければどうということはないのである。安定的にクリアできると考えた結果なのである。

 

 しかしながら、一回につきいくら普段の狩りよりやや長引く程度でクリアできるとはいえ、たった一人で画面を睨み続けなければならないハンターは少々疲れ始めていた。

 

 突進を受け止め、お返しにチクチク刺し、片方がついに倒れればもう片方に麻痺投げナイフを入れて麻痺すれば迅速に爆破。適度な緊張はあるが気を抜いても乙ることがない程度には緩く、そして戦闘はそこそこ長い。

 

 ちょっとめげそうになった。

 

 しかしハンターは諦めない。めげない。ギルドクロスの服にブリゲイドの帽子とか絶対にカッコイイのである。なんなら足もブリゲイドにすれば色の変更範囲が増えるので、純白の騎士ごっこが捗るのである。

 

 中性的な顔をした美男子が純白の騎士の格好をするとか如何にも中の人が好きそうな組み合わせである。なお、仮にこれがゴリラのような、否、ウラガンキンのようなバキバキでゴテゴテの鎧装備だったとしても同じく喜んで取りに行っただろうから、中の人のストライクゾーンは広い。

 

 彼にとってブリゲイドは文句のつけようがないほどカッコイイが、マントがある装備はまた別格。

 

 つまり、このハンターは頭の重ね着以外はギルドクロスがブリゲイドと同格であると考えるほど手に入れる前から気に入っているのである。頭に関しては、ただただブリゲイドが最高というだけのことである。

 

 ゆえに絶対にめげるわけにはいかない。

 

 なお、彼はランスの前に初めて触れるガンランスにも挑戦してみたのだが……使い慣れない武器、慣れないリロードの結末は八乙二十二分。あまりにも乙りすぎるし、ランスとタイムが十分近く離されるのだ。彼は大人しく慣れたランスにした。

 

 闘技大会での武器の使用回数はギルドカードに加算されないので未だに彼の使用数はゼロのままである。

 

 きっとガンランスは、慣れれば火力がある分早いのだ。それは彼にも分かっているが、慣れるのには相応の時間がかかるのである。

 

 投げナイフで毒を入れたり、狙えるだけ突いておいた亜種が先に倒れると、ハンターはとても悪い顔をして音爆漬けにディアブロス原種を落とし込むとさっさと倒した。片方が倒れると早いのである。

 

 ひと狩りしているというのに、オトモや野良ハンターがいないだけでこんなに無機質で寂しい戦いになるなんてハンターは思いもよらず、さっさと奴らをぶちのめしたかったのだ。もちろん落石や撃龍槍はふんだんに用いている。

 

 被弾が多いことを自覚しているので闘技大会マルチには怖くて参加出来ないのがひたすら辛い。

 

「往生せぇや!」

 

 ハンターは、ロールプレイも最低限の行儀の良さも何もかも忘れて、ただただガラの悪い言葉を吐きながら一時間近く闘技大会に立ち向かい続けた。

 

 戦いになると豹変するようなタイプではないのだが、ハンターはとうとう倒れた原種の骸をつつきまくるくらいにはヒャッハーしていたので闘技大会を済ませればすぐに救援参加することだろう。

 

 事実、彼はギルドクロスのカッコよさにノックアウトされてはやる気持ちを抑えられなかったので、まだ歴戦王クシャルダオラを最低数倒しきれていなかった。

 

 ようやく撃龍王のコインを集めても、足りないチケット求めてひと狩りしに行くことになったのだ。もちろんオトモアイルーと共に。

 

 このハンターは闘技大会の狩りで、仲間のいる戦いがいかに尊く、かけがえのないものなのかを彼はよくよく実感した。オトモはますます可愛がられ、ますます撫でられてとろとろに溶けた。

 

 そして例のハンターは、ヘビィボウガンを嬉しそうに担いで歴戦王クシャルダオラに引導を渡しにスキップしてひと狩りしに行った。

 

 

 

 

 

 

「カッコイイ! カッコイイ!」

 

 例のハンターは奇声をあげている。一応意味のある言葉を発しているのだが、同じことしか言わないのでアステラの人々には「奇声」に分類されるのだ。ハンター的には「嬉声」であるのに見解の相違とは悲しいものである。

 

「カッコイイ! サイコー! カッコイイ!」

 

 狂人ハンターは課金ジェスチャーを用いてキレッキレに、刺激的に踊り狂いながら幸せそうな笑顔を所構わず、誰彼構わず振りまく。

 

 いる場所がクエストボードの前のため、狩りに行くためにはすれ違わざるをえない哀れな一般ハンターたちは狂人ハンターを極力刺激しないように曖昧な笑みを顔に貼り付けて横を素通りする。

 

 他のクエストボードに向かえば良いだけなのだが、狂人ハンターに方向転換するところを見られる方が危険度が高いのである。

 

