ハンターさん、集めるのが好き   作:ryure

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コンプリートへの道を進める話。


ハンターさん、トロフィーが欲しい

「もう魚と戦いたくない」

「ご主人お疲れニャ」

 

 例のハンターのオトモは、肉球で例のハンターの頬をペチペチして癒した。オトモの優しさに、このハンターはちょっと嬉しそうにしたが、抱き上げて頬擦りする気力もないらしく、顔をふみふみして欲しいとこぼして項垂れる。

 

 このハンター、人並みにコンプリート好きなので実績のトロフィーを埋めたいのだ。その為にようやく重い腰を上げたところなのだ。

 

 闘技大会系は、五十回クリアとかすぐにやれるものでもないので今は目をそらすにしても、「(追加されたモンスター以外の)調査レベルを最大にする」とかいうわりといけそうなところから挑んだのだが。

 

 つまるところ、お弁当の中身は好物から食べるハンターなのである。言い換えるなら楽な方に流れる普通の人である。

 

 ハンターノートを開いて彼は理解した。眼前に立ちふさがる壁はジュラトドス・ヴォルガノスの二匹なのだと。見事に魚型のモンスター二種なのである。この二匹だけ何故か綺麗に残っていたのである。ヴォルガノスに関しては任務クエストすらなかったからだ。

 

 そんな調子ではこの二種の防具すらマトモに揃っていないが、とりあえず作れるところから作っていくスタイルのハンターなので気づいていなかった。素材不足以外の彼の進捗状況はクシャルダオラ装備のαβ手前なので、一巡すらしていない。なにせ普段は一日三戦程度のライトなプレイヤーなので。

 

 深刻なゼニー不足により、まだ素材が足りていても作っていない装備はごまんとあるのを気にしてすらいられない。いつかやるさと未来の自分へ先送りするのだ。

 

 それもこれもすぐにほかの装備に惚れてカスタム強化に走るせいで、金がないからである。惚れっぽいのである。装備に。

 

「沼地に行くときに耐水の装衣を忘れたときのダルさは、自分の記憶力を呪う」

「ニャ」

「あ、でも、にゃんにゃんちゃんのかわいい浮き輪姿は役得だから、ジュラトドスは無罪だよ。手早く焼き魚にしてやろうね」

 

 とはいいつつも、焼き殺すつもりもなく使う気なのは何でもおまかせイビルジョーの武器なのだが。

 

 持ち前のポジティブさで急にやる気を出して背筋を伸ばしたハンターは、猛然と定食を平らげ始めた。ジュラトドスはこの際もういいのだ。こちらはなんとかレベルを上げ切れそうなので。それに配信バウンティと同時にやれるというのはモチベーションにも繋がる。

 

 問題は、龍結晶の地のヤツである。時折近接が届かない範囲で溶岩を吐くアイツである。なおこのハンター、ヴォルガノスの名前はネルギガンテと同じくらいカッコイイと思っている。

 

 ラヴァ装備も好きだ。色の渋さが好みである。仮面のような兜で目が光っているのも怪しい悪役みたいで素晴らしいと思っている。とはいえ、装備に関しては……彼が嫌いな装備なんて存在しないので、どんな相手でも基本的には全てに愛を叫ぶのだろう。

 

「そうだ……狩るついでにガンランスの練習をすればいいんだ。肉質無視ってすごいよな。練習とくればきっと楽しい! なんて最高な案なんだ!」

 

 彼の大好きな言葉の一つに「ついで」がある。同時にこなせるならば、それに越したことはないというわけである。

 

 例のハンターは名案に喜び、立ち上がりがてらギルドクロスのマントを盛大にバサァとさせると、椅子に足をかけてポーズをキメようとした。

 

 しかし、寸でのところでその行為が行儀が悪いことに気づいて、足はきちんと地面に降ろされた。妙に彼は行儀がいいのである。それから股を開いて座ったりもしない。中の人の意向である。ハンターがワイルドなのは戦場だけでいいのだ。

