ハンターさん、集めるのが好き   作:ryure

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裏技に関する話。


ハンターさん、悪に手を染めようとする

「ある方法を使うと、簡単に未来予知ができるらしい」

「未来……予知ニャ?」

「またまたー、いくら相棒でもそんなことは出来ませんって」

 

 大真面目な顔をした例のハンターの言葉を受付嬢は笑い飛ばした。この素っ頓狂な発言には、きちんとした信頼関係があるはずのオトモすら半信半疑である。如何に彼が狂人的な人物であっても未来予知となると、もはや人の所業ではない。神の領域である。

 

 受付嬢がいるので分かることだが、ここは食事場である。「名物五期団ペア(狂)」の隣のテーブルにいつものように陣取っている、五期団と四期団のハンターたちは不穏なワードに反応して耳をそばだて、話が本気で恐ろしい方向へ進みそうならば総司令に報告しなければならないな、と静かに怯えていた。

 

 場合によっては狂ったハンターに捨て身で攻撃するなりしてなんとか捕獲し、現大陸に被害が出る前に新大陸で食い止めなければならないからだ。

 

 アステラ中のハンターで束になってかかっても、例のハンターはシステムに守られたプレイヤー故に、腕や足を部位破壊できることはないし、もし大タル爆弾Gなどを用いたフレンドリーファイアの結果乙っても、三回か四回は蘇ってくるので行き着く先は絶望なのだが、どうなってもやらねばならないのだ。

 

 仮に例のハンターから見てクエスト失敗まで持ち込んだとしても、相手は狂人なので人間相手だろうと勝てるまで挑んでくるのである。新展開に気持ちよくなってしまうのである。そもそも戦わない選択肢が一番なのだ。

 

 しかしながら、未来予知ができるとは流石に「まさか」である。如何にこのハンターが強くとも、金銭感覚が狂っていても、人並み外れたナルシストでも、見えない相手と長時間話すような人間でも、そんなことはありえない。古代竜人にだって、過去のことからの未来の予想はできても本物の未来予知はできない……はずである。

 

 とうとう人並みにジョークもいうようになったか、だが内容は面白くない。それにしても「あいつ」がこんな努力をするなんて、随分人間味があるじゃないか……と笑い飛ばそうとしている現実逃避気味なハンターたちには見向きもせず、アステラ的には狂人なハンターは相変わらず真面目な声でいう。

 

「これで出来るのはマカ錬金で欲しい珠を取ることだけなんだけど、あらかじめ何回かマカ錬金をしてテーブルを知って、錬金前のセーブデータをクラウドに保存しておくことで……」

「相棒、何言ってるかちっとも分かりませんが、それ、もしかして悪いことじゃないんですか?」

「あぁうん、人によっちゃすげぇ悪い事だと思う。出来るってだけでやるなんて言ってねぇよ、一個ずつ集める意味なくなるじゃん」

「ご主人には矜恃がありますからニャ」

 

 例のハンターは今日も今日とて空の財布を片手でお手玉にしながら、ポソッと言う。空の財布を手に持っているのは装備への愛の証とポーズを決めて高らかに宣言した名残である。

 

「まぁ、あと痛撃珠があったら会心片手剣装備が完成するし、ここまで来るとワクワクの方が上だから、そんな勿体ないことはしないんだけどさ、テーブルの関係とはいえ、世界の未来知ってるとかカッコよくね?」

 

 カッコイイ。このハンターにとって最も重要なのはマカ錬金の裏技で好きな珠を手に入れる事よりも未来予知ができるカッコイイ自分なのだ。

 

 しかし、この方法で出る珠を未来予知してもたしかに「すごい」だろうが、絵面が地味でカッコイイとは言い難い。故に食事前の軽い小話として語ったのだ。そもそもやる気もないし、そんな方法もあるのだ、とそれだけのこと。

 

 ユーチュー〇ーが炎上するようなことはしないのである。これで仮に炎上しなくてもわざわざやらないのである。なぜなら彼はライトでソロなプレイヤーなので、なるようになるのに身を任せて日々楽しいわけであり、特定の珠のあるなしによって楽しさが変わるわけではないのだ。もちろんTA勢でもないのだ。

 

 例のハンターは出された定食を残さず綺麗に平らげると、痛撃珠求めて歴戦四枠古龍のクエストを立て、ひと狩りしに行った。

 

 余談だがこのハンターの装飾品も人並みに偏っているらしくやたら治癒珠が出るとか。解放珠は都市伝説である。攻撃珠も達人珠も必要数はないとはいえ持ち合わせているのに、運というものはいつだって残酷なのである。

 

 

 

 

 

「出るのはだいたい見覚えのあるやつらばっかり、たまに物珍しいのが来るから楽しいんだろうけど、終わりなきやりこみに近いような……いや、終わりはあるか。痛撃出たら解放も欲しいなー、解放も出たら攻撃が欲しい、それも出たら達人が……」

 

 例のハンターはボックスの中にある装飾品を几帳面に整頓しながら、ブツブツブツブツ独り言を続けていた。不気味なので誰も近寄ってきたりしない。

 

 熱心にボックスをのぞき込んでいるので、彼にはちっとも周りが見えていないという自信があるゆえに、これ幸いと他のハンターたちは例のハンターを見かけると踵を返して加工所の前のクエストボードでクエストを受注し、食堂の横からひと狩りするという安全策に走っているからだ。

 

