でも、それを真面目に活躍させようって変人はいないと思うんですよ。
・・・・・・周りにいなかったんですよ!()
諸君、私は《ブラック・マジシャン・ガール》が好きだ・・・・・・だなんて流れから始まりそうな、どこかで聞いたことがあるような演説だか御高説だかは前振りで終わらせるとして。
あえて、自分の言葉で語ろう。
僕は《ブラック・マジシャン・ガール》が好きだ。《ブラック・マジシャン・ガール》のためだけのデッキを組もうとして、《ブラック・マジシャン・ガール》を採用する意味をデッキに持たせるべく様々なカードとのシナジーを考え、あるカードたちが刷られるまでは何年経っても《ブラック・マジシャン・ガール》が強くなれない現実に枕を濡らし、何度も《ブラック・マジシャン・ガール》を捨てることを考えれば希望を未来に託し。
新規カードが発表されては《ブラック・マジシャン・ガール》と相性のいいものはないかと一喜一憂し、最終的に理想的なデッキを完成させてもなお《ブラック・マジシャン・ガール》をより強くしようと考えるくらいには好きだ。
ついでに《ブラック・マジシャン・ガール》を題材としたネット小説、あるいはSSと呼ばれるものを書きたくなるくらいには好きだ。そして何度も廃案を重ねて完成させるまでの苦行を終え、完走させるくらいには好きだと言ってもいい。
どこかの同士は拷問カードとメタビートによるコンボを兼ね備えたリョナラー垂涎の《ブラック・マジシャン・ガール》デッキを組んでいるそうだが、違う、僕が作りたかったのはそういうものではないし、実際に作ったのはそういうものでもないのだ・・・・・・。
などと、一端のデュエリストっぽく語りはしたいが、所詮は現実世界の人間。
正直な話、『決闘者の初恋』『どの時代でも色あせない美少女』だなんて呼ばれているカードを、わざわざデッキのエースにして小説まで書こうとするオトコの最初の夢だなんて決まりきっているようなものだ。
――――《ブラック・マジシャン・ガール》と付き合いたい。
アークファイブの世界にあるリアル・ソリッド・ビジョンでもあれば、あとはAIを突っ込むだけで擬似的にお付き合いも、お突合だろうともできうる程度のちっぽけなユメだろう。
その程度であれば、腹話術を学んで寂しく遊ぶまでもないし、もちろんそんな恥ずかしすぎる宴会芸を夜な夜な一人でやるよりは自分を磨いて女の子を引っ掛ける努力をしたほうがいい。妄想にふけって現実と妄想の区別もつかない狂人になる必要もない。
そんな現実なんて、嫌でもわかっているというのに。
【こっちの世界、遊戯王専門雑誌ってほんとにあるんですね、マスター?
まあ書いてあること、ヴァリアブル・ブックくらいの・・・・・・そう、当時のデュエリストのお財布事情とかカードショップ事情とかをあんまり考えてないくらいの内容ですけど。
見てくださいよコレ、トマハンですよ、トマハン!】
目の前の、「めっちゃ荒んでて死んでる目をしている《ブラック・マジシャン・ガール》の嘲笑が、ずっと聞こえてくるという嫌な夢」が、ひとかけらの
【テキスト表記がガバガバすぎてワンターンエクゾディアが
そこから数年経って黒蠍とかいう連中が出てきて、相手の手札を削り取る戦略が《押収》のたぐいもなしに普通になった、そう、GX放送当時くらいのってとこでしょうかね?
それにしては、ずいぶんとまあ・・・・・・スピリット、いるんですねー・・・・・・。
現実準拠ならともかく、原作の漫画、アニメ準拠なら絶対ありえないですよね、この特集のデッキレシピ。あれって一応、ペガサス・J・クロフォードのアニメオリカですし】
チョット待ちなさい、なんで君そういうメタいこと知ってるの。
【いや、私、別にアニメとか漫画の《ブラック・マジシャン・ガール》じゃないですし?
そういう時期に捨てられたり売られたりした方の《ブラック・マジシャン・ガール》ですしぃ~? 《人造人間サイコ・ショッカー》にも帝にも負ける方のですし】
パラパラと雑誌をめくりながら、ブラック・マジシャン・ガールの精霊は口を尖らせる。
さすがに宙に浮かびながら前回転するのを何度もやらないでほしい。目のやり場に困る。体育座りふうに足を畳んでいるせいで、彼女の陰鬱とした雰囲気がより強くなるのも含めて目のやり場に困る。
というか、その言いぐさだと、まるで実際に負けたことがあるかのように聞こえるが。
・・・・・・まさか。
【べっつにー? いいですもん、私を捨てたマスターたちの都合なんて。
隣で一緒に楽しくアニメ見てたのに、数年経ったら子供の遊びだからとかってバカにされながら捨てられたって? それを誰が拾って弱いって言って捨てたって?
