完結させないのも(頭の中で妄想が残って)気持ち悪いので、思い切って書き切ることにしました。今に書ける最高のビターエンドでしょう、ごゆっくりどうぞ。
ボクは、今以上に。
こんなデュエル、受けるんじゃなかった。
なんていう思いにかられたことは、昨日までは一度だってなかっただろう。
「お前の話は、ヒーローごっこじみてるんだよ・・・・・・」
覇王龍の眷属、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》。
その戦闘能力は単騎ではどうということもない。あくまで、複数のカード効果による攻撃力のコントロールから爆発的な戦闘ダメージを叩き出す稀有なドラゴンだ。
似たような特性を持つドラゴン族モンスターであれば、別にペンデュラムモンスターでなくとも《ダークブレイズドラゴン》という先駆者がいるのだが。
そんなことは、どうだっていい。
もっとも重要なこととは、覇王龍の眷属がまだ健在であるということ。
「エンタメデュエルがどうのこうのと語りたいなら、勝手に語れ。
それが自分の思想ってもんだろう? なんでわざわざボクに押し付ける?
お前は、お前と同じ人間だけがほしいのかな。」
それだけで腹立たしいのに、当の使い手が退屈すぎて話にならない。
デュエルは面白い。発想は悪くない。目覚めた力の使い方は、古今東西のどんなペンデュラムモンスターの使い手よりも、間違いなくエンターテイメント性がある。
――――ただし、そこまで。
【遊戯王】の看板を背負う主人公としては、あまりにも安直。
他人を楽しませたいのであれば、ただそれだけを考えて精進すればいい。
他人に勝ちたいのであれば、それなりの場数を踏んで負けを受け入れればいい。
他人を傷つけられたくないのであれば、自分で盾と槍になればいい。
そこに。あるべき愚直さに。
『他人の脛をかじる必要性』なんて、どこにもあるわけがない。
『他人の戦いのロードを引きずって、自分の道に連れ込む必要』だなんて、そんなものはあるべきではないのだ。そんなものは、遊戯王の主人公でなくとも邪道がすぎる。
誰かと、ともに歩むこと。
叶うとすれば、『仲間や好敵手の肩を借りる弱さ』があってこそのもの。
主義主張が異なるライバルを相手にしようと、「まずは行動に移そう」と、素直に頼み込めるだけの正しい愚直さが必要なのだ。相手が海馬瀬人だろうと、万丈目準だろうと、ジャック・アトラスだろうと、神代凌牙や天城カイトだろうと。
例外なく、「自分の頼みを聞いてくれなくて、当然なのだ」と、ライバルだからこそと尊重できて、初めてデュエリストは・・・・・・いや。
すべての戦うものは、対等になれるのだ。
それなのに、それをデュエルで押し通そうとして。
その挙げ句に口にした言葉が、大事な幼馴染の話かと思えば。エンタメデュエルの話に絡めてきて、挙げ句に他人のプレイスタイルをふざけていると綴りだしてきた。
最後に付け加えるかのように、蛇足かのようにスタンダード次元の平和まで。
気が散っている、なんてものではない!
「揃いも揃ってピエロばっかりのサーカスってか?
アルレッキーノはどうした、コロンビーヌはいないのか、パンタローネの役は誰がやるんだ、そもそもどんな劇を挟む気だ、猛獣使いは誰がやって演奏は誰がやるってんだ!?
サーカス以外のエンタメは全部消えろってか、純粋な将棋や囲碁や舞台劇はどうなる、誰だってサーカス以外なにもないなんて退屈だろう?
