どうして守護者がアルバイトなんてやってるのさ   作:メイショウミテイ

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UAが凄いことになってますね…。17000て…。


あと、いろいろ意見とかアイデアが欲しいので、意見箱を後で活動報告の方に設置します。

どしどし意見ちょうだいな〜!


彩りの裏

「勉強を教えてくださいっ!」

「……は?」

 

 いきなり何を言っているのだろうか、この少女は。

 

 パステルピンクの髪をふわふわさせている少女──丸山彩はそんな事を私に頼み込んできた。私以外にもいるはずだが……、もしかして、友人関係をうまく築けていなかったりするのか? 

 

「いや、待て。何故私なんだ? 確か君の学校には、同じバンドの白鷺千聖がいたはずだろう。そいつに頼めばいいじゃないか」

「後で教えてもらう予定なんですけど、今は忙しいみたいで……」

「……、そうか」

「お願いしますっ! もう頼れるのはエミヤさんぐらいしか……!」

「……。他の客が来たらそっちを優先するが、それで構わないかな?」

「! はい! ありがとうございます!」

 

 良かった、どうやら私の心配は杞憂で終わってくれたようだ。

 返事を背に受けながら、私はまた試作品を制作し始める。今回の物は、カプチーノのバリエーションとしてキャラメルカプチーノを作っているのだ。

 

 カプチーノにキャラメルソースを加えるだけだと思うだろうが、自作しているキャラメルソースとカプチーノの比率だったり、作成する間の温度とかいろいろ考える事もあるのだ。

 

 それにしても、高校の学問なんて何年ぶりになるかな……。

 今まで英霊として過ごしてきた時間も含めてしまえば、三桁の年数では足りないだろう。

 

 しかし、今の私の外見上は……、ざっと20歳過ぎ位だろう。高校の勉強が出来ても不思議ではない、といいが。

 

「エミヤさん! 準備出来ました!」

「あぁ、分かった。それと、ほら」

 

 そう言って、試作キャラメルカプチーノを差し出す。

 

「え、私頼んでないですよね?」

「私の好意だと思って受け取るといい。あぁそうそう、試作品だからお代は結構だが、感想は聞かせてくれると助かるよ」

「そんな……! 今日は私がお世話になる側なのに、こんな事まで……」

「……、勘違いしないでもらいたいがね。私が君の勉強を見るんだ。なら君も私の試作品を味わって意見を聞かせてくれ。それで、等価交換だ」

 

 私も、つくづく素直じゃない性格だな。ただ、それを飲んで集中して勉強を頑張ってほしいと言えばいいのにな。

 

「そ、そういう事なら……。ありがたく頂きますね!」

「あぁ、召し上がれ」

 

 そんな私の意図に気づいたかは不明だが、取り敢えず素直に受け取っては貰えた。

 そんな彼女は、カプチーノにゆっくりと口を近づけ、そして飲んだ。

 

「っ!? 何これ、すっごく美味しいです!」

「口に合ったようで何よりだよ」

「なんて言うんだろ……、すっごく口当たりが良いです!」

「おいおい、アイドルなんだからもっとわかり易い事が言えないのか? 食レポだってするんだろう?」

 

 大人気なくからかってみる。丸山はこういう扱いをしてやった方が輝きを放つ事を、私は、丸山と他のバンドメンバーとの絡み方で理解しているつもりだからな。

 

「そ、そんなぁ〜! いいこと言ってませんでしたかぁ〜!?」

「いやいや、済まない。少しからかい過ぎたようだ」

「はぁ……、もう! やめてくださいよ〜!」

 

 まぁ、それはそれとして。与えられた仕事はきっちりこなさなければな。俺のプライドが穢れるってもんだな。

 

「さて、それでは始めていこうか」

「はい! お願いします、エミヤ先生!」

「む……、なかなかむず痒い呼び名だ」

「あ、えっと、嫌でしたか」

「……、いや。好きに呼んでくれて構わないよ。そんな事より、ほら、どこが分からないのか言ってみろ」

「えっと、ここなんですけど……」

 

 

 と言った具合に1時間程先生をやっていた頃。

 

 ──────────────────────ー

 私は何やってるんでしょうね……。

 

 今日は用事なんて何も無い。だけど、私は自分で彩ちゃんから遠ざかってしまった。守るべきだって分かってるのに……。

 

 