メタいも何も。こっちは本物ですよ、本物。なのに誰も気が付かないですしぃ・・・・・・】
ああ、そういう。確か、ええと、付喪神的な。
【そーですよ、付喪神的なアレです。
実はマスターのアレとかアレとかナニとか見てたりする方のアレです。
よかったですね~、友達にも内緒な嫁のカード公認で。気持ち悪かったですけど】
やめてください死にたくなります。
【とか言いつつ、下半身に正直すぎて生きたくなるんですよね?
わかりますよ、そのくらい。ところで、どうするんですか?】
どうするって、なにを?
【決まってますよ、
なんか気がついたら世界変わってたぜ系の状況に私みたく内心でパニックするより、私を見て目が元気になったマスターにわかりやすく現状を説明してあげますよ】
彼女は、くるくると宙を浮かび回り続けながら、今度は膝を立てて横になるような姿勢へと移り変わる。やめなさい、服と肌の間とかがデンジャラス過ぎます。
もうちょっと、ご自分のキャラデザというものを考えてですね。
【コ⬜ミや海馬コーポレーションが販売していないモデルのデュエルディスクがあって、こうして「誰が置いたのかわからないデュエルディスク」の上に置かれたカードの私が実体化した以上、どう考えたってここ、アークファイブの世界じゃないですか。
・・・・・・マジで、どうしますか?】
あ、ダメだ彼女、全然聞いてくれねぇや。
【アークファイブの世界に来たマスターが、すまほ? で昔に読んでいたネット小説とかによくある転生や転移だの、超B級映画な謎すぎる陰謀だの、そういった気配はしません。
ここにいる理由も原因も(分から)ないっていう、二次創作ならダサくて駄作なショート・ショート以下の産物です。
例えるなら、えっと、マスターが数ヶ月も何年も二次創作のオリキャラ主人公を作るのに頑張り続けて、最終的に「その世界出身の既存キャラとかモブキャラに憑依か転生でよくね? オリキャラ主人公にする意味ってあんのかコレ。それはそれで嫌だしダルいからやめるか、かえって使わせたいカードのイメージとの辻褄合わなくなるし」って匙を投げたレベルですね】
ああ~、やったことある、そういうの。
ボツにしたアイデアのひとつに、そんなんあったっけ。
よくそんなネタ覚えてくれているなぁ、「ずっと見てたから」って言われたら死ぬほど恥ずかしくなるくらいのを。ちくしょう。
【ぶっちゃけヌルゲーの気配ですよコレ、そしてエタるくらいには、たぶん私達の出番は特別これと言ってないでしょう。元から何の因縁もない世界ですしね】
おお、メタいメタい。
まあ実際、アークファイブを含めても遊戯王の二次創作は連載不可能になりやすい。
なにせ、主人公にとっての因縁というものが完結しやすい題材だからだ。
かの有名なハ□ー・ポッターでなら闇の陣営関係からでも原作の運命に抗う主人公が作れるし、ハー☓ルンではなにかとアンチ作品をよくみるハイスクール□☓Dだってアンチ要素を消化していくだけでも話は作れてしまう。
しかし、遊戯王だけは特別なのだ。
基本的にカードゲームという知能スポーツが主体であるせいか、書き手そのものに高度なデュエルタクティクスを必要とされることがあるだけでなく、大体がタイマンを張った文字通りの決闘であるがために後腐れに繋がりにくいのだ。次の話を書きにくいのだ。
しかも、あまりにも敵陣営のキャラクターに原作主人公の陣営との因縁がありすぎて、誰かが間に割って入ると原作の物語全体が一気に破綻しうる。あくまでも味方のキャラひとりに因縁の相手がひとり、というのが遊戯王作品の相場なので、まず因縁などないオリキャラにはこじつけで戦える原作のネームドキャラなど多くはないのである。
暗にそれは、原作そのものの話の分かりやすさだけでなく、より意図的にオリジナルの展開に持っていってモブ中心の好きな話を描きやすいとも言えるのだが、大概の人が書きたいアンド読みたい二次創作とはネームドキャラへの待遇がメインディッシュであって、流石に「モブキャラ同士やらオリキャラとモブキャラの絡みがメインなんです食らいやがれお客様」というのは難易度が高すぎる。
というか、そんなん遊戯王上級者向け過ぎて誰も読めんわ。
【ですよね~、マスター。
結局マスターには難しすぎて、アニメの二次創作って形にはしませんでしたよね。
『ブラック・マジシャン・ガールと賢者の石』でしたっけ、アニオリでの私のミュージカル。あれをネタにして一本書いたんでしたっけ?】
そうそう、そうやった、それやった。
