どうして守護者がアルバイトなんてやってるのさ 作:メイショウミテイ
少し纏め方が雑になりましたかね…?
その男を一言で言えば、『雅』だろう。
所々に趣のある所作、実に着物が良く似合ういい男。
結構酒は嗜む方。
そしてその背に帯びた長刀、『備前長船長光』通称、『物干し竿』
その名の通り通常の刀よりも明らかに長いと分かるその刀を、男は自分の手足のように扱う。
その流れるような剣さばきに見蕩れた者は、次の瞬間にはこの世からおさらばしてしまっているという。
そもそも実在していたのかは定かではないが、彼を語る上で最も大きなトピックはやはり……。
新免武蔵守藤原玄信、つまり宮本武蔵との船島──巌流島とも──での決闘だろう。
武蔵の二天一流、小次郎の巌流。
勝負の行方はと言えば、武蔵に軍配が上がった。
そして、小次郎はその地にて生涯を終えたのだった。
終えているのだが……。
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花咲川の商店街は、今日もいつも通り賑わっていた。
例のパン屋然り、例のコロッケ屋然り……。
その賑わいの中を一人、季節外れの着物を着た男が通り過ぎていく。
薄い青色の着物に身を包み、まるで何も考えていないようにぶらついて行くその男は、一つの店の前でその足を止めた。
「ふむ……、今日はこの店にでも入ってみようか……」
そう決めた男は店の中へと足を踏み入れる。
「あ、いらっしゃ……いませ!」
店に入ると給仕係の少女が出迎えてくれるが、見るからに戸惑っているような顔だった。それもそのはず、この喫茶店という場所に着物で入っているのだ。店の雰囲気から浮いてしまっているのは、この男も分かるだろう。
「えっと、お一人様ですか?」
「うむ、そうだ」
しかしこの少女は、それを分かっていながら仕事を果たそうとしている。何とも好感が持てるな。
「それでは、こちらの席へどうぞ!」
「忝ない」
「注文がお決まりの頃、お伺いしますね!」
そう言い残し、可憐な給仕係の少々は立ち去って行った。いかにも日本人のような服を着たその男は、手渡されたメニューを眺めながら店内を観察していた。
「(ふぅむ……、もう夕刻だと言うのに結構人が入っているな……。つまるところ、この店は余程居心地が良いらしいな。今日の私は勘がいい様だな)」
時刻は五時過ぎ、喫茶店であればそろそろ閉店の時間である。にも関わらず、店内の半分以上が客で埋め尽くされていた。学校終わりの学生や、仕事終わりの大人、主婦のような者達が店内で寛ぎの時間を過ごしていた。
それほどこの店は人気があって、愛されているという事が伝わってくるようだ。
今日の気分は……、そうだなぁ……。紅茶と宇治抹茶あんみつでも頂くとしようかな。さて、メニューは決まったが、これからどうすれば良いのだ? 先の少女は決まった頃伺うと言っていたが……。む、この仕掛け……、注文が決まったら押せ、と書いてあるな。
カチッ、ポーン……。
なんだこの腑抜けた音は、こんな物で本当に呼べているのか? 音で知らせるとするならば、この装置は不良品だな。
「お待たせしました! ご注文をお伺いしますね!」
ほう……。どういう仕掛けかは知らぬが、不良品では無かったようだな。店員はしっかりと呼べていたようだ。
が、先程の店員とは違う者だな……。茶髪の女ではなく、白髪の少女がやってきたでは無いか。いや、そもそも日本人では無いな……、何処の国の出かは知らぬが珍しいものだな。
「うむ、ではこの紅茶と宇治抹茶あんみつというのを頼む」
「紅茶はホットとアイスの二つがあります。どちらにしますか?」
「では温かい方で頼む」
「かしこまりました! 少々お待ちください!」
先程の少女と同じく快活な女だったな。それにしても、日本人では無いはずなのだが、やけに日本語が流暢であったな。相当な量、練習を重ねて来たのだろうな。
十分程経った頃、白髪の少女がトレーを持って此方に向かってくる。その上には、私が頼んだ紅茶とあんみつが載せられていた。
「お待たせしました! 紅茶と、あんみつですね!」
「ああ、感謝する」
机の上に置かれた二品。ふぅ、いい香りだ、食欲を唆られるようだ。
さて、早速頂くとしよ──。
なぜこの少女は目の前で固まっているのだ。私が何か無作法な事をしてしまったのだろうか?
「どうなされた、そこにずっと突っ立って居て」
「……えっ? あ、いえ! 少し気になった事があって、それを聞こうかを考えていました!」
「私に答えられる事であれば、それに答えよう」
「本当ですか!? そ、それじゃ一つだけ質問をさせて下さい!」
私のこの場に相応しくない格好の事でも聞いてくるのだろう、そう思っていたのたが……、質問の内容は予想の遥か上空へと突き抜けていった。
「あなたからは、ブシドーを感じますっ!」
「……、はぁ?」
い、いかん。素の声が出てしまった。いや仕方あるまい、まるで意味が分からない質問なのだからな。そもそも質問ですらなかったでは無いか。武士道、と言ったか?
