僕のヒーローアカデミア~ジンオウガの章~   作:四季の夢

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皆、オラに10割程元気を分けてくれ!!(`・ω・´)ゞ


第五十四話:竜牙の下へ

 

 翌日の九時頃、耳郎達A組はスーツ姿のミッドナイトと共に電車に乗って竜牙の家へと向かっていた。

 案内役は家を知っている峰田・上鳴・轟の三名。

 

 特に峰田は電車内でもずっと同じことを繰り返していた。

 

「ハッキリ言うけどよ、絶対に雷狼寺の家見てビックリするぜお前等。半端じゃないかんな?」

 

「あれは実際、すげぇもんな」

 

「確かにな」

 

「どんな家なんよ……?」

 

 三人が――特に峰田がニヤニヤしながら言って来るものだから、耳郎達も気になってしょうがない。

 だが三人は家の具体的なことは何故か言わなかった。

 

 だから途中からは寧ろウザかった。特に峰田がだ。

 竜牙の家を知っている優越感もそうだが、しかし家を知っているのは峰田達だ。

 

 ミッドナイトも住所は知っているが行った事はなく、やはり頼りになるのは残念ながら峰田であった。

 

 そんな感じで話しているA組だったが、同時に切島達は意外な人物の同行に気になっていた。

 

「けどよ、まさか爆豪が付いてくるなんてな」

 

「あぁ、ハッキリ言って意外過ぎるよな」

 

「……うっせー電車の中で騒ぐな」

 

 切島と上鳴の面白がる表情に爆豪は面倒そうに、けれど自覚しているのだろう。

 どこかバツが悪そうな表情をしていた。

 

 けれど皆も分かっていた。

 無駄なことには一切関与しない爆豪が竜牙の家に同行したということは、爆豪自身も竜牙の自主退学に思う所があるということに。

 

 だから切島達はついニヤニヤしてしまい、それを見て爆豪がキレる寸前、けれど電車内だからキレられない状況を楽しんでいた時だ。

 

『次は○○駅、○○駅です』

 

「あっ! おい、次で降りるぜ?」

 

「へぇ~雷狼寺の最寄り駅ってここなんだ」

 

「雄英からも結構近いんだな」

 

 峰田の言葉に耳郎と障子は段々と竜牙の家が近付いてることに新鮮さを感じ、少し緊張してきた。

 友達の家とはいえ憧れの竜牙の家でもある。

 

 しかも峰田達のリアクションのせいで尚更イメージが沸かず、ドキドキして仕方ない。

 

「まぁ、どんな家かは着いたら分かるでしょ? さぁ降りるわよ」

 

 そんなA組達へミッドナイトがそう言うと同時に電車は停まり、ミッドナイトが引率の様にA組を連れて駅を降りた。

 

 そして再び峰田達が先頭に立つと、緑谷が三人に聞いてみた。

 

「それで三人共、雷狼寺くんの家ってどっちなの?」

 

「どんな家か楽しみ!!」

 

「うんうん! 雷狼寺くんの家ってイメージが出ないもんね!」

 

「うぅ、私は少し緊張するわぁ……!」

 

 緑谷が三人に聞いてる後ろで芦戸と葉隠がテンションを上げ、麗日はドキドキし過ぎて胸を抑えていた。

 すると、峰田は真顔で街の方を指差した。

 

「何言ってんだ? もう見えてんだろ? アレだ……あのタワーマンションだ」

 

「えっ! あれ……!?」

 

 峰田の言葉に釣られて緑谷達が峰田の指差す方向を見ると、そこには街中に君臨する巨大なタワーマンションがそびえ立っていた。

 

「えっ、すご……!」

 

「流石は雷狼寺グループか」

 

 耳郎と障子も思わず声を出してしまう程に富裕層感が出ているタワーマンション。

 駅からも見えるそれの存在感に思わず立ち止まるA組達だったが、そんな彼女等を動かしたのは峰田だった。

 

「おい、早く行こうぜ。オイラ達だけ先に行くぞ?」

 

「あぁ待って! 行くから!」

 

 峰田の言葉に耳郎達も慌てて後を追いかけた。

 その最中、峰田は小さく呟くのだった。

 

「まぁ驚くのはまだ早いけどな」

 

