僕のヒーローアカデミア~ジンオウガの章~   作:四季の夢

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結構、難産でした(;´・ω・)
脳内にはイメージがあるのに、それを文章にするってこんなに難しかったのかと思いだしました。


第五十三話:A組の選択

 

「どうして雷狼寺が!?」

 

 最初に叫んだのは耳郎だった。

 腹の底から声を出すかの様な声に皆も何度も頷き、竜牙の退学の真意を問いただそうとした

 

「まさか相澤先生……除籍にしたの!?」

 

「鬼! クマ! ドライアイ!!」

 

「芦戸、葉隠……ドライアイをディスるな。それに除籍にしていない。最初に言ったろ()()退()()だとな」

 

 相澤はそう言って手に持っている<退学届>を指差し、今度は全員に見える様に全方位へと見せて回った。

 だがそれで納得するA組ではない。

 

「だから何でなんですか!」 

 

「納得できねぇよこっちも」

 

 緑谷と轟が納得できないと反論し、他のメンバーも再度頷いて相澤の言葉を待った。

 そんな様子に相澤は溜息を吐くと、予想はしていたのだろう。

 

 何の間もなく語り始めた。

 

「暴走……それは雷狼寺にとって最大のトラウマだった。ご両親との件、そして今度は仲間を傷付けた」

 

「でもそれは敵連合のせいだろ! 雷狼寺は悪くねぇ!」

 

 切島が拳を握り締めてそう叫ぶが、相澤は特に反応せずに話を続けた。

 

「しかもだ。雷狼寺が常日頃から言っていた巨悪――それがオールフォーワンだという事も分かった。アイツにとっては絶対に許せない相手にまた利用され、今度はオールマイトや他のヒーロー達も襲った。――アイツは自分がオールマイトを終わらせたと思っているんだ」

 

「ッ!?」

 

 相澤の言葉に爆豪の表情が変わった。

 強張る様に、でもどこか不安そうな顔だった。

 

 だが誰も爆豪の様子には気付かず、相澤の言葉に信じられないといった表情をしていた。

 

「ケロ! そんなことないわ……テレビで見てたけど、雷狼寺ちゃんが変身したのはオールフォーワンに触られてからよ? 雷狼寺ちゃんの意思じゃないわ、きっと」

 

「周りがそう思うが関係ない。雷狼寺自身が自分を許せずにいるんだ。それに今回はお前達のご両親からの苦情はなかったが、テレビに映った雷狼竜の姿を見て一部から個性のコントロールの不安の連絡が来ているのも事実だ。まぁそっちは無視しているがな。――それに無論、俺もオールマイトも説得はしたが、その結果がこれだ」

 

 そう言って退学届を相澤は指差すと、それを折って胸ポケットへ再びしまった。

 そして背を向ける相澤に皆は慌てた様子をみせた。

 

「ちょっ!」

 

 皆が声を出して相澤を止めようとすると、耳郎が一歩前に出た。

 

「待ってください! 相澤は先生はそれで良いですか! っていうか、それってもう受理されたんですか!?」

 

「……あとは校長に提出すれば受理されるだけだ。そうなれば雷狼寺の退学は確定する」

 

「……じゃあ! まだ雷狼寺は退学になっていないんですよね!」

 

 耳郎や周りの表情は少し明るくなるが、相澤は皆に背を向けたまま竜牙の顔と言葉を思い出していた。

 

『――俺はヒーローになれない』

 

 目に生気がなく、完全に絶望した者の表情だった。

 言葉にも覇気はなく、オールマイトが竜牙の肩を掴んで必死に説得したが、竜牙が首を縦に振ることはなかった。

 

 だから相澤からすれば、耳郎達が希望を持った様な表情をしているのが逆に辛かった。

 相澤には分かっていた。これから耳郎達の行動が。

 

 しかしきっと竜牙は首を縦に振ることはないだろう。

 それを理解している分、内心では相澤自身も己に腹立っていた。

 

 何故、諦めるのかと。何故、最後まで説得しないのかと。

 だが相澤は教師だ。竜牙だけに意識を向ける訳にはいかない。

 

