ハンターさん、集めるのが好き   作:ryure

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斬裂弾が容赦ない話とハンターの趣味の話。


ハンターさん、ハチの巣にする

 麗しの白きたてがみは斬裂弾の派手なエフェクトに囲まれて。鳴り止まないエフェクトはいっそ美しく、芸術的である。

 

「ひゃー、圧巻」

「頭どうなってんのあれ」

「あれがハチの巣ってやつだろ」

「エリア移動前に下手しなくても角折れそう」

 

 戦場に響く斬裂弾の発射は鳴り止むことなく、ただただ作業に近い狩りは四人の野良ハンターたち同士の軽口を生んでいた。響き渡るキリンの甲高い咆哮は、もはや悲鳴にしか聞こえない。

 

 どこまでも一方的な狩りである。脅威であるはずの古龍ですら、ちょっと暴れる的に過ぎず、オモチャにするハンターたちは、芸術作品の制作に夢中になりながらハチの巣にし続けた。

 

 もちろん、全員斬裂ライトである。考えることは皆同じなのである。

 

 

 

 

 

 ことの始まりは祭りの開始である。

 

 豊穣の宴が始まったとたん、ハンターたちは、いや、プレイヤーが中にいるハンターたちは、再配信されたイベントクエストやマム・タロトに群がった。ログインボーナスで二倍に増えた激運チケットを握りしめて各クエストに飛び交うのだ。

 

 目玉であるはずの今回の新規重ね着、カボチャ衣装のハーベストは適当に毎日配信されるバウンティをクリアすれば手に入るので、明確にクエストを受注して取得を目指すはネタ頭装備のモスフェイクとアイルーフェイクのためのレイアレイア亜種クエストに、例のアミューズメントパークとのコラボ装備後期クエスト、フワフワ羽根帚な双剣である。

 

 しかしこれらのクエスト、二種のフェイク重ね着はチケット二枚で済むので多くとも二回行けば済んでしまい、もふもふ双剣に至っては下位クエストの上に必要数はチケット三枚なので瞬く間に済んでしまう。コラボ後期なんて宴に燃え上がったハンターたちにはおやつである。

 

 よって、豊穣の宴のお鉢はマム・タロトに完全に奪われているのだ。しかし、プレイヤーのハンターたちは完璧人間ではない。取り逃しを拾っていくハンターや、コンプリート精神がたくましい人間はさらなる道をゆく。

 

 例のハンターのように、今までの歴戦王の重ね着や装備を逃してきたハンター、もしくは単に歴戦王と戦いたいだけの者や、装飾品やカスタム石を求める者もいるだろうが、そんな目の色を変えたプレイヤーたちは再配信された各歴戦王に我先にと群がったのだ。

 

 クエストは特に逃げないのだが、あっという間に救援枠が埋まっていくという盛況ぶりである。こんなにイベントクエストの救援が乱立しているなんて、と例のハンターは歓喜の声をあげた。

 

 知り合いのネカマプレイヤーが別のゲームに行ってしまっても、彼はずっとモンハンに夢中なので人が多いだけで嬉しいのである。

 

 ところで、着せ替え大好きの例のハンター、歴戦王キリンの実装時は腕前がライトプレイヤーどころか初心者に毛が生えたクラスであった。前兆がわかりやすい雷もロクに避けきれないハンターだったのだ。故に、規定数倒しきれずに重ね着ブロッサムを逃した悲しい過去を持つ。装備だって三箇所ほど作るのが精一杯であった。

 

 しかし、今は違うのだ。みんな大好きエンプレスシェル・冥灯という弾丸節約付きのライトボウガンを堂々と担ぎ、キリンの攻撃を極ベヒーモスで鍛え上げたキレのあるエイム力でほぼ避けきり、ガンナー特有の紙装甲を耐雷の装衣と転身の装衣で押し切りながら戦えるのだ。極ベヒーモスはそれはそれは偉大な先生であったのだ。

 

 その、再配信中の歴戦王キリン。

 