「えっ、何それ?」

 

 耳郎の問いに峰田は再びニヤニヤし始めた。

 

「着いてからのお楽しみってこった」

 

「実際、スゲェからよ……!」

 

「……確かにあれはスゲェな」

 

「だから何がなのさ……!」

 

 峰田達の言葉に流石の耳郎も面倒くさいと思いながら歩いていき、やがてタワーマンションの玄関に辿り着いた。

 

 そしてタワーマンションを見上げると、圧巻な存在感に全員が息を呑んだ。

 平常心なのは八百万ぐらいで、ミッドナイトもこれは凄いと感心しながら峰田に問いかけた。

 

「凄いわねぇ……ところで峰田君は部屋番号分かるの?」

 

「あって無い様なもんだぜ。なにせこの()()()()()()()()()()が雷狼寺の家だかんな」

 

――ハァッ?

 

 何気ない峰田の言葉に全員から言葉が漏れた。

 今何と峰田は言った? タワーマンション全部? つまりタワーマンション全てが竜牙の家ということだ。

 

「そう言えば言ってた……雷狼寺くん、ご両親からお金と家は過剰なぐらい貰ってるって」

 

「限度があんだろうがぁ……!」

 

 この君臨するタワーマンション全てが竜牙の家という事実に、緑谷が思い出す様に言うと爆豪も嫌な汗を流しながら言葉を漏らした。

 

「と、とりあえず……雷狼寺君に会おう! その為に俺達は来たんだ!」

 

 飯田の言葉に全員が我に返った。

 そして自然と峰田達に視線を向けると、峰田がやれやれと言った表情を浮かべ、慣れた手付きで番号を入力してインターホンを鳴らすと、すぐに反応があった。

 

『はい?』

 

「あっ、どうも猫折さん。峰田です! 雷狼寺に会いに来たんですけど……」

 

『あら峰田くん!? 竜牙さんに会いに来てくれたのね!』

 

 峰田の言葉に猫折さんは嬉しそうな声を出し、歓迎するような雰囲気がインターホン越しでも伝わってきた。

 それを聞いて峰田は全員を見て頷くと、再度猫折さんに語り掛けた。

 

「実はオイラだけじゃなくて、A組全員で来たんです。あと引率としてミッドナイトも来てます」

 

「突然、失礼します。雄英で教師をしてるミッドナイトと申します。この度は突然の訪問で申し訳ございません」

 

『まぁ! クラスのお友達だけじゃなくミッドナイト先生まで!? すぐにお迎えにいきます!』

 

「あっ、そんな慌てず――」

 

 ミッドナイトはそう言おうとしたが猫折さんはインターホンを切ってしまい、すぐに玄関の扉が開いた。

 どんな巨漢でも入れそうな巨大な扉が開き、峰田達が慣れた様子で入ると、それを見てミッドナイトと耳郎達も中へと入った。

 

 そして辺りをキョロキョロしていると、エレベーターから急いで駆けてきたのは猫の面影がある猫折さんだった。

 

「まぁまぁ! 皆さん! よく来てくださいました!――こんなに友達に来てもらって竜牙さんは幸せ者ねぇ!」

 

 猫折さんは皆の姿を見て嬉しそうにしていると耳郎は皆を代表する様に峰田へ問いかけた。

 

「ちょっと峰田……この人って?」

 

「あぁ猫折さんだよ。雷狼寺の保護者で親代わりの人だぜ。そそる人妻だろ?」

 

――この人が雷狼寺の……。

 

 嬉しそうに尻尾を振り振りしている猫折さんに耳郎達は柔らかく優しい印象を受け、両親に捨てられた竜牙があの性格でいられたのは、この人の影響が強いのだと分かった。

 

 そんな嬉しそうに自分達を見ている猫折さんに皆、少し困惑していたが耳郎が代表して手を上げながら前に出た。

 

「あ、あのすみません! うち――いや私達、雷狼寺に会いに来たんです! その……自主退学の件で」

 

「……あぁ、やっぱり。そうですよね、突然のことでしたから。――こちらへどうぞ。竜牙さんのいる部屋へご案内します。実は少し前に皆さんと同じ理由で来てくださってる方々がいますので丁度良かったのかも知れませんね」

