ハンターさん、集めるのが好き   作:ryure

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リアル多忙なプレイヤーの話。


ハンターさん、多忙な日々

「最近忙しい」

「ニャー?」

 

 何を言っているのだろうか、このご主人はニャ。オトモアイルーはそう思ったが、とりあえず特に何かを言わなければ勝手に話してくれることだろう。

 

 そう判断したオトモアイルーの脳裏には、マイハウスで死んだように寝っぱなしのご主人ハンターの数日の姿が浮かんでいた。ポニーテールを解くこともなく倒れ込んでいるので非常に寝にくそうであった。

 

 このところ珍しく休みにする日々が続き、どちらかといえば「忙しい」より「暇を持て余している」はずなのだ。

 

 日夜十分すぎるほど狩りをしているこのハンターである。もうこれ以上、こんな人外な速度でモンスターを狩る必要もなく、特に緊急事態でもなければ一年や二年くらいならこんな何もしない生活が続いてもアステラ的には、誰もなんの文句もないのだ。

 

 装備を作らなければ、素材をいくらか売るだけで普通に死ぬまで食べていくことも出来るだろうし、なんなら現大陸に戻っても相当頭のおかしい今のような使い方をしなければ彼の孫の代まで不自由しないはずなのだ。

 

 それが無理なので今の財布の中が、火の車を通り越してファイアーチャリオットな生活があるのだが。防具がおおむね済んだなら、浮いた金で武器を作るハンターなのだ。

 

 むしろちょっと休んでくれ。マイハウスで寝ていてもらえると姿を見なくて済む。アステラの人々の精神的にそちらの方が楽なので、休む分には歓迎されるだろう。休むという名目でアステラ内をうろうろされたら何人か泣くだろうが。

 

「ログイン出来てなくってさぁ……」

「ニャ?」

 

 例のハンターが懺悔でもするように頭を垂れる。真っ赤なブリゲイドの帽子が頭から落ちかけ、彼は慌てて抑えた。

 

 それにしても言葉がよく聞き取れなかった。というよりも脳が聞くのを拒否した。たまにこのハンターはこの世界の理の外からの言語を持ち込むので仕方がない。

 

「狩りしたいのに、あそびたいのに、世知辛いね。気づいたら寝てるんだよ」

「ニャ」

 

 確かに寝てはいる。

 

 とりあえず、わからなくとも曖昧に頷いておけば、力なくオトモのお腹を吸っているハンターは満足することだろう。ハンターに対する対処術を身につけたオトモは吸われながら、寝ていたはずなのに疲れ果てているハンターの頭をよしよしした。

 

 例のハンターは、オトモの気遣いに嬉しそうにゴロゴロ嬉しそうにした。

 

 普段と逆の構図のおかしなハンターとオトモを、通りがかったアステラの誰かは、どんな顔だろうとれっきとした成人男性の奇行を不気味そうに見たが、気づかれないうちに素知らぬ顔をして、それとなくスルーした。そして珍しいな、という感想も抱く。

 

 このハンターは甘やかされるよりは、どちらかといえば甘やかしたがりである。リアルで猫を飼っていないのだろう。

 

 それにしたって疲れとは。肉体はハンターなので、万全でいつも通りだが、なんとなく表情が疲れていたのだ。顔に隈があるわけでもないが、醸し出す雰囲気が重苦しかったのだ。

 

 中の人のリアル多忙によって平日のログインが危ぶまれ、それでもたくましく数日に一度はログインしてオトモを愛でているという事実を知れる存在はここにはいない。

 

 どう足掻いてもこのハンターはゲームの世界の礎、プレイヤー。神は製作者やメーカーである。彼らの次元とこの次元は同じ考えに至れないほど違うのだから、どうしようもない。

 

 だがしかし、モンハン世界のアステラはアステラで「人々は生きている」。ゲームの画面を疲れた目で眺める中の人には分からないが、内部で元気に暴れるハンターの目にはプログラム通りではない動き、表情も感情もある命を持つ人々が見えているのだ。

 

 もちろん、魂が別の世界からやってきているハンターは、それをいちいち気にしたりしないし、NPCはNPCで、どう足掻いてもプレイヤーたるこの規格外のハンターを無下に出来る度胸はないし、プログラム違反をする存在はいないのだが、それはそれ、これはこれ。

