ハンターさん、集めるのが好き   作:ryure

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前半火力スキルの定義の話、後半オリジン装備への愛の話


ハンターさん、言い訳する

「ぐわーっ!」

 

 派手に吹っ飛ばされていく焦げ茶色のブリゲイドの男は、地面に叩きつけられて体から力を抜いた。というよりも、力が入らなくなった。

 

 なぜならシステム上、乙ったからである。操作不能に陥ったのである。

 

「待ってろ俺もすぐ逝くからな!」

「逝ったか」

「気にしないで!」

 

 被弾の多い例のハンターは、弓などのガンナー武器を使っているとたまに突然の乙を迎える。剣士装備でもたまにあるが。特に相手が高火力だとあっさり乙るのだ。体力増強を三つ積んでまで死なないようにして、なおかつ体力満タン、さらに硬化薬を飲んでいてもなお起こる悲劇である。

 

 もちろん原因は装備の怠りではなく、引き際を誤ったバーサーカープレイが問題なので例のハンターのプレイングスキルが犯人である。

 

 悲しみの悲鳴をあげることも出来なくなり、なすすべもなくアイルーにドナドナされるハンターと、それに自動マクロで反応するハンターたちのその場限りの友情の声掛けは、虚しく戦場でこだまする。

 

 ともあれ、歴戦個体や歴戦王に迂闊なことをしてはならない。身に染みて実感させられ、ドキドキする胸をそのままに、例のハンターは乙ったことでますますドキドキワクワクしてきて最高に楽しくなってきていた。

 

 とはいえ、気まずいというか、申し訳ないというか。他のハンターが誰一人気にしていなかったとしても、少なくとも得られたはずの報奨金を減らし、残り乙回数を減らしたことには代わりがない。

 

 なので元通りバフりながら戻ってきた例のハンターは、人並みよりちょっぴり気にしいな性格なので、詫び粉塵としてバフバフした。乙ってすまんなという小さな気持ちである。

 

 このハンターの大のお気に入りである、パワー系古龍のネルギガンテでは、この手の事故は起こりがちである。

 

 弓で壁打ち剛射が楽しすぎたあまり注意散漫になり、空中で乙ったり、ハマりたてのスラッシュアックスで頭に張り付いたのはいいものの、ネルギガンテの凶悪なおててで振り払われ、ハエのように乙らされたりとバリエーション豊富に。

 

 案外、日頃から警戒しているクシャルダオラの溜めブレスでは乙ったりしないが、日参しているからこそ慣れという魔物によって例のハンターの注意散漫は本領を発揮し、彼を猫タクシーによるキャンプ直送デスルーラ、もといデス戻り玉をキメさせるわけである。

 

 慢心が生む悲劇によって今日も情けない悲鳴とともにハンターは散っていく。しかしながら二度同じ手は通用しない。少なくともその日は。一日経てばある程度忘れる鳥頭なのでライトプレイヤーに相応しい腕前しか持たないプレイヤーなのである。

 

 しかしながら、少しずつ経験が蓄積されないこともないので改善はされていく。

 

 日々成長を実感できるから楽しいのだ。なかなか勝てなかった相手と渡り合えるようになるから幸せなのだ。

 

 

 

 

 

 

「耳栓は火力スキル、なぜなら咆哮を無視して攻撃できるからだ。節食は火力スキル、なぜなら資源を節約できるので心置きなくアイテムを使える。たくさん怪力のなんちゃらを使えるからだ。ひるみ軽減は火力スキル、隣に暴れ回る双剣使いや太刀使いがいても攻撃の手を緩めずに攻撃できるからだ。

つまり、この理論に当てはめるとこの体力増強も火力スキルになるんだ」

「暴論ニャー」

 

 オトモアイルーの言葉に、例のハンターはデレデレと表情を崩した。せっかくのキャラメイクも形無しである。

 

「ふふん、にゃんにゃんちゃん、体力が多いということは回復の頻度が減るということだよ、だから火力スキルなんだよ」

「ニャ」

 

 どうせご主人、体力がいくらだろうと、チキって全快まで回復するじゃニャいか。そうオトモアイルーは思ったが、一撃死が減るのでなるほど、キャンプにもどらず殴れるので火力スキルの可能性もあるのだ。

 

 それに下手に口を出してもただただ面倒なので適当に受け流した。

 

「つまり回避性能も! うーんわたしのランスのスキル構成、ガード性能ガード強化、完璧な火力だなぁ。うんうん」

「ニャー」

 

 彼はチキンなのである。よく乙るので。

 

 しかしながら、人並みの罪悪感を持っているので乙らない努力はしている。した上で乙るのでよろしくないが、パーティで際立つほど乙るわけでもない。つまり歴戦ネルギガンテのぐるぐるドッカーンで乙るハンターの頻度くらい乙るのである。

 

 彼の名誉のための弁解をすると、彼自体はダイブで避ける。

 

 そこそこに、それなりに。

 

 そうして言い訳を積み重ねて作った生存マシマシ装備を満足げに着込み、素敵で渋い茶色のブリゲイドを被り直した例のハンターはスキップしながら食事場へ向かった。

 

 行動一つ一つが情緒不安定で、ブレブレで、男らしくなく時折なよっちく映る例のハンターだが、勝ち取ってくる戦果は間違いなくこのアステラでは追随を許さない。

 

 ゆえに情緒不安定は強者の余裕に、ブレブレなのは敵にパターンを読み取らせないため、なよっちいのは本人の強い中性的イケメンへの執着が生んでいるのだろうと、アステラの人々に適度に無理やり納得されて、今日も溝は埋まらない。

 