 普段から、別にNPCたちの動きを観察してどうこうしてやろうなんて暇なことを考えるようなプレイヤーではないのでいつもそうすればいいのだが。ただし機嫌が異常にいい時は動きが目に付くと絡んでくるのですべて間違っているわけでもないのだが。

 

 現在、このハンターはマカ錬金をするために必要以上にある装飾品が何かを確認しているところなのである。さっき言っていたように「裏技」を使って自分の好きな珠が出るようにテーブルの調整をするわけではなく、完全に運を天に任せてガチャる気満々なのである。

 

 高尚にもすべての収集品は自力で集めたい!という気持ちもあるにはあったが、おおむねの理由はテーブル調整のためのワクワクマラソンがめんどくさいとか、後から胸を張れなくなるとか、いつの日かBANされたらどうしようというチキンさゆえだったりもするのだが、とりあえず導きの星のハンターは自分の心に住まう悪魔の声を振り払ったのだ。

 

 彼の中の悪魔は素晴らしく見事に着こなした真っ黒のブリゲイドを翻しつつ「攻撃珠が八個のボックスが見たくないか」とか「超心珠や痛撃珠に不自由しないようになりたくないか」とか「いつでもTA勢と同じ装備で戦えるようになるぞ」とか「TA勢のような火力が出るなんて絶対にカッコイイぞ」とか囁いていたが、おそらく良心の天使である己で振り払ったのだ。

 

 しかしながら、彼とて人並みに甘言に弱いプレイヤーなので、マカ錬金の前にセーブして、一応セーブデータをクラウドにあげるところまではやってしまった。

 

 もちろん、そのあとは普通にマカ錬金してリセットもすることなく、いつものように入れた珠がキャッチアンドリリースされた悲鳴をあげたりもしたのだが、それを悔いることもない。ちょっとやってみたかったから手が滑っただけなのである。それから、言い訳するならバックアップデータを残しておくのは重要なのである。

 

 このハンターは、そんなことをしなくたって幸せなのだ。もう十分にこのゲームを楽しめているのだ。だから悪に手を染めたりしないのだ。しかしながら、人並みに楽なほうへ流れる人間でもあるので、ちょっぴり、「もし」ワクワクマラソンをして好きな珠が出るように調整しながらマカ錬金をしたらどうだったろうとは考えた。

 

 彼はちょっと身震いした。このハンターはただのライトなプレイヤーである。プロハンと呼ばれるような存在でも、弱すぎたり常識がなかったりキャンプ待機をやらかすような地雷ハンターでもない。ただのよくいる中堅層である。乙りもするが、クエスト失敗に追い込むほどでもなく、火力も補助もそこそこできる普通のハンターなのだ。

 

 そんな潔白な自分が禁忌に手を染めたら……ロールプレイ好きの彼は興奮した。というりも中の人のテンションが上がった。彼お得意の、ハントする以外の別の楽しみの幕開けである。

 

 いかにも潔白そうな無垢な顔をした、中性的な顔立ちのイケてる服を着たハンターの強さの秘訣とは、「未来予知」を駆使した禁断の技だった! 最初はその魅力的な結果に惹かれただけで軽い気持ちだった彼はだんだんとおかしくなっていく……そう、それはすべて禁忌の副作用! ……と、ここまで全部例のハンターの妄想の世界である。

 

 現実には「未来予知」しても別に何も起こらないのである。システムの隙を突いたという意味では到底ホワイトな行いとは言えないが、チートなプログラムを組んだわけではないし、攻撃力が9999になるとか、肉質をすべて無視するとかそういうこともない。ただマカ錬金の悔しさがなくなるだけの実行が少しめんどくさい裏技である。

 

 しかし、このハンターは「禁忌」とか「禁断」に手を染めた顔のいいキャラクターの行く末が好きなプレイヤーが中の人だったので、自分はやらずともそのことで脳内がいっぱいになってしまう。勝手に幸せになる、非常に楽しく愉快で安上がりな頭の持ち主だったのでもうなんだっていいのだ。

 

 ともあれ幸せなのである。めくるめく妄想をしながら地道に普通にマカ錬金をし、キャッチアンドリリースに心が折れそうなときは素敵なワインレッドのブリゲイドの帽子を被った自分の顔を見ることによって幸せになるのだ。スクリーンショットももちろん撮る。

 

 すべて自分の機嫌の面倒を自分で見るという点では、周りに迷惑をかけないハンターは、素晴らしく自分好みの妄想によって非常に不気味な表情をしていたのでやはりアステラの人々には怯えられた。




ワクワクマラソン
テーブルを一つか二つ進めるために最短でクエストを終わらせること。
「いにしえの化石」を四つ納品するだけで終わる簡単なクエストの名前が「料理長の!ワクワク納品依頼」より。

※「裏技」を推奨しているわけではありません。

結局ただの面倒くさがりなハンターさん
珠の運はないが、今日のネルギガンテで玉が落ちたのでもう最高に幸せ。得た瞬間に作るので常に在庫はゼロ。貰った瞬間に何かしらのエンプレスのネルギガンテ派生の武器が増える。

ついに主人が狂ったかと思ったオトモ
ハンター的ジョークだと無理矢理納得したが、やりかねないとは思っている。

どういった話を期待していますか? 最も当てはまるものを選んでください。

  • ゲームシステムによるもの
  • クエスト頻度、難度、クリア時間
  • イベント関連
  • メタ戦法(確定行動、戻り玉回避等)
  • アナザーストーリー
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