どうして守護者がアルバイトなんてやってるのさ 作:メイショウミテイ
次のアフロかポピパのネタは上がってるんで、書く時間があれば良いだけなんですよ!だから許して❤
あっ、そうだ(唐突)
お題箱をね、作ってあるんですよ。みんなもっと意見くれてもええんやぞ?
私は人生の内で沢山の笑顔を見てきた。今までに救ってきた人々は、皆決まって笑顔で礼を述べてくる。
当然、悪い気分はしなかったさ。
というよりそれが無ければ、私は周りが望む『正義の味方』に成れている実感が湧かなかったのだからな。
笑顔によって、次の目的地への活力に繋がる。
私が笑顔を作り出す事で、世界が望む『正義の味方』へと少しずつ形を作り上げている……。
そう感じる事が出来た。
それでも。
それと同じくらい──いや、それよりも多くの悲痛な顔や死に顔を見てしまってもいたのだがね。
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俺がこのバイトの中で最も嫌う仕事のひとつに、ライブの設営がある。
会場の大きさに見合った調整をいちいち施さなければならなかったり、その機材に異常があるか点検しなければならない。
他にもあるが、ここでそれをボヤいていたところで無駄な事は分かっているからな。
俺は基本的に無駄な事はしたくはない主義だからな。
──まぁ、いつもの『正義の味方』をやってる時は考えないようにはしているがね。
セットが面倒な事はこの際どうでもいい。それは職務であるから、結局は逃れられないものだから。
問題は今回ライブを行うバンドが、あの『ハロー、ハッピーワールド!』だという事だ。
彼女たちのバンドの演奏を聴いたことは無い。というより、ここに通うバンドのひとつにさえ興味はない。
だが、彼女たちは音楽に興味が無い俺でも分かる『ライブでは絶対使わないであろう物品』を用意させてくるのだ。
ああ、そうだ。この際だから言ってやろう……。
「なぜ……! 大量のパンがライブに必要なんだ!」
「世界を笑顔にするライブの為よ!」
「ほんとごめんなさい……、エミヤさん……」
奥沢は力なく項垂れながら、謝罪の言葉を述べている。彼女も犠牲者なのか……。
今日はハロー、ハッピーワールド! の弦巻こころと、例の暑苦しい人形の中の人である奥沢美咲が打ち合わせにやって来ていた。これだけでも実際助かる。
他の二人が来るだけで、この場はきっと収拾がつかなくなってしまうだろうからな。会議なんてそっちのけでな。
ええい、それにしても意味が分からん! ライブ中にパンを見せつけながら食べようとしているのか!? それとも、パンを観客にばら撒くつもりか!?
どちらにせよ、後片付けが面倒になるのはゴメンだ!
「はぁ……、取り敢えずお前はそれをどういう用途で使おうとしているんだ?」
「ライブの観客を盛り上げるのよ!」
「違う! どうやって盛り上げるのかを聞いているんだ!」
「ライブに来てくれたお客さんにパンをプレゼントするのよ! 凄いアイディアでしょう?」
「……、ライブ終わりだよな……?」
「いいえ、何を言っているの? ライブ中に決まっているじゃない!」
「正気じゃないぞ、こいつは!」
「ええ、あたしもそう思いますよ……」
とても着いていけない……。こいつはいつも何を考えて生きているんだ!
確かにそれをする事で笑顔になるかと聞かれれば、まぁ、恐らくなってくれると思うさ。しかし、一度それをしてしまうと『このバンドはライブに行く度、何か貰える!』なんて決まりが暗黙の了解になってしまう危険性がある事を、全く考えていないのだろうか?