 

 心の中では、通り道で踊ったりポーズをキメることをしっかり迷惑に思っているし、中の人が目にするプログラミングされた通りのセリフの裏ではその狂いっぷりに心配もしている。

 

 例のアイツについてよくヒソヒソ噂もしているし、画面で見るより例のハンターには困惑している。だがそれは、中の人には知る由もない。中の人にとってもこことは違う次元で生きているので。互いに真の意味で理解する日は来ないのだ。

 

 ともあれ。

 

 とりあえず、疲れた精神を引きずって、どんなに中の人がぼろぼろでもボタン通りに動く元気な肉体のハンターは、今日のネルギガンテを狩ることにした。まずはここから始める日課は崩さないのだ。適当に武器を見繕って。

 

 あぁそうだ、ついでに練習もしようかなとこぼして、スラッシュアックスを背負って。いざ。

 

 今日もひと狩りしに行く。

 

 くたびれはてていても、例のハンターはプレイヤーのハンター。彼こそがこのアステラの青い星。当然無乙で十分くらいで災厄同然の古龍を狩ってくる、その非常識な狩り具合は絶好調だが、帰還した瞬間には燃え尽き、力尽きたように床にべちゃっと倒れ伏せた。

 

 場所はクエストボードの前。つまり帰還場所である。やはりかなり邪魔である。

 

「もー! ツカレタ! 疲れたよう! 連続狩猟したいのに! たくさん狩りたいのに! もう疲れた! もう眠い! 疲れたよう! 王ナナも狩りたい! ネギもっと狩りたい! でもだるい! だるいよう! 指動かすのもしんどい、ネギは今日も楽しい! 何回やっても! 百匹狩っても! 楽しいなぁ!」

「お疲れニャー」

 

 あの狂人でも疲れる時があるのか。いつでも元気いっぱいではないのか。

 

 アステラの人々は新事実に怯えつつも、バタバタして叫ぶ元気はあるのかと戦々恐々しながら、遠巻きに例のハンターを見守っていた。

 

 アステラ的にはバタバタしているように見えるが、それは例のハンターにとってはボタン一つで発動するジェスチャーかなにかである。現実の中の人は、ただただぐったりしながら椅子に座ってコントローラーを握ることしか出来ない。喚く言葉は、つまるところ心の代弁に過ぎない。

 

 ハンターは疲れていない。特定のことをしなければ疲れないようにできている。しかし、魂は中の人である。だからこのハンターも疲れは共有している。原因は不明だが、なぜか心がしんどいので疲れたのである。

 

 ハンターは不老不死である。であるからして、肉体的変化はない。肉体的な疲労は走り回らなければやってこない。システム的にアステラの中で息切れを起こさないのでここにいる限りは無敵である。拠点でゲームオーバーなんてしないのだし。

 

 だがまぁ、魂は核である。それがなければこのにあるのはただの人間の形をしただけの肉の器である。プレイヤーというものは中の人がいて成り立つのだ。彼はBOTではなく、中身は別世界に生きる人間なのである。そして、プレイヤーは中の人がすべてである。

 

 ともあれ、だからリンクして疲れたのである。疲れたが、ログインはしている。だから叫ぶ。疲れたから、止まることなく連続で狩りには行かない。だからアステラで暴れる。

 

 疲れたことを疲れたと叫びたい。リアルでできないことをしに来たのでモンハンしているのだ。その気持ちを汲み取ったハンターの口からリアルでは口に出せない言葉がほとばしる。ツカレタ、アァ、ツカレタ、だけど狩りたい! と。

 

 カタカナ表記のハンターの叫びはアステラ的には「一応意味はなしているがほぼ鳴き声」と認識されたことをさしている。

 

 例のハンターでもあんなに疲れてぐったりするなんて、もしかしたら何かやばい病気でも流行っているのかもしれない。

 

 人々は頓珍漢に怯えた。

 

 しかしながら、切り替えが早いハンターはいつまでも嘆かない。いつまでも叫ぶ暇があるなら遊びたいのである。無味乾燥な日々の生活から、躍動感ある生き生きとしたワールドへ羽ばたきに来たのだから。