 

――うち達以外にも来てる人がいるんだ。

 

 猫折さんの言葉に耳郎達は顔を見合わせるが誰も訪問者の予想ができず、首を振るだけだった。

 

 そんな状況に困惑しながらも猫折さんはマンションを案内してくれて、そのままエレベーターに全員で乗ると暫く上へと上がって行き、やがてとあるフロアで止まった。

 

 そして猫折さんの案内で降りてフロアの中を進んで行くと、とある部屋の前で二人の女性が立っていた。

 その姿は緑谷達には見覚えのある二人であり、緑谷達はその二人の名を思わず叫んだ。

 

「リューキュウ! それに波動先輩も!?」

 

「あら、アナタ達……」

 

「あっ、ヤッホー皆!」

 

 緑谷達を見てリューキュウは意外そうな表情を浮かべ、ねじれちゃんは嬉しそうに手を振ってくれていた。

 また二人の服装はコスチュームではなく私服姿で、明らかにプライベートで訪れたのが分かる。

 

 だから耳郎達もすぐにリューキュウ達の目的が同じであることに気付くことが出来た。

 

「もしかしてお二人も雷狼寺君に会いに……?」

 

「えぇ、自主退学の話をイレイザーヘッドから聞いてね。予定を何とか空けて会いに来たの。彼の才能をこんな簡単に手放してはヒーロー社会の損失だし、何より彼の師として何としても説得したかった」

 

「けど……竜牙くん、出てきてくれないの」

 

 飯田の言葉に二人はそう言うと、重い雰囲気で閉ざしている竜牙がいるであろう部屋の方を見た。

 その表情は心配そうにしており、二人がどんな想いで竜牙を訪れたのか耳郎達にも分かった。

 

 きっと二人も急いで来てくれたのだろう。竜牙を心配して。

 しかし二人の様子から察するに竜牙と直接は会えてないのが分かり、耳郎達もそんな雰囲気に呑まれて会う前から不安になってしまう。

 

「ちょっと待ってくださいね」

 

 そんな中で動いたのは猫折さんだった。

 猫折さんはインターホンを押すと、インターホンから声が聞こえてきた。

 

『……はい』

 

「雷狼寺……!」

 

 それは覇気は無かったが確かに竜牙の声だった。

 ようやく竜牙の声が聞けたことで耳郎とリューキュウ達は少し安心したが、本番はここからだった。

 

「竜牙さん。リューキュウさんと先輩の波動さんが来てくれてますよ? それにA組のお友達皆と竜牙さんが好きなミッドナイト先生も来てくださってます。どうか出てきてくれませんか?」

 

 猫折さんは優しく語り掛けて竜牙に促すが、少しの間があった後に竜牙からの返答があった。

 

『……帰ってもらってくれ』

 

 それは拒絶だった。

 少なくとも耳郎達にもそれはすぐに察することができ、少し表情が強張ったが、それで素直に帰るならば最初から来ていない。

 

「雷狼寺!」

 

 そして耳郎が猫折さんの横から声を出した。

 すると、また少し間が空いた後に竜牙の声が聞こえてきた。

 

『……耳郎か』

 

「そうだよ雷狼寺! うちだけじゃなく皆来たんだよ! 自主退学って何でさ! 合宿のことやオールマイトのことで気にしているならそれは違うじゃん! うち達は気にしてないし! オールマイトのことだって雷狼寺のせいじゃないって!」

 

「そうだぜ雷狼寺! オレ達は気にしてねぇし! 自主退学を取り消してまた頑張ろうぜ!」

 

「雷狼寺……まずは出てきてくれないか?」

 

『……切島に障子か』

 

 耳郎に続いて切島と障子も説得するが、竜牙の声は相変わらず覇気も無ければ心の変化があった様には感じなかった。

 

『……俺は皆を傷付けた。オールフォーワンと戦う為に力を求めて、ヒーローの夢を捨てた。だがその結果が獄狼竜の暴走を生んだんだ。――俺は皆と会う資格はない。皆とヒーローを目指す資格もない』

 