 特に<仮免許>の件もある。

 急がねばならないのだ。これ以上の予定の遅れは相澤――否、雄英としても受け入れられない事態になる。

 

――教師失格だな。教え子一人守れず、しかもヒーローの道を閉じさせるなんてな。

 

「それ以上は後にしろ。早く中に入れ、色々と説明することがある」

 

 相澤は耳郎達に背を向けたまま、瞳を閉じて後悔する様な表情を誰にも見せずにそう言うと、寮の中へと入って行き、耳郎達も困惑しながらも中へと入って行くのだった。

 

▼▼

 

 相澤から寮――<ハイツアライアンス>の説明を受けた耳郎達はその後、各々の部屋へと入り、自室の準備を始めた。

 

 だが全員の脳裏の片隅にはずっと竜牙の自主退学があり、部屋の準備をしながらも全員の表情は晴れなかった。

 

「……雷狼寺」

 

 耳郎もギターを部屋に設置しながらも思わず竜牙のことを呟いていた。

 

 自分達が竜牙のことを盗聴した時も許してくれた竜牙。

 最後に満面の笑みを見せてくれた竜牙。

 

 しかしオールフォーワンによって狂わされた竜牙のことを思うと、耳郎は何も言えなくなってしまった。

 オールマイトと死闘を繰り広げた程のヴィランだ。

 

 耳郎は竜牙に頼れと言ったことを悔いた。

 そんな相手だ。竜牙には自分自身――否、雷狼竜しか頼れる存在がいなかったのだろう。

 

「……うち、本当に雷狼寺にとって役立たずじゃん!」

 

 耳郎は涙目になりながらギターを八つ当たりの様に強く引くが、その強音はすぐに部屋の中へと消えていった。

 だがそれは耳郎だけではなく、全員が竜牙のことを思いながら部屋の準備をするのだった。

 

 そして、部屋の準備が終わった夜。 

 皆は部屋の見せあいっこしたり、蛙吹が皆への想いを告げる等のことをした。

 

 けれども、それを終わっても竜牙のことが頭から離れず、共同スペースに爆豪を含めて全員が集まった。

 

「……雷狼寺の奴、本当にこのまま辞めちまうのかな」

 

 全員が集まる中、ソファーに座っていた上鳴が全員の想いを代弁するかの様に口を開いた。

 その言葉からは心配の声色が強く、全員が思わず下を向いてしまう。

 

 言った本人である上鳴自身ですら不安そうに下を向いてしまい、誰もが話さない間が続いた時だった。

 

「うちは……雷狼寺に雄英、辞めてほしくない! だって……うちにとって雷狼寺は憧れだし! それに――まだ何も話せてないから」

 

「耳郎ちゃん……! うん! そうだよ! 雷狼寺くんと私達、まだ何も話せてないもん!」

 

「そうだよ! 皆で雷狼寺の家に行って説得しない! 皆で行けば雷狼寺も考えを改めるかもじゃん! 今こそクラスが一丸になる時だって!」

 

「っ! そうだ! 確かにそうだ! 僕達は雷狼寺君と何も話せてない! 委員長として仲間の危機に立ち上がる時じゃないか!」

 

 葉隠と芦戸の言葉に飯田もやる気を見せた。

 眼鏡を輝かせ、今こそ委員長の出番だと君臨し、緑谷達もその空気の変化に顔を上げて笑顔をが出始めた時だ。

 

「でも……きっと難しいと思うわ」

 

 そう言ったのは蛙吹だった。

 未だに一人、顔を下へ向けて深刻そうな表情をしている彼女を見て麗日が傍に駆けよった。

 

「つ、梅雨ちゃん……!」

 

「ごめんなさい、皆……私、思ったことを言っちゃうわ。――相澤先生やオールマイトも説得できなかったのに私達が行った所で説得できると思えないの」 

 

「そ、そんなことねぇぜ梅雨ちゃん!」

 

「そうだよ! 雷狼寺くんの話を聞いてもいないのに……こんなお別れは嫌だよ。だって僕達……雷狼寺くんの友達で、仲間じゃないか!」

 

 切島が拳を握り締めて気合を見せ、緑谷が思いを口にすると皆もそれに同調する様に頷いた。

 だが蛙吹は少し悩んでいた。

 

