どうして守護者がアルバイトなんてやってるのさ   作:メイショウミテイ

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海と浜辺とシュノーケル

 

 

 

 じりじりと照りつけてくる憎たらしい太陽。

 

 その輝きを我がものとして、熱を獲得した大地。てか砂。

 

 

 その上をかける美少女達。なお布一つのみをつけた状態の。

 

 

 

 それを追い掛ける、青い狂犬ランサー。

 

 

 

 それをさらに追い掛けるは、神言魔術式・灰の花嫁ヘカティック・グライアー。

 

 

 これが私の勝手な予想だった。きっと恐らくこうなるだろうと、画面の向こうの皆様方も思ったのではないか? 

 

 

 だが、残念。どうも、違ったみたいだ……。

 

 

 

 ──────────────

 

 

「らぁッ!!」

 

「セイッ!」

 

「甘いっ!」

 

「ふぅッ!」

 

 

 さて、私達の乗ったジェットはあの後もなんのトラブルも無く、予定通り沖縄の那覇へと着陸を成功させた。那覇空港の一角を貸し切るとは……、弦巻の財力は計り知れないな。

 

 途中、セイバーが何かおかしな物天翔る王の御座を発見したが、見て見ぬふりをするように伝えてある。あれに構っては、とても面倒くさくなる事は想像に難くないのでね。

 

 そのあと弦巻の別荘に到着してからは基本的に自由行動にしたのだが、5バンドの全員が海でのバケーションにする事に決めたらしい。あのRoseliaでさえ、それを了承したというのだから驚きだ。まぁ、大方今井と宇田川が粘ったのだろうけど。

 

 そのそれぞれを見守るように、引き連れてきたサーヴァント達に指示を出しておいた。ポピパにはランサーを、アフロにはセイバー、パスパレにアサシン──やはり小次郎という名前の方が呼びやすい──、Roseliaにはライダーとキャスター、そしてハロハピには私という具合に彼女たちの保護環境は万全に整っている。あくまで目安だ。基本的に全員に注意は向けてあるが、これで何か問題が起こることはまず有り得ないだろう。

(イベント用のバンドとは関係は無いので、悪しからず)

 

 別荘に荷物を置いて、少数の弦巻家使用人を留守番として。残りのメンバーは揃ってビーチへと向かって行った。

 

 

 ──というのがたった1時間前の話だ。

 

 平穏な空間で見守りだけを行い、決して自分の不利益になるような行為はしない。要は報酬分の仕事だけを行うスタンスで臨んでいたのだが、これまたどうした事か──

 

 

「ほぅ……、なかなかやりますね、セイバー」

「いえ、ライダーこそ。その俊敏性には助けられます」

 

「おいアーチャー! ぼさっとしてんじゃねぇ!」

「あぁ、悪かったな。どうしてこうなってしまったのか、軽く回想していたのだ。次からは集中しようじゃないか」

 

 ライダーによって打ち上げられたボールがセイバーの鞭のように撓った手によって強烈に打ち付けられ、こちら側のコートに大きく衝撃を与えながら地面へと激突。

 

 セイバー達の得点になり、8-9で1点のリードを許している状況。

 

 

 そう、私──私達はビーチでの遊戯にはメジャーであると言える、ビーチバレーに励んでいる真っ最中である。

 

 周りには自分達の遊びを中断してまで、観戦するメンバーが多く存在していて、その中からは自分を応援する声も聞こえてくる。

 

 

「エミヤさん、負けたら承知しないから」

「何としても勝つのよ、エミヤ」

「美竹さん……、湊さんも……。あー、ほどほどに頑張って下さ〜い」

「うふふ、エミヤさん。勝ったらご褒美ですよ♪」

 

 

 ──応……援……? もはや脅迫のように聞こえたのだが……? てか、最後怖すぎませんかね……。

 

「ランサーさーん、鋭いの一発いきましょ~!」

「おうよ、沙綾ちゃんの期待に応えるぜ!」

 

 ランサーは山吹の声援で戦意上昇。

 