たかがライブごときで大げさな、なんて思っている察しの悪いお前達には、後でみっちりとその危険性について講義でもしてやる。
「でもね、きっと笑顔になってくれると思うの!」
さっきも言ったが、確かにそうなのだ。
しかし、こいつはそこに潜む危険性をまるで理解していない。第一、食物を無駄にしてしまう可能性が大いにある、という事は考えているのか。
「でもさこころ。パンをライブ中に投げて配るとしてね、ライブ会場とか汚くなっちゃうかもしれないし、食べ物も無駄になっちゃうと思うんだけど……」
「うーん……、確かにそうね。笑顔になるのはいい事だけど、食べ物を粗末にするにはいけない事ね」
良かった……。奥沢の説得が成功したようだ。これで片付けは面倒にはならずに済むだろう。
しかし、意見を否定するだけ否定するのも、なにか悪い気がするので代案を考えてみる。
「じゃあさ、紙吹雪とかでどう? 片付けもそんなに苦労にはならないだろうしさ」
「うむ、それくらいなら許そう。普通の掃除とあまり変わらないだろうからな」
「じゃあそれにしましょう! う〜ん、楽しみね!」
楽しそうで羨ましいよこっちは。厄介事が増えなくて本当に良かったよ。奥沢も同じようにぐったりとしているな。このバンドのストッパーである彼女は、疲労が蓄積していそうだな。
後で一杯、プレゼントしてやるか。
と、そんな時。
「はい! 受け取ってくれるかしら?」
「ん、なんだこれは」
「私達のライブのチケットよ! エミヤ、あなたを私達のライブに招待するわ!」
余計な事を……。その日はたまたま休日であるが、あまり乗り気にはならないな。適当に嘘を言って誤魔化すとするか。
「済まないな、その日はシフトが入っているんだ」
「いいえ、入っていないでしょ?」
「は?」
「その日とその次の日はお休みでしょ?」
「…………」
何故……。何故知られている? シフト表は月島さんしか……。
おい、まさか……。
「……誰に聞いた」
「まりなさんよ! 快く教えてくれたわ!」
あのアマァ……! だが、バレてしまったいる以上は受けるしかないか……。
正直言って、乗り気じゃないのだがね。
取り敢えず後で、月島さんにこの件を問い詰める決意をしたところで。
「……。分かった、行くよ」
「あなたならそう言ってくれると思っていたわ!」
「本当にごめんなさい、エミヤさん……。折角の休日を……」
「ああいや、どうせその日も家で惰眠を貪るつもりだったからな。気にすることは無いよ」
そういう話があって、ライブ当日。
何だか新鮮な気持ちだ。バイトじゃない日でここに来るのは。
そんな感情を噛み締めつつ、CiRCLEへと足を踏み入れていく。そこにはいつもと変わらない様子で月島さんが出迎えてくれる。
「おお〜! エミヤ君、本当に来るとは……」
「どういう意味ですかそれ。招待を受けた以上行かないわけにはいきませんから」
「そっか。それならチケットを拝借!」
「どうぞ」
「…………。よし、確認終わりっと。あと十分で始まるから急いでねー!」
「どうも」
月島さんをぞんざいに扱いつつ、普段はあまり足を踏み入れることの無いライブ専用スタジオへと入場する。
──瞬間、物凄い熱気が体を突き抜けていった。
会場内は今日の主役である彼女達を待つ歓声で一杯になっていた。それ程までに彼女たちの演奏は凄いのだろうか?
演奏を聴く前の予想が止まらなくなっていく。
そして、なんの前触れも無しに、
『みんな〜!! 元気〜〜!!』
『イエェェェェ──イ!!!』
「っ!?」
この会場全体が、一瞬にして彼女たちのテリトリーに変わっていった。
まるで会場の観客が一人残らずに『ハロー、ハッピーワールド!』のメンバーであるかのように。
そして始まる演奏。
楽曲と楽曲の間に挟まれるMC。
その全てが、ある種のカリスマ性を持っているのだと感じる。
演奏中だってミスをする場面はあった。だが、それでも……。
──
ライブ終了後。特に理由はないのだが、さっさと帰ってしまおうと思っていた私だったが。
「やぁ、私達のライブを見に来ていたという話は本当だったみたいだね」
「……あぁ、誘われたからには行かなければな。今回のライブに来たくても来れなかった奴だっているだろうしな」
素直な意見だ。その権利があるのならば、やはり使ってしまう方が良い。俺という存在が誰かよりも一歩先へと進んでいる感覚が──。
おっと、違ったな。折角その権利があるならば使ってしまわなければもったいないだろう?
「その事に関しては感謝の気持ちを述べよう。どうだったかな、私達のライブは?」
「……。君達の演奏には人を引きつける魅力があるように感じたよ。演奏はまだまだと思ったが、パフォーマンスやMCが独特の雰囲気を創り出している。名前の通りだったよ」
「ふふ、そこまで好評されるとは! あぁ、なんて儚いんだ!」
「はぁ……、他のバンドメンバーに『お疲れ様』って言っておいてくれ。それじゃあな」
「ふふ、また会おう。赤の騎士よ」
──何を言っているんだあいつは。
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今後ともご贔屓に!
お題箱の方も忘れないで❤(活動報告の方にありますのでね)