どうして守護者がアルバイトなんてやってるのさ 作:メイショウミテイ
オンラインゲーム。それは世界中のあらゆる者が行っているという、大規模なコンテンツである。
その中の一つであるNeoFantasyOnline──通称、NFO──は、その独特な世界観と多彩なジョブなどによって、日本でも世界でも人気を博しているMMORPGである。
世界観の説明は面倒だから省かせてもらうとして、このゲームのもう一つの……、いや他にもあるけど、売りとなっているのはジョブの多さだ。
当然他にもある訳だが何よりも目を引くのは、超高難度イベントの上位100名にのみ利用権が与えられる
ここには、防御以外の各種ステータスに上方修正が掛かる
さらにそこから、
レイドボス討伐には、これらの職業のプレイヤーが協力して共に戦っていくのだと。
そのゲームのトップランカーであるPN『RinRin』は、ゲーム内ロビーにて2人の仲間を待っていた。保有ジョブは魔術師の上級職であるキャスター、僧侶。
今日パーティを組む予定の二人のうち一人はリアルでも関わりがあるのだが、もう一人はネット上だけの関係だ。
白金自身はそれでも良かったのだが、もう一人の方は是非会ってみたいと言うに違いないだろう。結局、それが杞憂で済むことは無いのだが。
集合時間10分前に、一人のプレイヤーがログインしてくるのを確認した。
PN『Gorgon』はログインしてくるなり、
「すみません、少し遅れましたか?」
と、謝罪の言葉をチャットで送ってきていた。プレイヤーの礼儀の正しさが伺えるようだ。すぐさま返信の言葉をタイプしてゆく白金。
「いえ、全然間に合ってるので大丈夫ですよ♪」
「それはよかったです」
「それにしても、あこちゃん遅いですね……」
「そうですね。いつもこの時間にはいるはずですが……」
もう一人の仲間をチャットしながら待っている二人。Gorgonもこのゲームをやり込んでいて、RinRinと同じくトップランカーとしてプレイしている。RinRinや、もう一人よりも遅くに始めてはいるものの、今はそれに張り合えるだけの能力を持っている。
ちなみに、ジョブは騎乗兵の上級職、ライダー。槍兵、
「ごめーん! 二人とも待った〜?」
そこにもう一人のランカーが姿を現す。PN『聖堕天使あこ姫』という名前は、中の人がなんかカッコ良さを追求するあまり様々な言葉をめっちゃくちゃに詰め込んだ結果である。しかし、こんなアホ全開な名前でもトップランカーである。
保有ジョブは魔法剣士の上級職であるセイヴァー、及び
「今日はちょっと遅かったね、あこちゃん」
「何かあったのですか?」
「ううん。特には無かったんだけどね、ドラム叩いてて気付いたら時間が……」
「あこさんはどらむをやっているんですか?」
「うん、そうなんだ! ドラムってドーン! って音が出て、バーン! ってカッコイイから大好きなんだ!」
「なるほど……」
当然だが、今日の目的はそんな世間話をするためではない。レアリティの高い素材を乱獲するために集まったのだ。
「えっと、それじゃあ、早速行きましょうか」
パーティーのまとめ役であるRinRinが先導して、クエストに向かう。結果を言ってしまえば大成功だった。
狂戦士と復讐者という血の気しか感じられないジョブの二人を前に出し、大賢者が後ろからバフやら、回復やらを絶え間なく振りかけ続けることにより、敵モンスターのHPはゴリゴリ削れていく。
可哀想になるほど、容赦の無い編成だった。
そして、クエスト終わり。白金の予想どおり、あの話題がテーマになって会話が始まっていく。
「そうだ! 二人共、オフ会しよーよ!」
「私はいいですけど、住んでる地域とかは大丈夫ですか?」
「Gorgonさんは花咲川って所知ってますか?」
「あ、全然近かったです。行けますよ」
「よかったー! RinRinはどう?」
正直、行きたくは無かった。だが、あこを一人にはして置けなかったらしく、結局は了承していた。会場は最近出来た大型デパートのカフェという事になった。
そんな訳でオフ会当日。あこと燐子は、件のカフェの前にて待機していた。どんな人が来るのかワクワクしていたり、不安に押し潰されそうになっていたりと、思う事は様々であったのだが。
その二人に迫り来る影。その不審人物との面識は、当然だが無い。
「あら、あなた……?」
「……っ!? え……、な、何ですか……?」
「りんりん、知り合いじゃないの?」
燐子の前には、その身に青ベースの服に纏った一人の女性が立っていた。とても青紫色の長髪が美しい。いかにも、いい所のお嬢様なんです感が半端ない。道行く人が必ず振り返ってしまうような程の美貌の持ち主であるその彼女は、果たして一体何者なのか?
「あなた、いい顔をしているわ……。とても、私好みの……、いい顔よ……」
「え、えぇ……?」
どう解釈しても変態だった。もう一度言っておくが、燐子と不審人物の面識は一切無い。戸惑うのも無理はないだろう。
燐子があからさまに戸惑った顔をしていると、またしても知らない人物が乱入してくる。もう訳が分からないよ……。
「あなたは……、メディアですね。何故ここにいるかは問いませんが、何をしているのですか……?」
「げ……、メデューサ……。まさか貴方までここにいるなんて……」
おいてけぼりのあこと燐子。勝手に談話を始める目前の二人。
カフェの前には、異常な空間が形成されつつあった……。
どういう訳か、さっきの二人とカフェに入ってしまったあこと燐子。何とも話しかけにくい空気のなか、あこが勇気をだして口を開いた。
「えっと、お二人はどういった関係なんですか?」
割と回答に困る質問だった。真名がそもそも神話上のものだし、関わりと言ったら、『私達殺しあっていたんです』なんて言える訳が無い。二人は目を合わせると、話を合わせにかかる。
「私達は同郷の知り合いなんです」
「腐れ縁? ってやつかしらね」
決して間違いではない。年代は違えど、同じギリシア神話の人間だ。同郷と言っても差し支えは無いだろう。まぁ、現実の話では無いのだが。オマケに
その質問を皮切りとして、メディアも気になっていた事を聞き出していく。
「あなた達二人は、学校の知り合いかしら?」
「学校も学年も違うけど、一緒にバンドしたりゲームしてるんだ!」
「あこちゃん、ちょっと話しすぎじゃないかな……?」
「大丈夫だよりんりん! 悪い人には見えないよ?」
「あこ……。りんりん……。っ!」
何かに気づいたメドゥーサ。
「あなた達、『聖堕天使あこ姫』と『RinRin』?」
「はぁ? あなたいきなり何言って……」
「え? 何でそれを……、って!」
「もしかして、貴女が……、『Gorgon』さんですか?」
最初の予定とは大きく外れているものの、見事合流を果たしていたようだ。めでたしめでたし。
その後も、その話題で盛り上がったり、メディアと燐子が裁縫という共通の趣味を持っている事が分かったり、様々な話題に付いて話し込んでいたおかげで、いつの間にか時計は午後5時を過ぎていた。
「あら、もうこんな時間ね」
「そ、そうですね……」
「あこ、今日はすっごく楽しかった!」
「ええ、そうですね。私も有意義な時間を過ごせました」
「是非とも、また集まりたいものね。特に白金さんとは……ね」
「ど、どういう意味ですか……?」
「ちょっとメディアさん! あんまりりんりんを怖がらせないでくださいよー!」
談笑しながらカフェを出ると、既に夕陽は姿を消していて、街はいつもとはまた違った盛り上がりを見せていた。
また近い内に会う事を約束して、四人はそれぞれの帰路へと向かうのだった。