「セイバーさんなら勝てますよー!! えい、えい、おーっ! です!」

「ええ、ヒマリ。えい、えい、おーっ!」

「え、えっと……、ライダーさん……。その、ま、負けないでっ……!」

「負けるつもりなど毛頭ありません。見ていてください、燐子」

 

 セイバーとライダーも応援を受けて、やる気に満ち溢れている様だ。こちらと相手のポテンシャルレア度は若干こちらが押されているが、反攻出来ない戦力差ではない。遠距離型な性能な分、技術面クラス相性では勝っているのだ。充分戦える、これまでもそうやって凌いできたのだからな。

 

「よし、ランサー。『仕切り直す』としようじゃないか……」

「はっ! 良いだろう、確かにこのリードされている状況。これ以上ない好機だからな……!」

 

 ランサーの周囲を仄かに蒼い闘気が漂い始める。それならば、と。私はランサーにアタックを任せるとしよう。

 

 だが、セイバーの周りにも紅い闘気が見える。『魔力放出』か……? いや、違いない! すかさず俺も『哂う鉄心』を解放。そのままランクがダウンした『千里眼』で着弾地点を割り出しにかかる。

 

「ふぅっ……、ハァッ!」

「ランサー! 右斜め前だ!」

「任せろッ! フンッ!」

 

 予測地点を指示して、レシーブさせる。浮いたボールをトスして、スパイクの下準備は完了。あとは奴が上手くやってくれるさ……、ククッ……。

 

「よぅし、よくやった……。やれェッ!」

「いいボールだァッ!」

 

 瞬間、蒼い閃光が地面に突き刺さった──かに見えた。

 

「っ! 何とかなりましたね……」

「よく拾いました!」

 

 ランサーによって放たれた強力な一撃は、恐らく『怪力』を発動させたライダーによってレシーブされていて、それによって打ち上がったボールに合わせて、セイバーがアタックを試みようとしていた。

 

「させるかッ!」

 

 咄嗟の判断で『防弾加工』を開放。ブロックに徹する事で相手のアタックに備えるという戦法を取った。結果的にそれは成功して、再び敵陣へと落ちていくボールにライダーが反応したものの、『怪力』が発動中だっためか力の加減に失敗して、レシーブしたボールはネットに接触しそのまま地面へと落ちていく。

 

 そういう訳でイーブンの状況に持ってくる事が出来た。

 

 

 

 結局のところ、この試合に決着が着くことは無かった。

 

 デュースを6回続けた辺りでお昼時になり、試合は中断。そのまま無効試合となってしまった為である。

 

 

 

 そんな訳で、ここからはお昼休みを挟んだ後の話。つまりは、午後の部である。

 

 ──────────────

 沖縄に行ったことがある方は、その海の透明度にさぞビックリさせられたことだろう。事実、私もそうだったのだからな。

 

 神奈川県には江ノ島という観光名所がある。あそこは水族館だったり、日本では珍しい路面電車──江ノ電──が走っていたりする事で有名な場所である。そこを貶めるつもりは無いのだが、世辞抜きであそこの海よりも綺麗なのだ。

 

 なんと言っても、海の中で泳いでいる魚が視認出来るのだからな。それだけで沖縄の海が透き通っている事が証明できるだろう。

 

 

 

 何故こんな話をしているのかと言うのなら。

 

 

 

「ぷはぁっ! ……凄いわ! みんな今の見たかしら!?」

「ふぅ……、うんうん。居たね、凄いの」

「わ、私、ウミガメなんて初めて見たなぁ……」

「はぐみも! なんかねー、とっても凄かった!」

「あぁ、私も大いなる自然を感じた気がするよ……!」

「それは何よりであります、プリンセス」

 

 ハロハピの要望に応え──というより、こころの願いなのだが……──少し沖に出てシュノーケリングを行っているためである。念の為、小型のクルーザーを投影してあるので、万が一の事態は起こらないだろう。当然の事ながらキッチンは完備。弦巻ならば泳ぐ魚を鷲掴みにして持ち帰る可能性もない訳では無いからな。ただ、潜っているのはハロハピの5人のみで、私はボートの上で有事の際に動けるようにしている。

