どうして守護者がアルバイトなんてやってるのさ   作:メイショウミテイ

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前置きは無し。遅れてスマン!


合宿編〜カオスの舞踏曲〜
CiRCLE会談〜合宿編プロローグ1〜


 私が休日を悉く嫌っているという事は、周知の事実に成りつつある。基本的に平日は毎日出勤し、休日も結構な確率で出勤していれば、誰でも分かるようなことだ。

 

 だが、それにも懲りずに『もっと休みを取ってほしい』という月島さんの頼みや、代表的な例としては白鷺や今井に『買い物に付き合って欲しいから、この日空けておいてもらえる?』というような誘いがやってくるので、当初の予定よりも休みの日は多く取る事になっているのだが……。

 

 というよりか、実際のところは『暇な時間』があるというのが嫌いなだけだ。体の休息という目的なら別なのだが、そもそも私の体は元々サーヴァントだ。こうなってからは余り疲れを感じたりする事は無くなってしまっている。

 

 そういった理由から、私はバイトを詰めまくっているのだ。そう、それは勿論、今日も例外では無かった。

 

 

 だが、今日のバイトは少し違うらしい。

 

 月島さんからは、「スタジオ1番で会議の予定が入ってるから、長机5個と、椅子を25個セットしてもらっていいかな?」と指示が入っている。

 

 そうか、そういう使い方もできるのか……。確かにスタジオは場所によるが広い所も多く、防音なので会議の内容や大きな声が外に漏れることは無い。うむ、実にもってこいな場所じゃないか。

 

 そんなわけで長机を五つ、そしてそれぞれの前にパイプ椅子を五つ並べていく。ちょうどセットし終わった時に月島さんが再び現れる。彼女の手には、二脚の豪華そうな椅子があった。それを放射状に並べてある長机を全て眺められるところに設置させた。

 

「それは来賓の席ですか?」

「あー、えっと……、一つは私のなんだけどね……! あはは……」

「それは……、失礼しました」

「あー、そうそう! 来賓以外の全員が揃ってからでいいから、人数分の飲み物を用意してもらえるかな?」

「了解しました。ちなみに月島さんは何にしましょうか?」

「んー、そうだなー。じゃあ、アイスティーをお願い出来るかな」

「畏まりました。時間と人数を見て用意させてもらいます。では、また後で来ます」

「分かったよー、ありがとー!」

 

 その言葉を背に会議用にセッティングされたスタジオを後にする。今の時間は正午に差し掛かる頃だった。件の会議まではあと30分といったところ。

 

 ドリンクの準備でもしておこうと、私の根城であるカウンターに向かう途中。

 

「あら、エミヤさん」

「げ、白鷺……」

 

 あんまり得意じゃない相手に出会った。どういう訳か、こいつはあの時以来、私に対する態度が大分軟化したように思える。以前のような仮面に形作られた笑顔ではなく、多少ぎこちなくはあるものの自然な笑顔に変わっているのだ。

 ──一つ彼女を擁護しておくが、彼女の仮面の笑顔はとてもハイレベルであり、常人がそれを嘘の笑顔と見抜く事は先ず出来ないだろう。

 

「……人に会ってその態度はおかしいとは思わないかしら」

「いや、すまない、ここに居るとは思わなかったのでな。何故ここに?」

「会議の為です……って、あなたがそれを知らなかったの?」

「何だと……、私は何も聞いてはいないのだが」

「今日はガールズバンドが5つ集まって会議する予定になっていたのだけれど……、その顔を見るに本当に知らなかったみたいですね」

 

 全くもってその通り、私は月島さんから何も聞いてはいない。今日に至るまでにこの事は何一つ、だ。

 

 まぁ、あの人は割と天然なところがあるから、伝えたつもりでいたというのは十分に予想できる。

 

「五バンドというと、『あいつら』しか居ないな……」

「ええ、その『あいつら』で間違いないと思いますよ」

 

 それならば、と。

 