「本当に仲間……だったのかしら」

 

「――えっ?」

 

 蛙吹の思いがけない言葉に全員から思わず声が出てしまった。

 それを聞いて蛙吹も少し焦った様子で言葉を続けた。

 

「ごめんなさい、誤解しないで……私も雷狼寺ちゃんを大切なお友達で仲間だと思ってるわ。――でも……」

 

「でも……?」

 

 蛙吹の言葉に緑谷が不思議そうに聞き返すと、蛙吹も意を決した様に口を開いた。

 

「……私達、雷狼寺ちゃんと、ちゃんと話したことなかったんじゃないかしら? 今思えば体育祭……私達は雷狼寺ちゃんの秘密を盗聴して知ってしまったわ。あの時は雷狼寺ちゃんが許してくれたから良かったけど……ご両親のことも病院で目の当たりしたわ。でも知ってるのはそれぐらい。――これって本当にお友達、仲間って言えるのかしら? もしかしたら私達はまだ雷狼寺ちゃんとお友達……仲間になっていないんじゃないかしら?」

 

「……うっ、それは」

 

「……っ」

 

 蛙吹の言葉に皆が黙る中、盗聴の時の発起人である峰田は気まずそうに顔を下げ、盗聴器を作った八百万も気分が悪そうな表情を浮かべていた。

 

 そんな様子に蛙吹も言葉を止めようと思ったが、意を決した彼女は止めず、再び口を開いた。

 

「本当の仲間なら、雷狼寺ちゃんがおかしくなった時にもっと必死に止めるべきだったんじゃないかしら? 例え自分が傷付いても、雷狼寺ちゃんに嫌われても、それでも止めるべきだったんだと思うわ。それに――」

 

 蛙吹はそう言って少し考える様に間を空け、麗日が心配そうに蛙吹を支えていると、蛙吹は頷いて言葉を続けた。

 

「私達、雷狼寺ちゃんに……雷狼寺ちゃんの強さに甘えていたんじゃないかしら? 実戦訓練、USJ、体育祭、職場体験……そのどれもで雷狼寺ちゃんは活躍してたわ。だから私達、雷狼寺ちゃんなら何とかなる、いつか元に戻ってくれるって無意識に思ってたんだと思うの。――そんな心持ちならきっと雷狼寺ちゃんを説得なんて無理だと思うわ」 

 

 蛙吹の言葉に爆豪を除くA組メンバー達は顔を下へ向いてしまう。

 皆、蛙吹の言葉に心当たりがあったからだ。

 

 竜牙の強さは別格だ。雷狼竜の個性もそうだが、覚悟を決めた竜牙は強い。

 

 戦闘に関しては頭もキレるし、迷いのない動きをする時の竜牙が相手では良い勝負ができるのは轟ぐらいだろう。

 それは皆、分かっていたことだった。

 

 だからこそ蛙吹の言葉に反論する者は誰もいなかった。

 

 するとその言葉に大きく反応する者がいた。

――蛙吹自身だった。

 

 蛙吹の目から大粒の涙が溢れ出ていた。

 

「ごめんなさい……私、思ったことを口にしちゃうから。――私も雷狼寺ちゃんと話したいわ。もう一度、皆で……一緒に……私、体育祭で見せてくれた雷狼寺ちゃんのあの笑顔は嘘じゃないと思ってるわ。だからきっと、今の雷狼寺ちゃんは苦しんでると思うの。苦しんでる、けど助けを求められる相手がいない……だから自主退学って選択をしたと思うの」

 

「梅雨ちゃん……!」

 

 涙を流しながら話す蛙吹に麗日が手を握って慰める。

 そして、そんな彼女の言葉を聞いて決めた者がいた。

 

――緑谷だ。

 

「……なら、行こうよ雷狼寺くんの家に!――余計なお世話かもしれない。でもそれがヒーローの本質なんだ。雷狼竜くんが苦しんでるなら助けてあげたい」

 

「おう! そうだぜ! 皆で行こう! 雷狼寺のとこによ!」

 

 緑谷の言葉に続く様に切島が立ち上がり、皆にそう言うと全員が顔を上げた。

 