 

「さていこ! にゃんにゃんちゃんはなに狩りたい? ひと狩りしたらもう寝て明日に備えるからさ、とびっきりの狩りにしようね」

「ニャー、ご主人がいるならどこだってとびっきりニャ!」

 

 オトモはオトモに過ぎない。狩り場の決定権はプレイヤーたるハンターしか持たない。それをやんわりと、だがしっかりとプログラミングされているのでとりあえず持ち上げておいた。

 

 特に気にしない性格のハンターは、そうかそうかと頷いて、ネルギカンテの次に好きなモンスターを選ぶ。つまり、通常個体のヴァルハザクを選んだ。

 

 歴戦個体すら選ばなかったところから、相当疲れている様子である。避けることにも頭を使うのである。だが狩りたい。ならば回復カスタムをつけて戦えば基本的に大丈夫な相手を選べば良いのだ。

 

 ひと狩りしに行く。なにはともあれ、彼はハンターなので。

 

 ハンターは狩りを終えると速攻倒れた。いつものように後ろに倒れるのではなく、自慢の顔が下敷きになるような前のめりに。それとログアウトの前に世界樹の肥料の残量すら確認しなかったところが、中の人の多忙っぷりを表している。

 

 オトモがえっちらおっちらとハンターを引きずる姿は見慣れたものだが、危ない病気の可能性があることから今日はマイハウスに運ばれるまで誰も近づこうとしなかった。

 

 このゲームはモンスターハンターであって、バイオ〇ザードではない。なのでもちろん、狂竜ウイルスでなければ単なる杞憂である。

 

 

 

 

 

 

「オハヨ!」

「おはようございますニャ」

「狩り行こ! スグイコ!」

「ニャー!」

 

 だいたい次の日、ハンターは目覚めた。しかしだいたいである。ほぼ次の次の日である。つまり、リアルには深夜である。しかしアステラ的にはそんなことは分からないので、ハンターのテンションが狂っているだけである。いつも通りだが、なんとなくヤケクソには見えた。

 

「ネギね!」

「ニャ」

 

 例のハンターは言葉少なに説明しながら、そのまま食事場に向かう。説明している時間が惜しいのか、とても足早で慌てているように見えるので広めに道が開けられた。

 

 前を見もしないハンターは話すときオトモアイルーと目を合わせる優しさがあるので、歩きながらも俯いており、流通エリアの人々が気をつけなれけばタックルで三桁ダメージを出そうと思えば出せる強靭な肩に吹き飛ばされ、物理的に導きの青い星になってしまうおそれがある。

 

 だから、普段の二倍くらい道が開けたのだ。気づかれないように、だが露骨に荷物まで寄せられたが、幸いそれどころではないハンターは気づかずに通り過ぎていく。

 

 かなり狭いが、ぶつかることに比べてみれば大したことではない。早足のままさっさと通り過ぎてくれたので窮屈な時間は少ない。

 

 例のハンターはそのままリフトの鎖に捕まるだけでは飽き足らず、もはやよじ登った。つまり毎回景色を楽しみながら階段をのんびり登るような、ライトでエンジョイ行為をしている場合ではないのだ。普通のプレイヤーと同じくショートカットした。

 

 そして、席につくやいなやオススメを注文して手早くご飯を掻き込んだ。考えるのも選ぶのも余裕が無い。恐らく普段のようにわざわざスキップせずに調理を眺めているのではなく、セレクト連打でスキップしているのだろうが、周りからすればただただとんでもなく食べるのが早いだけである。 

 

 そして間髪入れずに指笛を吹いて飛び立った。もはや時間が惜しいのだ。中の人は多忙であるし、ゲームしている場合ではないのだが、それ以上に狩りがしたい。

 

 たったのひと狩り、されどひと狩り。むしろ古龍相手にたった十分で片をつけ、五体満足で帰還して、ロードも待たずにセーブが済めばログアウト、十分である。

 

 飛竜に届けられたのは既に熟睡、すやすや眠るハンター。降り立つとすぐにオトモがえっちらおっちら運んでいく間抜けっぷり。しかし、やることなすこと規格外。誰が咎められるだろうか。

 

 しかしながら、これはアステラの視点である。プレイヤーとして考えてみれば、一日たったのひと狩りなんてライトプレイヤーすぎるにも程がある。

 

 だが、それでもログインする。もはや執念である。彼は狩りがしたい。日々の潤いであり、彼はハンターなので。ここにはハンターしに来たのだから!