 でも、それほど私は、あのエミヤシロウという男に興味を持っているのかもしれない。だから、今日だって私がエミヤさんに会える口実として、彩ちゃんをエミヤさんの所に誘導だってしたのだから。

 

「本当に、何をやっているのかしら……」

 

 私は今、CiRCLEの窓ガラスに張り付いて、中に居る二人の様子を伺っている。傍から見れば通報待ったなしの状況でしょうね。

 

 彩ちゃんも当然心配だけれど、それよりも彩ちゃんとエミヤさんの絡みの方が気になってしまう。彩ちゃんに限って『間違いは無い』と思うけれどね……。

 

 

 はぁ……。やっぱりこんな回りくどい事はやめましょう。あのエミヤさんが嘘をつくなんてあまり考えられないものね。

 

 そう思って──言い聞かせて、かも──私はCiRCLEの扉を開け放つ。

 

 

 ──────────────────────ー

「む、ようやく来たようだな」

「も〜! 遅いよ千聖ちゃん!」

「ごめんなさいね、彩ちゃん。でも私だっていろいろ忙しいんだから……」

 

 不意に扉が開いたと思ったら、丸山に後で来ると伝えられていた白鷺千聖が姿を現した。何かピリピリした空気が漂って来た……、気がしているだけだろうが……。

 

 その白鷺千聖は丸山の隣の椅子に腰掛けて、余程心配していたのだろうな、丸山の学習の成果をじっと見つめて吟味している。

 初めは険しい顔をしていたが、徐々にその顔色が良くなっていく。

 

 基礎はそこそこ理解していたので、一度基礎を軽く説明してから応用へと移っていったのが良かったのだろう。丸山もそこまで馬鹿な訳では無いのが、私も今日理解したよ。

 

 丁寧に説明したら、一回で覚えていくのだからな。大方、学校の教え方が悪いのか、もしくは授業中に寝てしまっていてそもそも内容が入っていないのか。

 ──恐らく後者なんじゃないかと……。

 

 

「エミヤさん、コーヒーを貰えますか?」

 

 と、そんな時。確認の終わった白鷺が注文を寄越してくる。断る理由がない、というか断ったら職務怠慢で最悪解雇されてしまうだろう。

 

「了解した。砂糖はいるかね?」

「いえ、無しでお願いします」

「へぇ〜、千聖ちゃんいっつもブラックで飲むの?」

「いつも、という訳では無いわ。今日はそういう気分だから、としか説明出来ないわね」

「私、ブラックなんて苦すぎて飲めないよ……。やっぱり千聖ちゃんは凄いな」

「うふふ、ブラックが飲めるだけで褒められるなんて思わなかったわ」

 

 ふむ、やはりというか何というか。丸山と白鷺の仲は悪くないみたいだ。

 これなら、このバンドが解散になるなんて事にはならないだろう。丸山も白鷺も仲間の為によく働く人物だと、少なくともこの店で見かけるうちではそう思っている。

 ──事務所とやらではどうかは知らんが。

 

 コーヒーを作る意識の隅の方でそんな考えを巡らせていたが、それも不意に打ち切られる。

 

「あら、彩ちゃん。メイクが少し崩れてしまっているわよ」

「えぇ? ウソっ! ど、どうしよう……?」

「どうしようも何も、直してきたらいいんじゃないかしら」

「あ、それもそうだね。じゃあちょっと行ってくるね!」

「慌てないでゆっくりと仕上げてきてね」

 

 どうやら、また二人だけになってしまったようだな……。この気まずい空間をどう処理したものか。

 取り敢えず出来上がったコーヒーは出すことにしようか。

 

「コーヒーだ。ゆっくりと味わうといい」

「ええ、ありがとうございます」

「…………」

「……。はぁ……。やっぱり美味しいですね」

「……、やはり君の褒め言葉には何か違和感があるよな気がしてならないよ」

「私の素直な気持ちなのですけどね」

「そりゃどうも」

 

 他愛のない会話。その会話の中にも何かしらの闇、というか重圧を感じてしまうな。決して気のせいではないのだ。白鷺は──率直に言ってしまうと──様々な性格というか人格があるような気がしてならないのだ。

 

 そういった面に関しては、素直に恐怖を抱くよ。それが出来るか出来ないかと聞かれれば、可能ではある。ただ、そうするうちにどの人格が自分の素面かが分からなくなってしまいそうなのだ。

 

 ──遠い記憶に、新宿でそう言って悩んでいた奴が居たっけか……? まぁ、今となっては昔の話だし、仕事上の関係だった事も相まってあまり覚えていないがね。

 

