どうして守護者がアルバイトなんてやってるのさ 作:メイショウミテイ
人が涙を流し悲しむ顔を、出来るだけ見たくはなかった。
それは『エミヤシロウ』という、焼け落ちた人間の最奥に眠っていた最後の核だったのだろう。
だから、あの場所でバイトをすることも。そこにやってくる少女たちと関係を深める事も。また殺し合う運命になるかもしれないサーヴァント達と一時の間とは言え時間を共有する事も。
こんな限られた時間の中だけは、自分の周りで泣いている人間を作り出したくはなかった。
そう思っていた。
――思っていただけだろう?所詮は。だから今回も、失敗したんだ。
自分の心の中では、既に結論が出てしまっているようだった。
合同文化祭2日目。
その日もセイバーを引き連れて――もとい、引き摺られて*1。再び文化祭が開催されている学校へやって来た。
前日では回れなかった出し物を見て回るつもりだったが、隣のセイバーの食い意地は凄まじいモノで、二日連続で『武士道コロッケ茶屋』を訪れる羽目になった。誰も止める人間は居なかったのかと頭を抱えたが、北沢と若宮を抑えきれる人物等居るのだろうかと考えて、まぁ無理だよなごめんなさいと、心の中でこのクラスの生徒に謝罪する。
お会計は当然全てこちら持ち、しかしコロッケバーガーを6個注文したが締めて1800円と良心的過ぎる値段設定。一個300円なら学生でも気軽に購入できるだろうと、一歩引いた視線から物事を捉えてしまう悪い癖が出てしまったな。
その後も食料を買い足しながら校内を練り歩いていく。
「オバケもハッピーなんて最高でしょ!」
「あぁ……、そうかもしれないな……」
「もっきゅもっきゅ……、ふぅ。お代わりをください!」
「やるかバカ。次行くぞ」
オバケカフェという、お化け屋敷と喫茶の融合した新感覚な出し物を堪能したリ。
「まさか、本当に来てくれるとは思ってなかったわ。ありがとう、エミヤさん」
「いやなに。自分が住んでいる地域の事ぐらい、知っておいて損は無いからな」
「えぇ、まったくです。私と白鷺さんでクラスを説得した甲斐がありました」
「紗夜ちゃんのあの時の気迫は凄まじかったわ……」
「う、うん……。ちょっと、いや凄く怖かったかな……」
「……あまり知りたくはないな」
花咲川の歴史を解説するという、先ほどとの落差で風邪を引きそうな程真面目な出し物を見たり。
羽丘女子学園のブースへと足を運んでみれば、校舎の外にまで続く程アホ長い列が嫌でも目に入る。最後尾の女子生徒はプラカードを持っており、そこには『薫Cafe 待機列最後尾』という文言と共に見知った顔が印刷されていた。――あれは、行かなくてもいいか。
長蛇の列を無視して校内に入り、しばらく宛てもなく歩くと前方に見えてきた――
「猫カフェ……?」
「学校に猫を持ち込むとは……」
今時の学校では猫カフェも出来るのかと、最近の学校行事に戦慄してしまった。今はこれが普通なのだろうか……?
だが、実際にはそうではなく。
「……に、にゃーん……」
「……」
「な、何か反応してちょうだい……!」
「……あぁ、いいんじゃないか、可愛らしくて」
「~~~///」
「ちょっと友希那~!まだ注文取ってないでしょ~!」
「私は猫に餌付け出来るオムライスセットを所望します!」
「お前はお前で何を注文――いやこれはダメだろう!」
銀髪の恥ずかしがりな猫や、茶髪のギャルっぽい猫がそこには居た、人型の。……いや、それよりもだ!メニュー表の一番下に、今までの事がどうでもよくなる程にエッグい文言が見えた。なんだ『猫に餌付けできるオムライスセット』って!?不審者が来たらどうする!