 ひときわ目を引くカッコイイたてがみを持つキリンの中の王者の末路は、四人のライトボウガンのハンターに頭を斬裂弾まみれにされ、それによってめちゃくちゃに切り裂かれ、倒れれば一斉に徹甲榴弾の餌食にされ、起き上がる頃にはスタンし、怒り狂いながらケルビステップを踏めば各所に散りばめられた地雷が激しく爆発し、あっという間に瀕死に押し込まれると逃げるその尻には追撃の斬裂弾が刺さる。そんな惨状である。

 

 あぁ幻獣の王者よ。それでよいのか。よいはずがない。しかし、これが現実である。悲しい作業戦闘である。

 

 もちろん、瀕死になって眠りに付けば四人で八個の爆弾セット、四人で十二個の地雷とともに起爆、角はここでほぼ折れる。

 

 悪魔のような顔をしたハンターたちが爆弾を構えて先回りして待っている寝床エリアでは、待ってましたとばかりにレベル2の睡眠弾が火を吹き、再び眠って爆弾おかわり。斬裂弾が切れようが、彼らの調合分の持ち込みがなくなろうが、キリンの寝床には二箇所、斬裂の実が生えているのである。あぁ、この世は無情。無慈悲な斬裂おかわりがとまらない。

 

 付け加えるなら、前述の通りエンプレスシェル・冥灯は弾丸節約付きであるのでもともとの三十発、調合の二十発、拾った二十発、それに加えてエリア移動の際に弾丸を補充してくるハンターも当然いるので逃げ道はない斬裂弾に塗れて討伐されるのみである。

 

 幻のモンスターも、歴戦という個体も、そのなかでも特に優れた個体であるはずの歴戦王も、チケットの欲にくらんだハンターたちの斬裂弾の嵐には耐えられない。

 

 かくして、ハンターたちは、頭が斬裂弾まみれになって弾が弾けるぱしゅんぱしゅんと音を立て、切り裂かれ続けるキリンに各自好き勝手な感想を抱きながら一切の容赦もなく狩りを続けた。

 

 それでも続けられる反撃の攻撃を見事に躱しながら互いに軽口を叩き合い、時に誰かがダメージを受ければ粉塵を巻いたり円筒を立てたりして補助の姿勢も崩さない。

 

 そう、もはやゆとりと余裕の狩りなのだ。例のコラボが強すぎた。心に余裕を、仲間に愛を。モンスターには慈悲はなし、そんなありふれた狩りに貶められているのだ。

 

 なお、例のハンターいわく、たまに混ざる拡散ヘビィはいくら全員がガンナーで来たからといって所構わずぶっぱなされると、キリンの移動によって位置ズレを起こした拡散弾の残滓に吹き飛ばされて無残に乙る可能性があるので、スタンしていないなら控えるように、と注意喚起したい。

 

 ふっとび属性の拡散弾は計画的に。

 

 かくして、ようやく重ね着ブロッサムを手に入れたハンターは、腕装備を入れ替え、射手の手袋のような外見に色を変えられるスリンガーに心ときめかせて祭りの陽気に浮かれていた。

 

 

 

 

 

 

「素晴らしい……現在できうる最強の……わたし……カッコイイ……」

 

 例のハンターはキレキレの決めポーズを取りながら、頷く。理想の自分というものは常に追い求めるもののため、到達することはないのだが、現時点で再現することの出来る重ね着、という意味では完璧な仕上がりであった。

 

 外見を優先するためにわざわざライトボウガンから武器を変え、弓を担いでまで悦に入っている。

 

 帽子はお気に入りのブリゲイド、本日は収穫のカボチャのオレンジ色。黒いマントのギルドクロスの胴と腰、体に沿う衣装はたっぷりとした布で騎士のような気品を生み出す。足にもブリゲイド、足を保護する金属の装飾がギルドクロスより優美で素敵だと判断した結果。そして腕は射手のようなブロッサム。

 

 ブロッサムの腕がシンプルで良いのである。射手のような手袋の部分とスリンガーの部分と、袖のラインの色が好きなように変えられるというそれなりな自由度の高さもさることながら、シュッと細く腕に沿うようになっている。

 

