どうして守護者がアルバイトなんてやってるのさ   作:メイショウミテイ

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サポート・メンバー

 肌色と黒色が混じったようなダンボールを、私はサインをしてから2つあるそこそこ大きい荷物を両手で抱えるように受け取る。中からは小さな物体――それも粒の様なものがぶつかっているような音がしている。

 

 荷物を送り届けた事で満足したような顔をした業者は、

 

 「毎度ありがとうございまーすっ!」

 

 と、帽子を被り直しながら、社交辞令にしては元気すぎる挨拶と共に乗ってきたトラックに乗り込んで、瞬く間に姿を消して行った。

 

 「エミヤ君、それは?」

 「ああ、月島さん」

 

 そこにやって来たのは、我らがCiRCLEの主である月島オーナー様であった。彼女の視線が私の持っているダンボールに注がれているのが分かっているので、

 

 「楽器のメンテナンスに使う道具ですよ」

 「あー、頼んでおいたモノだねー。そっちのは?」

 「これは私が使うものですよ、コーヒー豆です」

 「……それってさ、CiRCLEの経費で買ってたりする……?」

 

 すごく渋い顔でこちらを見つめてくる月島さん。その目からは、祈りの感情が見て取れる。おそらくというか絶対、CiRCLEの経費で買っていませんように、なんて思ってるんだろう。

 

 「大丈夫ですよ、自費で買ってます。月島オーナーにはカフェのキッチンを貸してもらっているので」

 「そっ、そっかぁ〜!で、でも少しはCiRCLEのお金も使っていいよ?余裕が無い訳じゃないし……」

 「いえ、お心遣いは有難いですが、生憎私は稼いだお金の使い道には困っているもので」

 

 月島さんが平均的な成人女性よりもちょっぴりひもじい生活をしている事に対しての、ちょっとした皮肉を込めて一言。

 

 そのまま荷物を自分の仕事場へと運び終わってから、再びまりなさんに声を掛けられる。

 

 「エミヤ君、今日はもう上がっていいよー」

 「いえ、そういう訳には――」

 

 いきませんよ、そう続けようとしたが途中で遮られる。

 

 「確かに上がっていいとは言ったけど、ちょっとそれは間違いなんだ。正確には……出張に出て欲しいんだ」

 「出張、ですか?」

 「うん、ここの2つ向こうの駅の近くに新しくライブハウスがオープンしたんだー。でも、まだオープンしたてだから働いてる人も少ないらしくてね」

 

 なるほど。確かに開店前に人員を集めるのはなかなか大変だろう。そこでこの店にお鉢が回ってきた、って言うことか。

 

 「なるほど、今日はそこからの要請でサポートに入って欲しい、と?」

 「そういうこと!だから今日はこれで上がってくれていいよー」

 「あー、それと。既に一個機材に不具合が出てるっぽいから、早めに向こうに行ってあげられたら嬉しいかな」

 「了解しました、そういう事なら直ぐに出立します」

 「開店後初のライブイベントらしいから、頑張って成功させてきてね!」

 

 声援というよりも、圧力のようなものを若干感じる発言だったが、まぁ気にせずにおこう。それよりもなるべく急いでと言っていたな。いくら開店したてとは言ってもメンテナンス道具くらいはあるだろう、万が一無ければそれはそれで()()()()()()()だろうし。

 

 

 ──────────────

 

 

 電車に揺られること僅か10分。

 

 そしてそこからの徒歩5分程度の道のり。何かが起きるはずも無く……

 

 「美咲ーっ!こっちよーっ!!」

 「ちょっとこころ!?道間違ってるからー!」

 「ふふふ、今日も子猫ちゃんたちに会えるなんて……!」

 

 起きるはずも……。

 

 「あ、湊さん」

 「あら、美竹さん」

 「今日は……、頑張りましょう」

 「ええ、お互いのライブ成功の為にね」

 

 起きる……のか……。

 

 「あー!!エミヤさーん!」

 「ちょおまっ!いきなりエミヤさんに飛びかかるなっての!エミヤさんが怪我……するとは思えねぇけど、とにかく危ねぇだろ!」

 「ふふっ、香澄ったら……。こんにちは、エミヤさん」

 

 起きちゃったかー……。

 

 「……あぁ、うん。こんにちは」

 

 

 

 頭のぶっ飛んだキラキラドキドキガールから大雑把な話を聞いた話では、件のライブハウス――名前を『Galaxy』というのだが、そこからのライブ出演のお願いが回ってきたらしく。

 

 「さぁ!今日はここでみんなを笑顔にするわよっ!」

 

 そう言った天真爛漫を体で表現したような彼女は弦巻こころ、そんな彼女が引っ張りまわしているバンド。『ハロー、ハッピーワールド!』

 

 「私達の実力を、成長を見せるわよ!」

 

 ストイックさが体から滲み出ている彼女は湊友希那、率いるは高校生のバンドとは思えないほどの高い実力を持ったバンド。『Roselia』

 

 「あたし達は、いつも通りの演奏をしよう」

 

 赤メッシュの厳ついイメージとは裏腹に仲間思いの美竹蘭、幼馴染5人によるコンビネーションが光るバンド。『Afterglow』

 

 「久しぶりのライブハウスだけど、みんなでキラキラドキドキしようっ!」

 

 猫耳ヘアーで希望に満ち溢れた眼をしている戸山香澄、学校で知り合い数々の出来事を共に乗り越えた5人の友情を感じるバンド。『Poppin’Party』

 

 もう1つ知り合いの『Pastel*Pallettes』というバンドは事務所がプロデュースしているバンドのため、さすがに出演する事は叶わなかったと言うが、それでもこの4バンドが集結している光景はなかなかに圧巻だろう。

 

 

 そこにおまけの私……、いる?

