次回投稿からはアイスボーン編となりますので公開する場所もないのでこのタイミングに。
「オトモとともに、ハンターさんは」
「アッ……」
例のハンターは奇妙な悲鳴をあげ、感極まりすぎ、顔を覆ってぶっ倒れた。オトモは大丈夫かと駆け寄り、他の人々はとりあえず近づかないように慎重に距離をとる。アステラの人々は聡明なのだ。そうでなければ新大陸に生き残っては来なかっただろう。
いつものことである。興奮しきった例のハンターには近寄らないべし。受付嬢すら守るこの鉄則を破るものはいない。ヒメジョオン以外は。だが、アイルーであれば例のハンターは丁重な変態紳士であるので特に被害はないだろう。まぁ、多少撫で回されたり吸われたりするかもしれないが、頭からバリバリ食べるということはないのだから。
「見た……? にゃんにゃんちゃん……いまの……」
「見たにゃ! ボクもやったにゃ!」
「だよね、だよね、にゃんにゃんちゃんも一緒にやってくれたよね、今の……『お辞儀』! もう一回! もう一回するよ!」
「了解にゃ!」
例のハンターは追加されたジェスチャーに全てをほっぽり投げて興奮していた。ほっぽり投げすぎて未だアステラである。一晩かけてアイスボーンのアップデートをかけたが、かけただけでまだアイスボーンしてないのである。
だが、やらなきゃという気持ちすら彼方へ飛んで行った。足湯でにゃんにゃんちゃんやフワフワクイナとイチャイチャしたい、という気持ちすら一時的に吹っ飛んで行った。
彼はうやうやしく頭を下げた。途端、感情が爆発した。
「『お辞儀』! アッ! お辞儀! うあ!!!!! お辞儀だよ!!!!! わたしこんな……えっ? こんな? えっ???? 何? これは? 優美! なんて……優雅なんだろう……王子様じゃん」
中の日は壊れた。胸に手を当て、微笑みすら浮かべてお辞儀をする自らに見惚れた。見惚れ、歓喜し、見惚れた。
彼は実際、彼女が丹精込めて創りあげた素晴らしい顔立ちの男だ。ギルドクロスをまとってお辞儀すればなかなか様になっていると言えるだろう。
しかも自分好みの顔立ちである。気品溢れるその仕草、長いまつ毛が伏せられた時、まるで王子様はお姫様に見間違える。例のハンターはまたぶっ倒れた。感激のあまり。
そして息もたえだえにオトモにたのみこむ。
「いとしいわたしのにゃんにゃんちゃん……お辞儀してくれる?」
オトモは言われるがままにお辞儀した。例のハンターは死んだ。いや、死んではいないが死んだ。地面に同化せん、とばかりに悶えた。
「かっ……かわいい……」
彼は幸せであった。幸せな頭をしていた。人生が楽しいのだ。
アイスボーンしている彼がしたこと。それは追加ジェスチャーとオトモのジェスチャーを楽しんだだけである。ちっともモンスターをハンターしていなければアイスがボーンしてすらもいない。
しかしゲームの名前は問題なくモンスターハンターアイスボーンなのでアイスボーンしているのだろう。多分。
「アナザーストーリー:」
ハンターらしく、機能的で無骨な装備を身にまとった男が、ぱらぱらと風に弄ばれる長い髪を無造作に紐で縛った。その背には、昨日と違う武器がある。もちろん、武器種ごと違った武器が。
快晴だが冷え込む気温も、今から赴く狩りの対象がすでに何人もの犠牲者を出していることも、己の存在理由も、全て彼にはどうでもいいことだった。寒さに身震い一つせず、営まれる穏やかな村人の日常に目を止めることなく、己の孤独を顧みることもなく。考えることも何もない、彼はただ「為すだけ」なのだから。
ハンターとして、的確にモンスターを狩り、ひっきりなしに依頼を受け続ける。その「定められた」容姿を欠片も乱すことなく、また、性格を匂わせることなく、ほとんど人間性を出さずに。それが彼のできうることで、それ以上に何も無いのだ。
それは言葉通りのこと。彼の中には文字通り何も無かった。あるのはその容姿と、性別、声、ハンターであること。しかし前者三つは外なる存在によって自由に変えられることであり、彼自身にとってはまさにあってないようなものなのだ。
彼のアイデンティティといえる「ハンターであること」も、今の彼には特に面白いことでも苦痛であることでもなく、ひたすらそうあるべきだとプログラムされているだけの、絶対的な事実であることだけだった。
彼は未来のハンターの器。プレイヤーが使う肉体であるからして、頑丈で、傷一つ残ることなく、ある意味では人ならざる者。
そして彼は心持たざる者。その魂は、彼を動かす「彼女」によってのみ宿される。そうでなければ、そこにあるのは肉の器。
これは、導きの青い星になると定められたある英雄が、まだ、肉体だけを持った器だったときの話。
