どうして守護者がアルバイトなんてやってるのさ   作:メイショウミテイ

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時間…、かかったね…。

割とネタ切れが近いんだよなぁ。



あ、そんなわけで!どぞ。


休日の過ごし方(蘭剣)

 我が家には居候がいる。

 

 名前はセイバーさん。イギリス出身で単身日本に渡ってきたという。日本のご飯がとても大好きらしく、日本にきた理由もそれなんだって。

 

 でも、持って来たお金を全部ご飯に使ってしまって、ご飯を食べる事はおろか、ホテル代とか諸々にかけるお金を失ってしまった。

 

 そして、あたしの家の近くの公園に倒れていたってわけ。「お腹が空きました……」 なんて呻き声をあげていたっけ。

 

 放っておけなかったあたしは家に連れて帰って来たんだけど、そこで明かされた衝撃の真実。

 

「家出同然で日本に来てしまったので、故郷には帰れず、この国に頼れる人もいないんです……」

 

 国境を超えた家出少女でした。まぁ、そういう訳で家でしばらく面倒を見ることになったわけ。

 

 名前はセイバー。年齢は18歳、出身はイギリス、好きな事は食べる事。

 仕事は無職。

 

 イギリスから来たばかりで仕方ないのは分かるが、エミヤさんも呆れていたっけ。お金の使い方が無頓着すぎるって。

 まぁでも、家出したくなる気持ちが分からないわけじゃないから、あんまり否定ばっかりっていうわけにもいかないんだけどね。

 

 その後、「暫くは迷惑を掛けてしまうが、よろしく頼みます」っていうエミヤさんのお願いに、あたし達はしっかりと面倒を見ることを約束した。

 

 

 状況確認終わり、ここからが本編だよ。

 

 ──────────────

「蘭さん、私、ショッピングモールという所に行きたいのですが!」

 

 彼女が家にやって来てから早2週間が過ぎていて、当初持っていた品格のありそうな雰囲気はなりを潜めて、アホっぽさを全開に出している。

 

 そんなセイバーさんは、また何処かに出掛けたいとお願いをしてきた。今日はショッピングモールに行きたいとの事で、手帳で予定を確認しようとする。

 

「え、今日いきなり? ……少し待ってもらえる?」

「ええ、分かりました」

 

 一応断りを入れてから手帳を見てみると、今日は丸一日フリーだという事がわかった。

 

 どうせ家に居てもギターを触るか、作詞活動をするだけのいつもと変わらない一日を過ごすだけなので、連れて行ってあげても良いかな……。どうせなら、モール内の楽器屋に寄って見るのもいいかも。

 

「うん、今日は予定無いから後で行こうか?」

「分かりました。いつもありがとうございます、蘭さん」

「ううん、いいよ別に。あたしも寄りたい所あったし」

 

 よく考えたら、あたしがあの4人以外と出かけるのなんて結構珍しい事じゃないかな。

 

 まぁ、たまにはそういうのも良いと思うけど、ね。

 

 ──────────────

 そんな訳でセイバーさんと一緒に、最近近くに出来たショッピングモールに来たんだけど……。

 

「おぉ〜……、とても大きいのですね……」

「そりゃあね、この街で一番大きい筈だしね」

「なんと……、一層楽しみになってきました!」

 

 本当の子供みたいにはしゃいでいるセイバーさん。少し前の余所余所しかった感じが嘘みたいじゃん。ま、ずっと猫かぶったままでいるよりかは、断然良いんだけど。

 

 ……誰かとこういう所に行ったことが無かったからなのかな……? 向こうでは余り外出は出来なかったって言ってたっけ。

 

「それで、最初は何処で食事を摂るのですか?」

「……いや、朝ご飯食べたじゃん……。5回お代わりしてたよね?」

 

 父さん軽く引いてたし。大丈夫だよ父さん、私も恐怖を感じてるから。女の人が食べる量じゃないって母さんも驚いてたし。でも、美味しそうに食べてくれるから頑張っちゃう、とも言ってたね。

 

「最初に行かなきゃいけない所があるの。そこ、行くよ」

「分かりました」

 

 

 これは私の意思ではなく父さんから頼まれた事で、なるべく早く済ませなければならない問題。それも、父さんが直接解決するというのは相当なメンタルが必要な仕事だった。

 

 

「ここは、衣服屋ですか?」

「そう。セイバーさんの服を買ってきてって、父さんから頼まれたから。あたしも新しい服買おうと思ってたし、良い機会だったよ」

「そんな……、居候にそこまでして貰う訳には……!」

「でもセイバーさんが持って来たスーツケースの中、今着てるやつの他に上下合わせて1セットしか無かったじゃん……。流石にあたしも心配するレベルだよ……」

「うっ……、そ、それは、急いでいたもので……」

「だから、今日は案内もあるけどそれも兼ねて来てるの」

「……な、なるほど」

 

 正直あたしもファッションとかには疎いほうだと思う。本当ならこういうのは巴だったり、ひまりだったりに頼むのが手っ取り早いんだけど、その二人はどっちも都合が悪いらしくて……。

 

 でも、何となくセイバーさんには青とか白とかの色が似合いそうな感じだね。ベージュみたいなのもいいかもしれない。やっぱり髪の毛が金色だからかな……。

 