 つまり、ギルドクロスのように、戦っていて引っかかりそうな布もなく、ブリゲイドのように本当に戦えるのか?と疑問になることもない装飾もない。つまり、中途半端にリアルを求めたハンターにとって、外見の優美さと機能性を両立したと言える、騎士装備重ね着に合う腕装備なのだ。

 

 しかしそれでも理想ではない、あくまで理想というものは追い求めるものである。到達できるものではない。しかし、この装備であれば特定の角度で顔を見なくとも、ギルドカードですら性別不詳気味のハンターになれるのである。

 

 あぁなにが中の人を駆り立てるのか、理想のイケメンでプレイしているわりには求めるところがニッチな中の彼女は編集に編集を重ねた己のギルドカードを見て満足していた。

 

 オトモアイルーをエスコートするようなポーズを取ると、このキャラメイクかつこの重ね着装備であれば中性的な美人になれるのだ。

 

 自分のギルドカードにキスでも送りそうな勢いでうっとりと見つめる彼は、本日の装備に合わせるため、にしては性能が良い龍骨弓Ⅲをしっかり抱きしめていた。重ね着の下の装備もお遊びではない。被弾の多い彼が、耳栓や気絶耐性すら組まない本気の火力装備である。

 

 攻撃力こそ二百もないが、龍属性弓としては最強のこの弓。盛りに持った龍属性はゆうに五百を超え、龍属性が弱点のモンスターたちを次々と葬ってきた素晴らしい弓なのだ。

 

 そして彼が気に入っているのは適度な無骨さによる。弓というものは形状が優美である。少なくとも彼はそう信じている。存在自体が優雅であり、騎士の背にあるに相応しい弓、そして素材がむき出しとも言える、適度な抜け感というものに彼はギャップ萌えを感じていた。

 

 今の自分は性別不詳でちょっと体格が良い騎士である。その騎士の背には良く似合うはずの美しい弓があり、しかしその弓はどこまでも実用一辺倒で、素材を覆い隠そうともしない。優美さの欠けらもないのである。外見の完璧など求めてはいないのだ。彼の求めるハンターは、ただ美しい騎士ではない。

 

 強く、逞しく、美しいことを求めているのだ。あくまでしたたかであれ、そしてハンターなのだ。本気で騎士がやりたいならとっくにほかのゲームをやっているのである。しかし、それでも綺麗な男でプレイしたい、追いかける尻はゲームの中でぐらい異性でありたい。だがやりたいのはモンハンである。中の人の性癖は少し曲がっている。

 

 しかしながら、これはネカマの理論とほぼ同じなのである。ゲームの中で男の尻を見たくない男がかわいい女の子をやるように、女性プレイヤーである中の人はイケメンを求めた。

 

 そして、彼は紛れもなくハンターなので闘争も求めた。そして狩りをした。するとただ美しいだけでは満足出来ず、どこか滲み出るハンターらしさというものを求めるようになった。そうして、いろいろと至った彼は幸せになれた。

 

 アステラの人々への迷惑というものだけ犠牲にして彼はすべてを手に入れたのだ。プレイスキルへの程よい妥協と、外見に対する妥協のない追求が生んだ幸せなのだ。

 

 ともあれ、ハンターは求め続けた重ね着が手に入った記念と盛り上がってしまった妄想によって加工所の前を占拠し、かなり長い間スクリーンショットのための試行錯誤を繰り返し、我に返るとマム・タロト周回へ戻っていったのだった。

 

 ライトプレイヤーの彼の鑑定武器ガチャが終わる日は来ないであろう。今日もエンプレスシェル・冥灯の出番が尽きることは無い。




ハイメタが好きなハンターさん
優美な騎士ごっこも良いけどそろそろ重装備も重ね着したい、でも鎧武者は飽きた。
インゴットも欲しい。
鑑定武器ガチャの地獄に両足で踏み込み、大団長へのヘイトが静かに溜まっていく。

どういった話を期待していますか? 最も当てはまるものを選んでください。

  • ゲームシステムによるもの
  • クエスト頻度、難度、クリア時間
  • イベント関連
  • メタ戦法(確定行動、戻り玉回避等)
  • アナザーストーリー
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