 

 とはいえ、いくらお行儀が良いところがあったとしても、いつまで経ってもアステラの人々に迷惑をかけていることにはちっとも気づかないのだが。まあ例のハンターなので。というかプレイヤーなので。

 

 アステラ的には行儀が悪いなどの可愛いレベルではないのだ。ひたすら無関心を装わなければならない起爆寸前の爆発物である。

 

 ともあれ、彼にも人並みにバゼルギウスなどへの恨みもあったが、このハンターは幸せなハンターなので、基本的にどのモンスターへの悪感情などないのである。

 

 ウキウキと、生産武器がひとつもないので適当なマム・タロト産のガンランスを見繕い、考えるのもめんどくさいので適当に片手剣の匠会心ビルドにガンランスをブチ込むとひと狩りしに行くことにした。使い慣れない武器にそんな適当な装備で大丈夫なのか。一応、引き返してきて増弾珠を入れたが。

 

 そして彼は口笛を吹いて飛び立つ。アステラの人は段々小さくなる例のハンターの背中を見上げながら今日は平和だったなぁとちょっと思う。 

 

 彼らにとっては不運なことに、例のハンターは愚痴を零しつつもアステラ的には強いのである。わりとすぐにいそいそと戻ってきたのだった。静かな平和な時間はとても短い。

 

 例のハンターは、生体研究所に報告してからワンテンポ置いて空から降って来た銀のトロフィーを、高々とかかげてしばらく激しく踊る。ダンシングしまくる。場所が場所なのでアステラの人々は目撃せざるを得ないことになる。

 

 戻ってすぐトロフィーを手に出来たのは、キャンプ経由で各地を回ってきたからである。一気に二種の調査を済ませれば、トロフィーがすぐに貰えると踏んだのである。特に経過時間の代わりはないが、このハンターがそれで幸せならなんだって良いのだ。

 

 しかしながら今回、生態調査をほぼ完璧にやり遂げたというのは調査団の目的にあった喜びだったので、ちょっと流石に一人で踊らせておくのは忍びない。

 

 生来、命知らずとしかいいようもないほかのハンターたちは狂ってもナルシストでも我らが導きの青い星は流石だ、と例のハンターに祝福の言葉を述べたのだった。都合のいい扱いである。ナルシストのくだりはもちろん本人には聞こえないように慎重に言葉を選んだが。

 

 幸いにして、その彼の代名詞とも言える「導きの青い星」などのクエストによって、アステラの人々に声をかけられてもそんなものかと思っている例のハンターは、特別気にもとめずに小さく祝杯をあげた。

 

 これで彼のトロフィー取得率はようやく八十八パーセントである。道のりは険しく、しかし目標の頂点は見えてきた。残りは闘技大会系と、モンスターのサイズの問題なのである。そしてそれ以外のトロフィーはあとひとつだけあるのをこのハンターは見過ごさなかった。

 

 なにせ、いけそうなところからクリアする普通の感性の持ち主なので。

 

 

 

 

 

 

「シーラカンス出るまでスーパーリセマラタイムだよ、にゃんにゃんちゃん!」

「シーラカンス、ニャ?」

「あっ、カセキカンスだった! ヤツが龍結晶の地と瘴気の谷を往復して出るまでやるよ! フワフワクイナとゴワゴワクイナのときと同じね!」

「わかったニャ」

「終わったら古龍でも狩りに行こうな!」

「やったニャ!」

 

 ハンターはギルドクロスにブリゲイドの帽子という最近ハマった組み合わせを素敵にパリッと着こなして決めポーズを取っていた。今日の気分は明るいエメラルドグリーンらしい。色のレパートリーのなさがそろそろ同じような組み合わせを招いている。

 

 装備を探索用のマイセットから引っ張り出し、餌用にイレクイコガネをきっちり用意すると彼は愛するオトモアイルーを抱き上げた。

 

