ハンターさん、集めるのが好き   作:ryure

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いつも着るものにうるさいのでハンターの日常の話。
ハンターの本編クリア前→今 の時系列


ハンターさん、着るものにうるさい

「必ず帰ってくるんじゃないのか?! ハンターの相棒はオトモって相場が決まってるわ、なんだよキャンプ待機してるくせに相棒って! 開幕一乙虫なし操虫棍も、撤退したまま帰ってこないやつも地雷! 必ずとはなんだ、辞書引いてこいよ!」

 

 人生をこの上なく楽しんでいるため、普段はにこやかなハンターは珍しくキレていた。というよりも中の人が攻略動画やサイトを初見は見ない派のライトプレイヤーなので展開を知らずに激怒していた。明らかなラスボス戦でいきなり開幕一乙野郎がいたからである。

 

 ストーリーの問題なので本当は乙ってないのだが、乙にしか見えないのである。おっ、憧れの竜人ハンターなNPCと一緒に戦闘か? とワクワクしていたところにこの仕打ちである。結局ソロなのである。純情を返して欲しかった。NPCとの共闘、しかもラスボスで。かなりロマンである。

 

「あと乗れないし! 状態異常毒しか入ってないし! なんだこいつ!」

 

 このハンター、片手剣がメインウェポンなので初見にはとりあえず乗ることによってモンスターとの絆を深めようとする。しかしなぜかこのやたらでかい古龍(生まれたて)に乗りが成功しなくてそれにも解せないのである。

 

 生まれたての、しかも新種なんて古龍の「古」じゃねーだろ! とキレつつも、閃光弾すら意味をなさずに混乱しているのである。罠が効くとは流石に最初から思っていない。ネルギガンテ初見にシビレ罠を仕掛けたのは黒歴史である。

 

 飛ばれた時は近接なので攻撃が届かず、腹いせに拾ったスリンガーで撃墜できてしまい、攻略の糸口を見つけるとこれ幸いとタコ殴りした。

 

 このハンターは新参ハンターではあってももう初心者ハンターではなく、それなりに慣れたハンターなのである。虫なし操虫棍野郎(操虫の定義についてこのあと彼はググッた。そのあと竜人棒野郎に呼び方を変更した)の後を追ったりはしない。だんだんと笑顔が戻ってきて、戦いを楽しみ始めた。

 

 見慣れないモーションの攻撃に吹っ飛ばされて回復薬グレートをガバ飲みする頻度が少々激しいだけで、それもモドリ玉を使えばすっかり補充もできることをよく理解していた。

 

 もちろん人並みに初見のモンスターにはチキンな彼はもっているし、その点では準備は万端だった。結局使うまでもなかったのだが。足りなかったのはロマンを求めたあまり純情になりすぎた心の準備である。

 

「あの三人の中ならハンターの死によって危ないことになるのに近場のキャンプに残ってるだけ受付嬢が一番マシだよな!」

「ニャー、消去法ニャ」

「オトモの君が一番、世界一! 頼れるよ!」

「ニャー! ありがとうニャ!」

 

 足に張り付いていればあまり危険ではないと学び、赤い床を踏めば火傷することは見たらわかる。長い尻尾も頑張れば切れそうだし、前足への攻撃でこいつはやたら怯む。部位破壊したらそれも加速するだろう。ほらまた転んだ。

 

 そう考えながらハンターはまだまともな重ね着がなかったので美学が満足しない訳の分からないキメラ装備のまま、生まれたての新種の古龍に飛びかかっていき、結構ぼろぼろになりつつも勝利を収めた。

 

 もちろん得たものは謎の古龍の素材と受付嬢への不信感(それまでは一応「アイボー」とか「オバサマ!」とか呼んでいたのでまだ親しみがあった)、「必ず」の意味を理解していない大団長への圧倒的な信頼の喪失と開幕一乙離脱野郎を初見ではカッコイイと思った自分への反省であった。

 