「何を勘違いしているのかは知らぬが、私は
「いえ! あなたからはブシドーの何たるかを学べる気がしました!」
頭のおかしい女だ……。そもそもなぜ武士道がどうだとか言っているのだろうか。それすらも分からないな。
「いや、そもそもなぜ私から武士道を?」
「ブシの格好をしています!」
「何を……、確かにそうさな……」
「やはりあなたはブシだったんですね!」
こうなってしまっては武士である事を否定できなくなってしまったなぁ……。期待に満ちた眼差しを向けられてしまっているし……。期待を裏切る訳にもいかんしなぁ……。
いや、やはりいい機会だ。ここで私の剣技でもひとつ見せてやれば、満足して絡んでくる事も無くなるだろうさ。
「はぁ……、こうなってしまっては仕方あるまい。そなたに武芸の一端をお見せしよう。貴殿、名前はなんと?」
「良かったです! 若宮イヴと言います! よろしくお願いします!」
「イヴ殿か……。私の事は……、そうさな、小次郎とでも呼ぶがいい。この後のお時間を少々頂いても宜しいか?」
「バイトの時間はもう終わったので大丈夫です!」
「では、私の屋敷へと招待しよう。今日は不思議と良い気分だからな」
そんなやり取りを交わしつつ、私が先導して自宅──昔ながらの武家屋敷──へと向かっていった。その途中から、背後に一人の女性が着いてきているのを、イヴは分かっていなかっただろうが、小次郎は察知していた。
「さて、着いたぞ」
「わぁ〜! もの凄くブシドーです!」
それはよく分からぬが、あまり外に女性を待たせるものでは無いな。
「では中へ入ってくるといい。遠慮する事は無いぞ」
「お言葉に甘えて? 失礼します!」
と、ここで。
「少し、待って貰えるかしら……!」
疑問と怒気を含んだ声が小次郎に投げ掛けられる。
その声の主は金色に似た色の髪を靡かせ、顔を強ばらせてこちらを見つめて──いや、睨んで──いた。
「どうしたんですか、コジロウさん?」
「いやな、これまた可愛らしい少女が近付いてきたのでな。相手をしているのだ」
イヴにはそう茶化して答えるも、小次郎は内心焦っていた。目の前の女性は、私がいたいけな少女を自宅に招き入れる所を見てしまったのだ。その前にあったやり取りをすっ飛ばし、その結果だけを見てしまっている。つまり、私は誘拐だと疑われているのだろうな。さて、どう説明すれば良いのだろうか……。
「おや、チサトさん! どうしてここに?」
「イヴちゃん! その人から離れて!」
「どうしてですか? この人は私にブシドーを教えてくれると言うのですが……」
「っ! やはり騙されているようね……!」
事態は一瞬で悪化してしまったようだ。このままでは私はお巡りとやらに捕縛されて、人生を制限されてしまう未来しか無くなってしまうな。
「そうだ。私は武士の一族の末裔だからなぁ。今からその証拠を見せようとしていた所なのだが……?」
数瞬の思考の結果、私は武士になった。こうするしか、事態を収集する術を見つけることが出来なかったのである。
「そんな事を私が信じるとでも……?」
「証拠を見せると言ったのだ。知りたければそこで少し待っているがいいさ」
そう言って、私は屋敷の中へと様々な道具と愛刀を取りに戻った、もとい逃げ帰った。
私が戻ってくるまで彼女達が残っていてくれなければ、私のこれからの生活はお先真っ暗だ。
結果から言えば、二人共残っていてくれていた。私の生活の安定は保たれたようだ……。
私の実力を一目で分からせるには……、アレを放つ他あるまいな。
「では、よく見ていろ……」
そういえば、
「秘剣……」
生前に編み出してきた剣技の頂点。人の身でありながら、神の領域へと一歩踏み込んでしまった紛れも無い魔剣。元はと言えば、ふと思いついて燕をたたっ切ろうと努力していただけなのだがなぁ……。
一念鬼神に通ず、とはこの事だな。
「燕返しッ!!」
一瞬の内に小次郎と名乗った男の目の前から、一本の丸太が4つの端材へと切断されていた。信じられないわ……、彼は本物の武士だったって言うの?
「ふぅ……、さて、これで信じて頂けたかな?」
えー、終わりです。
次は金ピカ王でも書こうかなと思っております。
ホロウの話を知ってる方なら、ニヤリとするんじゃないでしょうか…。
いや、それはそれとして話は変わるのですが…。
マキブONがそろそろ終わるとのことで、新機体とか色々気にしてるわけですが…、何よりも私が気になっているのはですね。
百式の修正についてなんですよね…。耐久580で前出れるわけねぇだろオルァァァン!60増やせ馬鹿野郎!
あー、今回もこの駄文を読んでいただき誠にありがとうございました!
補足:評価者の発表はにつきましては、一つご意見を頂いたので廃止させて下さい。何卒よろしくお願いします。