「白鷺、君は会議中に何が飲みたい」

「……そうね、紅茶……、かしらね」

「ミルクと砂糖はどうする」

「一応用意しておいて貰えると助かるわ」

「よし、ではその時に持っていこう。先に会場に入っているといい」

「ええ、そうさせてもらうわ♪」

 

 先程よりも違和感のなくなった、自然な笑顔をこちらに向けてから、彼女はスタジオへと向かって行った。

 

 

 そして、その後もバンドメンバー全員で集まって来た奴らもいれば、ばらばらで来たり、遅刻したりする奴らもいたがしっかりと全員集まっているようだな。

 

 機を見計らって、用意しておいた飲み物を搬入していく。誰がどの飲み物を手にするかは基本的に私がランダムで配る為、ランダムとなっている。

 飲めないのがあればバンド内で交換とかしてくれるだろうと思い、そこら辺は適当にさせてもらっている。

 

 あぁ、ただ、先に来ていた白鷺は紅茶を確実に用意しておいた。それと、普段から注文してくれているお陰で飲む物が大体分かっている奴らも除くが。美竹とかはブラックを、湊にもブラックを用意しておいた。

 ──まぁ、湊のブラックには角砂糖もセットしてあるのだがね……。

 

「う……、何故私の目の前にはブラックコーヒーが置かれているんだい?」

「あれ、薫さんってブラック飲めないんですか? てっきり飲めるものだと思って……」

「いや、飲めることには飲めるのだけど、余り好きではなくてね……」

「あー、まぁでも、1回飲んでみるのがオススメですよー。エミヤさんのコーヒーはとっても美味しいですから」

「……美咲がそこまで言うなら、仕方ないね……」

 

「おや、湊さん。ブラックですか?」

「ええ、そうよ。流石はエミヤさんね、分かっているわ」

「しかし、その隣には大量の角砂糖が……」

「きっと他のメンバーに対しての心配りね。流石はエミヤさんよ」

「しかし私達は湊さん以外、砂糖を使うであろう飲み物はありませんけど……」

「…………」

「……湊さん?」

 

 

 まだ会議も始まっていないというのに、結構な盛り上がりだな。さて、飲み物も何事も無く終わった事だし、私はさっさとカウンターに戻らせてもらうとしようか……。そう思って、スタジオの出口のドアノブに手を掛けたその時。

 

「あー、エミヤくーん! ちょっとこっち来てくれるー?」

「……、分かりました……」

 

 月島さんの隣に控えるように直立する。そして、彼女の次の言葉を待っていたのだが。

 

「違う違う、ここ座って」

「ここは来賓の席と言っていたではないですか?」

「来賓は、君だよ。エミヤくん」

「……。ま、何となく分かってましたけどね……」

 

 促されるまま席へと着席。すると隣の月島さんが会合開催の音頭を取り始める。

 どうやら今回の会議の議題は、『CiRCLE開店4周年記念のイベント』の件らしい。後ろのホワイトボードに書いてあった。

 

 日時はちょうど一月後。時間は十分にある、そう私は思っていたのだが、

 どうやら月島さんにはなにか考えがあるらしいな……。先程から口元の笑いが隠しきれていないからな。

 まぁ、何をしようが俺には関係の無い事だ。いつも通りの仕事をこなすだけだ。

 

「ここで一つ! 私の方から催したいことがあるんだ!」

 

 参加者たちは人それぞれの反応を示している。期待、傍観、無関心、興味などと。

 

「そのイベントでは、バンドメンバーのシャッフルをして貰います!」

 

 その発表の直後、会場は困惑により支配される事になった。正直言えば私もピンと来ていないのだ。

 

 説明を掻い摘んでいくと、五バンドの各役職(Vo、Ba、Gt、key、Drの事。例外はあるがね)を運営が作成したくじ引きによってシャッフルするというもの。

 

 練習期間は当然イベントまでの一月、その即興バンドでの練習時に限り代金を割引する、と言ったこともやるらしい。

 

