「受付嬢ばっかりいい重ね着多くない?! ハンターにもふわふわドレスとカッコイイタキシード欲しくない?!」
「ご主人はお洒落だニャン」
「マムレベル4だし、暇なハンターはそろそろいこーぜ」
「行く」
集会エリアでひたすら欲望を叫んでいたハンターは、さっきまで追跡レベル上げに一緒に回っていたハンターに冷静な言葉をかけられ、ライトボウガンを担ぎ直し、クエストに参加した。
それにしても、本当にあっちもこっちもエンプレスシェル・冥灯である。ちょっとそれにランスと操虫棍と弓が混じり、それ以外の武器は本当に稀である。最終エリアで武器を持ち替える人は、たまにいないこともない。だが大抵眠爆からの斬裂弾で事足りるのである。
パーティメンバーのうち、四人中三人がエンプレスシェル・冥灯で一人が違う、というのが普通なのだ。ライトボウガンが三人ではない。エンプレスシェル・冥灯が三人なのだ。
「ライトボウガンのハンター」とか個人の特定にもならず、うかつに呼べやしない。武器の名前を特定してもやはり無駄である。
そんな異様な光景を見ても表情を崩さないプロの受付嬢たちは、個性のないハンターたちを豊富なキャラメイクによって個性的になった外見で判別するしかない。武器で見分けるのが楽なのだが、どうしようもない。
その点、例のハンターは帽子の下の顔が男らしいとは言い難いのでやや見分けやすい部類ではあった。たくましさを表現するヒゲも、無骨なカッコ良さを演出する傷跡もなく、つるりとした白い肌なので。
男キャラのポニーテールが少ない部類なのもその一端である。ドラケン重ね着でも、一式とも重ね着でないことも見分けやすい要因である。
あぁ、エンプレスシェル・冥灯。あっちもこっちも青いライトボウガン。
新しく集会所に参加したハンターの武器は?
ライトボウガン?
ゆらゆらと、ゼノ・ジーヴァのしっぽを模した飾りがそこかしこに生えているように見えるのである。
周回エリアの、いや集会エリアの白いポニーテールの受付嬢の周りには、新しいクエストを欲しがるハンターが群がるせいでさながら青いワカメが生えているようである。
ハンターたちには芸がないのか? 否。最高効率? 半分否。最もこれが手軽なのである。つまり、楽なのである。回しているうちに、脳死周回に人は落ち着くのである。
目を閉じれば、ほら、パンパンパンと弾を撃ち込む幻聴が聞こえる。例のハンターはそんなことをほざきながらも猫飯を手早くかきこんだ。お化けの仮装をしたオトモとともに。
しかし、いざ出発しようとすると立て主が見当たらない。思えば、ほかのメンバーも見当たらない。出発はもうできそうなものなのにだ。
キョロキョロとしていると、ハンターはおもいおもいの仮装をした無数のオトモアイルーに囲まれ、連行され、腕相撲大会に参加させられた。かわいいオトモに囲まれたハンターの顔は、デレデレに崩れたが、やや画面が暗い今の集会エリアで、あまり他人の顔なんてまじまじ見ないものなので、最低限の尊厳は守られていた。
無数のオトモたちはパーティメンバーのオトモだったのだ。導かれた先で構えている、恐らくネカマの可愛らしい女ハンターの鬼気迫る手を、理解した顔でガシッと掴んだこのネナベハンターは、六回くらい連続で見事に負けて地面に転がることになるまで大会は続く。
当然、ロマンチックな展開は始まりもせず、ただただ腕によって腕がねじ伏せられるのみである。人外じみた戦果を誇るハンターの腕力がうなり、古龍狩りをスナック感覚にしているハンターがねじ伏せられる恐ろしい光景である。
無敗のマム立て主、全敗の自分。悲しいのは悲しいのだがむしろここまで来ると笑えてくる。悲しみをスタンプで表現し、ほかの人の試合が終わると拍手してはやしたて、楽しい時を過ごした。
勝敗には何が起因しているのだろう、ハンターはググればわかることをその場で調べないことで世界の広がりを感じていた。
そのうち、悔しくなって「MHW」「腕相撲」「必勝法」とかググるのは目に見えているのだが、無数の花火が打ち上がる空を眺めながら今はただ無常を感じていた。
なお、負けて悔しいあまり伸びているハンターを仲間のハンターたちが引っ張ってマム・タロト周回に担ぎこんだ。何のためにここにいるのか? まだ見ぬ武器を手に入れるためである。