 

 ナルシストタイムなスクリーンショットタイムを設けることもなく、ただただクエストボードと食事場だけ寄って狩りをして、バタンキューする日々を続けてまで狩りをする。

 

 そして、きたる土日、ハンターにとってゆっくり狩りができる時間。彼は久しぶりにのんびり目覚め、ゆっくりアステラを歩いてゆっくりゆっくりじっくり狩りの準備をした。

 

 その爽やかな彼の表情と裏腹に、アステラの人々の表情は沈痛である。またあいつが迷惑な存在になるのだ。最近大人しかったのに。元気いっぱいなのはいつだって変わらないオトモと受付嬢くらいであり、それにお気に入りキャラ故に被害が少ないソードマスターが加わるだけである。

 

 だが、それでも、それなりに平和ではあったのに。

 

 突如、盛大な悲鳴がアステラに響き渡った。アステラの人々は聞き慣れた例のハンターの悲鳴だったので必死で目を合わせないように必死で顔を背けた。

 

 彼は、忙しさにかまけて世界樹に肥料をやり損ね、切らしてしまったらしい。つまりまた一から仕込んでいかなければならない。やわらかい土だけやっておけば延長できる手軽な日々を取り戻したい。そう彼は悲鳴で説明した。説明する悲鳴とは器用なハンターである。

 

 しかしながら、セーブをしてしまったのだ。時間は戻らない。例のハンターは泣く泣く一から肥料をやり、狩りごとに毎回肥料をやりに戻ってきた。

 

 多忙な日々の傷を背負いながら、例のハンターは久しぶりにハンターライフをエンジョイしたが、また平日がやってくると思うと悲しくなるので、彼は彼で全力で現実から目を逸らしていた。

 

 相変わらず誰とも目が合わないが、ハンターは自分の赤っぽい髪がそよぐ風の中、如何にカッコよくキマるか試行錯誤するのに夢中なので幸せである。




多忙な中の人を持つハンターさん
だが狩る。
自分の顔に酔いしれることもなく一日ひと狩りを続けることから重篤な病気か、気が狂って一周まわって元に戻ったのか? という議論がされていたことを知らない。
いくら美人だろうと目を合わせたくない存在なのでアステラの人々に何ヶ月も顔をまともに見られておらず、賢明な大多数には「多分あんなナルシストになるくらいには顔がいいんだろう、知らんけど」状態になっている。
言わずもがな、着せ替えゲームが好き。ログインしていない時は忙しい時とそっちに夢中になっている時。つまり普通に別のゲームにも浮気する一般的なハンター。

もし彼が(もとい彼女が)女ハンターでプレイしていたなら、男と見まごうようなボーイッシュでイケメンカッコイイ(ゴリラにならないようにはして)女キャラクターにキャラメイクしていたので性癖がわかりやすい。その場合でも行動も発言も変わらないので扱いは全く変わらなかった。成人女性だろうと普通に狂人である。

キャラクターネームは花の名前をもってきているので名前から性別不詳に踏み込んだようである。しかし呼ばれないし、本人もよく忘れる。
知っているのはストーリーの都合で推薦組の陽気な五期団と総司令、それから他にいるとしたら受付嬢もだが、名前を下手に呼んで絡まれたら面倒なので巧妙に呼ばないように「よう!」とか「青い星!」とか呼んでいる。受付嬢の名前がわからないので向こうも知らない可能性も高い。
これからも出てくるとしたら、「花の名前で聞く分には可憐なハンター、実際見るとイケメンハンター、憂う顔の性別は不詳、カッコイイ!」レベル。
しかし現実世界の花の名前なので、アステラ的には変わった響きと言うだけの模様。

どういった話を期待していますか? 最も当てはまるものを選んでください。

  • ゲームシステムによるもの
  • クエスト頻度、難度、クリア時間
  • イベント関連
  • メタ戦法(確定行動、戻り玉回避等)
  • アナザーストーリー
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