どうして守護者がアルバイトなんてやってるのさ   作:メイショウミテイ

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今回の話は、全て美咲視点になります。




天国に一番近い場所

 特に何のアクシデントも無く学校生活を送り、バンド活動に勤しんできた私の癒しになる筈だった週末。

 

 基本的に他のみんなの予定がなかなか合わないので基本はお休み。はぐみはソフトボールの練習があったりなかったりだし、薫さんは演劇部、花音さんやこころにも当然予定があるわけだし。

 

 しかし、どうも今週は全員の予定が揃ってしまったため、ハロー、ハッピーワールド!全員揃っての会合が開かれる事になったのですが…。

 

 

 とても纏めきれる内容では無かったので、ダイジェストでお伝えしていきますね…。

 

 

 ──────────────

 「さぁ、今日も世界を笑顔にする為に、作戦会議よ!」

 

 「それで、今日の議題はなんだい、こころ?」

 

 「ライブがしたいのだけれど、そろそろ新曲が作りたいの!だから、それのアイデア探しね!」

 

 「あーはいはい、ライブの日はミッシェルに頼んで取ってきてもらうね。新曲はみんなも考えてね…」

 

 「じゃ、じゃあ水族館行かないかな?」

 

 「花音さん、それ先週行ったじゃないですか…」

 

 「それならソフトボールしよーよ!楽しいよー!」

 

 「はぐみ、それは昨日の放課後やったじゃん…。それで満足しなかったの…?」

 

 「うーん…、そうね…。あ!いい事を思いついたわ!」

 

 「それはどのような事なんだい?」

 

 「あー、もの凄く聞きたくない。どうせろくな事じゃあ…」

 

 「魚釣りに行きましょう!楽しいわよ!」

 

 「「「「魚釣り(だって?)(!?)(…!)」」」」

 

 

 はい、そういった感じでダイジェスト終わりです。

 

 大体分かりましたよね?

 

 

 ──────────────

 空は快晴。

 強い日差しは今の季節の感覚を麻痺させてくるようです。

 海風が頬に心地よく当たってきて、ウミネコもまるで気持ちが良さそうに空を飛び回っています。

 

 文句無しの、絶好のロケーション日和。

 私達のような訳の分からない集団だったり、恋人達が訪れても雰囲気が良さそうな場所であるはずの港は…。

 

 

 知り合いに限りなく良く似た褐色の肌をした『赤い』男と、こちらも知り合いに限りなく良く似ているが、どういう訳かダウナーな雰囲気が漂うアロハシャツの『青い』男によって、ふわふわな空気が一瞬で掻き消されてしまうほどの険悪な空気が生み出されてしまっていた。

 

 「なんだこの港は…。面白いように魚が釣れるなぁ!はっはっはっ!ところで後ろの方に居る青い男よ、今日それで何フィッシュ目だ?」

 「はぁ…、うるせぇなぁ…!騒ぎてぇなら他所でやれ、他所で!」

 「まぁ、その旧時代的な竿では高が知れているのだが――おおっと済まないねぇ!18匹目フィィィッシュ!!」

 「チィッ!黙って魚を釣れねぇのか阿呆が!」

 

 

 「え、なにこれ。どういう状況なの?」

 

 ていうか、エミヤさんとランサーさんだよねアレ、何やってんの…ってそりゃ魚釣りだよね…。なんだかランサーさんが凄く疲れてる様に見えるのは私だけかな?

 

 「二人とも楽しそうね!」

 

 いや、どこが?ランサーさん凄くエミヤさんの事煙たがってるじゃん。どうしたらあれが仲良さそうなやり取りに見えるの?いや、見えないよ…。

 

 「なんと…!先客がいたとはねぇ」

 「どうしよっか、こころん?」

 「そんな事決まっているわ!私達も負けていられないわよっ!」

 「えぇ…?この険悪な空気の中で…?」

 「そ、そんなぁ…。で、でも釣りは楽しそうだしなぁ…」

 

 と、こころに引っ張られて私以外の3人はさっさと進んで行ってしまった。そんな中私は、近くの自販機で缶コーヒーを購入。どうしてかって?

 それは、もちろん…

 

 「ランサーさん、差し入れです。どうぞ」

 「ん、おお、ありがてぇ!サンキュー、美咲ちゃん!」

 「いえ、この辺りで釣りをさせて貰うので、場所代みたいなものですよ」

 

 …ランサーさんへの差し入れです。何だか今日は苦労してそうだったので、少し親近感が湧いてきたって言うのが、本当の理由。場所代もあるけど建前に近い理由だ。

 

 「まったくよ…、後ろの赤い男も差し入れくらい寄越せっての!」

 「何か言ったかね、青いの」

 「いいえ、何でもございませんとも」

 「あ、あはは…」

 

 こんなに仲悪かったけかな?というかエミヤさん、キャラ変わってない?大丈夫かな…。

 

 「それで、どうですか?釣れてますか?」

 「サバばっかり釣れて困ってるな。あー、でもどういう訳か知らねぇが、さっきヒラメが釣れたんだよな…」

 「え、ヒラメが…?」

 

 こんな近海で釣れるものだったっけ、ヒラメって。いやそもそも、こんな大量のサバが釣れてる時点で、この港はまともじゃないということがよく分かります。

 

 ランサーさんの傍らに置いてあったポリバケツの中を覗いてみれば、確かにヒラメの姿を確認できた。ホ、ホントに何で?

