僕のヒーローアカデミア~ジンオウガの章~   作:四季の夢

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第五十二話:竜牙の選択

 

「……」

 

 イビルジョー達との会話から二日後、竜牙は退院し、家で療養をしていた。

 警察からは不必要な外出をしない様に言われているが、竜牙はそんなこと言われなくても外出する気力がなかった。

 

 自室のベッドの上にずっと座りながら何かを考える様にジッとし、虚ろな目をしながら、やがて立ち上がって部屋を出た。

 

 するとリビングにいたのは保護者である猫折さん。

――そしてガリガリとなったオールマイトと相澤が対面で座っていた。

 

 二人の姿はスーツ姿で整えられており、明らかに外用の姿だ。

 そして竜牙の姿を見た猫折さんは心配そうな表情で言った。

 

「竜牙さん……! もう大丈夫なの?」

 

「……はい」

 

 竜牙は力なく頷き、ソファーに座るオールマイトと相澤を見た。

 

「雷狼寺少年! 大丈夫かい?」

 

「……もう良いのか?」

 

「……はい」

 

 竜牙の姿にオールマイトと相澤は思わず立ち上がって心配の声を出すが、竜牙の言葉を聞いて一旦は腰を降ろした。

 

 しかし二人から見ても竜牙の姿には覇気がなく、心配を隠すことの方が無理だった。

 特にオールマイトの表情からは心配一色に染まっており、竜牙から顔を逸らす事が出来ずにいた。

 

 そこへ相澤が軽く肘で突くと、ハッとなって猫折さんの方を再度向いた後、竜牙は二人へ問いかけた。

 

「……先生達はどうして今日、家に?」

 

「あぁ……それはだな。実は雄英で全寮制を行うことにした。だからその許可を頂く為に各家に説明して回ってるんだ」

 

「今回、雷狼寺少年のご両親とは連絡が取れず、保護者の猫折さんにお会いしているんだが……」

 

 オールマイトは何とも言えない表情を浮かべながら猫折さんの方を見ると、猫折さんは真剣な表情で二人を見ていた。

 そして、意を決した様子で二人に言った。

 

「私は反対です。今まで雄英が……ヒーローが竜牙さんを助けてくれましたか? 今回の件もそうです。ヴィランから守ってもらえず薬物を撃たれ、挙句に誘拐までされた! なのに、何を信じて竜牙さんを預けろと言うのですか!」

 

「……仰る事は、ごもっともです。しかし、我々も慢心・怠慢を見直し、やれることを考えております。どうか、今一度、我々に預けていただけないでしょうか?」

 

「必ず……もう雷狼寺少年を危険な目に遭わせないと誓います! どうか……どうか!」

 

 相澤とオールマイトは頭を下げて猫折さんを説得するが、猫折さんは黙って首を横へと振った。

 

「それでも反対です……! 竜牙さんの()()にも何もできなかった方々をどう信じろと言うのですか!――私も分かっていました。竜牙さんが職場体験から帰ってからおかしくなっていたことに。しかしヒーローとして何かあるならば私じゃなく、ヒーローである先生方に任せる方が良いと思って見守っていました。しかし結果は悪化する一方で挙句には今回の事件。怪我をされたお子さんのご両親に申し訳ない気持ちでいっぱいです……!」

 

「返す言葉もございません」

 

「まことに申し訳ございません!」

 

 相澤とオールマイトは頭を下げ続けた。

 二人も竜牙にどうもしてやれなかったことへの想いがあり、猫折さんの言葉は深く刺さった。

 

 だが二人は頭を上げなかった。

 その内心では必ず竜牙をヒーローにしてみせるという強い意思があったからだ。

 

 そして猫折さんも、そんな二人の様子を見て悩む様な表情をした時だった。

 

「……話し合う必要はありません」 

 

「……雷狼寺少年?」

 

 竜牙の言葉にオールマイトは顔を上げ、それに釣られて相澤も顔を上げ、猫折さんを含め三人が竜牙の方を見ると竜牙は静かに口を開いた。

 

