どうして守護者がアルバイトなんてやってるのさ 作:メイショウミテイ
「はぁ……。暇だな」
今日は珍しくバイトもない非番の日だ。バイトがあると、仕事をしながら余った時間で本でも読んだりできるのだが、一日丸々空いてしまうと時間の潰し方に困るな。
これは無理矢理にでも、毎日シフトを入れた方がいいかもしれんな……。
朝を適当に済ませてから……、うむ、やはり暇だな。何をしようかと考え始めたその時、余り触れることの無いスマートフォンがバイブし始めた。
何かとおもえば、電話がかかって来ていた。
それも、呼び出し人は『今井』となっている。今井……、今井……。
今井リサか!
知り合いである事を思い出し、電話に出る。
『あ、出た! おはよー、エミヤさん!』
「何の用だね?」
内心、暇を潰せる案件なら良いのだが……、なんて思ってるこの男。
『あー……えっとさ、今日って暇?』
「あぁ、絶賛暇を持て余している。それがどうかしたか?」
『ホントっ!? じゃ、じゃあさ、ちょっと出掛けたりとか出来ないかな〜、なんて……』
「いいだろう、折角の誘いだからな。引き受けよう」
『そ、そうだよね〜……。やっぱりダメだよ……。え! 良いの!?』
「そう言ったんだ。実際、私としては暇が潰せればそれでいいのだが……」
『えっと、じゃあさ! 最近この辺に出来たショッピングモール分かる?』
「ああ、そこに何時までに入ればいい?」
『12時ね! 遅れないでよ?』
「了解した、任せておけ」
『分かった、じゃまた後でね!』
それを最後に電話は切れた。よし、今日は暇を持て余さずに済んだな。家を出る時間までは本でも読んでおくとしようか。
いや、待て。来ていく服を考えなくてはいかんな。
そう思って、私は服が収納されているであろうクローゼットの扉を開いた。
「何……?」
服の量が明らかにおかしい……。何故こんなにも数が少ないのだ。
私は普段から、仕事用の服と外出用の服は使い分ける主義でね。恐らく、仕事ばかりしていたから、外出用のクローゼットの中身など確認する事も無かったのだ。
「しかし、これはいくら何でも少ない。というか……」
赤と黒の服ばかりだ……! 確かに自分でも赤と黒は良く似合うと自負している。
──英霊として召喚された時もそれだったしな。
それに、私は最近の流行だとかは分からないぞ……。
うむむむ……。っ! かくなる上は……!
「
まず流行を知るためには、バイト先に置いてあるファッション雑誌を投影して……。
私はそういうのを読んだことが無いんだったろ? じゃあ投影できないな、うん。
クソッ! こうなったら、適当に服でもズボンでも投影してみるしか……!
──その結果、余りいつもと変わらない私が出来上がってしまったよ……。
──────────────────────ー
ホント良かったー! やっぱ勇気出して誘ってみて正解だったねー。
あー、どうしよう! どんな服着て行こうかな〜?
エミヤさんは元がカッコイイから、私もそれに釣り合えるような格好しなきゃね!
やっぱり緊張するなー……、もう1人くらい誘った方が良かったかも……。
うん、そうしようかな!
そう思ってあたしは、いつもの幼馴染に電話をかけた。
あ、ワンコールで出てくれた。
『もしもし、どうしたのリサ』
「あ、友希那ー。今日ってこれから暇?」
『そうね……。強いて言うなら、発声練習とかする予定よ』
「じゃあ暇なんだね? 今日、ショッピングモール行かない?」
『……。いえ、遠慮しておくわ』
「えー、なんでー!」
『それだったら、家で練習しておく方がいいと思ったからよ』
そういう事言っちゃうんだー……、ふーん。
そう思ってあたしは、今回に限ってのメリットを話した。
「今日はエミヤさんも来るのにな〜……、残念だよ〜」
『えっ……、エミヤさんが……?』
「そうなんだよー……、あー残念だなー友希那来ないなんてー(棒)」
『……! …………』
揺さぶりを掛けていく私。くぅ〜、悪い女だねー、私は!