「このメニュー表は特別なものだよ~、知り合いが来た時にしか見せないヤツね。ちゃ~んと普通のもあるよ」
「柄にもなく焦ったぞ……」
「シロウ!先程の猫が表れました!餌付けします!」
「ッ!……勘弁して、お願い……!」
珍しく焦った湊の表情を見れたから……、まぁいいか。
そんなこんなでセイバーの世話をしつつ、二日目の文化祭を堪能した。
――までは良かったのだが……。
「花園が居ない?どういう事だ」
「おたえは今日、別のバンドのヘルプに行ってるんです……」
「なんとかライブの順番も一番最後に変更してもらって、ギリギリまで待てるようにはしてたんです……」
文化祭を締めくくるべく計画された、有志によるライブが始まってからしばらく経った頃。参加を表明していたポピパの皆が血相を変えた様子でこちらの観客席の方へやって来た。
「もう向こうのライブは終わってる頃なんです、何かあったのかな……」
「考えられとすれば、アンコールが長引いている可能性だな。とは言え、アンコールがそこまで長くなるとも思えん。時期に来るのではないか?」
「そうだと良いんですけど……。大丈夫かなぁ、おたえちゃん……」
心配そうな彼女たちを横目にセイバーが顔を耳元に近づけてくる。何が言いたいんだ、こんな状況でお腹が空いたなど言ってきたら――
「シロウ、
「……考えにくいと個人的には思う。他にもサーヴァントがこちらにやって来ているとしても、それをするメリットがあるかどうか……」
こちら側の話を聞かせる訳にはいかんのだ、どうか詮索はしないで欲しい。
その間にもライブの工程は順調に進行していく。いつもは起こってほしくないと思うイレギュラーを、この時ばかりは願ってしまう。アンプから音が出ない、ギターの弦が千切れる、マイクが不協和音をまき散らす。どんなことでも良いから何か起こってほしいと願ってしまうのは、人として最低な事だろう。
「えぇっ!アドリブで時間稼ぎ!?そんなぁ~……え、えぇっと……、そうだ!最近の話なんですけど――」
「あれも、そういう事か」
現在ステージ上では、MCのようなアドリブがハチャメチャに下手くそな丸山が必死になって時間を稼いでいるようだった。前にも増してMCが上手くなったようにも感じる、というのは今感じるべき感想ではないな……。
「市ヶ谷、花園がヘルプに行ったバンド。どこでライブをやっているか分かるか?」
「えっ……と、多分ここだったハズです!」
ここからだと、それなりに時間が掛かる場所だな……。こんな距離を歩きで向かうなど、何も予定がない日であればまだしもこんな一秒を争うような状況では考えられん。
「そこそこ大きな箱を確保しているとは……、いやそれよりも」
行くしかない、彼女たちを迎えに行かせて行き違いにでもなってみろ。それだけで彼女たちが準備を重ねてきたライブはご破算になってしまう。
「お前たちはここで待っていろ、私が行く」
「わ、私も行きます!」
「駄目だ!お前たちが探しに出て万が一行き違いにでもなってみろ!そうなれば、おしまいだろう」
「で、でも……」
「香澄、落ち着け。エミヤさんの言う通りだ。今私たちが迎えに行っても、おたえが早くこっちに到着できる訳でもねぇ。私だって何も出来ないのが悔しいけど、ここは信じて任せるしかない……」
「う、うぅ~……!」
「香澄ちゃん、私たちはいつおたえちゃんが来てもライブ出来るように準備しておかなくちゃ」
「りみりん……」
表に出る前にセイバーに彼女たちから目を離すなと伝えておくか……。ここで感情的になって行動しても、良い方向に動くとは考えにくい。ここで待たせておいた方が、何事も万全を期せるはずだ。
「セイバー、彼女たちを頼む」
「私が迎えに行った方が良いのでは?私の騎乗能力を活かせば……」
「それは許さん、今のお前はただの一般人だ。これが聖杯戦争なら何も言わないが、今はそうじゃないだろう。今のお前はどう見ても中高生位の外見でしかない、そんな奴がバイクや車を運転してみろ」
「確かに、今は聖杯戦争では無いのでしたね……」
「だから、ここは任せる。くれぐれも彼女たちから目を離すな」
「えぇ、任せておいてください。――シロウ、武運を」
「あぁ、分かっている」
最早一刻の猶予も残されていないと考えるべきだ。魔術を行使するにも、まずは学校から離れなければならん。
「エミヤ、こんな時間に何処へ?」
「っ!湊か!」
ちょうどいい、彼女にもダメ元で頼んでみるしかあるまい。少しでも時間が稼げるならば……!
「花園の迎えだ!」
「でも、これからPoppin'Partyはライブでしょう?今からじゃ――」
「頼みがある」
「……時間稼ぎをして欲しいって事ね」
「埋め合わせはどこかのタイミングで必ず」
「……他でもない貴方に頼まれてしまってはね。本当は出るつもりは無かったのだけど」
「すまない」
「いえ、私も意地が悪かったわね。他のメンバーに聞いてみてからになるけれど、それでも?」
「それでいい、助かる」
「分かった、やってみるわ」
これで少し猶予が出て来たと思いたいが、それでも差し迫った状況には違いない。
校舎から少し離れた場所で投影魔術を使ってバイクを作製し、それに飛び乗ってエンジンを掛ける。
なんとか間に合わせて見せる、目の前の人間一人助けられないようでは……!
これからどのように、どこまで話を作って欲しいか。是非ご回答下さいませ。
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