その日、例のハンターは久しぶりにリア友とボイスチャットをしていた。最近ハマったキメキメのオリジンは見事な青で、似合わないブリゲイドは流石に置いてきていた。
頭装備を非表示にしたならば、ポニーテールとか中性的でカッコイイからいいじゃないかと例のハンターは判断したのである。
無骨な鎧を着込んだ厚着の君……その横顔は涼しく、はっと見やると、その麗しの君は男性だったのだ!
ということにして、例のハンターは満足した。妄想力がたくましい中の人は今日も絶好調である。
いくら中の人が、今をときめく乙女だとしても、中身がこれでは到底姫プレイされることもなく、もちろん求めることもなく、ただひたすらに邁進するハンターなのだ。
あぁ、ハンターの愚直、イズ、カッコイイ!
とはいえ、引き合いに出したのは彼女、ちょっと姫プレイなプレイヤーを目の敵にしているからだった。
彼女は、ある日、日課としてモンハンワールドのかっこいいスクリーンショットを求めてネットをサーフィンしていると、ツイッ〇ーでうっかり姫プレイツイー〇を見、さらに姫の自撮りが目に入り、自分のハンターと見比べて私のハンターはなんて美しいのかと溜息を吐くような人間である。
このカッコイイ私のハンターをちやほやしよう。そうまた決心して、また細かいところをいじくり回すのだ。
二次元と三次元を見比べるのはマナー違反であるが、口には出さない程度の常識はあるのでセーフと言うべきか。ソロプレイヤーの僻みととるべきか。
ともあれ、頭が悪いのか、審美眼が悪いのか。ともあれ彼は幸せで、人とプレイしている今はもっと幸せで、かのハンターの顔は少なくとも高水準であることは間違いない。
無論、彼女の感性で、だが。
一体モンハンに何しに来たのだ。
今の気分だと狩りが八割、二割着せ替えである。
ともあれ、目の敵の理由はソロプレイヤーの悲しみ、それのみである。ちやほやされたいとかそういうわけではない。ちやほやされたいのではなく、自分のハンターを自分でちやほやするのである。
残念ながら、人並み以上に中の人は人見知りであった。
「ネギィ、お前の攻撃見切ったぁー!? あぁーっ! わたしのハンターが吹っ飛んだ!」
「うそやーん」
「(粉塵を飲む)」
「(広域回復薬グレート早食い)」
野良のハンターたちは優しい。見切りを盛大に失敗して吹き飛ばされ、さらにピヨっているハンターにも慈悲の手を差し伸べてくれるのだ。
一方、リア友ハンターは笑いながら虫棒で空を飛んでいた。安易に撃ち落とされたりしない程度には、例のハンターほど猪突猛進ではないようだ。
太刀が分からない! と喚きしちらしていた例のハンター。しかしながら、いつかは手を出すのだ、ということに気づく。
ならばいつ手を出しても結局やるのだから同じである。ということで、苦手な闘技場を頑張って手にした天上天下無双刀をブンブンと振り回して必死に修練しているのだ。
ガイラ火? そんなものはライトプレイヤーな彼が所持しているはずもない。
また、当然のようにガイラ雷弓も持っていないのだ。虚無と化したマムに参入する元気は流石に残っていなかった。絶賛開催中な時だって、もうやる気力がない。
ともあれ、とっととゲージを貯めて大回転したいのである。もちろん慣れない今、攻撃はスカスカと空振り、見切りはよく失敗。しかしながら、このハンターは何がどうなってても基本的に楽しいのでいつかは身につけるのである。
とりあえず、なんか発生した歴戦ネルギガンテの調査クエストにて。試し斬りは何はともあれネルギガンテ、討伐数はとうに百五十を超え、いまだ金冠が出ていない悲哀を噛み締めながら。
例のハンターは目を逸らしながら、ネギ楽しいから金冠でなくていいよ! とよく負け惜しみを言っている。
「その猫手パンチも見切ったァ!」
「見切れてないの見えたんですけど」
「今のはリハーサルだから許して! あ、またピヨった」
「ダイナミック床ドンされてキャンプ送りにされてるの大丈夫なん?」
「……ゴメン……」
大丈夫な訳がない。謝罪の涙のスタンプを送れば野良ハンターはグッジョブで返してくれた。顔すら知らない相手に優しいハンターである。リア友は笑いとばしてくれる優しさはあった。
