どうして守護者がアルバイトなんてやってるのさ   作:メイショウミテイ

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リハビリです。期待しないで。


そもそもすっごい難産だった。

それよりもだよ。





ほんっと!遅れてすんませんっしたァ!!!!!




三人でカフェ巡りして来ました

 今日は朝から晩までバイトが無いという、私にしては珍しい日だ。そんな日に限って、普段から絡みのある彼女たちからのお誘いが無い。

 何もすることが無い時間ほど、生産性というものは少ないものだ。そんな事は分かっていても、予定を考えるためにわざわざ頭を使わないといけない事に心底うんざりする。

 

 ま、久しぶりの休みを無益にしたくは無いが、適当にふらついてるだけで一日が終わってくれるだろう。そんな薄っぺらい考えのもと、重い足取りで家を飛び出したのが確か2時間ほど前の話だったかな……。

 

 

 同じような顔をした有象無象共が蔓延る現代社会で、一般的な労働者に『休み』という物がもたらす効果は底知れないものだ。普段追いかけられ続けている職務からの開放。それは大方、ほとんどの人間が追い求めるモノ。

 

 子供の頃はおもちゃやゲーム、おままごとの道具。

 

 思春期の頃になれば、性別によって欲しいものが変わってくる。男子であれば彼女だったり、連むような友達だったりだろうか。女子は少し分からないがスマホだったり、遊ぶためのお金とかだろうか……。

 

 では、とっくの昔に義務教育を終えて社会に羽ばたいた社会人達は何を求めるのか。

 ――その答えというのは、何を隠そう休日である。

 

 仕事を辞めたいだとかお金が欲しいとかでは無く、何故か休みを欲しがるのだ。……そういう点だけ言えば日本人というのは、ある種の現実主義を追い求めている生き物なのかも知れない。

 ただ、一緒に働いている月島さんは少し異常な人だろう。事ある毎に「これなら昇給ありそうかな〜?」とか、休みよりもお金の方に目が無い反応を示しているのだから。

 

 偶にテレビとかで特集されていたりするが、外国の人々に日本人はみんな勤勉な性格をしていると言われるのも、何となくだが分かるような気がする。

 

 そんな事は言っても、私も元はサーヴァントの肉体を持っているだけあって、肉体が悲鳴をあげるほど疲労したことなど無い。だから休日なんてものは趣味も何も存在しない私には必要無いモノなのだ。

 

 だから稀に訪れる休日の少なさが、自分がアホみたいにシフトを入れるのがいけないという事を失念している訳では無い。むしろ進んでそうしているのだから、一部の人間からバカだのアホだのと罵られる事もあったりするのだが。

 

 

 時刻は11時を過ぎようとしている頃。

 

 やる事が無く暇で暇で仕方が無くないので、もはや恒例となった商店街ぶらぶら旅を敢行する事に決めた。

 

 「ふっ、君は今日も働いているのか……。愚かな人間だ」

 「死んでもてめぇにだけは言われたくねぇ」

 「まぁ精々頑張ってくれたまえ。君の粗雑な接客態度がどこまで通用するのかは知らないがね」

 「はっ、言っとけ!おら、冷やかしなら帰んな!気の所為だと思いたいが、なんかあのエセ神父と同じ空気が……

 

 やはり恒例行事とばかりに魚屋のバイトのお兄さん(ランサー)に心無いヤジを飛ばしてながら通り過ぎたり。

 

 「あれ、今日は少し買ってくれる数が多いんですね?」

 「ああ、少し買い置きしておこうと思ってね」

 「ふふふっ、今日もお買い上げありがとうございまーす♪」

 

 これまたいつもの癖なのか、自然と足がやまぶきベーカリーへと進んでいって、店の看板娘と他愛のない会話を楽しんで。

 

 「あっ!シー君だ!コロッケ食べない!?」

 「あ、あー……いや。やまぶきベーカリーのパンがあるから――」

 「じゃあコロッケも買ってコロッケパンにしよーよ!おいしーんだよ?」

 「待て、話を聞け。いやお願い聞いて?私が買ったのはメロンパンなんだ、普通に考えてコロッケと合うわけがないだろう!」

 「えー!?ウチのコロッケもさーやのパンもおいしーから絶対合うって!ねぇ買ってってよ〜!」

 「――もう、好きにしてくれ……」

 

 半ば強引にペースに嵌め込まれて、そこから抜け出せずに為す術なくコロッケを購入したりと、まぁいろいろ充実した時間を過ごしていた。

 

 

 

 行く宛さえ見つからずに昼下がりの線路沿いを彷徨う。

 

 傍から見ればまるで迷子のようだが、一応こと辺りの地形は把握しているつもりだ。いやそもそも、線路沿いを歩いていれば道に迷うことなどあるはずも無いが。

 

 やたらと人の並んでいるカフェを通り過ぎる。そこでふと、何か既視感を覚える。仕事をサボって暇潰しに見ていた雑誌で特集をされていた事を思い出し、その店の名物が店長の洗練された腕前によって施される、何でも絵柄がラテアートが話題を呼んでいる……、はずの店だ。

 

 外観は記憶の通りでこの店の周りは、不思議と中世のような雰囲気を錯覚させる。そう、まるであの時のオルレアンのような、いやトゥリファスか……?まぁどちらにせよ、それらと比べても何ら遜色は無いほどの出来栄えだ。

 

 「――見事な外観だな、よく出来ている……。また今度、暇な時にでも行ってみるか」

 

 暇な時間なんて作るつもりも無いのによく言ったものだと、1人で皮肉問答をしながらそそくさと通り過ぎて行く。

 

 

