ハンターさん、集めるのが好き   作:ryure

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システム上の仕様の話。


ハンターさん、物持ちが良い

 鎖につかまって流通エリアにおりてきた五期団の例のハンターは、朝日を浴びて気持ちよさそうに伸びをする。お気に入りの、今日は白に染めたブリゲイドの帽子を被り、羽飾りを揺らす。

 

 背中にはよく抱きしめて狂喜乱舞するくらいお気に入りの大剣を背負う。それはちらりと一瞬手を止めた人々にきちんと視認された。

 

 なお、朝からボックスステップを踏んで踊っていなかったので比較的マシだなと思われている。踊っている時の彼にはことさら人が近寄らないのだが、もし近づいた人間がいたならば、踊りながらも意思のない虚空を見つめる目を見て腰を抜かすことになるだろう。つまり彼の中の人はトイレかなにかに行って離席しているだけなのだが、ようは魂が抜けているわけである。

 

 ちなみにわざわざ武器を視認されたのはハンターは毎日のように武器を変えるからだ。そしていつも、周りも見ずにイノシシ如く流通エリアを突進するのを知っている流通エリアの人々は得物が大きいことに気づくといつもより広く道を開けた。

 

 彼は人にぶつかるとかるく会釈して詫びる程度の人間性はあったが、そもそも避ける気はないようだったからだ。巨大なモンスターたちにタックルをぶちかましても肩が壊れないハンターとわざわざ接触したい人間はいないので道は自然と開く。

 

 一応吹っ飛ばされた被害者はいないのだが、もしいつも以上に彼が上の空だった場合、導きの星に物理的になってしまう。星という称号はもうこのハンターがなっているので周りは辞退申し上げたいものだった。

 

「おばあちゃん、竜玉一つ!」

「はいはい、混ぜましょうね」

 

 ここはご飯処か。元気よく食券如く差し出す手には金の竜人手形。今日も今日とて武具を集めることに熱心な彼はいつも以上に気合いの入れたおしゃれをして、機嫌よく竜玉を受け取る。

 

 もちろん、彼は自前でも各種素材を狩ってくるのだが、先日嘆いていたように竜玉などのレアなアイテムはなかなか手に入らないようなので合成してもらうこの光景はよく見られた。

 

 彼の頭のなかには作る予定の装備が踊っているのか、今から財布の中身を空にするだろうに鼻歌でも歌いそうな雰囲気。もちろん彼の相棒や、陽気な同期以外は誰も近寄ったりはしない。

 

 スキップでもしそうな勢いでアステラ一の狂人はもはや足音すら親方に覚えられたほど鍛冶場に通っているらしい。

 

 その後ろ姿が鍛冶場に消えて、誰かがぽつり。仕事の手は止めないが、思わずと口からこぼれたようだ。

 

「……この前あの大剣持って、五期団、クエスト失敗してなかったか」

「日に二十ぺんちかく挑んでぼろぼろになってたやつか?」

 

 アステラ的には強いハンターだが、普通に失敗はしまくっている。失敗しても五体満足でまったく死なないので彼は青い星なのである。なお現在も連敗中らしい。自分程度は大したハンターではないと謙遜する姿が脳裏をよぎるがきっとそのうち日課として狩り始めるだろうと予想する。能力も装備も彼はインフレするのだ。

 

 気づけば勝てない勝てないと嘆いていたモンスターを狩るのを日課にし、ドスジャグラスに頭を噛みつかれて半泣きになっていたのはつい半年くらい前のことなのだが、彼の成長速度は尋常ではなかった。

 

 曰く、ハンター業は初めてらしい。初心者だから慣れただけとは聞きなれた言葉だ。推薦されたのではなかったのか。曰く、世界はそういうものなのだ。もうなんだっていいからあの馬鹿とは離れた距離で観察したい。見ている分には変人すぎて飽きない。推薦する価値は確かにあったのかもしれない。なにせ死なないので。

 

 未だにドスジャグラスとは因縁がある彼は「ドドド」と口走りながら虐殺、もとい狩猟を繰り返しているらしい。お手軽攻略バウンティ。手には溢れんばかりのきれいな鱗、金欠の彼には一石二鳥の最高のクエストだろう。もちろんその時背負っているのは双剣である。

 

 他のハンターたちの常識とあてはめて考えれば器用な人間である。しかし例のハンターと思えばそんなものか、で済まされる程度の特技だ。

 

「そうそう、流石にあの時血塗れだったから見かねて介抱しに行ったらな、大剣のガードがなければきっと死んでたって言いながら、ものすごい楽しそうな笑顔よ。俺たちからしたらなんで同じ日に挑み直して死んでないのか、それが……分からないが……そもそも同じ日に挑むなよ。出直せよ」

「今更だな。あいつなりには出直してるんだろ」

「頭かち割れたみたいに血を流しながらアイテムだけ補充して、出血のわりにぴんぴんしながら出戻り繰り返してたよな。いやそれより、気になったんだが、あの大剣であいつの頭がかち割れるくらいの攻撃を防ぎまくってたんだろ? なんでまだ使えてるんだ? ぼこぼこのメコメコになって鉄くずになってるレベルだろ?」

 