 すれ違う時、彼を決して、褒めてはならない。絡まれる。もちろん貶してはならない。命が保証されなくなる。だからといって、完全にスルーしてはならない。見るまで付き纏われる。貶すこと以外はすでに犠牲者がいるのでハンターたちは必死だった。

 

 例のハンター、ただ喜ぶだけで迷惑なものである。

 

「マント! ヒラヒラ!」

「ヒラヒラニャー」

「カッコイイ! カッコイイ! サイコー!」

 

 アステラの人々は懐かしくも忌まわしく思い出す。ブリゲイドを入手したかつての例のハンターもこんな様子だったな、と。その前から狂気の片鱗は見え隠れしていたが、重ね着ブリゲイドの入手をもって例のハンターは本格的に狂ったように思われる。

 

 お洒落に目覚める、を通り越してあの時彼は覚醒したのだ。迷惑なことに。

 

 例のハンターは素晴らしい肺活量を披露しながら奇声をあげつつしばらくダンスし続けた。が、そのうちピタッとやめ、今度は虚空へ向かってポーズを決め始めた。

 

 ナルシストタイムとアステラの人々が呼んでいるスクリーンショットタイムである。彼は自分のカッコ良さに酔いしれつつも様々なポーズをとって悦に入っているのだ。カッコイイ、素晴らしい、サイコー! と。

 

「いやぁ良いものだねぇギルドクロス。帽子はブリゲイドがやっぱり最強だけど、服はギルドクロスの方が好きになっちゃうかも。決められないけどねぇ、最高だね両方。頑張った甲斐があったよ」

「ご主人が嬉しそうでよかったニャー」

「ありがとうにゃんにゃんちゃん!」

 

 ハンターはオトモアイルーを抱き上げるとくるくる回し、抱きしめ、頬擦りし、頭を吸うと降ろした。一連の動作は素晴らしく正確で毎日毎日飽きることなくやっていることが伺える。

 

 オトモとハンターが仲の良いことは良いことなのだが、なんとなく他のオトモアイルーたちはあぁなりたくないと思っている。そして、その当の本猫はハンターの行為を特に気にしていないので英雄に近い扱いを受けている。肝っ玉が太いのである。というよりは、ただ慣れただけである。

 

 慣れというものは何よりも強いのだ。

 

「見よ、この素晴らしいマント、素晴らしい腰装備のヒラヒラ。騎士そのもの! 腰のサーベルカッコイイ! こんな細い剣、モンスターに振るったらポキッて折れそうだけどこれは儀礼用の飾りだから問題ないよな!

体にフィットする質感サイコー、腕も布がタップリ使ってあって贅沢だし、胸元に紋章ついてるのカッコイイし! これは勇ましさとカッコイイの融合!

走ると服が揺れてカッコイイ! 歩くとちょっと威圧感があってカッコイイ! 正統派! 騎士! サイコー!」

 

 例のハンターは誰も聞いていなくても自分が良ければ幸せなので、一人で演説した。気分がとにかく最高なので、それだけで幸せになれた。

 

 セルフで幸せになれる彼は本当に安上がりなのである。ただし周りはいい迷惑なのだが。

 

「ドラケンとダイバーが体の線を隠して凛々しさとカッコ良さを両立させるSF装備なら、ブリゲイドとギルドクロスは正統派ファンタジー騎士! 雄々しい! サイコー! 両方サイコー! 素晴らしい! こんなカッコイイ格好でこれから狩りに行けるなんてますます装備作りが捗っちゃうな!

明日も沢山古龍を狩ろうね、愛しのにゃんにゃんちゃん!」

「ニャン!」

 

 ハンターは満面の笑みを浮かべると、闘技大会をやりすぎたせいで既に深夜になっていたので、後ろにバタンと倒れてログアウトした。




気分がサイコーなハンターさん
ギルドクロス+ブリゲイドを着ていろんな狩りをしに行くのが楽しみ。
プレイヤースキルがそこまでないのでほぼ常に彼は耳栓レベル5を組んでいるのだが、闘技大会クエストでガードで咆哮を避けられることを初めて知った。感激した。
近々追加されるネタな頭重ね着については取るには取るのだが流石に反応に困っている。それよりスカルがほしい。眼帯も欲しい。もっと欲しいのはレザーとかチェインの重ね着。

ハンターさんのオトモ
ログアウトはマイハウスでしてほしい。また運ばされた。
ブリゲイドよりギルドクロスの方が寝心地が良いのだろうかと考えているがどっちもどっちだニャと結論づけた。

どういった話を期待していますか? 最も当てはまるものを選んでください。

  • ゲームシステムによるもの
  • クエスト頻度、難度、クリア時間
  • イベント関連
  • メタ戦法(確定行動、戻り玉回避等)
  • アナザーストーリー
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