お前がやってることなんか、結局は最後の最後まで『そんなこと』の繰り返しなんじゃないのか。お前が言いたいことなんか、結局は『そういうこと』なんじゃないのか!」
榊遊矢の求めるエンタメデュエルに、そんな役者の椅子はどこにもない。
いつだって自分の椅子が一番上で、いつだって他人の椅子は下か、自分より悪い椅子か、自分より上にあることを誤魔化すように泥をつけることから始まる。
ジャック・アトラスを相手にデュエルをして、ようやくそこを自覚するようになってきては行くのだが、そんなものは原作通りに物語が進んだらの話だ。
どこかで相手の方が悪い、相手の方がエンタメでは下だという余裕がなければ。
自分から罪を犯した犯罪者が他人や自分の手のせいにするような、あるいは自分の弱さを他人が強いせいだとわめく子供じみた相撲取りのような卑劣さがなければ。
自分の決断の誤ちや、自分の実力の無さを受け止めきれない愚かさがなければ。
彼の物語は、いつだって正当性を保てはしなかった。
そこを彼が卒業するまで、いちいち面倒をみる挙げ句の果てに、戦場でまで構ってくたばる気狂いじみた酔狂は、こちらにはない。
・・・・・・それこそ
後の沢渡シンゴのような、対等に立てる。
真っ白な、なんの非の打ち所もない本物のライバルが。
そんなものがいなければ、対等にエンタメし合うことも。
あえてエンタメをせずに向かい合うことも、紫雲院素良を相手にエンタメをすることで訴えかけるようなこともできない。常にエンタメを続けて、いざ受け入れない相手が現れたら文句を言うだけか、無理やりにでも楽しませようとする。
ああ、そう。彼というやつは。
「空っぽなんだよ、『お前のサーカスは空っぽなんだ!』
何でもかんでも自分一人。お客さんなんて見ちゃいないだろ、お前。
ボクみたいに誰かへの憧憬があるくせに、その誰かを追いかけてばかりで、結局は別の道や新しい道を見ようともしない。
そうやってオヤジの二番煎じをやってるくせに、たとえばストロング石島みたいな大人のプロデュエリストに何度も挑もうなんてして、自分のエンターテイナーとしての実力を試させてもらったことなんて、一度でもあるのかよ?
誰かへのむかつきを正直に言うような道化っぷりもない。テメェへの恨みつらみを正直に吐けるようなライバルだの仲間だのなんて、そもそもお前にいるのかよ!?」
もしもボクの隣に、彼女がいなかったら。
この想いを思う存分にぶつけに行って、それでオシマイだろう。
同じような失望や憐憫や諦めや、怒りや憎しみをもって嬲れるだけ嬲り、彼を取り巻く運命というものに復讐し、彼そのものすら焼き尽くして。
そこまで。終わりだ。
それがハッピーエンドで、ビターエンドで、バットエンド。
【遊戯王の物語】が続けられるような余地なんてない。後はダラダラと腐っていくか、下卑た笑みでも浮かべながら考えを切り替えて別の幸せを得ようとするのか。
せいぜいが程度のしれた、善人ぶった回顧とともに家族に囲まれた天寿の全うなんていう、誰が見ても、どう考えても胸くその悪い死に方か。
あるいは、この世界の住人に復讐されるという、ある意味で一番マシな終わり方くらいのものだろう。私情で相手を嬲るやつは、他人の私情で嬲られるものだ。
結局の所、ボクと彼の間に正義なんてどこにもない。
どこまで語っても私情と我儘と理不尽ばかり、どっちもどっちだ。
本当に、彼女がいてくれてよかったと思う。
だからこそ。
「誰だって死にたくないだろ、誰だって自由を奪われたくないだろ。
そうなる戦いに出て、いざとなったら彼女と死に別れて、『ああ、こいつはいいやつだったな』なんてテメーの自己満足に最後まで付き合えってのか、ボクたちに!?」
「ち、違う、俺はそんなつもりじゃ、」
彼には、彼の甘ったるい言葉なんて届かせない。
「そうだろうな。でも、お前の望み通りにすれば、そうなる!
いずれは、誰だって、お前の慰みものにされるんだよ!」
オッドアイズの攻撃をマジシャンガールたちが躱し、《ブラック・マジシャン・ガール》が手札から現れて迎撃する。
誰か1人だけを強くするような戦い方など、その1人を極限まで弱くさせれば同じこと。周りにいる連中など直接倒すまでもない、これが榊遊矢の戦い方の・・・・・・ズァークの戦い方の限界でもある。
それゆえに、同じだけの強さを持った者が隣にいないと抗えない。
バーン戦法、メタビート、あるいは自分よりも制圧力に特化した相手。
アカデミアにいる連中全員に、彼は単独では勝利し得ない。
本来であれば、それこそ他人の力に依らず戦わねばならぬというのに。
そうであっても「自分自身が仲間の糧になる」可能性や手段さえ受け入れなければ、本当の意味で戦線を切り開けはしないというのに。
残念ながら、彼にできた試しがない。
だからこそ。
「結果、この盤面はどうした?