 さっき見た大剣は傷一つないとは言わないが、よく手入れされていたし、陽光に反射した刃は見事な輝きをみせていた。新調したわけではなさそうだ。

 

 武具に対しては間違いなく狂人レベルの執着を見せる彼だ、期間限定! (しかし定期的にやる)と叫びながら、カッコイイ! と雄叫びをあげながら、しかも強い! とひとしきり流通エリアで一人ダンシングしてから手に入れたあの大剣が、本当に使い物にならなくなり、作り直していたとしたら今日の重ね着衣装はご機嫌な真っ白ではなかったはずだ。

 

 もしそうなっていたのなら、曇天を表現する灰色の喪服を着て、あるいは自慢の衣装に合わせた化粧を施した顔すら見られたくなくてデスギアに身を包み、泣きながら、そして地団駄を踏みながら、日に三回という日課も無視して八つ当たりの出撃を繰り返していたことだろう。

 

 それがないのだからきっとあのハンターが失敗し続けるモンスターの手酷い一撃をガツンガツンと受け止め続けた大剣そのものなのだ。

 

「どうなっているんだろうな」

「あいつのことは考えても無駄だろ」

「そうだよな……」

 

 まさか自分のことを話されているとも露知らず、例のハンターは大量の蜂蜜を栽培したのを受け取って彼らの脇を駆け抜けていった。彼は被弾魔でもあるので回復薬グレートは水よりも飲む。早食いつけて死ななければどうということはないのである。彼にとって装飾品の節食珠は火力スキルなのである。

 

 そして新調したばかりの装備をウキウキ着込んで決めポーズし、しばらく自分に酔いしれ、ひとしきり満足するとお気に入りの格好に戻り、口笛を吹いてひと狩り行ってしまった。

 

 ハンターはスクリーンショットをご機嫌で撮ってウキウキなだけだったのだが、周りから見ればいつものナルシズムと衣への執着の融合技が見せる珍行動に過ぎなかった。

 

 あまり間違ってもいないが別に全体的に見ればこのハンター、一般人である。

 

 被弾も多ければクエスト失敗も多いライトなハンターなのである。しかしアステラの人々には知るよしもない。

 

 

 

 

 

 

「相棒はいつも激戦を繰り広げていますが物持ちはいいですねぇ」

「そういう受付嬢はいつも食という名の扉を開いているのによく体型維持ができるな。いつ見ても食ってね?」

 

 ペアである以上仲は悪くない二人の食事にはあまり人は寄り付かない。だが隣のテーブルで繰り広げられる言葉のキャッチボールがなりそこなったドッジボールにこっそりと耳を傾ける隣のテーブルの四期団はいる。しかし口は挟まないでおく。何も聞こえていないという体で聞いているのだ。

 

 例のハンターは流石に失敗続きが堪えたのか大人しく魚定食で防御力をあげようと足掻いている。しかし報奨金保険がつかなかったのでしょぼくれてもいる。

 

「私のことはいいんですよ。物持ちが良いのには秘訣があるんですか? 武器だって、お気に入りのものばっかり使ってるじゃないですか。ガタがきたりしないんですか?」

「武器に関してはお気に入りというか最適解なんだけど、まぁ、ガタはこないかな。こないものだろ、そういうものだろ?」

「そういうものなんですか」

「斬れ味は戦ってたらまぁ落ちるけど、ちゃんと研いでメンテナンスしてるし。それにしてもあー、カッコイイ!」

 

 大事そうに抱えた大剣に頬擦りする変人をなるべく視界に収めないようにした四期団は、とりあえずこのハンターはやっぱり参考にならない程度の星なので「そういうもの」だと流せるようにならなければならない、とよく理解した。

 

 財布に珍しく金が入っている日々が続いているハンターは、それについて指摘されるとカスタム強化をしようとしたら金がなくなりすぎて痛い目を見たので最低限は確保するようにした、とようやくの学習能力を見せた。

 

 しかし彼は詰めが甘いので財布の中身は実は足りておらず、腹いせの追い剥ぎが捗ったという。もちろん馬鹿なのでそんな確保分も、しばらくしてから新しい装備が作れるとなったら忘れてしまい、また財布がすっからかんになるまで装備品を作って食堂で突っ伏すハメになるのだった。




ハンターさんが散っているクエストは極ベヒーモス。
激しい音を立てながら回避が間に合わないのでガードし、大剣の切れ味が凄まじい勢いで減っていくのになんで壊れてしまわないのか。
ワールドからはじめた新参ハンターもきっとアステラの人から見たら充分頭のおかしいやばい人。突っ立たせておくのも申し訳ないから離席の時は踊る狂人。
受付嬢は嫌いじゃないけど、素直に相棒とハンターさんに呼ばせるほどゼノ=ジーヴァでの共にいない感は虚しかったので受付嬢と呼んでいます。彼女はきっと気にしないし、互いに互いの好きなことばっかりな二人なのでこれからも上手くやっていく。

どういった話を期待していますか? 最も当てはまるものを選んでください。

  • ゲームシステムによるもの
  • クエスト頻度、難度、クリア時間
  • イベント関連
  • メタ戦法(確定行動、戻り玉回避等)
  • アナザーストーリー
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