「…………」

「…………」

 

 考えの裏では沈黙が続いている。はぁ……、やはり苦手な事には変わりはないみたいだな。

 

 なので、ここはひとつ気になっていた事でも聞いてみようか。

 

「白鷺。君は……、辛くは無いのかね?」

「え、何を言っているんですか? 当然役者の仕事は疲れるものばかりですけれど……」

「……、まぁそれならそれでもいいが、その行動はいつかお前の身を滅ぼす事になる。後悔がないのならいいが」

「……。私にはこの生き方しか出来ないんですよ、きっと。小さな頃から役者をやって来て、様々な人の人生を演じてきた。だから普通の女の子を演じるのは何も苦痛では無いんですよ♪」

「……。君は……、既に……」

 

 白鷺にはもはや自分の素面が分かっていないのか……? 

 

「親は何も分かってはくれません。自分達もそうだったからかも知れません。でも、私のようなただのちっぽけな女の子に、そんな事はとても耐えられません……。彩ちゃんにもそうやって接してきたんですから」

「白鷺……」

「本当は普通に接してあげたいんです。でも、私は本当は誰なのか、がもう分からなくなってきてしまってきて……。どうすればいいんでしょうね……?」

 

 突然の吐露。これまで溜め込んできた心の叫びをぽつりぽつりと放っていく。正直、想像を超えていた。これだけの闇を抱えながら今まで生きてきたというのか……。様々な影響を受けやすい子供時代にそうなってしまっては……。

 

 だが……。それでも、ひとついい事があった。

 

「よく人に話そうと思ったな」

「そんなものはただの成り行きですよ」

「確かに、そういう理由もあるだろう。が、こうやって人に話す決意をしたということは助けを求めている証拠だ」

「……、助けなんて子供の頃から欲しかったですよ。でも、そんなものは……」

「いや、あるだろう」

「そんなものっ! 何処に!!」

 

「千聖ちゃんお待たせ〜!」

「……! あや、ちゃん」

「あれ? どうしたの、千聖ちゃん」

「……。あなたが言っているのは」

「ああ、正しくその通りだ。どうするかは君が決めるといい。ただ、君がどのような選択をしようと、私は君を助ける事を誓おう」

「え……、え? なんの話、なの?」

「……、はぁ。分かったわ。私は……、決める事を恐れません。だから、あなたも待っていて」

「ああ、勤務時間内ならばいつまでも待とう」

「……。そこは何時でもでしょう……。よし! ありがとうございます、台本の読み合せを手伝ってもらっちゃって……!」

 

 台本……、台本ね……。

 

「あぁ、気にすることは無い」

「え? どういうことなの?」

「ごめんなさい、彩ちゃん。少し台本の読み合せを手伝ってもらったのよ」

「……、あ! そういう事か!」

「元はと言えば、彩ちゃんの帰りが遅いのがいけないのよ」

「えへへ……、ごめんなさい」

 

 君は、もう少し我儘になってもいい。自分の周りの事にもっと干渉していけ。そうすれば、自分という人間が少しは理解出来るようになるさ。

 

「……まぁ、いいわ。それじゃ続きをしましょう!」

「え? 続きって……」

「決まっているでしょう、勉強の続きよ」

「そんなぁ〜……!」

 

 

 丸山の悲鳴は、静かだったCiRCLEのロビーにまた喧騒を呼び込んでいく。活気溢れていくロビーを見遣りながら、面倒な事に首を突っ込んでしまったと振り返る。

 

 まぁ、それでも、

 

 

 

 

 

 君という存在が少しはわかった気がするよ、白鷺千聖。

 

 

 

 

 ただ、

 

 

 

 

 

 

 

 おかげで貴方の事が一層気になりました、エミヤシロウさん。

 




かぐらすすさん、プライスさん、際涯さん、C18H27NO3さん、水雪儚さん、カツ丼君さん、ライオギンさん、パスタにしようさん。

評価して頂きありがとうございます!

またお気に入り登録してくれた方々、閲覧して下さった方々。
ありがとうございます!

これからも頑張っていきます!



っていうのは置いといて、意見箱の話ね。

一人一回でオナシャス。

内容は基本自由にどうぞ、誰と誰の絡みが見たい!(今のところ出ているサーヴァントとも可)
誰を主軸に書いてほしいとか…、はきついかもだけど善処します。

そういう訳なんで、どんどん意見送ってきて❤

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