オッドアイズのために利用されきったエンタメイトたちは?
エンタメ仲間が聞いて呆れるよ、結局はこれがお前の本性だってことか?!」
残された《EMモグモール》、《EMパートナーガ》、《EMソード・フィッシュ》。
ペンデュラムゾーンには、相手ターンには何の効果もないも同然になる魔術師たち。せっっかくの広いペンデュラムスケールも、エンタメントたちの幅広いバリエーションあるカードプールも活かせてはいない。
同じだけのサーチ手段があるならば、せめて相手ターンでの柔軟な防御に回せるエンタメントを優先して、それらをあえてデッキから手札に加えるべきだった。そうすれば少なくとも、こちらからの攻撃を凌ぎきって大逆転、なんてエンタメにだって出来たはず。
それを急ぎに急いで、たかが1ターン限りのド派手な演出のために使い潰して、デュエルという演目を最後までギリギリまで演じきる根性もないままに、結局はこのざま。
仲間という名前の、ただの肉の壁しか残っていない。
「そんでもって最後に頼るのが、オヤジの遺産も同然のアクションカードか?!」
逃げるように走り回る榊遊矢。
それはそうだろう、盤面にいる連中だけじゃ迎撃なんてできやしない。
ペンデュラムスケールを乱されようものならば、盤面にいる殆どのエンタメイトが再召喚など狙えなくなるレベルばかり。次の次のボクのターンで猛攻をかけられたら、あっさりとなんの面白みもなく、エンターテイナーとしてもデュエリストとしても、完膚なきまでに負けきってしまう。
だからこそ、ボクは。
「1ターン。1ターンだけ、何もしないでいてやる」
届かせる。彼我の実力差も、タクティクスだけで。
悪魔のような提案を、悪魔のような迎撃を終えてから。
「お前の仲間になったやつがくれる、乱入した場合の猶予ターン。
その予行演習だよ、1ターン何もしないなら流石に逆転できるだろ?」
舐めきっているとでも誤解しているのか、怒号を吐いてドローを始める榊遊矢。
気のせいか、ドローに黒い瘴気がまとわれているような。いいや、おそらくはズァークの意思が介入を始めてきたのだろう、そんなんだから眷属を増長させるというのに。
・・・・・・逆だ、ボクは舐めてなんていない。
今のが榊遊矢の限界だからこそ、その先を行ってもらわないと困る。
シンクロ次元編にわざわざ付き合う暇があるなら、誰かが月影や黒咲、セレナの代わりを務めなければならない。エクシーズ次元編にまで付き合う気があるなら、黒咲の代わりにレジスタンスたちや天城カイトを鎮めなければならない。
そんなこと、たかが1人の人間にできるわけがあってたまるか。
「来いよ、榊遊矢。」
墓地の《仁王立ち》、《光の護封霊剣》、《電磁タートル》を確認しながら、手札の《バトルフェーダー》の向こう側に現れた赫焉の魔竜に目を細める。
「ちょっとでもボクが約束を破ったら。
――――『そこからが本番だ』って教えてやるよォ!」
だからこそ、彼には示さなくてはならない。
今はいない彼らに頼らなくても、正しく覇を示せるように。
ペンデュラムのカードパワーがなんだ、こちらの原作知識が何だ。
そんなもの、わざとイレギュラーを起こさせれば何度でも塗り替えられる。わざとでなくとも、相手方が勝手に動けば勝手に変わる。デュエルだって常にそうだ。
未来なんて不確定で、今の積み重ねでしか敗北はありえなくて。
それでも、彼我へどうしようもないほどに物を伝えるのが。
カードとの絆。
本物のデュエルタクティクスなんだと。
「・・・・・・まけ、た。」
オレは、負けた。
榊遊矢、そう呼ばれるズァークの化身は。
仰向けになったまま、皮膚が焦げてしまいそうなアスファルトの熱を背中に受けながら。煌々と燃え盛る真夏の日差しをも受けていた。
デュエルの熱狂が収まらなかった舞網チャンピオンシップ。その盛りが今もなお続いているかのような錯覚をさせているはずの、今日が。
今の彼には、ただの熱にしか感じられなかった。
柚子のために、舞網市のために。
ひとりのデュエリストとして、ランサーズなんてものに選ばれたデュエリストとして。エンタメデュエリストとしても、エンタメデュエルは根こそぎ翻弄されてひっくり返され、エンタメを捨てても「防御手段は山のようにあった」と勝てないことを宣告されて。
《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》。
オレのすべてを吐き出したような、真っ赤なドラゴンが。
『い、いえーい、私ったら大勝利ぃ~・・・・・・。
って、言ってる場合じゃないですよね、コレ?』
なんか、《瑚之龍》に乗った《ブラック・マジシャン・ガール》に。
アクションマジックを捨てて発動した効果で、あっさりと負けた。
「融合、シンクロだけ使って、盤面だけでも仮想敵を演じたから、かぁ?