 最寄りの隣の駅へと到着しようかというその時。見覚えのあるアクアブルーをサイドテールで纏めた少女と、個人的に見つけたくなかったブロンドの少女が目に入ってしまい――その場から急いで離脱を図った。

 

 「あらエミヤさん、奇遇ですね?」

 「う、うむ……。そうだな……、腕の力が強い……

 「何 か 言 い ま し た か ?」

 「あーいえ何も」

 「こ、こんにちはエミヤさん」

 「……ああ。こんにちは、花音。……千聖も」

 「はい♪いい天気ですね」

 

 おっかしいなー、いつの間にか肩っていうか首元をがっしりとブロンドの少女にホールドされているんですけど。おい、そろそろ離せって。松原がすっごい申し訳なさそうな目でこちらを見てるぞ。

 

 2時間余りの放浪の末に白鷺と松原という、致命的なまでの方向音痴コンビを引き当ててしまったようだ。彼女たちはバンドは違えど、ある出来事のおかげで固い友情が出来上がっているらしい。今日も2人の共通の趣味であるカフェ巡りを敢行していたらしい。

 

 どうもこの辺りで人気の店らしいのだが、本来降りるはずの駅から2つほど駅を通り過ぎてしまいようやく戻って来たはいいが、今度は駅の降り口を間違えて、目当てのカフェの方向とは逆の通りを突き進んだ挙句、やっとここにまで戻ってきたのだと。

 

 「どんな店なんだそれは」

 「えっと、カフェの店員さんが()()()()()()()3()D()()()()()()()()()()()()()っていうお店なんです。今SNSとかですっごく話題になってて」

 「それで花音と2人でそのお店に行ってみようって話をしていたんですけど……、案の定迷ってしまって」

 

 そりゃそうだろうよ。私もお前達二人で出掛けると聞けば、迷うこと必至だと思う。申し訳ないとは思うが。

 ――ん、ラテアートだと?それも3Dラテアート……。

 

 そうなれば、必然的にさっきの店が浮かぶ。

 

 方向音痴コンビを放っておくわけにもいかないだろうなぁ……。

 

 

 

 ──────────────

 

 

 「ありがとうございます、案内してもらっちゃって……」

 「いや、気にすることは無いよ。私も機会があれば訪れてみようと思っていたんだ」

 

 30分余りを行列の中で過ごしてから、店内へと案内された私たち3人。内装もなかなか趣の感じられる、良い仕上がりだな。

 

 しかし、まさかこんなに早く実現してしまうとは、さしもの私でも思わなかったが。

 

 「あら、世情に疎いエミヤさんが、最近の流行のこのお店を知っているとは思えないのですけど……?」

 「職務中にたまたま置いてあった雑誌を見てね。そこにここの事が特集されていたのさ」

 「……堂々と職務怠慢してるなんて、やっぱり暇なんじゃないですか。はぁ……、私とはなかなか予定を合わせてくれないクセに……

 

 いくらカフェも併設しているとはいえ、平日の午前ともなれば客足など伸びるはずが無い。そういう時に暇を潰せるモノというのは必須になる。筆頭として書籍などだな。

 

 「お待たせ致しました。3Dラテアート日替わりケーキセットお二つと、ブラックコーヒーのチーズケーキセットになります」

 

 「わぁっ……!」

 「可愛いっ……」

 「これは、凄いな」

 

 ラテアートに三者三様の反応を示しながら、注文した品を受け取る。

 

 彼女たち2人が受け取った柄の入ったティーカップからは、薄茶色の泡が膨らんでドームのような形を作り上げていた。

 

 「可愛いうさぎのラテアートだなぁ……!」

 「あら、花音はうさぎなの?」

 「えっ?千聖ちゃんのは違うの?」

 「ええ。私のは……、ほら」

 「これは、犬のアートだね!こっちも可愛い〜」

 

 あれ、私もやったらカフェで人気出たりするかな……。相当難しそうだが、やってみる価値は大いにありそうだな。

 

 それから白鷺と松原は、2人でラテアートと一緒に自撮りをしたり、SNS用に写真を撮ったりしていたが。

 

 「……エミヤさん」

 「どうした、千聖」

 「ちょっとこっち来てください」

 「???……、まぁ構わないが」

 

 そうして少し席を立って白鷺の隣へと移動して、

 

 「少し屈んでもらっていいですか?」

 「……私に何をさせたいんだ、君は」

 

 言う通りに姿勢を低く、膝立ちの状態で待機していたら。

 

 「花音はエミヤさんの隣ね」

 「いつでもいいよ、千聖ちゃん」

 「じゃあ、撮るわよ」

 

 

 「はい、チーズ」

 

 

 パシャリ、パシャリ、パシャリ、と。

 

 3回続けてフラッシュの音が鳴り響いた。写真が撮りたかっただけか、素直に聞いてくれれば良かったものだが。

 

 「エミヤさんは嫌がるかな、って思ったんですよ……」

 

 白鷺はそうやって少し顔を背けながら言うが、そんな頑固な男に見えるのだろうか私は。

 

 「まぁでも、ありがとう千聖。後で写真を送っておいてくれると助かる」

 「え……?あ、はい!分かりました……」

 

 ……少し戸惑っていたが、写真は後でくれるらしい。

 

 これもまた一つの思い出だな、こっちに来てからも色々な事があった。今回の出来事も、忘れてしまうには勿体ない程の出来事だ。できる限り記憶にとどめなければ。

 

 ――心做しか、白鷺の顔が赤く見えたのは錯覚だろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 後日、白鷺と松原が揃ってSNSにアップロードした3人の記念写真に関して、複数人の少女達から物凄い剣幕で迫られたのは。

 

 

 別の話ってことにさせて欲しい……。

 




なんか、書きたいことと若干違う感じあるけど、

ま、投稿出来ただけいっか!




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