歴戦個体はやはり歴戦個体なのである。ただでさえ凶悪な攻撃力が酷いことになっている。だが、だからこそ燃えるのである。
例のハンターは歯を食いしばりながら戦場に戻ってきて爽やかに詫び粉塵でバフバフし、慎重にチキンな立ち回りを始めた。
チキってチキって兜割りを黒い棘に当てるほどである。たったの17ダメージがいっぱいである。ヒットさせる程度のプレイヤースキルがあるのが救いと言うべきか。
無念さのあまり、例のハンターはやけくそに叫んだ。
「たのしーなぁ!」
「……」
本心ではある。哀れなソロハンターなのである。人とプレイするだけで楽しいのである。会話があるのが楽しいのである。楽しいことは嘘ではないのだ。
たとえ呆れられても。彼は不屈である。スキルを発動させたわけではないが、不屈なのである。
もっと上手ければ。頭の白い棘に兜割りしたいところなのだが、なかなかうまいこといかない程度の太刀初心者は、生暖かいリア友の無言の圧力を感じながら、吹っ飛ばされて叩きつけられ、元気にボロボロになりながら討伐した。
幸いなことに、それだけ痛い目を見れば多少は上達が見られた。少ないながらも見切りが成功して喜声もとい奇声をあげる。
うるさいながらも、彼は友人の手を借りつつもなんとかハンターしているのだ。プレイヤーという点においてただのライト層である彼は、アステラの人々の思っているような狂人でも不死身のタフハンターでもなく、ただのちょっと着せ替えにうるさく、ストライクゾーンの広いプレイヤーなのである。
もちろん、アステラに帰還した彼は独り言を激しく呟いたので誰にも目を合わせられることなくいつも通りの狂人扱いを丁重に受けるのだが。
「ガンスってカッコイイ! 撃つのも刺すのも叩きつけるのも楽しい! 豪快フルバサイコー! くるっと回すクイックリロードはカッコイイー!」
「そのチャレンジ精神だけは認める」
「え? あぁーっ! わたしのハンターちゃんが!」
認められた瞬間にフルバの隙を突かれて吹っ飛ばされていくお間抜けハンターな例のアイツは、モリモリ積んだ生存スキルのおかげで幸いにも軽傷だった。
弓と操虫棍に身を捧げたリア友ハンターは、極一部を除いてなんでも使う……使いこなせるとは言ってない……例のハンターの不屈の根気は認めていた。
楽しく! 永遠にハッピー! 時に暑苦しいナルシストハンターは自慢の髪色のポニーテールを揺らしながら、眠り込んだモンスターに爆弾を楽しく仕掛けている。
ソロハンターをこじらせて、ボイチャは少々うるさいが、悪い人間ではないのだ。人間的にはごく普通、ハンター的にも普通、ゲームへの情熱が少し大きいだけの彼女は本当に毎日楽しそうなものだから、また一緒にやってみようかなという気持ちになれる。
本気の攻略という点ではメイン武器の片手剣か弓、そうでなければガードを積んだランスかヘビィで来いと言わざるを得ないが。プレイヤースキルが未だライトプレイヤーなので仕方がない。
ハンターをはじめて半年と少しから、一気に使用武器を増やした彼は、被弾の多さに拍車がかかっているのである。
頭の中にはきっと、様々な武器の動きが混ざって混ざってもう訳がわかっていないのだろう。さんかくとマルがどっちだったか忘れて、画面右上のガイドを読んでいたら吹っ飛ばされるとかザラなのだ。
そんな騒がしくもあり、人間味のある彼女とモンハンを毎日やるには、ちょっと疲れる相手かもしれない。
しかし、友人としてはまぁ楽しい人ではある。無理に誘ってこない、たまにしか誘わない気遣い、だが本人は毎日のようにモンハンをしているということから、やりたい時、誘う時は遠慮しなくていいよ! を地で行くハンターなのだ。
口を開けば今日のコーディネートを懇切丁寧に教えてくれ、どのような組み合わせが「良い」のか細かくナビゲートしてくれる機能もある。聞きたくなければスイッチオフもする程度の人間性もある。
まぁ、彼は男性アバター、こちらは女性アバターである。空回りも例のハンターの個性なので仕方がない。