「……猫折さん、相澤先生……そしてオールマイト。俺は――」

 

 そして、その言葉を聞いた猫折さんと相澤は目を大きく開けて驚愕し、オールマイトは思わず立ち上がるのだった。

 

 

▼▼

 

 A組の新しい日常が始まろうとしていた。

 寮住みを全員が許され、今まさに新たなる寮の前で全員――竜牙を除くメンバーが集まっていた。

 

 皆、親への説得が苦戦した、してないと元気に話していたが相澤は真剣な表情を浮かべていた。

 

「真剣な話だ。全員よく聞け……俺はオールマイトの引退が無ければ爆豪救出に赴いた者達。そして、それを知っていた者達全員を除籍にする気だった」

 

――っ!?

 

 相澤の言葉に全員の表情が暗く、そして固まった。

 

 だが相澤は続けて言った。

 除籍にしない理由はオールマイトの引退で世間が混乱している事、そして敵連合の出方が分からない以上、雄英から人を追い出せないからだと。

 

 けれど緑谷達が相澤達の信頼を裏切ったのも確かであり、相澤は正規な活躍で信頼を取り戻して欲しいと言った。

 

「まっ、そういう訳だ……さぁ、中へ入るぞ。元気出して行こう」

 

――いや無理です!

 

 全員が表情を暗くし、足が止まっていた時だった。

 耳郎と障子――そして爆豪が気付いた。

 

「あ、あの……ちょっと良いですか! 雷狼寺がいないんですけど……?」

 

「気になっていたが、来る気配がない」

 

「……チッ! 何か知ってんなら説明しろや」

 

 三人の言葉に相澤の足がピタリと止まった。

 

 同時に三人の言葉に全員も分かってはいたが口に出さなかったのだろう。

 皮切りの様に緑谷達も口を開き始めた。

 

「あの相澤先生……雷狼寺くんはどうしたんですか?」

 

「まさか寮の許可おりなっかたん!?」

 

「雷狼寺は修羅の道だったか……!」

 

 緑谷、麗日、常闇の三人はそう言って顔を見合わせた。

 それを聞いて他のメンバーも、まさかと顔を見合わせる。

 

「でも確かに雷狼寺は一番の被害者でもあるからな……!」

 

「薬物に誘拐……そして暴走。色々とありましたから親御さんが許可しなかったのも納得ですわ」

 

「えぇ!! それってヤバイんじゃないの!?」

 

 切島、八百万、芦戸が慌てた様子でそう言うと、他のメンバーも心配そうな表情を浮かべるが、そこで待ったを掛けたのは飯田だった。

 

「皆、静粛に! 落ち着くんだ……そうなった場合、雷狼寺君は家から通うだけじゃないか。だから俺達とは別行動で――」

 

「――いや、雷狼寺は来ない」

 

 飯田がそこまで言った時、遮ったのは相澤だった。

 相澤のピシャリと言った感じの言葉に皆、黙ってしまう。

 

 言葉のトーンが普通じゃなかったからだ。

 何か意味がある様な、意味深な感じなのだ。

 

 そんな中で勇気を振り絞って手を上げたのは耳郎だった。

 

「あの……雷狼寺が来ないってどういうことですか? 雷狼寺、もしかして何かあったんですか?」

 

「先生……答えてください」

 

 耳郎に続いて障子も声を出すと、皆も黙って相澤を見ると、相澤は視線を感じて振り返った。

 そして胸ポケットから何か一枚の紙を取り出し、それを全員に見せた。

 

「雷狼寺は、もう雄英には来ない。――アイツは()()退()()を申請した」

 

「――えっ?」

 

 それが誰の声だったのか分からない。

 耳郎だったのかも知れない。全員の声だったかもしれない。

 

 だが相澤の持つ<退学届>と書かれた書類と、竜牙のサインと印が彼女等にそれが現実だと知らしめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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