ロード中に気になってやっぱりググったハンターは、己の指の連射機能のなさに悲しみを覚えた。勝者を純粋に羨み、強靭な指を持つハンターになるためにピアノの練習でもした方がいいのかもしれないとも考えながら、目の前のゼニーの塊であるマム・タロトに目を奪われ、金欠から脱却するために落とし物を拾いまくる作業に夢中になった。
金に目がくらんだハンターは自ら両足揃えて周回という沼に飛び込んでいくのである。行き着く先は天国か、はたまた地獄か。それは中の人が決めることである。とりあえず楔虫による立体機動は楽しい。
調査に合計二十分、角折りにも十分、一周約三十分。そんな狩りが延々と、終わりもなく続く。ある者は欲しい武器が出るまで。ある者はすべての武器を揃えるまで……。
コンプリート派には間違いなく地獄と虚無の、夢の果て。祭りと宴の名前を冠した欲望の道である。
「オトモたちは本当にかわいいね、わたしのにゃんにゃんちゃん。ねぇ、にゃんにゃんちゃんもご主人がカッコイイタキシード着たい気持ちわかってくれる?」
「ニャ」
「そっかそっかー! わかってくれるなんていい子だなぁ!」
ハンターは白くて可愛いオトモを存分に撫でくりまわした。吸うのはTPOを考えてよした。
周りには周回に疲れて放心するハンターたちの屍と、やる気に満ちて集会エリアにやってきたばかりのハンターの意気込みの食事風景と、心が折れないたくましい立て主の呼び声が渦巻く。
一応このハンター、同じメンバーで回すようにはしているのでほかのハンターたちの会話は完全に聞き流しているが、踊り続けていたりジェスチャーで挙動不審になっているメンツばかりなので賑やかだなぁと思いつつも自分も同じ部類のハンターなのだとは気づいていない。
「マムレベル1だしまたレベル上げにいこーぜ」
「行く」
このハンターは別に、受付嬢たちが可愛いことをひがんでいるのではない。眼福なのは確かである。しかしながらハーベストだけでは満足出来なかったハンターはまだ諦めてはいなかった。
しかし、腰の重ね着はカボチャの主張がかわいらしいのでそこそこに満足していた。まだ使えないこともないし、デスギアと合わせると怖カッコイイだろうと予想して楽しい。仮装大賞は貰えないだろうが、良くいるウカレハンターにはなれそうだ。
それにしても、ゲームの仕様について勝手なことを願うことは自由であるが、妥協もそこそこのところで必要である。その点は上手いハンターなので、素直にマム・タロト周回に戻っていくのだが、ハンターの頭の中はあの受付嬢たちのハロウィン衣装の男体化でいっぱいである。
レースのついたゴージャスな、あの服の男性版へのめくるめく妄想は尽きることがなかったが、しかしこのハンター、どう言い繕っても馬鹿である。つまり、歩けば忘れる鳥頭である。
マム・タロトのエリア2になるとライトボウガンで下手なことをすると普通に乙ってしまう危険性もあるのですぐさま忘却され、角を折る頃に思い出すのだ。
あぁ、新しくてカッコイイ重ね着が欲しいな、と。
何しにハンターをしているのか。もちろんハンターのなのでハントしにハンターしているのだが、それとこれとはまた違う話である。
マム・タロトの周回のし過ぎでライトプレイヤーなこのハンターもついにハンターランク200に到達したが、まだまだそれっぽっちのハンターランクでは上がごまんといるライトなハンターである。
この程度に上がろうがよくわからないからという理由で使用回数ゼロの武器が複数ある程度にはライトなプレイヤーなのである。
ライトなハンターだから狩り以外のことにも夢中になる、というとプロなハンターも身だしなみぐらいしっかり気を使うのだが。
人によってはインナーのみ、つまり裸一貫で様々なモンスターにノーダメージで勝ってくるという一種の芸術的なファッションセンスを披露するくらいなので、プロハンターの身だしなみもかなり洗練されているといえるだろう。
しかしながら、それはそれ。これはこれである。このハンターは一応人一倍身だしなみには気を使っているハンターなので、頭の中が重ね着のことでいっぱいになるのも致し方がないのである。
今の自分に満足出来ない日が来たのなら……このキメラ派のハンター、一時期的に一式装備派になってでもハンターライフを楽しく幸せに謳歌したいと思っている。
カッコイイ外見のハンターがカッコよくスタイリッシュに狩猟するというのが最高にクールなのである。