 飛び立っていくかのハンターの背中には、目的を達成するまでは決して戻らないという強い意志が感じられた。アステラの人々は大人しくしてくれればなんでもいいからこれ以上テンションを上げることはしないでくれという切実な思いを思っているのに。

 

 もちろん、例のハンターの中の人はプレイヤーなので、NPCたちの事情なんて知ったこっちゃないのである。

 

 龍結晶の地と瘴気の谷のカセキカンス出現ポイントを激しく往復しながら、ハンターはこのためにわざわざセットしてきたキノコや骨塚のバウンティがたくさんクリア出来て楽しい!と幸せだった。鎧玉稼ぎに必死なのである。

 

 いついかなる状況でも、このハンター、いやこの場合はこのプレイヤーはこのゲームを楽しむのである。重ね着があるので以前は訳の分からないキメラだった探索用のマイセットも騎士のような組み合わせの服になっているのでスクリーンショットも捗るわけであるし。

 

 ついでにテトルーと確実に会えるポイントを通るので、マルチ大好きな彼が放置していたテトルーのレベルもじわじわ上がってくる。「ついで」が最高の組み合わせのリセマラなのだ。

 

 探索を始めて数十分後、ハンターは慎重に慎重を重ねてカセキカンスを釣り上げると、直後頭上から降って来た銀色のトロフィーに頭打たれながらも喜び勇んでスクリーンショットを撮った。

 

 超上機嫌なハンターがアステラに戻ると、いったいこれから何をしでかすのか人々はビクビクしながらハンターを見ていた。

 

 しかし、彼は予想に反して大人しい。自分のギルドカードを開いて今日だけで二つのトロフィーが増えたのを確認し、とても嬉しそうに指でなぞったことと達成したバウンティを報告しただけなのだ。

 

 中の人的には、戦うこともなく数十分も、二つの場所を往復し続けリセマラを繰り返すなんて神経と体力をすり減らすことなので、疲れていたのだ。

 

 もちろんオトモアイルーとの約束はきっちり守るので力なく喜んだあとは装備を見直していつものネルギガンテ狩りに出発したが。ネギ狩りは日課なのである。やたらこの古龍だけ討伐数が多いハンターなのである。そのわりには玉がないが。

 

 そうしてひと狩りも終わったあと、例のハンターはすぐに後ろにバタンと倒れたので、人々は起きないだろうな?とビクビクしながらもマイハウスに彼を引っ張って運ぶオトモを手伝った。

 

 次のマム・タロトがいつくるのか分かっていて、今のイベントクエストはすでに遊んだあと。彼はやることをどこからともなくたくさん見つけ出して遊ぶのだが、なんとなく張合いが少ない期間には違いない。

 

 それからしばらく彼は一日三回を遵守しながら過ごした。アステラ的にはようやくイベントクエストに振り回されない日常が帰ってきたのである。




最大金冠最小金冠がちっとも埋まっていないハンターさん
これでトロフィー取得率は90%。
釣ったカセキカンスはマイハウスの池に放たれた。
なんとなく特別やることもないので小休止中。ログインしないとは言ってない。ハンターの肉体的な話をすると一日三回狩りに行ってあとは寝て過ごしている。
アステラ的には平和な時期。

ハンターさんのオトモ
探索の時にアイテムを追加で拾ってくれるのが有能。
今日の装いはデスギアの服に頭はエンプレス。髪の色を真っ赤にして血の貴族令嬢のような装い。ハロウィンにはちょっと早い。
ハンターが寝ている(ログアウトした)時間はマイハウスの庭で魚を眺めているとか。
ハンターのことを「ご主人」と呼び、「旦那さん」と言わないのはオトモがうすうす中の人が女性であると気づいているから。

どういった話を期待していますか? 最も当てはまるものを選んでください。

  • ゲームシステムによるもの
  • クエスト頻度、難度、クリア時間
  • イベント関連
  • メタ戦法(確定行動、戻り玉回避等)
  • アナザーストーリー
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