 

 いや要らないとか言われても仕事だからどうにもならないのだが。

 

 

 ──────────────

 

 

 「同調、開始(トレース・オン)

 

 ライブに使用する予定の大型アンプに、自身の魔力を流し入れる。その通した魔力が何事もなくアンプの電子回路を一周してくればよし、だがそうでない場合は――。

 

 「確かにこのアンプは不具合を吐き出している……、一部回路から先に魔力が伝わらなくなっているようだな」

 

 様々な工具を駆使して分解作業を経た後、回路を交換。そして元に戻す。そうして再び魔力を通す。

 直っていればこれだ魔力が全て一周して戻ってくるはずだが。

 

 「……よし、完了だな」

 

 異常は無い、私が整備をする以上不具合など吐き出させてなるものか。そこには曲がりなりにも、毎日メンテナンスをこなして来た私のプライドが掛かっているのだからな。

 

 「朝日さん、これで修理は完了だ。次はどうすれば?」

 「あ、はい!ありがとうございます!さっき看てもらったアンプが最後の設備なので、これで頼んでいた仕事は全部終わりです。ありがとうございました!」

 「む……、そうか。ではライブまで待機しているよ、何かまた異常が見つかれば直ぐに呼んでくれて構わない」

 「わかりましたっ!」

 

 最近ここのバイトになったばかりのバイトである朝日六花に確認を取ってみれば、どうやら私の全ての仕事は終わってしまったらしい。さて、暇になってしまったな……。どのようにして時間を潰そうか。

 

 

 「あ、Hey!ちょっとそこの!」

 

 私は呼ばれたような気がして体の向きはそのまま、少し体を捻って後ろを振り返ってみる。が、私の視界は人の姿を認めることが出来ない。空耳かと思って――。

 

 「こっちよこっち!」

 

 また後ろから声が掛けられる。今度は体全体を動かして振り返ってみる。

 すると、そこには。

 

 「今日の出演バンドを確認したいのだ――、何よその顔は」

 

『子供』がいた。そう、どう見ても子供だ。

 

 ピンクの床にまで届きそうな長い髪で、首に猫耳のヘッドフォンを付けた『子供』が立っていた。それも私の身長の実に3分の2程度の大きさだった、道理で首だけ振り返っても見えないわけだ。自分の頭の中だけで考えをまとめ、目線を合わせる為に立て膝の体勢で子供に向き直る。

 

 「あんた、ワタシをバカにしてるのかしら?」

 「ここまで迷い込んでしまうとはな。怖かっただろう、出口まで案内しよう」

 「ちっがうわよっ!ワタシはライブを見に来たのよっ!」

 

 そう言って少女が肩からかけているバッグから取り出したのは、

 

 「なに……。確かに今日の日付で、会場もここで間違いない……。ようこそいらっしゃいました、お客様」

 

 にこやかな笑顔で努めて、なんとか取り繕おうと接客する。

 

 まずい……、今回はこのライブハウスに派遣されているのだ。何か不祥事を起こしてしまうのは、私以上に月島さんに迷惑が掛かってしまう。

 

 「はぁ……、まぁいいわ。それよりも!今日の出演バンドを確認させて欲しいのだけど」

 「はい、今日のラインナップは『ハロー、ハッピーワールド!』、『Afterglow』、『Poppin’Party』、それに『Roselia』となっております」

 

 最後に紹介したバンドのRoseliaを耳にした瞬間、目の前の少女の顔付きが僅かに変わった。

 

 「Roselia……!ふふっ、Excellentよ!今日は来た意味があったわ!」

 「あなたはRoseliaが目当てで来たのですか?」

 「そういう訳では無いわ、ただ前々から気にはなっていたけれど」

 

 子供には似つかわしくない口調でそう話す彼女。

 

 「ワタシは何者にも負けない、最っ強にカッコイイ音楽を作り上げるのよ!」

 「……ふむ、つまり君はプロデューサーを目指していると?」

 「目指しているでは無いわ、今なっているもの」

 

 彼女はまたしてもカバンから何かを取り出す。財布ほど大きくは無い、言うなればパスケースのようなものだ。その中からは一枚の紙切れ、もとい名刺が取り出され。

 

 「あなたも覚えておきなさい!このワタシ、チュチュの名前を!」

 

 

 どうやら、コイツはとんでもない奴かも知れない。

 

 本能的に、そう感じた。

 

 

 

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