真面目にブチ切れといてなんだけど、シュールすぎないかな?」
『むしろ、あの、どこがシリアスなんですかね・・・・・・?』
強いカードを出して勝てるかと思ったら、いつの間にか墓地にいたカードを使って防がれて、次のターンにとどめを刺そうとしたら、たった一度のドローで逆転される。
そこに、オレの望んだエンタメの形なんてない。
貪欲に勝利を掴もうとしたひとりのデュエリストと、それに応えたカードたちのコンボが、アクションマジックを手札コストとして雑に扱いながら、《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》以上の禍々しいなにかを打ち砕いた・・・・・・という、結末だけ。
こちらの盤面を突破する、強力なシンクロモンスターも飛んできた。
こちらの動きを封じる、厄介な融合モンスターだって出てきた。
それなのに、とどめを刺したのは。
ただあいつが好き好んで使っていた、《ブラック・マジシャン・ガール》とかいう女の子のモンスターの進化した、《竜騎士ブラック・マジシャン・ガール》っていう融合モンスターのようで。
同時に、あいつの手札を増やしたも同然の。
カード効果のために捨てられた、アクションマジックのようでもあった。
「・・・・・・約束は約束だぞ、ボクはランサーズなんて入らないからな?」
そう吐き捨てて、あいつは退屈そうに帰っていく。
リアルソリッドビジョンが解除されて、《竜騎士ブラック・マジシャン・ガール》がぼやけて見えにくくなる。申し訳無さそうに頭を下げながら、朧気な影に変わっていく。
オレは、デュエルに勝てなかった。
柚子のためなんて先に言いながら、結局はオレのために怒った。
そっちのほうが一番つらいはずなのに、あいつらの背中を見ていると、もっと胸を引き裂くような痛みを感じるのはなんでなんだろう。
あいつを退屈にさせたからか。
いいや、あいつは勝手に楽しそうにデュエルしていて、勝手に《ブラック・マジシャン・ガール》と盛り上がりながら、オレをどうやって倒すかの方を楽しむかのようにオッドアイズたちを眺めていただけだったんだ。
ふざけているのかと思って、一気に殴り倒そうとしたら。
お前のほうがふざけてる。
そう叫ぶかのように、一瞬で盤面をひっくり返されて。その一瞬の合間に血反吐を吐くような声で怒られた。どうして怒られたのかはわからない。理不尽だとも思う。
でも、それはきっと。
「・・・・・・オレが、さきにやったから。だよな」
アカデミアの連中だったら、わかる。
黒咲たちを苦しめてきたのだから、黒咲が怒るのはわかる。
でも、オレはそんなことをしていない。しているつもりじゃなかった。
これから先に、あいつが彼女と苦しむようなことを頼み込んで。断り続けたら怒って、柚子のためなんて言いながら、途中で「お前のそれもエンタメデュエルじゃないか」「なんで同じものが好きな、おまえが他人を泣かせる奴らと戦わないんだ」になんてくっちゃべって。
自分の願いが。誰かのためなんて思って吐いた言葉が。
結局は、「オレと同じ想いをさせるだけ」なんて、いまさら気が付かされて。
それって、話に聞いたアカデミアの連中と、どこがどう違ったんだ。
あいつの好きなデュエルを、ふざけていると言ったのは。
あいつが、オレのデュエルをふざけていると言ったのは。
きっと平行線だ、交われるはずもない理由なのかもしれない。でも、実際に強かったのはオレじゃなくて、あいつの方だった。
カードが強かっただけなら、攻撃力で言えばオッドアイズのほうが上だった。
オレは、デュエリストとして。