「そんなことないよ雷狼寺くん! やり直せる筈だよ!――君が傷付ているのは僕達だって分かるよ。雷狼寺くんの過去を知ってるし、それが今回の事と重なってるのだって分かる。オールフォーワンとのことだって雷狼寺くんを苦しめていたことも。でもだからって君が消えることはないじゃないか!」

 

『……緑谷か』

 

「そうだぞ雷狼寺君! 君が自主退学する必要はない! 俺達は仲間だ! だから自分達が雷狼寺君を支えてみせる!」

 

「そうですわ! それに雷狼寺さんは私個人としても越えるべき壁です! なのにこんな事でいなくなってしまわれたら納得できませんわ!」

 

「共に歩んでみせるぞ修羅の道を!」

 

「良いから出てこーい! また皆で楽しもうよ!」

 

「雷狼寺くん待ってるよー!」

 

 緑谷の言葉から、飯田の言葉を皮切りに八百万、常闇、芦戸、葉隠が次々と声を掛ける。

 そこから他のA組メンバーも声を掛け続け、必死に竜牙へ想いをぶつけた。

 

 畳み掛ける。まさにそんな連続の言葉。

 竜牙が出て行ること、そして自主退学を取り消すことを願って。

 

『……()()()()()

 

 しかし竜牙から帰ってきたのは予想外の言葉だった。

 声に感情の変化はあった。しかしそれは不安という感情であり、竜牙のその一言によって一瞬で場は静寂に包まれた。

 

『……怖いんだ。皆の傍にいるのが、皆と会うのが。俺は皆を傷付けた……! また同じことを起こすかもしれない! 今度は取り返しのつかないことになるかも知れない!――だから……俺は……皆に会えない……!』

 

 絞り出す様な竜牙の声に耳郎達は何も言えなかった。

 竜牙が今、何を思っているのか。それが少し知れたことは嬉しかったが、同時に解決していないことに複雑な心境だった。

 

 そんな中で耳郎は息を呑むと、一呼吸入れてから口を開いた。

 

「……うち達は雷狼寺を怖いと思ったことは一度もないよ? 入学試験やUSJでうち達を助けてくれたじゃん。そんなアンタを怖いなんて思う訳ないじゃんか!」

 

 耳郎は吐き出す様にそう言い放つが、竜牙からは何も返答はなかった。

 そんな現実に耳郎達は悔しそうに顔を下へ向けると、リューキュウが彼女の肩に手を置いた。

 

 まるで選手交代の様だと感じた耳郎は頷くと下がり、今度はリューキュウがインターホンの前に出た。

 

「雷狼寺君……最初に謝罪するわ。アナタを守られなくて、ごめんなさい。ヒーローを代表して、アナタの傍にいたヒーローとして……そしてアナタの師として謝罪するわ」

 

「私も気付いてあげられなくてごめんね竜牙くん……」

 

 リューキュウとねじれちゃんはそう謝罪すると、その場で頭を下げた。

 すると、インターホンから再び竜牙の声が聞こえてきた。

 

『……俺は、アナタに弟子と思われる資格はありません。俺はステインの言葉に納得してしまった。俺にとってのヒーローはオールフォーワンと対等に戦えるオールマイトだけだった。その他のヒーローは、オールフォーワンに勝てないと思っていたヒーロー達を全て贋作に見ていた。アナタの事もだリューキュウ……』

 

「それでもよ。それでも……ステインと戦わせてしまったこと、オールフォーワンと接触させてしまったこと。アナタの異変に何もしてあげられなかったこと、その全てにおいて私には非があるわ。一人のヒーローとして、アナタの師として」

 

 竜牙の言葉を聞いてもリューキュウは顔色一つ変えなかった。

 むしろ当然だと、そんな考えに至らせてしまったことへリューキュウは謝罪するが、竜牙からは返答はなかった。

 

 そうなるとリューキュウにもこれ以上は何かできる事はなく、悔しそうに目を閉じると心配そうに見ていたねじれちゃんと一緒に下がった時だ。

 

「どうやら私の出番のようね……!」

 

 ここでまさかのミッドナイト登場である。

 スーツ姿でビシッと決めている彼女はそう言ってインターホンの前に出ると、服を緩めてインターホンカメラに映る様に見せつけた。

 

「雷狼寺君……今、出てきてあげたら大人の階段を上らせてあ・げ・る・わ!」

 

――やり方が不純!!!