武器や防具についても語ってくれるが、ライトプレイヤーが詳しい性能を語れるはずもなく最終的にはオススメ攻略サイトのURLをLIN〇してくれる。アフターケアはバッチリ、丸投げ先もバッチリである。
彼について真に信頼出来るのは重ね着なのだ。着せ替えへの情熱ゆえに。
しかし、やはり、モンハンというものは友人とワイワイやると楽しさ倍増ではないだろうか。
「竜撃砲いっきまーす!」
「おー」
「すごい! 百二十が三つ!」
「ええダメージやん」
「ヤッター!」
きゃあきゃあ言っている彼女たちの耳には平均的な若い女性の声が聞こえているが、彼女たちのオトモアイルーに聞こえている声の片方はちょっと野太い声、もちろん野郎な例のハンターのキャラクターボイスが聞こえてくるのである。
しかし慣れているので、例のハンターのオトモも、リア友ハンターのオトモもご主人が楽しそうで何より、と目を細めた。
あの人間かも怪しいボクたちのご主人が。こんなに笑って楽しそう。楽しいのは何よりニャ。
アステラ的には感覚を麻痺したオトモたちだったが、感覚が麻痺しないととてもこのハンターたちのオトモなんてやっていられないので仕方がない。
「なぁ、聞いてや」
今度は友人ハンターが口を開いた。
「なんや?」
「実は一回も回復薬使ってない」
「マジで?! すごいな!」
「ええやろ」
「ええなぁ!」
解説すると、二人は正真正銘の関西人なのでエセ発音ではない。しかし、外人顔のハンターの口から飛び出していると考えると、生態研究所の竜人の訛りのようなので妙な感じがする。
変な感じがしたが、暇な時に本物の武器で斬り合いをするような狂人たちの行いとしては常識の範疇なのでオトモたちは穏やかな顔で見守っていた。
「回復カスタム? それとも被弾なし?」
「んー、カスタムかな」
「そっかぁ! 私もそれ目指そう! 回復グレートの消耗激しくってさぁ!」
和やかな会話、穏やかな笑い。倒される古龍たちからするとたまったもんじゃないし、この世界基準なら正気の沙汰ではないが、彼らはプレイヤー。
なんということもなく、二人は楽しくひと狩りを共に重ねていくのだった。
新しい武器に手を出しまくるハンターさん
中の人は関西人なので、リアル酒場には行っていない。悲しい。し〇むらのパーカーを着て心を慰めている。
わからない武器もわかるまでやればいい! というたくましい精神の持ち主。
ネナベなので笑い声はゲームの中では野太く、ボイチャの相手には普通に高い。
つまり、「カッコイイ!」「ヤッター!」もアステラの人々にはそれなりの低音で聞こえているので威圧感があり、本人的には別になんということもない声である。
スクリーンショットを探すことと同じくらい、あつめたギルカをうっとり眺めるのが好きで、ハンターランク500↑のカッコイイハンターに憧れている。
友人ハンター
ネカマでもネナベでもない。
「独り言が大きい」の時と同じ人。虫棒で飛び回っている。
あまりプレイしていないのでハンターランクは例のハンターの半分くらい。つまり例のハンターの被弾率は……。
友人ハンターのオトモ
ご主人の友達(例のハンター)は賑やかで、いろんな武器を使い、アイルーにも優しいのでそれなりに好き。
集会エリアの人々
古龍を狩りまくる狂人が増えたが、騒がしいだけで無害なので何も見ていないことにした。
関西弁について
作者はネイティブですので、違和感がありましたら地方違いです。
どういった話を期待していますか? 最も当てはまるものを選んでください。
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ゲームシステムによるもの
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イベント関連
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メタ戦法(確定行動、戻り玉回避等)
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アナザーストーリー