 そして、これが一番の問題点なのだが……。

 

「来週の月曜日から木曜日までの予定は空けておいてくれたかな?」

 

 どういう意図を持っての発言なのか、私には想像もつかなかった。しかし、何となく月島さんが何かとんでもない事を考えているという事は理解していた。

 

 各バンドリーダーから『予定は空いている』との報告を受けた月島さんは、再び言葉を繋ぎ始める。

 

「では、全員予定は空いているとの事なので〜、沖縄にて特別合宿をしたいと思います! どうかな、みんな?」

「いいですね〜! 楽しそー!」

「沖縄か……、あたし行ったことないな……」

「モカちゃんもありませ〜ん」

「りんり〜ん! 沖縄だって!」

「う、うん……。きっと、楽しいよ……!」

「沖縄……、日焼け対策はしっかりしておかなくちゃ……」

「え、沖縄っ……、高温……、ミッシェル……。うっ、頭が……」

 

 喜んでいる者もいれば、困惑している者、露骨に嫌そうな顔をしているのも少々。だが、イベントの為だと思って割り切って行ってもらうしかないだろう。

 

 その間、私は留守番の役目だろうな。女だらけの合宿に1人だけ男が居ては、私の立場が居た堪れない様になってしまうからな。ただ、そう断わってしまっては若干の申し訳なさを感じるので、予定があると嘘を着いておくことに決めた私。

 

「どうしたの〜、エミヤくん。そんな私は行きませんよー、なんて顔しちゃってさ」

「いえ、どうあっても私は行けませんよ。予定がありますのでね」

「あれれ〜、そんな予定無かった筈なんだけどな〜」

「……、何故そんな事を?」

「だって、その日もしっかりバイトが入っているんだもん。予定があるなんて……、ねぇ?」

「…………」

 

 仕事のし過ぎだ、馬鹿野郎……。

 

「いや、しかし! 女所帯の中に一人だけ男だと言うのも──」

「でも女だけだと、ナンパされた時困っちゃうなー」

「……その為の沖縄ですか……」

「ううん、それは違うよ。ただ季節的な面を含めてここが良いかなってなっただけだよ。あ、ちなみに私は行かないからね〜。そこの所、よろしくー!」

「何だと……!」

「合宿中もここは通常通り営業しなきゃいけないから、誰かが残らなきゃいけないからねー」

 

 それはさらにキツイ状況になってしまった……。このまま男一人で向かってしまうのは、とても耐えられるものでは無い! 

 

 ここは……。

 

 

 うむ、アレしか無いな……。

 

「取り敢えず、付き添いとして行く事は了承します。が、付き添いの人数をこちらで増やしても構いませんか?」

「あてがあるならいいけど、ウチの他のスタッフは申し訳ないけど、合宿に着いていける程の予定がみんな空いてないから、連れて行けないけど……」

「ええ、大丈夫です。こちらで用意できるので」

「それならいいよ! 許可します!」

 

 よし、これで一人ではなくなった……。私の心に、ようやく若干の晴れ間が見えたぞ……。

 

 

 

 そんな感じで、会議は終了。くじ引き結果は、出発の当日の朝発表だと。というよりか、そういう指示が出ているのだ。

 

 

 こちらの準備は万全だ。協力者も快く引き受けてくれた、それも四人もだ。これならば……。

 

 そう思い、私は希望に満ちた顔で当日の朝を迎える事になった……。




今の世の中(バンドリSS界隈)は、妹モノがブームと聞く。

ではワシもやるしかあるまいて!
というけわけで、誰をメインにするかは決まってませんが、新作ちゃちゃっと作る事を決意した、作者であります。

近いうちに上がるかな?分かんないけど、まぁ期待しててねー。


あー、そうそう次回は合宿編の導入作るんですけど、ランダムバンドのメンバー、誰と誰をバンドとして組ませて欲しいとかあればお題箱に入れといてもらえると嬉しい。基本先着順にするんで、恨みっこなしでオナシャス!

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