 しかし、見るからにセイバーさんのテンションが下がっているのが分かる。セイバーさんも服とかに興味無さそうだし、最初からご飯食べる気で居たんだから、こうなるのは当然といえば当然だよね。

 

「……買い物終わったら、ご飯食べよ。ここに入ってるお店に外れはないらしいから」

 

 ソースはモカ。オープン初日に全ての飲食店の味見をしてきたらしく、「あそこのモールの食べ物、み〜んな美味しかったよ〜」ってチャットで送られてきていたから。

 

 まぁ、なんて言うか、流石モカって感じだよね……。

 

「っ!? それは本当ですか! それなら直ぐに始めましょう!」

「あっ! ちょ、ちょっと! ……はぁ、ほんと切り替え早いんだから……」

 

 

 

 お目当ての品を見つける事が出来たあたしはそこそこハッピー、やっとこれから美味しい食事にありつける、とセイバーさんもハッピー。

 そんなセイバーさんに何が食べたいのかを尋ねてみたところ、「私、ラーメンという物が食べてみたいです!」って意見を出してくれた。

 

 確かモカは……、ラーメン屋も二つ入ってるって言っていたっけ。どっちもどういう物かは分かってないけど、まぁセイバーさんに選ばせてあげればいっか。

 

 それにもし無くっても、なんか別の物でも満足してくれそうだし……。

 

 

「蘭さん、ラーメン屋は一つしか無いようですね……」

「もう一つは定休日だったんだね」

「そうみたいですね……。では、営業している方に入りましょう!」

「……、はぁ、ほんと食べ物の事になると行動が早いよね……」

 

 店の中には16席の内の半分以上が埋まっていた。注文した物を待っている人や、食べ進めている途中の人、店員と話している人など様々。

 食券を買うように指示されたので、言われた通りに購入。

 

 ……モカが言ってたけど、ここのラーメンは並盛でも相当な量があるらしい。だからあたしは小ラーメンというのを購入。セイバーさんは……。え、大ラーメン? マジで……? 

 

 空いているカウンター席に座ったあたし達は、食券を渡して料理を待つ、はずだったのだが……。

 

「麺が茹で上がったんで、トッピングのお伺いを致しますが……?」

「あ、あぁ、えっと……だいjy」

「メンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシです!」

「「え?」」

 

 この人なんて言ったの? メンカタ……、何? 

 

「いいのかい嬢ちゃん、それで……?」

「この店ではこう唱えるのがルールなのでしょう? ではそれでお願いします!」

「え、あっ……な、じ、じゃああたしも同じので!」

「え、本当に良いんだね……?」

「はい、お願いします!」

 

 なんか……、店員さんの目がヤバいんだけど。というか、店内の全ての客の視線が集まっている。バカを見る目というか、憐れむような目というかそんな感じの目で見つめてきている。小さな声で「あんな小柄な女の子二人が……」「おいおいマジかよ……」なんていう声が聞こえてくる。

 

 やがて、決意したように「じゃあ、そのように致します……」と、絶望に満ちた表情で調理を再開し始めた。

 

 その約1分後。

 あたし達の目の前にラーメン野菜の塊が姿を現した。え、ラーメンは? セイバーさんの物はあたしの奴の2〜3倍はあるだろう。これ、ホントに食べられるのかな、あたし。

 

「ほほう、なるほど。これがラーメンというものですか……」

「いいや……! そいつは『次郎』っていう食い物だ。決してラーメンなんかじゃない」

「えぇ!? ラーメンでは無いのですか?」

 

 セイバーさんはなんか隣の常連客っぽい人に話しかけられている。あたしもこんな物をラーメンとは、とてもじゃないが呼びたくは無い。何故なら、あたしが知っているそれの姿とは大きくかけ離れ過ぎているのだから……。

 

「時間が過ぎれば過ぎるほど、食うのが辛くなるぞ。さっさと食っちまいな!」

「分かりました! 遠慮なく頂きます!」

「……あっ、ぁぁ、い、いただきます……」

 

 常連客に進められるままに食事を始めるあたしとセイバーさん。あっ、大量に積み上げられた野菜の下に麺が……、というかすっごく臭い! 何コレっ? ニンニク? 

 

 どう食べようか苦しんでいると、あたしの横にまた別の常連客がやって来て、

 

「少し器貸してくれるかな? 食べやすくしたげるから」

「え、あっ、お願いします……」

 

 そう言って、慣れた手つきで野菜とその下の麺の位置を文字通り『ひっくり返した』

 

「はいどうぞ。これは『天地返し』って言うんだ。覚えておきな」

「あっありがとうございます……」

 

 そんな事があり、何はともあれ麺が表に上がってきた。これでやっと食べられる。セイバーさんにも教えてあげようとして、隣を見た時……。

 

 

 あれだけ山盛りに積み上げられていた筈の野菜は姿を消し、これまたただでさえ多かった筈の麺も大半がセイバーさんの胃の中へと吸い込まれていたのだ。

 

「……はぁ?」

 

 こんな反応しかできないあたしを許して……

 

 

 その後、何とか食べきったあたしはセイバーさんを連れてさっさとショッピングモールを後にしていた。後に聞いた話なんだけど、小ラーメンも女の子が食べるにしては異常な量だったらしい。いやまぁ、店内の雰囲気的に何となく分かってたけどさ。

 

 

 

 それじゃあセイバーさんはどう説明すればいいの……? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




特になし。

今回も読んでくれてありがとナス!

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