どうして守護者がアルバイトなんてやってるのさ   作:メイショウミテイ

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あー、はい。

結果は分かりませんが取り敢えずAO入試終わったので、投稿再開していきます。お待たせしてしまって、本当に申し訳ない。

これからは1〜3日で1本投稿出来るように努力していきます。今後ともよろしくお願いします。



話は大きく変わります。

Roseliaのキーボード担当の白金燐子役を務めていた明坂聡美さんが、卒業したという事で。

明坂さん。
これまでお疲れ様でした。ゆっくりとお休みしてください。
また、別のところで貴女の声が聞けることを楽しみにしています。


――えー、という訳でどうぞ。


Help me!! EMIYAAAAAAA!

 平日の仕事は憂鬱で堪らないよ。

 

 

 家で暇にしているのが嫌だからわざわざ仕事に来ているのに、客がまるで来ないのだ。まぁ、平日だから仕方無いのだが。

 

 いつも贔屓にしてもらっている五バンドの彼女たちは、きっと学校にて勉学に励んでいることだろう。そして、現時刻は2時過ぎ。

 

 つまりは、いつもの利用客が来るまでに最低でもあと一時間はかかるという事になる。よってそれまでの時間は、『仕事場に来ているくせして暇な時間を持て余す』という状態になってしまう。

 

 

 掃除は既に終わっている。各種機材のメンテナンスもだ。いつも使っている手動ミルとか、キッチン周りの清掃も済んでいる。

 

「ハァ、暇だな……」

 

 つまりは、もうやる事が無いのである。

 

 話し相手もいないし、諦めて本でも読み進めてしまおう……。

 

 そう考えカウンター席を離れようとして、CiRCLEに2人の少女が入店してきた。だが、この時間には居るはずが無いので、少し探りを入れてみようか……。

 

「この時間はまだ学校じゃないのかね?」

「えっと……、今日は短縮授業なんです」

「なるほど、そうだったか。それで、他の3人はどうした」

「あはは……、香澄たちはこの前あったテストの成績が悪すぎて先生に怒られてます……」

「またそれか……」

 

 店に現れたのは牛込と山吹だったようだ。PoppinPartyは常識人3人と、頭のネジが外れたぶっ飛んだのが2人という、バランスの取れているバンドだ。

 

 その内のぶっ飛んだ方である戸山と花園の2人は説教中なんだと。あいつらが居ないだけでこのバンドは静かになってくれる。

 だが、常識人──このバンドの引率係──である市ヶ谷の姿が見えない。どういう訳か。

 

「市ヶ谷はどうした? あいつは頭が悪そうには思えないのだが……」

「香澄とおたえの説教が済み次第、有咲先生の補習授業があるんですよ」

「……、なるほど……。つまり今日来るのは2人だけか?」

「えっと、そうなりますね」

 

 アホ2人は今日来ないらしい。これは仕事が円滑に進みすぎてしまうかな。多少の問題くらい起こしてもらう方が、こちらとしては仕事が増えていいのだが。

 まぁ、あの2人が来てしまってはその程度では済みそうにないが。

 

「それで、今日は何の用だね」

「少し、頼みたい事がありまして……」

 

 ほう、あの他人に余り仕事を頼まない山吹の頼みか……。気になりもするが、訳の分からない爆弾を投下してきそうで分からないな。あの笑顔には……、なんていうのかな、闇が見え隠れしているような感じがしてならない。

 

「何だ、言ってみるといい」

 

 考えすぎも良くない。取り敢えず聞くだけ聞いてみればいいだろう。

 

「えっと、今週末って空いてますか?」

「今週は木曜と金曜以外は全て空いている」

「そうなんですか、良かった! それなら土曜日の9時30分に、やまぶきベーカリーに来てくれませんか?」

 

 ふむ、どうせ私は暇だ。家で何もせずに硯に向かって、なんてことないことを書き連ねていくよりかは、数十倍いいだろう。ただ……、

 

「了解した。それで、何をするつもりだ?」

「えっと……。それは来てからのお楽しみでお願いします!」

 