先程の話とつなげるなら根本的な問題点として、遊戯王シリーズにモブでしかないオリキャラにまで構ってくれるほどの「使い勝手のいい悪党」というものが極端に少ないのだ。
ハ⬜ー・ポッターなら闇の陣営と対立するか、闇の陣営の都合を知っている上で立ち回り学園長の慧眼を欺き生き延びようとするチキンレースをするだけでも大筋が乱れずに話が成立するというのに、ハイスクール⬜☓Dであればアンチ要素と仲良く喧嘩するか、普通に能力者として立ち回るだけでも同じく大筋を乱さずに話が成立しうるというのに、だ。
簡単に言えば、物語構成がガッチガチすぎて、いわゆる遊び、つまるところ話の余裕がない。
モブだけに着目しても、それはそれで大筋から離れすぎていて、読者に時系列が伝わりにくくなってしまう。それは結局の所、原作の展開を追っていったほうが読者に優しいということでもある。すると、そのために主要キャラの出番が増えてしまう。
オリキャラが主人公であれば、まず活躍の場が減るということでもある。
アークファイブの世界では幸いなのか不幸なのか、オベリスク・フォースだのセキュリティだのがいるものの、全員が名前すらないガチモブ過ぎて、モブとオリキャラだけのバトルなんて誰が見るんだ状態にだってなりうる。
簡潔に言えば、遊戯王の世界はオリキャラに優しくなどなかった、ということだ。
もちろん、お話を面白く成立させるという意味で。
【「だったら世界観も因縁もまるごと作って満足するしかねぇ!」、でしたよね!
・・・・・・で、マジでどうするんですか。私達にやることって、あります?】
そう言われてみると、実のところ、そんなにはない。
原作に対して手を加えたいと考える夢想家ならばともかく、だが。
遊戯王の世界は、ほんの僅かなズレがどんな世界の滅びに繋がりうるか明確なのが恐ろしい。ファイブディーズからのアニメ世界の場合、ファイブディーズならばヒロインひとりが主人公たる不動遊星やチーム・ファイブディーズから離れただけで最終決戦で勝てなくなるフラグになるし、ゼアルならば黒幕のドン・サウザンドに興味を持たれて記憶を覗かれるなりするだけで主人公たる九十九遊馬たちに対してオウンゴールを決めてしまう戦犯になる。
このアークファイブの世界であれば、赤馬零児だろうが赤馬零王だろうが、記憶を除く(または覗く)技術があるので余計にやばい。
ついうっかり捕まろうものならば、主人公たる榊遊矢の身に何が起きるかわからない。ズァーク関連とか遊戯王作品関係のやばい設定持ちカードまで覗かれたら、何をされるかわからん。機皇帝とか再現されたらシンクロ次元絶対ヤババナイト。
これらを見越した上で「原作乖離をなるべく避けたい」と考える側からすれば、「しかも遊戯王の世界でもある」ので普通の戦いでの死ぬ可能性もあるというハードモード付き。メタい考察込みでも遊戯王の世界にだけは行かないほうがいいとは、よくネットで聞いたものだ。
それでも、この世界に来た以上は仕方がない。
かといって、せっかく《ブラック・マジシャン・ガール》と話せるのだ。
まだ、そう、死に急ぐにはまだ早い。
【・・・・・・知ってますよ、そうやって
わかりました、そういう腹づもりなら? 私もダラダラしちゃいますね?!】
なんか彼女、今、「よし、後はマスターと竜騎士♀できれば・・・・・・!」とかボソボソと言っているっぽいけど。そういえば、そもそも、こんな仲になるようなフラグってなんかあったっけ。
そんな仲になろうと思ってもらえるだけの、そういうなにかをしたこと、あったっけ。
TUT△YAで叩き売られてたの、全部買い集めはしたけど。別に無限回収くらいなら、やるひとはそんなにいないはずもなし。マジでキモがられることしかしてないぞ、僕。
仮にそれが理由なら、いくらなんでもチョロすぎませんかね?
こういうのもネット小説系の強引な展開ってやつなんだろうか、ねえ、
・・・・・・よし、今日もダラダラしますか。前世のときみたいに。
前世のときみたいに!!!
壮大でもなく! なにも! 始まらなぁい!!!
BMGは精霊にしていいのか、喋らせていいのか、そもそもヒロインにしていいのか、かーなーりーデュエリストのご都合主義(※非モテのイメージする恋愛)の体現者になりかねないのではないか、なんて四苦八苦した結果が、
「決闘者の初恋とか呼ばれてるけど、現実はストレージで投げ売りされてるよなー」
↓
「どうせなら、キャラを改変して荒んだ子にして腐らせるかぁ!!!(発狂)」
この有様です、本当にありがとうございましたクソッタレ。