どうして守護者がアルバイトなんてやってるのさ   作:メイショウミテイ

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組み分け帽子

「シロウ、私達は何処へ向かっているのですか?」

「その通りよ坊や。オキナワに行くにはまずは空港に行くべきなのでしょう?」

「いや、その通りなのだが……」

「まぁまぁ、きっと何かしらの事情があるのでしょう。ここは従っておいた方がいいでしょうね」

「はっ! 何でも良いが、オキナワって所のメシは美味なのか?」

「そうです! 私もそこが気になっていました!」

「私が作るから問題は無い」

「そりゃあ安心だな! ははははは!」

「なんと……! それはそれとしてお腹が空いてきました。昼食にしましょう」

「セイバー、貴女朝ご飯しっかりと食べたのですか?」

 

 沖縄への出発当日の朝。私は割と信頼出来る保護者数人を同伴の元、待ち合わせ場所へと向かっていた。その場所とは、文明の機器スマートフォンのマップ機能にも載っていない白紙の地。キャスターの言う通り、沖縄へ飛ぶには空港へ向かい、そこから発着している飛行機を用いて飛ぶのが一般的だ。

 

 待ち合わせて行くのであれば別だが、二度手間になる事はあまりしたくは無いものだ。効率が悪いのだ。究極な所、現地集合でも良いくらいだが、そこは防犯の観点から却下される事は必然だが。

 

 

 さて、そろそろ目的の場所に着くはずだな。スマートフォンも私の手の中でブルブルと振動している。こいつは目的地にもうじき着くことを、振動する事で私に教えてくれているらしい。……昔のガラパゴスケータイが懐かしく思えるようだな……、あの持ち運びができて且つ、連絡も出来るあの衝撃は、きっと忘れることは無いだろう。

 

 その待ち合わせ場所に差し掛かる所で。

 

 

 一人の、この閑静な住宅には似合わない男が電柱に寄っかかっていた。

 

 いかにも武士の格好をしたそいつは、

 

「うん? 遅かったではないか……。待ちくたびれたぞ……?」

 

 

 

 誰が誘った? 

 

 というか、そもそもこいつ居たのか? 

 

「若宮殿にどうしてもと言われてしまってなぁ……。女子の誘いを断る訳にはいかんだろう?」

「いや、そもそも聞いていないのだが……」

「あら? 貴方、佐々木!?」

「おぉや、女狐殿も居られたか……。やはりここに来たのは失敗であったか……

「なんですって?」

「いいや何も」

 

 それは置いておくとしてだ。

 

 このだだっ広い場所には、読んで字のごとく『何も無かった』。ただ、一つを除いて。

 

 足首をギリギリ超えないくらいの草が生い茂っているのみ、その他には何も無い。えー、ただ……、一つを除いては……。

 

 

 あの存在感満載の、プライベートジェットを除いて……、は。

 

 

 ジェット機の周りには黒服の男達が、一糸乱れることなく屹立していた。

 そして、その近くには、例のバンドメンバー計25人が既に集合していて、仲良さそうに会話を楽しんでいた。ある者はバンド内で、そしてある者はバンドや学年、学校の垣根を超えて会話に勤しんでいた。

 

「あら? やっと来たわね!」

「すまない、待たせたようだな」

「いいえ、大丈夫よ! みんなも楽しみで早く来ているだけだもの!」

「嬢ちゃんも楽しそうだな?」

「もちろんよ! 楽しくないわけが無いわ!」

 

「あの金髪の元気そうな子……、こころって言うのかしら。顔は好みなのだけれど、性格が明るすぎるわ……。燐子ちゃんとかの方が断然……、はっ! 居たわ、私好みの可愛い女の子! ブロンドのロングで、ハーフアップで纏めてて、お淑やかそうな……、そうあの子よ!」

「キャスター……、まずは貴女がここで脱落するべきですね……?」

「お……、おほほほほ、じょ、冗談よ……。そんな殺意を剥き出しにしないでくださるかしら……?」

 

 

 よし、これで何事も無く全員集合のようだな。では、余り目立ちたくもないしさっさと始めてしまおう。

 

「全員揃っているな……、よし。ではこれより沖縄へと飛ぶ事になるのだが──」

「はいはいはーいっ! 質問でーす!」

「質問は後にしてくださーい、続けまーす」

 

 なんか質問してきた戸山を軽くあしらってから、説明に入る。移動手段がこの目の前にある弦巻家専用プライベートジェット機である事や、バンドメンバー発表は機内で行うだとか、まぁ色々だ。ここで話しては少し時間が掛かるので割愛させてもらう事にしよう。

 

「それで戸山、質問は?」

「えーと……、忘れちゃったのでいいです!」

「なんも無いなら最初から言うんじゃねー!」

「……、市ヶ谷。しっかり保護者として面倒を見てくれよ……」

「保護者じゃねーし!」

 

 絶望の顔が見える見える。私も戸山の相手をしていると、脳味噌が溶けてしまう気がしてならない。なんと言えばいいのか……。精神年齢が下がってしまう感じ、だろうか。

 ──まぁ、そもそも今の俺の精神なんてまともなもんじゃないが……。

 