 あぁ、何か嫌な予感がする。だが、あの山吹が私に頼み込んでいるのだ。普段頼んでこないから、どう言った内容かは正直気になる。

 

「……、分かった。引き受けよう」

「何も言えずにごめんなさい。そして、ありがとうございます」

 

 結局、山吹の頼みを受ける事にした。まぁ、きっと変な事は頼まれないだろうさ。……多分。

 その後、山吹と牛込はさっさと出て行ってしまった。『今日はこれだけを伝えに来た』との事らしい。

 

 出来ることなら、もう少しくらい話し相手になって欲しかったのは、ここだけの話だ。なんせ暇だからな。

 

 

 

 

 時は過ぎ、土曜日。

 

 言われた通りの時間にやまぶきベーカリーを訪ねる。明かりが付いていないことから、営業はしていないようだった。

 

 来たはいいのだがこれからどうすればいいのか。店の扉を勝手に開けてしまっては、不法侵入で即豚箱行きは確定だろう。

 一応、今流行りのスマートフォンとやらは持っているが、私の電話帳の中には残念ながら『山吹沙綾』という名前は登録されておらず、連絡手段が無いのだ。

 

 大声を出せばもしかしたら気づくかもしれないが、反応の有り無しに関わらず私が目立つのは必至。出来ることならば商店街のど真ん中で声を張り上げて、近隣の方々に迷惑を掛けることは避けたい。

 

 さて、どうしたものか……。

 

「あ、エミヤさん。申し訳ないんですけど、あと少し待ってて貰えますか?」

 

 と、店の二階部分から山吹の声がする。

 

 女性の準備にいちいち時間が掛かるのは百も承知だ。それは、これまでの人生──遠い昔の、夢のようだった日々──で学んでいる。というか、魂に(物理的に)刻み込まれている感覚がする。

 

 何があったのかはよく覚えていないが、きっと今の生活のような楽しさがあったんだろうと思う。それは、私がこういう状況を疎ましく思っていない事からも分かる事だろうさ。

 

 

 程なくして、山吹が店のドアを開けて出てくる。

 

「すみません、出迎えが遅くなっちゃって……」

「いや、気にすることは無い。女性の準備に時間が掛かることはよく知っているからな」

 

 この発言に山吹は明らかに一歩後ずさった。若干目付きも鋭くなっているみたいだ。

 

「それ、どういう意味ですか?」

 

 どうやら彼女は、私が女遊びをしている男と勘違いしているのだろうか? 

 その誤解は早めに解いておかなければ、後々私の身に火の粉となって降り注ぐことになるだろう。

 

「誤解しないでほしいのだが、私は女性を取っかえ引っ変えするような男では無いからな」

「じゃあ、さっきの発言は何だったんですか?」

「所謂、言葉の綾って奴だよ。そういう関係になった事は無いが、女性の知り合いは多かったからな」

「ふーん……。それなら昔も今も、女の人の知り合いだらけじゃないですか」

「ちゃんと男だっているさ」

 

 多分。

 

「それじゃ、冗談はこれくらいにしておいて始めますか!」

「待て、始めるって何をだね?」

「それはもう、当然……」

 

 

 10分後、私は胸にやまぶきベーカリーとプリントされたエプロンを着た

 状態で、レジの人にジョブチェンジしていた。

 

 なんでも、今日は山吹夫妻は結婚記念日だったらしいのだが、いつもと変わらぬ調子で仕事を始めようとしたので無理矢理、楽しんでこいと家を追い出してしまったらしい。

 

 きっと将来、彼女はいいお嫁さんになれるよ……。

 

 だが、それだと店は回らなくなってしまう。だから、ピンチヒッターとして私が呼ばれたという話だ。ちなみに、山吹は中でパンを焼いているよ。パンの焼ける良い香りが漂ってきて、食欲がそそられる。

 

 と、雑な回想をしている間に第一お客様のご来店だな。

 

「こんにちはー、さーや」

「ああ。だが私は『さーや』では無いので気をつけてくれ」

「えぇー! さーやが男の人になっちゃった〜」

「そもそも、お前と私は初対面ではないだろう。青葉」

 

 第一来客者は、青葉モカ。何でも無限の胃袋を持つとされている彼女。実際に食べる量を見たことは無いから本当かどうかは知らんが、何個のパンで満足するのだろうか。

 

 そんな私の考えを知らない青葉は、トレーを持って自由気ままに店内を物色し、そのお眼鏡に叶ったパンを慣れた手つきで積み上げていく。

 

 そしてその結果……。ひい、ふう、みい、よ……。

 

 10個ってお前……、私の一日の食事と同じくらいのカロリーを摂取しているのではないか? 