オトモアイルーを可愛らしく着せ替えさせ、このハンターは僅かな色の微調整に気を使いつつ純白から少し青に傾けたブリゲイドの帽子をしっかりかぶり、眠りに落ちそうな赤っぽい目をキンキラキンのモンスターに向けてひたすらにライトボウガンを撃ちまくる作業を続けていた。
あぁ、周回よ。なにゆえ周回は眠いのか。片手間にスマホゲームでも開いてロード時間中に別の周回でもしておかなければすぐさま眠りに落ちてしまうに違いない。
さらに眠気を覚ますために、中の人は隣のパソコンの画面でツイッ〇ーやハーメ〇ンのサイトを開きながら、なんとか目をひらいて本日何回目かも分からないマム・タロトをひたすら回し続けるのだ。複数画面をナチュラルに使用するのはあまりライトなプレイヤーとは言えないかもしれないが。
同じく眠りに落ちそうな仲間のハンターたちとひたすら落石大砲ライトボウガンぶっぱをエンドレスしつつも、終わりなき周回は続く。
合間に挟まるロード時間が地味に長いので、積み重なればいろいろできるのである。小説だって、そこそこ短いものなら三セットほど回せばわりと読めるのである。長くたって十回回せば読めるに違いない。
とりあえず、無心に回しながら願うことはただ一つ。金色の武器オンリーでなければそれで良いのである。ガイラ武器が出たらもう何でも良いのである。
たとえ被っても六千ゼニーくらいにはなるのである。労力のわりにかなりしょっぱいが、どうせ金色の武器はダダかぶりなのは分かっている。それらが積み重なればそこそこに金になるのである。このハンターの万年金欠を少しでも緩和するのなら、もはやなんだって良いのである。
追跡レベルを上げるために、ひたすら落とし物を拾いまくっているので、マムガイラ防具をアルファもベータも共にすべて作ったこのハンターは、いつか来るかもしれない歴戦王マム・タロトのために各素材を最低限百五十個ほど残して綺麗に売っぱらえばその儲けで財布が潤って、たくさんの新しい装備が作れるのである。
お金が普段よりある、稼ぐあてもある、ということで調子に乗りすぎてやはり彼の財布はとても軽いのだが、それは本人の金遣いの荒さによる自業自得である。
アステラ的には、マム・タロトを延々と回すところといい、莫大な収入を一瞬で消し飛ばすところといい、やはりどう足掻いてもお近づきになりたくない狂人ハンターである。
マルチ推奨でなければ眠気を誘う周回をとっくにやめていたが、普段ソロプレイヤーなこのハンター、一期一会な野良ハンターなのである。一時的とはいえ同じ人とやれるのが楽しくて仕方がない。なのでなんとか耐えているのである。
今日も今日とてたくさんのマム・タロトの角は折られ、鑑定武器ガチャに明け暮れるハンターたちは眠いのであった。
落石がだんだんうまくなってきたハンターさん
距離が否応なしに掴めてきてうまく当てられるようになった。マムの動きに慣れきってどのような対処をすれば良いのか把握した。しかしそれは周回班としての第一歩に過ぎない。
配信バウンティして、取り逃したイベントクエストをすこしやって、マムを三セット回したら疲れてやめてしまうところがライトプレイヤー。平日は配信バウンティにたどり着く気力もなくネギ狩ってやめたりする。
たまにボイスチャットを解放しているハンターに名前を呼ばれて、自分の名前は「青い星」でも「白い風」でも「アーラ5期団クーン」でも「アイボー」でもなかったのだと思い出す。相変わらず本編では固有名詞は出ない。
どういった話を期待していますか? 最も当てはまるものを選んでください。
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ゲームシステムによるもの
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クエスト頻度、難度、クリア時間
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イベント関連
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メタ戦法(確定行動、戻り玉回避等)
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アナザーストーリー