さてさて、答えはどうかなーっと。
「どうするー、友希那?」
『……、行くわ』
「それは良かった! じゃあ、12時にショッピングモールだから遅れないでね〜」
『……ええ、分かったわ』
「それじゃ、また後でー」
友希那一本釣り〜! あっははは! 友希那焦っちゃって可愛いなぁー!
でも、ありがとね。きっとあたし、エミヤさんと二人でいたら、恥ずかしくってどうなっちゃうか分かんないからさ……
──────────────────────ー
服選びに時間と労力を掛けて、いつもとあまり変わりない服装になってしまった。それを受けて、これからは流行にも注目しなければ、と心に決めた私だったが、第二の試練が立ちはだかった。
「新しく出来たと言っていたが、それは何処だ?」
カッコつけて知っている風を装っていたが、服の流行すら知らない男がそんな事を知っている訳が無かったのである。
全く恥ずかしい限りだ。地図を投影しようにも、ここの当たりの地理を完璧に理解している、もしくは地図そのものを記憶できていないと投影は出来ない。
恥を忍んで今井に電話しようと思い、スマートフォンを取り出した時、エミヤの脳内に電流が走る!
「っ! スマートフォンのマップ機能を使えば良いじゃないか……」
やはり、常日頃から携帯を触っていない私は、そういうのにとても疎いようだ。マップのアイコンをタッチすると、自分を中心に半径1キロのマップが出現した。
「この時代は便利なものだな」
結果、文明の機器のおかげで、自分の信条である30分前行動を実行することが出来た、という話だった。
時刻は11時半。
約束の時刻の30分前である。
そんな時刻に私は、持ってきておいた本をベンチにて読むという、至って普通の行動をしているはずなのだが……。
「どうも、周りの視線が気になって仕方がない……」
注目を集めるのも仕方が無いことなのだ。ズボンは黒であるが、上は黒のインナーに、赤い……、そう、紅いシャツを羽織ってきているのだ。
加えて、この男本来のルックス。それが相まって注目を集めてしまっている事に、この男はまるで気づいていないのだ。
まぁ、この男はまだ良いだろう。
問題はその男と待ち合わせている彼女達の方がに近付きづらくなっているという事だ。
「えっとさ……、あの人だよね……?」
「……ええ、違いないわ」
「これ、どうしようか……」
「……そうね、メールを送って待ち合わせ場所を変更するしか無いんじゃないかしら」
「うん、そうする。あ、あと友希那がいる事も言っておかなきゃ」
という彼女達の配慮に気付くことなく、唐突に送られてきた待ち合わせ場所変更、及び湊も一緒にいる事という内容のメールに、多少の疑問と憤りを覚えながらもそれに従うエミヤなのだった。
「それで、一先ず湊がここに居ることは置いておくとして、あの待ち合わせ変更のメールはどういう意味の物だ?」
「え? 気づいてなかったの?」
「む、何かあったのか?」
「エミヤさん、貴方は結構目立っていたの、気付いていたかしら?」
「……いや。そうだったのか、道理で視線を感じる訳だよ」
「「…………」」
だからって何故、待ち合わせ場所を変更する必要があった……。いや、よく考えればわかる話だ。
「そうか、俺が目立ってしまっているから、そこには入って行きたくなかったということか」
「うん、正解!」
「気を使わせてしまったか、済まない」
「いいえ、気にしてないから謝らないで頂戴」
「あ、でも罪悪感あるなら、お昼奢ってほしいな〜」
「ちょっとリサ! さすがにそれは──」
まぁ、それくらいならいいか。私も彼女達に貸しを作りっぱなしという訳にもいかないからな。それに、バイトで入ってくる金も余りまくっているから、多少の高額出費でも問題ないだろう。
「ふむ、いいだろう。どこの店だ?」
「やった! じゃあ着いてきてー」
「エミヤさん、リサの言うことは聞かなくても大丈夫よ?」
「いや、いい。これは私から君達への感謝の気持ちだ。受け取ってもらえると嬉しいのだがね」
「っ! そ、そう/////」
「さ、早く行こう。今井の歩くスピードが速すぎて見失ってしまいそうだからな」
「わ、分かってるわ」
湊の顔がいつもと比べて赤かったが、熱でもあるのか?
だが、そんな素振りは見せていなかった……。気のせいであることを祈っておこう。
悪い考えを頭から消し去って、私はその飲食店へと歩みを進めていった。