 その表情は暗いものじゃなく、全員が覚悟を決めた表情を浮かべていた。

 絶対に竜牙を説得してみせる。今のままじゃ納得できるものじゃない。

 

 例え相澤に反対されても皆は竜牙の家に行くことを決めた時だった。

 

「因みにだが、誰か雷狼寺の家を知っているやつは……?」

 

 障子の言葉に全員の動きが止まる。

 そういえば重要なこと、家の場所が分からないと言った事実に全員がどうしようかと思っていた時だった。

 

「あっ、オイラ知ってる」

 

「俺も!」

 

「……俺もだ」

 

 まさかの者達が手を上げたのだ。

 峰田、上鳴、轟の三人だった。

 

 そんな三人――特に峰田と上鳴が知っていることに耳郎は思わず驚愕してしまう。

 

「ハァッ!? なんでアンタ達が知ってんの? うちと障子とか知らないのに!」

 

「ハッ! オイラと雷狼寺は互いに性癖の九割を知っている仲だぜ! 互いにコレクションの見せあいやトレードで泊まりに行ったりしてるから分かるんだよ」

 

「俺もそんな感じ」

 

「……俺は、何故か誘われるから」

 

 峰田の堂々とした姿と優越感を持った表情に耳郎と障子は敗北感を覚え、少しイラっときた。

 そんな中で上鳴も手を上げ、轟は困惑気味に手を上げてるが、とりあえずはこれで問題は解決したので耳郎も今は折れた。

 

「とりあえず、雷狼寺の家の場所は分かったけどさ……明日とかうちら時間あんのかな?」

 

「相澤先生……許可してくれるか?」

 

 耳郎の言葉に瀬呂も不安そうにしていると全員が確かにと思っていた時だった。

 

「それは私に任せなさい!」

 

 突如、共同スペースに声が響き渡った。

 そして入って来た人物は、ヒールの様な足音を立てながら入ってくると皆の前に姿を現した。

 

「ミッドナイト先生!?」

 

 全員が声をあげた人物――それは18禁ヒーローミッドナイトだった。

 いつものコスチュームを身に纏い、堂々と入ってくると鞭を鳴らして全員に聞こえる様に声を発した。

 

「イレイザーヘッドに関しては私に任せなさい! 明日、私が同行してあげるわ! これなら文句はない筈よ!」

 

「本当ですか!」

 

 耳郎の言葉にミッドナイトは満面の笑みで頷いた。

 

「――正直なところ、職員の間でも雷狼寺くんの自主退学を止めるべきだという意見が出ているのよ。実際、彼の力は今後のヒーロー社会に必要なものよ? 私個人としても雷狼寺くんには退学してほしくないから任せなさい!」

 

「おぉ! これは頼りになるぜ!」

 

「ミッドナイト先生がいればムッツリの雷狼寺なら絶対に説得できるって!」

 

「……俺も姉ちゃん呼んだ方が良いか?」

 

 切島と上鳴が嬉しそうに声を出し、轟もそんなことを言う。

 そして他のメンバー達も心強いといった表情を浮かべていると、ミッドナイトは再び鞭を鳴らした

 

「じゃあ! 今日は解散して寝なさい! もう消灯時間よ! 後は明日に備えて終わり!」

 

――ハーイ!

 

 ミッドナイトの言葉に眠くてゾンビの様に部屋に戻って行くメンバー達。

 これでA組の選択は決まった。雷狼寺を説得――そして連れ戻す。  

 

 そして緑谷達がいなくなった後、その場に残されたミッドナイトは柱の陰にいた相澤に声をかけた。

 

「これで良いのよねイレイザー?」

 

「えぇ、ありがとうございますミッドナイトさん。本当なら明日から訓練させる気でしたが、このぐらいの茶番も必要でしょう」

 

「もう素直じゃないわねぇ? とりあえず雷狼寺くんのことは私達に任せなさい!」

 

「……お願いします」

 

 自分には無理だと分かっている相澤はそう言ってミッドナイトに頭を下げた。

 そして、竜牙の退学届を取り出し、それを見ながら静かに溜息を吐くのだった。

 

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