 

「あれ、モカ? 来てたんだ」

 

 手にパンが沢山乗った番重を持って、山吹がやって来る。そのまま青葉のトレーの上に載っているパンを確認して、驚いたように言う。

 

「どうしたのモカ、いつもの半分くらいしか載っかってないけど……」

「もー、さーやー。いちいち言わなくてもいいのー」

「何、いつもはもっと食べているのか!?」

 

 驚きが止まらない。あんな小さく華奢な身体のどこに20個ものパンが収納されていくのだろうか。とても想像出来ないよ……。

 

「ほらほら、エミヤさん。止まってないでお会計お願いしまーす」

「あ、ああ……」

 

 急かされるままレジキャッシャーを打っていく。表示される購入金額、私はそれにまた驚かされることになるのだ。

 

「1430円だ……」

 

 一日の食費がこの値段ならまだ分かるのだが、これが一食分の金額なのだからな……。正直恐れを感じたよ。

 

「全部これでー」

 

 そう言ってモカが差し出してくる5枚のカード。大きく『300円券』と書いてある。

 

「た、確かに受け取ったよ……」

 

 お釣りの70円を手渡しながら、引き攣った顔を何とか元の表情に戻そうと努力する。

 

「それじゃあ、また来ますねー」

 

 嵐のような時間は終わりを告げた。正直言って、私の想像を遥かに超えすぎていた。あれは女性が食べるような量ではないのだ。そんな私の心を見透かしているのか、

 

「あれ、全部一人で食べるんですよ。ちょっと、何処にパンは入っていくんですかね……」

 

 あー、そうなんですかー。覚えておきまーす。

 

 

 

 

 そんな出来事があったものの、職務終了時間である4時を迎えた。本来はもっと遅くまで営業しているらしいのだが、人員不足と疲労の蓄積によって閉めることになった。

 

「今日は手伝ってもらって、本当にありがとうございました」

 

 4時すぎ。帰りの支度の途中、山吹はそう感謝の言葉を述べてきた。

 

「いや、こちらとしても楽しかった。礼を言うのはこちらの方でもあるさ」

「そんな! 手伝ってもらったのはこっちなんですから……」

「確かにそうだな、済まない。少し意地悪すぎたな」

「本当ですよ……! まったく……」

 

 楽しかったというのは嘘ではない。商店街周辺に住む様々な人との会話はそこそこ楽しかった。ここで働くのも割と悪くないかもと思う程に。

 

 だが、みんな個性が強すぎるんだよ……。もう少しくらい落ち着いて欲しいものだがね。

 

 なので去り際に、

 

「また人手が欲しければ何時でも頼んでくれ。私はライブハウスのバイトが無ければ基本暇だからな」

 

 そう言い残して、店から立ち去っていった。

 

 

 

 今日の夕日は、やけに焼け焦げているな……。心做しか、私の気分も良いものに変わっていく感じがしたよ。

 

 

 

 




さて、しばらく放っておいたから評価もなんもついとらん。

という訳で。

お気に入り登録してくれた方々、閲覧してくれた方々。
ありがとうございます!

そして、長い間続きを待っていてくれた方々。
私は帰ってきたァ!しっかり投稿していくから、もっと応援してくれよな!


以下、補足のような事
これからの投稿は以前設置しておいたお題箱の方からもアイデアを貰っていきます。ので、『誰だして欲しい!』とか、『こういう話作って!』とかいった意見をお待ちしております!

じゃんじゃんおいでー!

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