 もちろん狂人だから、という一言で片付けられることがほとんどなので一切目は合わない。目を合わせてなにかされても困るからだ。

 

 ともあれ生存スキルを火力スキルと言い切るのは流石に見苦しい。どうせ不死身なのだから、堂々としておけばよいのに。

 

 しかし見苦しい足掻きをするのでまだ、まだしも「人間」扱いなのだ。狂人だって人である。例のハンターの狩猟成功率はそこそこである。これが十割だったなら、プロハンだったなら、すでに扱いは、こんなものでは済まされない。

 

 だがそんなこと、例のハンターにはどうでもいいことであった。来る歴戦王ゾラ・マグダラオスとの決戦に備えてやれることはやりたいのである。来る、というかもう来ている。

 

 腕を磨いても、マルチは寄生が大量発生の魔境、行き着く先はソロ砲術散弾ゲーなのだが、そんなことも知らずにせっせと新武器新境地開拓に勤しむ例のハンターは今日も楽しくプレイしているのだ。

 

 カッコイイ装備を円滑に手に入れるために。手に入れた装備を最大限生かしながらカッコよく戦うために。それだけなのだ。それだけなのである。

 

 しばらくして、砲撃手モリモリヘビィボウガンの装いになった彼は努めて凛々しくキリッとしながら旅立っていき、野良に恵まれずに二十分を無駄にした。

 

 

 

 

 

 

「オリジンすごい」

 

 語彙力を失った例のハンターは、頭だけは自分の調整した絶妙な赤茶色の髪とポニーテールが隠れるので眼帯装備にして震えていた。

 

「……」

 

 うんうんと頷きながら鏡で自分に見とれる。いつもの風景である。だが、新しい重ね着を入手した例のハンターには気をつけろというのがこのアステラでの合言葉である。

 

 しばらく黙って自分に酔いしれていたが、突然爆発した。

 

「ワイルド! ワイルドだ! なんてワイルドでハンターらしいハンターなんだ! 素晴らしい、なんて素晴らしい! ありがとうゾラ! ありがとう大砲! ありがとうスキル砲撃手! ありがとう撃龍槍! ありがとう英雄の証! オリジンサイコー!」

 

 そしてキメッキメに決めポーズを取って、スクリーンショットをバシャバシャし始めた。騎士的スタイルを好き、SFテイストな全身鎧を好み、風変りな装備も基本的にはすべて愛するナルシストは、例に漏れずモンハン的正統派重ね着を大好きになったのだ。

 

「鎧の金属部分色変えられるの、範囲が広くてテイストを自分で調整できていいね! ごついのも、素材むき出しの腰装備も、まさに狩ったモンスターの素材を生かした装備! それこそがワイルド! だからカッコイイ! すごい! カッコイイ! 旧大陸の凄腕ハンターの気持ちになれる! 気持ちになるだけだけどな!」

 

 なにしろ、例のハンターの中の人は新大陸初参戦の新参者なのである。とはいえ、服装で気持ちだけは味わえる。

 

 アステラ的には「推薦されてる上に、五期団の出発をお前の為にわざわざ遅らせたんだから旧大陸でもハンターだっただろ」と言いたいところだったが、狂人ハンターと関わっていいことは何もないのでやめておく。

 

 くるくる踊り、素材感むき出しな、重ね着に似合いそうないろんな武器を引っ張り出しては合わせてみて試行錯誤し、にこにこ笑いながら幸せそうにしているのは相変わらず邪魔である。

 

 しかし、こちらに構うような余裕もなさそうなのでわりと平和でもある。

 

「いいなぁこれ、素材感ある武器やろうかな。素材感といえば笛、新しい装備といえばエンプレス冥灯。性能なんて作ってから考えよう。よーし、調査団チケット取りにいくかー! 武器は弓! にゃんにゃんちゃん、行くぜ!」

「ニャ」

「導きの青い星やろうか!」

「やったニャー!」

 

 エンプレス冥灯な武器は素材感むき出しとは言い難いのだが頭が少し弱いハンターは気づかない。作ってからもどうせまぁいっか、これもカッコイイし! と立ち直るので特に問題ない。斬れ味が減る速度が半分ということで強そう! としか考えられないのだ。

 

 彼は幸せそうに、旧大陸の装いで食事場へスキップして行ったが、途中で旧式スタイルが大好きなソードマスターとお揃いであることに気づいたハンターがイノシシのごとく階段を降りてきたのをアステラの人々は目撃するハメになった。

 

 好き故に比較的被害の少ないソードマスターは、幸せそうにスクリーンショットを取りまくる狂った導きの青い星に、椅子の上で困惑するしかなかった。

 

 しばらくして例のハンターはソードマスターに丁重に非礼を詫び、オトモアイルーをモフり、静かに去っていったのでようやくアステラは平和になったのだ。




守備範囲が広いハンターさん
例外なくオリジンを気に入って着倒している。旧式装備につけられた、新大陸様式にするためにピカピカに磨かれた金属製のスリンガーに微笑ましくなっている。ガチャガチャしたい。
頭装備も頭がオリジンに似合わない防具の時に表示し、厳重な準備でモンスターに挑む慎重なハンタープレイをする。しかし現実はいくら生存スキルを組んでも注意散漫なのでよく悲鳴をあげて吹き飛んでいる。
精霊の加護とは親友。
ソードマスターとお揃い衣装を着たいお年頃。

どういった話を期待していますか? 最も当てはまるものを選んでください。

  • ゲームシステムによるもの
  • クエスト頻度、難度、クリア時間
  • イベント関連
  • メタ戦法(確定行動、戻り玉回避等)
  • アナザーストーリー
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