デュエルタクティクスだけで、エンタメする暇もなく倒された。
そもそも。
「・・・・・・柚子の話をしてるのに、エンタメしてる暇ってあったのか?」
オレは。
「オレ、なにがしたかったんだよっ・・・・・・?!」
デュエルだけに、あいつみたいに一途になれたことなんて。
一生懸命になれたことなんて、一度でもあったのかな。
彼らの物語が交わる機会も、いつかの昔にはあったのだろう。
今は叶うはずもない。スタンダード次元に迷い込んだ彼がそう決断したから。榊遊矢が彼のデュエルを軽んじ、自分の要求を押し通そうとしたから。
どちらが真に間違っている、ということはない。
どちらも最初から正しくもあったが、決定的にわかりあうことをしなかった。
いいや、わかりあえないなりに、距離をとって絆を得ることはなかった。
お互いを違うものである、と受け入れたうえで。
お互いの望む道を、お互いの望むように歩むことに寛容であればよかった。
最初にそれを叶えなかったものが、どちらかが先に絆を得ることを諦めても、残ったものが諦めずに向かい合っていれば叶ったのか。
相手のすべてを受け入れていれば、少なくとも何かは変わっていただろう。
・・・・・・なんにしても、この物語での榊遊矢は。
この物語での《ブラック・マジシャン・ガール》のマスターに認められる。
そんな未来は、永遠に実現しない。
『そろそろ、彼らがシンクロ次元に向かった頃でしょうかね』
「さあね。誰かがドタキャンとか、トラブルでも起こさない限りは」
あらかじめ赤馬零児から聞かされていた、ランサーズ入隊の期限の当日。
この日まで、未だに誰もボクたちを訪ねに来たやつはいなかった。どこかで見たようなパーカーを着た長髪の子が家に近づいてきたのは見えたけれども。その長髪の子が、黒服の人たちに説得されて帰ってしまったことも見届けた。
ボクの決断に納得したのか、あるいは侮蔑から忘れられたのか。
あの子以外に近づいてくるランサーズのメンバーはいなかったし、柊柚子の姿を見つけることも、その訃報をテレビ、ラジオのニュースなり新聞記事なりで知ることもなかった。
そろそろ、なのかもしれない。
『・・・・・・やっぱり、ですよね』
「うん、やっぱりだったね」
青空が歪んで、見えるはずもないものが見えるのは。
天地がひっくり返ったような蜃気楼にも見えるもの。
先端部分が欠けている塔。高速道路にも似た摩訶不思議な橋じみた道路。
時代錯誤かと世界に突っ込みたくなるような、イタリアの文化的都市を思わせる街並みを持った空の浮き島に、生命の息吹を感じられない監獄島じみた軍事施設。
すべてだ。ようやく、すべてが終わる。
リバイバル・ゼロ。
すべての次元が融合する。
赤馬零王の計画は、ようやく始まった。
『マスター、私、実体化してきてますよね』
「・・・・・・そうだね、でも、これがなくとも実体化できるようにしないと。
厳密には受肉だけども、どっちみち足りないものは足りないんだ。次元統合で何が起きるのかは分からないけれど、ここからが彼らの戦いになる」
『いえ、あの、そっちじゃなくてですね、』
「覇王龍は復活できていない。
ユーリはユーゴを取り込めていない。ユーリたちに削られる戦力のほとんどは健在だし、そもそも遊矢たちがまとまって動いてさえいれば3対1の構図が出来上がる。
よほどのことがない限り、ユーリに統合される危険性はないだろうし」
『ですから、あの、そういうことではなく、』
「問題は赤馬零王、あいつがどう動くかで――――」
『その、手をつないでくれませんか?」
気が変わったら、IFの彼らを描くかもしれません。
読了ありがとうございました。