 

 まさかの色仕掛けに耳郎達は絶句した。ただ峰田だけは興奮していたが、少なくとも耳郎達は絶句していた。

 

 18禁ヒーローだからミッドナイトからすれば王道な手段なのだろうが、竜牙は学生で普通に保護者もいるのに色仕掛けはありなのかと、そう思って猫折さんの方を見た。

 

 すると猫折さんは顔を手で閉じて見ていない振りをしていた。

 

「わ、わ、私は何も見てません! これで竜牙さんが出てくるなら私は……!」

 

――いやそれは駄目だろう!?

 

 保護者の行動に全員がそう思ってしまう。

 しかし竜牙はミッドナイトの色仕掛けにも反応せず、ハァハァ言っているのは峰田だけだった。

 

 否、これで出てきたら出てきたらで耳郎達は怒りで竜牙をボコす可能性があった。

 だが結局、出るどころか反応もなく、ミッドナイトは残念そうに服の乱れを直していると興奮してた峰田が前に出た。

 

「雷狼寺出てこい!! 今なら耳郎が童貞卒業させてくれるぞ!!」

 

「ちょっ!!」

 

「葉隠がパンツ見せてくれるってよ!!」

 

「えっ!! 見せないよ!?」

 

「八百万が胸を揉ませるってよ! 芦戸がケツを揉ませるってよ!!」

 

「させませんわよ!?」

 

「誰も言ってない!!」

 

 峰田がああでもないこうでもないとマシンガントークで怒涛の攻撃に移ったが、それでも竜牙は出てきません。

 それどころか反応もないので手応えもなく、峰田は無念そうに膝を付いた。

 

「クソッ……! 駄目だどれも魅力や新鮮さに欠けたか……!」

 

「何だと! コノヤロー!!!」

 

 峰田の言葉に女子からは大ブーイングの大喝采が起こった。

 現実性や普段からパンチラ、ブラチラしている葉隠等では新鮮さがないと判断した峰田へ、女子達は袋叩きにするがそれでも竜牙は出てこなかった。

 

 そして収拾が付かなくなった時だった。

 ここで動いた人物がいた。――爆豪だ。

 

 爆豪は峰田達のバカ騒ぎを尻目に、ゆっくり歩いてインターホンの前に行くと小さく言った。

 

「オイ……!」

 

『……爆豪か?』

 

「あぁ……」

 

 竜牙の反応に爆豪はそれだけ言うと、少しだけ間を空けてから口を開いた。

 

「認めてねぇが仮にもテメェがオレ達の№1だろうが……だったらケジメぐらいつけろや!」

 

『……』

 

 爆豪の言葉に竜牙は返答しなかったが、爆豪はそれを言って満足したかの様にインターホンから離れて行った。

 

「お、おい爆豪……!」

 

 切島が声を掛けたが爆豪は無視してエレベーターへ一足先に戻ってしまう。

 そしてその姿を見届けると、今はもう何も出来ないと耳郎達は悟り、竜牙の一室から離れ始めた。

 

 そんな姿に猫折さんは申し訳なさそうに頭を下げるが、誰も彼女を責める者はいない。

 そのまま黙ってエレベーターへ戻っていた時だった。

 

 背後から竜牙の声が聞こえてきた。

 

『……誰も今の俺をヒーローとして求めていない』

 

 竜牙の声に全員の足が止まった。

 そして振り返ると緑谷が代表した様に小さく言った。

 

「僕達は君を求めてるよ……雷狼寺くん」

 

「……うちだって」

 

「……今日は戻ろう」

 

 緑谷の言葉に耳郎と障子も呟く様にそう言うと、それを最後に耳郎達はエレベーターへ乗り込むのだった。

 

▼▼

 

「あのこれを……もしかしたら竜牙さんが立ち直るヒントになればと」

 

「これは……?」

 

 帰ろうとしていた耳郎達に猫折さんが渡したのは一枚のメモだった。

 そこには、ここから少し離れた<○○幼稚園>と書かれた住所が記されていた。

 

 一体、何を思って猫折さんはそれを渡したのかは耳郎達には分からなかったが、意味深に頷く猫折さんの顔を見て無下にすることはしなかった。

 