 古龍渡り解明の名誉? そのようなものには興味はなかった。ゲームの主人公がラスボスを倒して何らかの功績を立てて称えられるなんて、別に普通すぎて気にもしていないのである。たまに称えられない時もあるのでその時はその時で新展開に気持ちよくなってしまうプレイヤーなのである。

 

 しかし彼の中の人がライトなプレイヤーで、肉体はともかくそこに生きる人間というには魂が別世界から来ていたので、その不信感をさっと水に流した。というよりもどうでもよかったのだ。

 

 なんだっていいのだ。竜人棒野郎が開幕一乙しても、大団長が約束を守らなくても、ベースキャンプ待機嬢があたかも共に戦ったように叫んでいても、これでお話をクリアしたのだから自由なのだ。加工所で上から装備を作りまくってめくるめく幸せワールドライフをはじめられると理解していたのだから。

 

 ストーリーに感情移入は人並みにするが、もともと現実世界でトイレに並んでいたところに横入りされたような激しい怒りという程でもなかったので、帰還する頃にはすっかり忘れて彼は素晴らしいエンディングミュージックに心打たれて咽び泣いていた。音楽とは素晴らしい、と周りとは違う感動をしてぼろぼろ泣いていたのである。

 

 ゲームの中での怒りなんてその程度なのである。しかし周りの人間たちはまだハンターが頭がイカれた散財野郎で装備のためになんだってする狂人だとは知らなかったので悲願解明による涙だと思ってわっしょいわっしょいお祭り騒ぎした。ハンターはエンディングなのでノッて、わっしょいわっしょいに参加した。

 

 そして次の日になってまだまだオレたちの新大陸ライフは続くぜ! という展開を「知ってた」という顔で見、それなりに喜んだ。この時点では人付き合いの少ないクールで強いイケメンハンターとそれなりの人気があったのだ。だから周りも一緒に喜んだ。

 

 クリア後、本当にまったく自重しなくなったのでその人気はすぐに霧散する。この頃はよくよぉ! と肩を組まれたり話しかけられたりしていたのだ。クエスト、導きの青い星をクリアしたあたりで狂人っぷりがだんだんと露見し、人々が近寄らなくなっていくのだが。

 

 もちろんハンターはそんなことより装備の新調の方が大切だった。今日も金を派手に使いながら心底幸せそうである。

 

 

 

 

 

 

 

「あの頃は別に何も考えていなかったからなぁ」

「あのころ? ところで今は何を考えているっていうんです?」

「大剣も早く回復カスタムしたいこととか、新しい装備を作ったらどれだけカッコよくて痺れちゃうのかな、とか?

まぁタイムアタックしてるわけじゃないし、まだまだなハンターなんだけどまだまだなりに。あとドラケンとりたいんだけどこれが上手くいかねぇの。昨日も何回挑んだか覚えてない」

 

 本当に取れないんだなぁこれ。そう言って財布が完全な空でもないのにハンターはテーブルに突っ伏した。まだ数千ゼニーはあるのだ。装備をひとつ作れる程度のゼニーがあるなら彼はめげない、はずなのだが。

 

 昨日も毎回手酷くやられてドバドバと血を吹き出しながら帰還するわりには一日経てば傷らしい傷もなく、元気いっぱい五体満足で、その自慢の顔に爽やかな笑顔を浮かべ、心底楽しそうに何度でも出撃するハンターは……やはり一般的なライトプレイヤーなので。急に強くなったりはしない。まだ超高難易度のコラボモンスターに勝てていない。

 

 勝てないことはそれなりにハンターを落ち込ませた。歴戦王に負けてももう少し手応えがあり、その後勝てたというのに。

 

 しかしアステラ的には手負いのヤツさえ撃退してくれればあとはわりとどうでもよかったので、受付嬢は軽く流してハンターのかわいいオトモにソーセージをあげた。オトモアイルーは主人が制さなかったので美味しくいただいた。受付嬢の、食べ物のチョイスには間違いがないのだ。

