例のハンターのマイハウスにて。装備品を集めるのが好きな部屋の主のせいで、相変わらずおびただしい数の装備品が雑然と所狭しと並ぶ、彼にとっての楽園のような場所。
珍しく部屋の主は目覚めたままそこにいて、ベッドの上に浅く腰掛け、探索リセマラして集めたたくさんフワフワクイナたちを膝に乗せ、白い羽根まみれになりながらフワフワしていた。
だがその目は完全に闇のようである。つまりいつものように何も見ていないのである。
なぜなら、中の人はツイッ〇ーやらYouTub〇などを見るのに忙しかったので。しばらくぼーっとしていた例のハンターは、そのうちいろいろ理解して喜びの声をあげた。
「追加拡張コンテンツってことは、荷物まとめて旧大陸に戻らずにそのままここに残ってたらいいんだよね、ヤッター!」
「ニャ?」
「我が愛しのにゃんにゃんちゃんとも別れなくていいんだ! 装備集め直さなくていいんだ! ヤッター! 春にネギの王来るの? わーい!」
「ニャ」
側にいたオトモアイルーは、例のハンターの謎言語は相変わらず理解できなかったが、彼が少しでもハンターを辞めて旧大陸に戻るという発想があったことに内心驚いていた。
ネルギガンテに派手に吹っ飛ばされても、テオ・テスカトルにノヴァされても、乙って搬送された後にはもうピンピンしているのだ。老いず、死なず、永遠にここでハンターをするつもりなのではないか、と本気で思っていたのだ。
それは理論上、ある程度のありえない年数はは可能であるが、中の人がいくら元気なエンジョイプレイヤーだとしても新作が出ればそっちに移行くらいするのでさすがに幻想である。
とはいえまだまだ新作をやるにはやり足りない。彼にとって追加拡張コンテンツというのは願ったり叶ったりであった。めくるめく新モンスター、新マップ、追加ストーリー、新しい装備品。胸が踊っていてもたってもいられなくなる素敵なワードが目白押しである。
だが、それもまだ先の話である。目前に迫る歴戦王マム・タロトとてまだ少々の日があるのである。
では、どうするか。お楽しみは先のこと、つまりいつも通りというわけである。
「さぁ、ネギ狩りに行こうか!」
だからなにはともあれ、ひと狩りに行く。素敵な武器を担いで、真っ白なブリゲイドをキメて。
「ネールギガンテ↑! ネールギガンテ↓! テッテッ、ネールギガンテッテ、ネルネールー↑ネルネルネルネル→ネルネールッルー↑」
中の人がおかしな歌を歌っていても、ボイスチャットを繋いでいなければ相手に伝わることは当然ない。
もちろん歌っていようがちゃんとプレイしていて、画面の中の重い動きのガンランサーは、元気よく叩きつけてはフルバーストをしている自称カッコイイハンターである。
しかし、救援を出したハンターもよもや歌いながら、しかも延々とネルギガンテばかり狩っているとは思うまい。
連続して救援を出せばそれなりの確率でまたやって来ることも知らない。
「達人の円筒設置!」
「寝たぞ!」
「爆弾置け爆弾」
「起爆準備!」
「爆破は任せろ!」
今回の同伴者たちは優秀なハンター揃いらしく、補助役のライトボウガンが、ネルギガンテが瀕死になるやいなや素早く寝かせ、誰も叩き起すような愚行はせず、速やかに爆弾を置いてこのガンランサーに竜撃砲を撃たせてくれる。
例のハンターは非常に感動して、もちろん一撃をお見舞いした。その結果、開幕五分も経たずにネルギガンテを爆殺することができた。
クエストクリアの感動もそこそこに、ドライで優秀な彼らはとっとと解散し、もはや意識は次のクエストへ。当然、例のハンターも同じように向かう。
繰り返し、擦り切れるほどネルギガンテの調査クエストを回すのだ。できれば歴戦個体がいいが、贅沢は言わない。クエストがあるならそれに飛びつくまでである。そのせいで狩猟数はネルギガンテだけやたら多いが、単に好きなのもあるが、なによりも最大金冠がまだ出ないので。
このように、早くクリアできるというのは実に爽快で気持ちがいい。自分までプロハンになったような気分が味わえて最高である。
だが、あまりに討伐が早すぎるとある種の悲劇が起きる。
今日も今日とてネルギガンテ、なにはともあれネルギガンテ、エンドレスネルギガンテと狙いを定めた彼がいつも通りに救援参加をしたときのこと。見慣れたアイコンが見慣れた位置に無く、彼は入って早々首を傾げることになった。
しっかりとドクロマークのついたネルギガンテは早くも寝床に追いやられていたのである。例のハンターは慌てた。何もせずに終わってしまうかもしれない、と。
北西キャンプから、彼はバフすらせずに急いで這い出ようとした。バフも何もかも走りながらやるつもりでだ。
だが、残念なことに時は既に遅し。リザルト画面はカッコよく狩猟している自分ではなく、ケツを向けて地面にへばりついている自分であった。
悲しい。例のハンターは報酬を受け取るだけ受け取って、頭数が増えることで報奨金を減らし、ケツがドアップののリザルトを得るために来たのではない。楽しくカッコよくスタイリッシュに狩猟しに来たのだ。
申し訳ない気持ちがいっぱいになりつつも、不燃焼な感じが「楽しい」とは言い難いような気分にさせる。現金にも、ちょっと得したような思いがないわけでもないが。
やっぱりモンスターをハントしにきたのだから、報酬だけもらって帰るというのはどうにも合わないのである。つまるところ、キャンプ待機なハンターのことを微塵も理解できないわけである。
次こそは! と意気込んでクエストに参加すれば今度は不慣れなハンターが三回乙ったりすることもままあるわけだが。
そして彼は気づく。
クエストに参加した瞬間には時すでに遅しで間に合わないのはどうしようもないが、味方が乙ってしまうのは自分の実力不足もままある原因なのではないか、と。
自分が素晴らしい火力をもって瞬殺したら? 丁寧にサポートし、広域回復をしたら?