夕方、朝依頼を受けて出立していたハンターが帰還した。モンスターからの返り血を少し浴びていたが、足取りはしっかりとしていて目立つ傷はありそうにない。いつもの通り、討伐を示すためのモンスターの素材を入れた革袋を腰に括り付け、すでに骸には人を送っていた。
彼をまとう噂はどれも不透明で、何事にも「らしい」とついたが、誰もそれを否定できない。彼の腕前の良さだけは「らしい」ではなく、紛れもなく本物であったからだ。
「魂持たぬ人形」と陰口を叩かれるほど感情らしい感情を持ち合わせていない彼だったが、彼とて人間の平均くらいは眠りもするし、ハンターらしく狩り前には食事とて摂る。当たり前のことだが、実のところそれらはパフォーマンスに過ぎず、本来は必要ないのだが、「そうあるべき」と決められていることに逆らうことはないのだ。
よって、必要も無い寝床を得るため、依頼を達成した村で仮宿をとる。
型通りの武器の手入れ、常識の範囲内の武装の解除の後、簡素なベッドに潜り込んだ彼は不気味なほど一定のリズムで寝息を立て始めた。
彼は人形である。プレイヤー「名称未設定」が名前を決め、オトモを選び、狩猟解禁するその日まで。
容姿がすでに定められているように、彼には名前が既にある。だが、それは逆説的なものであり、実際は赤毛のハンターであり、そうではなく、男であり、男ですらないのだ。
「例のハンター」がポニーテールの男だから、このハンターはその容姿をしているが、それは確定された「未来から」、過去へ干渉して「そういう容姿の男だった」と定められているのだ。
故に、彼に個性はない。あとから考えてみれば、彼の声がわかり、彼の顔がわかり、彼の名前がわかるが、「今」はなにもない。あるのはハンターであるということ、腕がいいということだけ。
彼は感情持たぬ、いや、感情持てぬ人形である。オトモアイルーが未来に抱いた感想は、キャラメイクが成されたあとのことであるから、彼の容姿も名前も確定しているゆえに人格を錯覚しただけのこと。
ハンター「名称未設定」、「例のハンター」。野の花の名前を持つはずの美貌の彼は、未だそれすら持たぬ。
「どこかの村」で「甚大ではあるがギルドが派遣される手前くらいの被害」が起き、「凄腕と噂される村付きではないハンター」が「タイミングよく依頼を受け」、「見事達成する」。
例のハンターが繰り返しているのはそういうことである。もしかしたら、「どこかの村」は例のハンターが功績をあげるために存在するのかもしれないし、そのモンスターは倒されるためだけに用意されたデータ体なのかもしれない。
しかしながら、そんなことは生きる人々にはどうでもよく、そこにある人々の営みを守るという点ではなんら問題なく、ただ受け入れられる。いかに強くとも排斥されることも無く、そういうものなのだと受け入れられる。しかし、「村付きになってほしい」と願われても、実際口に出したとしても、彼が受け入れることはなく、またそれには「他の依頼がある」など納得ができる理由で跳ねのけられる。定住ができないのだ。そうであれば、「どこかの村付きだったハンター」という経歴が出来てしまうからだ。
彼は「五期団の推薦組」でなければならない。推薦組であるからには、腕が良くなければならない。腕がいいということは、実績がなければならない。
「オトモとともに、ハンターさんは」
アイスボーン編第一話にしようと思っていた話の前半部分。ハンターの話なのでいきなり戦っていないのはどうかと思い、没にしましたが、よく考えたら第一回も別にまともに戦ってもなかったなと思い出しました。
ハンターさんが壊れすぎたので書くとしたら(比較的)本人的にはクールで知的に、実際は泥臭い姿になることでしょう。彼が真の意味でクールな日はこないのですが。
「アナザーストーリー:」
アナザーストーリー二話にしようと思っていましたが、前半部分だけ書いて満足してしまい、後半どういう展開にするのか考えているうちに存在を忘れ去ってしまい、埋まってしまった話。
どういった話を期待していますか? 最も当てはまるものを選んでください。
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ゲームシステムによるもの
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クエスト頻度、難度、クリア時間
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イベント関連
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メタ戦法(確定行動、戻り玉回避等)
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アナザーストーリー