 どの道、まだ時間はある。

 爆豪はつまらなそうにしていたが、意外と皆が行く気だと分かると舌打ちをしながら一緒に付いてきた。

 

 リューキュウとねじれちゃんも一緒だ。

 彼女達も竜牙の助けになるヒントになると聞くと着いて来てくれた。

 

「何なんだろ……なんで幼稚園?」

 

「分からない……しかし何か意味がある筈だ」

 

 歩きながら耳郎がそう呟くと、障子がそう返答した。

 きっと意味がある。今はそう信じるしかなかった。

 

 そして幼稚園近くまで来て見てみると、幼稚園の中庭は解放されていて外から見える様になっていた。

 そこで園児達が元気に遊んでいたが、これと言って何か竜牙の助けになる様なヒントがある様には見えない。

 

――無駄足だったのかも。

 

 誰もが脳裏にそう過った時だった。

 

「ヒーロー()()()()()さんじょう!」

 

「さんじょう!」

 

「――えっ?」

 

 それは確かに聞こえた。

――ジンオウガ。それは竜牙のヒーロー名だ。

 

 耳郎達全員がそれに気付き、視線を声のする方に向けるとそこには双子らしき二人の女の子がいた。

 沢山の園児達に囲まれ、そう大声で遊んでいるサイドテールをした双子の女の子。

 

 そんな女の子達を見て、耳郎はある事に気付いた。

 

「……なんかあの子達、雷狼寺に似てる気がするんだけど?」

 

「そう言えば確かに面影があるな」

 

 耳郎の言葉に障子達も集中して見ると、確かに双子の女の子の顔は竜牙の面影がどことなくあった。

 つまりは似ていた。まるで兄妹であるかの様に。

 

 そしてそれを見ていた轟が気付いた。

 

「なぁ? 緑谷、飯田……あの二人って病院で見た雷狼寺の……?」

 

「う、うん……間違いじゃなければ雷狼寺くんの妹さんだよ」

 

「あぁ、間違いない!」

 

――もしかして……?

 

 耳郎達はこれが竜牙の助けになるヒントなのかとそう思い、少しの間だが双子の女の子達を見ていた。

 すると彼女達はずっとジンオウガの名前を出してごっこ遊びをしていたり、他の子達にジンオウガがどれだけ凄いか等を話しているのが聞こえた。

 

「すごいんだよー! あおぉぉぉん!!って!」

 

「すごいんだよー! あおぉぉぉん!!って!」

 

 まるで憧れている様に。緑谷も他のメンバー達も、その姿に嘗ての自分と重なった。

 嘗て憧れていたヒーローを夢見てしていたごっこ遊び。それをしていた自分と。

 

 そしてそれを見ていた耳郎は不意に思いついた。

 

「……あっ! もしかして思いついたかも……雷狼寺を立ち直らせる方法」

 

「えっ!?」

 

 耳郎の言葉に全員が耳郎を見ると、耳郎は少し考える素振りをしてから皆に作戦を話すと、皆も頷きながら聞いていた。

 そして話し終えると全員が力強く頷いた。

 

「良いかもなそれ!」

 

「あぁ! シンプルで漢らしいぜ!」

 

 上鳴と切島がそう言うと皆も再度頷き、リューキュウとねじれちゃんも納得した様に頷いた。

 

「それなら早速、幼稚園に連絡するべきかな……多分、大丈夫だと思う」

 

「うんうん! やれそうだよねリューキュウ!」

 

 リューキュウとねじれちゃんもそう言うと早速リューキュウはどこかへ連絡し始め、ミッドナイトもスマホを取り出した。

 

「じゃあこっちは任せといて! オールマイトに頼んでみるわ!」

 

 そう言ってオールマイトに連絡するミッドナイト。

 その様子を見て耳郎達は再び頷いた。

 

 内容はシンプルだ。作戦と呼ぶには弱い程に。

 けれど今の竜牙にはこれが必要なのかもしれないと耳郎達は納得していた。

 

 あとは予定が決まるのと決行するだけだ。

 

「よし……やろうか!」

 

――応!

 

 耳郎の言葉にA組は心を一つにするのだった。

 それは友達の為の作戦だ。

 

 

 

 

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