事実、不慣れな武器を担いでいこうとも、味方がトンデモプロハンターの場合、自分までプロハンターになったように素晴らしく楽しくダメージを与えることができ、もちろん味方が乙ってしまうことなく華麗に狩猟完了するのだ。
つまり、不慣れなハンターがいたとしても関係ない、真の救援参加ハンターになれば解決するわけである、と考えたのだ。
つまるところそれは相当な腕と俯瞰する視点が必要なわけで、腕が微妙な上に視野が狭いこのよくいるライトプレイヤーには少々荷が重いことではあったが、それが出来たら「カッコイイ」なんて自称では済まされない。そんなすごいハンターを見たらカッコイイに決まっているわけである。
ああ、まだ下位クエストを必死にこなしていたことを思い出せ。初見のモンスターにボロボロにされながら救援信号を打ち上げた時、颯爽とやってきた彼らはカッコよかった。
それは上位装備をふんだんに使っていたことも大きかっただろうが、自分の使えない武器や素晴らしい立ち回りに感動したものもあったはずだ。
今はそれより条件が難しい。救援する相手はほぼ自分と同じ上位ハンターで、装備だって遜色ないだろう。そこにあるのは腕の差、経験の差、それくらいのものである。相当なことがない限り、PCゲームのようにハードのスペックが影響してうまくいかないということもないはずなのだ。
ゆえに、求められるのは純粋に昇華された力量のみ。
そこで強ければカッコイイ。
例のハンターはそれになりたくてたまらなくなったので、なりたい自分について具体的に目標を立て始めた。
とりあえず咆哮を全て見切ってゲージを溜め、ステップを全てパワーガードして反撃し、寝床に歩き出した瞬間に乗り、柱をフル活用して壁うち剛射をフルヒットさせ、絶妙なタイミングで麻痺を取り、強力な一撃は当然弱点部位にヒットさせ……。
相手はネルギガンテとする。
全てができるなら紛うことなきプロハンターである。目標が高く設定されているが、わりと彼は不屈なので年単位で頑張ればいくつかは成せるのではないだろうか。
今は遠き理想である。
とりあえず回数試行が大事だ! 成さねばならぬと半端な理系思考の例のハンターは、颯爽と太刀を担いで狩りに行き、見事に咆哮を食らってダイブまでのコンボを食らいつつも辛くも討伐してくるという、いつも通りを実践する羽目になる。秘薬の消耗はデフォルトである。
そう簡単に腕が良くなったりはしないのだ。
何にせよ、これは嵐の前の静けさである。享受できる穏やかな、つかの間の時間である。現実逃避とも言える。
これからやってくる歴戦王マム・タロトをさすがに回さないわけにはいかないので、鑑定武器ガチャという名の延々とした周回が目前と迫っているのだ。最初は歴戦王の例に漏れず野良は魔境、死屍累々の阿鼻叫喚であろうが。
どうせよく訓練されたハンターたちはそのうち慣れ、通常のマム・タロトに対して多くのハンターがエンプレスシェル・冥灯を担いだ虚無周回の再来になるだけである。少々乙率は高いだろうが、歴戦王を相手取るわけなのでそれは仕方がないことだ。
何が最適解になるのか、新規実装された虹枠のためにはどのような手をとれば良いのか、その辺については上手い人や攻略サイトが見つけてくれるだろう。事前に装備を考えるにあたってインターネットを使って情報収集をしてから挑むのも良いかもしれない。
ともあれ、一般的なライトプレイヤーである彼にとってはワクワクと虚無の時間なのでそれなりに楽しみなのである。
あまりに虚無だった場合は別のオンラインゲームに一時的に逃げても良いかもしれない、と微かに考えるほどにはマム・タロトに対して良い思い出がない……のだが。
火太刀と雷弓から逃げたのだから、今度は逃げてはならないという一種の脅迫概念があるせいかもしれなかった。
もっと肩の力を抜け、と友人に指摘されるまで、歴戦の相棒であるエンプレスシェル・冥灯を死んだ魚のような目をしながら延々と磨き続けることとなる。
マム・タロトにハンターランクを育てられたハンターさん
ハンターランク50から120くらいはノンストップマム・タロトで駆け抜けたと言っても他言ではない故に、正直虚無い。
ネルギガンテならいくらでも狩れるのにマム・タロトにここまで飽きたのは大砲落石痕跡集めの前半戦のせいである。後半戦だけなら虚無ではなかった。
出会い頭に果し合いがしたいお年頃。北西キャンプから這い出てこんにちは! 角折らせろ! スタイルのネルギガンテが好きなのである。
ところで、アイスボーンまでに重ね着全部実装されるんですか? とそっとブルーバードでつぶやくタイプの人間。公式にリプライするほどではない。ガロンとドスジャグラス、トビカガチが特に欲しくて欲しくて震えて着せ替えしてスクリーンショットする。
例のハンターのオトモ
ニャ と言っておけばとりあえず満足される。いい子なのでフワフワクイナを生贄にすれば自分まで被害が来ないと分かっても、例のハンターが撫でたそうな顔をしていれば撫でさせてくれるいい子。
気絶をキメるハンターを叩いて治すプロなので、よくピヨった助けて! と呼び出される。
どういった話を期待していますか? 最も当てはまるものを選んでください。
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ゲームシステムによるもの
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クエスト頻度、難度、クリア時間
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イベント関連
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メタ戦法(確定行動、戻り玉回避等)
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アナザーストーリー