 しかし、自家用ジェットを保有するだけの財があるとはな、そこまで弦巻は巨大な組織なのか。何を作ってるとかは全く知らないが、そういうのは割と身近にあったりするかもしれないな。

 

「機内の何処に座ってもいいという許可を得ているが、くれぐれも機械の破損などは無いようにしてくれ。これは私のものでは無いのでな」

 

 多少手こずりはするだろうが投影が出来るので、最悪の場合はそうさせてもらうことも吝かではないが。

 

「あら、別にいいのよ? もうじき新しいのを作るみたいだから、古いのは要らなくなる、って黒服の人達が言っていたわ!」

「えぇ……。い、いやそれでもだ。機内の破損は私が許さん、肝に銘じておけ」

 

 弦巻の所有物なので、弦巻本人が壊してしまう分には何も問題は無いが、他の別人がやってしまったならば、それは問題になる。特に、氷川(妹)だったり戸山とかは本当にやりかねん。「キラキラドキドキ! ヒャッホー!」とか、「るんっ! って来た! ヒャッホー!」とか。それに加えて、割とドジを踏む丸山も結構危ういだろう。

 

 

 だが、今のところは何事も無く全員思い思いの席に着席して、発進する時を待っている状態になっている。そこに、飛行機特有の機内でのマナーだったり、緊急時の避難方法とかを知らせるアナウンスがかかり始める。が、そこにも直ぐに違和感を感じる、というか、全員気づくはずだろう。

 

『やっほー! みんな、楽しめているかしら? 今回だけ、私がアナウンスをする事になったわ! よーく聞いておくのよ?』

 

 どうやら、今回だけの特別アナウンスらしい。弦巻こころの声で様々な注意事項が結構雑に、というより擬音とかフィーリング増し増しでアナウンスされている。用意は良いのだが、大事な所くらいしっかりとするべきだろう……。まぁ、らしいと言えばらしいのだが……。

 

 

 アナウンス後は流れるように離陸。母なる大地とは暫しのお別れ、大いなる空へと不思議な鉄屑は羽ばたいて行く。私が引き連れてきたサーヴァント達もそんな訳で、話題は当然というかなんというか、イベント用のバンドメンバーの話へと移り変わっていた。

 

「エミヤさん! そろそろいいんじゃないですか〜?」

「ん、何がだね。……いや、言いたいことは分かるとも。バンドの件だろう?」

「はい、その通りです! 機内で発表するって言ってたから……」

「まぁ、いいか。じゃあそうするとしようか」

 

 何故か隣の席に座っていた上原に勧められて、席を立ち機内に備え付けられていたマイクを手に取る。瞬間、視線が私に集まるのを感じた。うむ、やはり全員気になって仕方が無かった様だな。勿体ぶるものでも無かったか。

 

「よし、それでは今回のイベントの目玉であるシャッフルバンドのメンバーを発表させてもらおう。一つ補足を加えておくと、夜の部屋班もその5人となるので、今の内に交流を深めておく事を勧める……が、心配することでも無かったか」

 

『!!!!』

 

 全員露骨に驚いているな……。まぁ、無理も無い、たった今の思い付きで決めたのだからな。

 

「それに加えてバンド練習には、私の連れてきた連中を1人か2人付けさせてもらう。一種の防犯セキュリティと考えてくれて構わない。そいつらに演奏を聞いて貰ってもいいんじゃないだろうか」

 

 月島さんに迷惑がかかる云々の前に、何か面倒事に巻き込まれてしまってはこちらとしても面倒だ。サーヴァントがいる以上、野蛮な男達も寄り付かないだろうという私の考えだ。

 演奏を聞いてもらうとかは、これまた私の思い付きだ。

 

「……、それでは発表の方に入らせてもらおう」

 

「チームA。湊、青葉、牛込、奥沢、宇田川(妹)」

 

「……、大丈夫かしら……?」

「もんだいないっすよ〜」

 

「チームB。弦巻、氷川(妹)、上原、白金、松原」

 

「きっと楽しくなるわ! ヒナ!」

「うん、そうだねー!」

 

「チームC。戸山、氷川(姉)、北沢、市ヶ谷、大和」

 

「あぁ〜りさぁ〜!」

「くっつくなー! 離れろーっ!!」

 

「チームD。美竹、瀬田、白鷺、若宮、山吹」

 

「まさか、子猫ちゃんと一緒になるなんて……! これは運命か!」

「まさか。それは悪運というものよ……」

 

「チームE。丸山、花園、今井、羽沢、宇田川(姉)」

 

「つぐ! 頑張ろうな!」

「うん、頑張って成功させようね!」

 

「以上だ。付ける付き添いはまた後ほど発表させてもらう。さぁ、これからの機内での行動は自由だ、好きに動きてくれたまえ」

 

 そうなると、自分の席に留まったままの者は一人もおらず、バンドのグループで集まり始めて、早速会議を始めている。

 

 うむ、これなら上手く行きそうだな……。そう思った私も、トランプの興じているアホどもの所に戻る事に決めたのだった。

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