 

「他にも何か見えたか?」

「お魚さんが沢山泳いでいたわ! 羨ましいわ、あんなに自由に泳げるなんて!」

「サンゴとかもあったよね、割とサンゴも見たこと無かったかも」

「まぁ、街の港とは訳が違うからな」

 

 あそこも十分以上地帯ではあるのだが。タコが釣れる港なんて聞いた事がないぞ。因みに釣ったのは、察しのいい皆様ならきっと分かる事なのでここでは語らないことにしておく。

 

 その会話の裏では、先程から松原が海面に頭を突っ込んで必死に何かを探している様子を発見した。大方予想は着くが……。

 

「松原、何をしている?」

「……ぷはぁっ……。い、今、はぐみちゃんと薫さんにも手伝ってもらって、クラゲを……、探しているんです」

 

 そう言われて周りを見渡してみれば、先程の松原と同じような感じで、透き通る海面にオレンジ色と紫色のアクセントが付いていた。

 

「…………、まぁそんな事だと思ったが」

「あら、そうだったのね。なら私も一緒に探してあげるわ! 行くわよ花音!」

「え、本当に? ありがとう! って、ちょっと待って〜! 泳ぐの速すぎるよこころちゃ〜ん!」

 

 松原を引き連れ物凄いスピードで泳ぎ出す弦巻。行動力の高さはピカイチだが、その前に少しでも良いから頭を使って欲しいものだよ……。まったく、やはり松原も苦労するな……。

 

「あー、えっと……。私はどうしたら良いんですかね?」

 

 そうなると、そこには1人取り残された奥沢がポツンと浮かんでいた。とりあえず、私はこう勧めておいた。

 

「ボート、上がるか?」

「あー、ありがとうございます。じゃあ、そうさせてもらおうかな……」

「それなら、二人しか居ないが紅茶と菓子でも出しておくとしようか。どうせ後であいつらも戻ってくるだろうからな」

「あ、私も手伝います」

 

 ただ、用意をしながらでも、クラゲ捜索隊の行動は全て把握しておかなければならない。奥沢に少し準備を任せて、離れ気味になりつつある彼女達の方へと船を進めておく事を忘れない。

 

 ──────────────

 弦巻達が戻ってきたのは、それから10分〜15分後の事だった。水の中に入っていると、それだけで体力を消耗してしまう事は割と世間の人々も知っている事だ。

 

 ボートに上がって来た彼女達は、見るからに疲労が溜まっていることが見て取れた。いつもはしゃいでいて体力が有り余っているような弦巻や北沢も然り、演劇部で作り上げられた体力を持っている瀬田も然り、ドラムという、バンドの中では最も体力を消費する役割を背負っている松原も然り。

 

 そんな時に、私と奥沢で用意しておいた紅茶と茶菓子が役に立つのだ。こういう事は予想できるくらいになってしまっている。きっと、私の生前にそうせざるを得ない理由があったのだろうが……、生憎とそんな記憶を持ち合わせてはいないので。

 

「はぁ……、やはりウェイターの持ってくる紅茶はとても美味しいよ……」

「お褒めに預かり光栄でございます、マドモアゼル」

「ねぇねぇシー君! このお菓子はなんて名前?」

「し、シー君? ……いやともかく、それはスコーンという物だ。イギリス発祥の『美味しい』お菓子だ。今回はプレーンと、レーズンを練り込んだもの、チョコブロックを練り込んだものの三種を作ってみた」

「とっても紅茶との相性が良くって……、美味しいです!」

「やっぱりエミヤの作るものはなんでも美味しいのね!」

「奥沢にも手伝ってもらったから、礼は彼女に言うといい」

「え!? いやほとんどエミヤさんが作ってたじゃないですか……!」

「そうなのね、ありがとう美咲!」

「みーくんは凄いね! はぐみじゃ作れないよ〜!」

「あ、うん。えっと、どういたしまして?」

 

 

 という訳で、午後はシュノーケリングを楽しみましたとさ。めでたしめでたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ、クラゲ見れたのかどうか聞くの忘れてたな……

 

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