 

 「そういえば、ランサーさんは何時からここで?」

 「んー、そうだな…。朝からだな、何時かは覚えてねぇな。あぁだが、お天道様がようやく顔出した位からだったな」

 「凄い朝からじゃないですか!今の今までずっと竿握りっぱなしだったんですか!?」

 「そうだな、まぁでもいいんだよ。いつ当たりが来るか分からないこの緊張感だったりとか、竿と糸で海の様子を見るのも悪くは無いんだ。やってみると結構楽しいもんだぜ」

 

 集中力が半端ないなぁ…。というか、腕疲れませんかそれ…?いや、それよりもご飯はどうしてるんだろう。それも聞いてみたかったのだが、ふと一つの思考が頭を過ぎった。

 

 ――そういえば、ライブの日程早めに決めておかなきゃ…

 

 

 基本的にはこころの思い付きでライブは決まるので、その提案が出た時点で直ぐに予定を作るのは私の仕事です。というか、私しかできないと思います。

 

 もし忘れてしまっていて、ライブの日程が取れなかった場合の事を考えたくはないので、早めに行動する。それが私のルーティンみたいな物になりつつあります。

 

 なので、ランサーさんに断りを入れて話を打ち切ってから、こころ達にもその旨を伝える。無論、予定を取ってくるのはミッシェル――という設定――である。

 

 ──────────────

 無事に予定を取れたあたしは少し寄り道をして行った。

 

 その目的地とは、やまぶきベーカリー。この商店街でも一、二を争うほどの繁盛店である。そこに寄った理由はと言えば…。

 

 「あれ奥沢さんだ、珍しいね」

 「こんにちは山吹さん、今日は差し入れを買いに来たんだよね。まぁ、自分達の分もあるけどね」

 「なるほどね〜。だったらこの詰め合わせとかどうかな?何人に差し入れするのか分からないけど」

 

 ランサーさんへの差し入れ、それに加えてこころ達の軽食も買っていこうと考えたのだ。

 

 詰め合わせにはパンが5個ランダムで詰められている物だった。こころ達とあたしの分で二つ、ランサーさんには丸々一つを、と考えている。あの人見かけ通りよく食べそうだしなぁー…。

 

 「じゃあそれを3つ下さい」

 「かしこまりました!じゃ、お勘定するね〜」

 

 詰め合わせを3つ取った山吹さんは、それをレジのキャッシャーに持って行ってぱぱっと金額を出してくれた。

 

 ちょうどの金額を払って、レシートとパンを受け取って店を出る。

 

 ぴったり払えた事で、何だか少しいい事が起こりそうな気がしていたあたしは、その気分のまま港へと戻って行った。

 

 ──────────────

 空は快晴。

 強い日差しは今の季節の感覚を麻痺させてくるようです。

 海風が頬に心地よく当たってきて、ウミネコもまるで気持ちが良さそうに空を飛び回っています。

 

 絶好のロケーション日和。

 あたしと違って努力熱心なスポーツマンや、年配の方々への清涼剤になるはずの港はしかし――。

 

 

 「ふはははは!!見ろ雑種共!我はマグロとやらを釣り上げたぞ!」

 「な…、なんだと…!バカな、この最新式のリールでも引き上げられないというのに…!」

 「凄いわー!ギル君あなた最高よ!!」

 「今更気づいても遅いわ!だが、そこな贋作者(フェイカー)よりかはマシだな。この我が財力も実力も兼ね備えた全能者だと気づいたのだからな!ふはははははっ!!」

 「チィッ!負けていられるものか…。贋作が真作に勝てない道理は無い。見せてみろ、カラドボルグ!(釣竿+リールの名前)」

 「さぁ、私達もギル君に負けていられないわよ!マグロでも何でも釣り上げて見せましょう!」

 「「「おー!!」」」

 

 一般人の侵入を受け付けない、決戦のバトルフィールドを形成してしまっていた。

 

 「あたしは…、帰った方が良いのかな…?」

 「一般人のつもりなら、そのまま通り過ぎるのが正解だったな。ここに踏み入れちまった以上、収拾を付けなきゃならねぇ義務を負ったぞ」

 「はぁ…、ですよね…。あ、とりあえずこれ差し入れです」

 「何から何まで悪いな。お、これは沙綾ちゃんとこのパンじゃねぇか!」

 「あ、知ってたんですね」

 「あそこに居る赤いのから勧められてな。試しに食ってみたらこれがうめぇんだよなぁ…。それからは気が向いた時に食いに行ってるのさ」

 「へー、なんか意外でした…」

 

 詰め合わせを手渡したところ、遠慮なく包を破って中に入っていたパン無造作に一つ掴んで、そのまま口へと放り込む。そして、

 

 「んー、やっぱうめぇなぁ、こりゃあ!」

 

 そう感想を呟いていた。そんなランサーさんを置いて、こころ達の方にもパンを私に行ったあたしは、そういえば、と気づく。

 

 「あの隣の人…、誰?」

 「我のことか?我の事はギル君とでも呼ぶがいい!今日の我はすこぶる機嫌が良いのでな!ふはははは!」

 

 あー、この人も人の話聞かなそうだなぁ…。なんか、見れば分かる。こころと同じタイプの人間だよー…。

 

 「あーはい分かりました。それで、そのギル君が何故ここに?」

 「身の程を弁えろ…、といつもは言っていただろうが、なにせ今日の我は気分が良い!多少の無礼は許そうでは無いか。王であるこの我の行動に理由など要らぬのだ、しかと覚えておけよ!ふはは!」

 「あーありがとうございます王様」

 

 もうやだ…。花音さん助けてぇ…。

 

 

 あ、花音さんがマグロ釣り上げてる…

 

 

 

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