 

「ドラケン見た? 美しい曲線だよね、光沢が目に染みるっていうか撫でさすりたい。装備のドラケン装備は一式持ってるけど重ね着はやっぱり別格だよ、頬ずりしたら頬をすりおろされそうなのもポイント高い。女の子が着たらお腹が出て腰が本当にエッチだし、男が着たらシュッとしてSFチックっていうか、なんていうか刺さるんだ。美しい。やっぱコラボだから世界観が少し違うよね、でも妙にマッチしててあれは素晴らしいものなんだ。

ブリゲイドより素晴らしいものは無い、と思っていたけど別次元であれも良いよね、本当に。体にフィットする鎧ってあんなにそそるんだなぁって思い知った。この前着てる人見かけたんだけど、本当に本当の強い人ってあんなに気迫とか風格があるんだなぁって思い知ったし、色も変えられるってことは組み合わせを考えるのがまた楽しくなる。最高だよ、本当にあれがあったらわたしももっと最高のハンターになれるんだろうなぁ。カッコイイ」

 

 受付嬢はもちろんほとんど話を聞いていなかったが、深い緑色に染められたブリゲイドの帽子を抱えて手に入らない重ね着についてぐちぐち言っていることだけは理解した。

 

 ハンターもハンターで手に入らない重ね着に心を奪われて気もそぞろになっているせいで、今日も今日とてお気に入りのブリゲイドはきっちり決まっていたが赤い化粧の色を変えないのでクリスマスカラーになっていることにはうっかり気づいていない。

 

 余談だがこのハンター、中の人は女性である。わざわざ自分の思う最高のイケメンにキャラメイクし、イケメンがスタイリッシュに戦うバトルがしたかったのだ。話題のキャラメイクに心惹かれたとも言う。

 

 その後、なんでもいいから狩りがしたい! というようにしっかり染まってうっかりハマった普通のプレイヤーである。しかしながら肉体や周りの認識が男性で、わざわざゲームの中で金にもならないことを訂正することもないので特に気にしていない。ネカマが蔓延するのと同じ理屈である。

 

 彼の知り合いの中が男性の女性ハンターは、その知り合いにとっては世界一綺麗な女性なのである。また、彼にとってはゲームでの性別なんて着せ替え要素として以外気にするべきことではなく、アステラの人々との隔たりは静かにますます広がっていく。そもそもそんなに話さないのでボロもでないし、彼の口調がテンションのせいでおかしなことになっている以上誰も近寄ったりしない。

 

「練習したら相棒ならきっと勝てますって!」

「そっか、そうだよな!」

 

 肉に夢中ながらも適当に励ますと、現金なハンターはポジティブに頷き、食事スキルに報奨金保険を付けるとひと狩りにしに行った。

 

 しかしながら被弾が多いプレイヤーであるこのアステラの導きの星には少々荷が重く、しばらく「勝てないよ! 勝てないの楽しいよ! 勝ちたいよォ!」というよくわからない悲鳴が蔓延することになった。幸い、まだイベント期間はある。




この話のハンターさん
誰も気づかないし気づかせる気もないネカマの反対。筋肉質な肉体ももちろんかっこいい装備がキマるので愛しているナルシスト。自慢をわざわざしてはこないが表情がうるさいと評判。いつも邪魔なところに立っている。
ブリゲイドの帽子がお気に入り。毎日色を変える。
片手剣メインだが片手剣以外も毎日使う。困ったら片手剣になる。猪突猛進型なので複雑な武器やゲージ管理のいる武器はいまいち使えていない。
しかし楽しいのでなんでもいいのである。例のクエスト以外では別に普通に乙らず戦っている。

どういった話を期待していますか? 最も当てはまるものを選んでください。

  • ゲームシステムによるもの
  • クエスト頻度、難度、クリア時間
  • イベント関連
  • メタ戦法(確定行動、戻り玉回避等)
  • アナザーストーリー
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